蛋白質の消化吸収
●蛋白質はアミノ酸まで消化され,大部分が吸収される。

 食物中の蛋白質,および消化酵素や剥離細胞中の蛋白質は,ペプシン,エンドペプチダーゼ (トリプシン,キモトリプシン,エラスターゼ),エクソペプチダーゼ (膵カルボキシペプチダーゼ,小腸刷子縁のアミノペプチダーゼ)などによって消化され,アミノ酸となり吸収される.

 ペプシン(至適pH1.5〜2.5)は,胃主細胞から分泌されたペプシノゲンが胃液の塩酸により活性化されたものである.十二指腸では腸内容物が中和されるので,ペプシンの活動は止む.
 アミノ酸の吸収は十二指腸〜空腸でなされる。L-アミノ酸は能動輸送により,D-アミノ酸は受動的拡散により吸収される.中性アミノ酸,酸性アミノ酸,塩基性アミノ酸はそれぞれの輸送系を持つ.
 大部分の蛋白質は吸収される.便中に含まれる蛋白質は,腸粘膜が剥離したものや腸内細菌に由来するものである.

エンドペプチダーゼ

【英】endopeptidase
エキソペプチダーゼ exopeptidaseに対する語.タンパク質*の内部のペプチド鎖を加水分解しこれを断片化するペプチダーゼ*の総称.基質特異性をもつものが多く触媒残基の種類により4群に大別される.全生物界に多種類存在し,消化液に含まれるペプシン*,トリプシン*,果実パパイヤに含まれるパパイン*,血液凝固に関係するプラスミン*などがその例である.

エキソペプチダーゼ

【英】exopeptidase
エンドペプチダーゼ endopeptidaseに対応する語.タンパク質,ペプチドのペプチド結合を加水分解する酵素のうち,C末端およびN末端に作用して末端のペプチド結合に作用し,アミノ酸(またはジペプチド)を順次遊離するペプチダーゼの総称.膵液,腸液などの消化液に存在し,N末端から作用するアミノペプチダーゼ(ロイシンアミノペプチダーゼ*),C末端から作用するカルボキシペプチダーゼ*,その他にジペプチダーゼ*も含まれる.

膜消化

【英】membrane digestion
腸管において食物を吸収しうる形まで分解する過程の総称を消化*と呼ぶが,それは管腔内消化*intraluminal digestionと膜消化に分けられる.膜消化は,小腸絨毛上皮細胞上の刷子縁膜上に結合する各種消化酵素によって行われるもので,接触消化とも呼ばれる.これによって,管腔内消化による部分的加水分解によってオリゴサッカライドやオリゴペプチドにまで分解されたものをモノマーの形まで終末消化terminal digestionする.これを行う消化酵素は刷子縁膜表面の構成タンパク質の一部として膜に組み込まれている.膜消化によって生じたモノマー*はただちに膜輸送*をうけるので,膜消化酵素そのものが輸送担体ではないかと一時考えられたが,現在では否定的である.しかしながら何らかのメカニズムによって膜輸送担体と膜消化酵素は有機的連関を保つものと考えられている.膜消化酵素としては,ショ糖分解酵素や乳糖分解酵素をはじめとして,少なくとも12種類が同定されている.それらが先天的・後天的に欠損・不足しているところの 刷子縁病brushborder diseaseも知られている.








最終更新:2007年06月07日 00:08