脳梗塞[ノウコウソク]
【英】brain infarction, cerebral infarction
【独】Hirninfarkt
脳血管の血流障害により,脳組織が壊死を起こすことをいう.血流障害の原因として,脳血栓*,脳塞栓*によることが多いが,クモ膜下出血*に伴う血管攣縮,低血圧*,低酸素血症などによっても起こる.

脳血栓[ノウケッセン]
【英】cerebral thrombosis
【独】Hirnthrombose
【仏】thrombose c*r*brale
【ラ】thrombosis cerebralis
脳血管に生じた血栓により脳血流障害が起こり脳梗塞*を生じることをいう.血栓形成の原因としてアテローム硬化に伴う血栓が多いが,動脈炎や血液疾患によるものもある.前駆症状として脳虚血発作をくり返すことが多い.発症は緩徐でありかつ段階的に進行する.脳局所症状にくらべて意識障害が軽く,髄液は清澄であり,髄液圧は正常であるなどの臨床的特徴がある.ただし,大梗塞を生じた場合は,意識障害,頭蓋内圧亢進を呈しうる.脳血栓の成因としてアテローム硬化のほか血液凝固能の亢進,高ヘマトクリット値などの血液因子も重要である.

脳塞栓[ノウソクセン]
【英】cerebral embolism
【独】Hirnembolie
【仏】embolie c*r*brale
流血中の血栓,空気,脂肪,腫瘍などの異物により脳血管が閉塞し,脳虚血を起こすことをいう.心臓または太い血管に生じた血栓が剥離し,頚部または頭蓋内動脈を閉塞することによる場合が多い.突然に発症することを特徴とする.再開通し,出血を伴い出血性梗塞*を呈することが多い

脳卒中[ノウソッチュウ]
【英】cerebral apoplexy
【独】Gehirnschlag
【仏】apoplexie c*r*brale
【ラ】apoplexia cerebri
脳血管障害*により,急激に意識障害*,神経症状が出現する病態.脳出血(高血圧性脳内出血*),脳梗塞*,一過性脳虚血発作*,クモ膜下出血*などがあり,それぞれに多くの原因疾患がある.脳出血の大部分は高血圧性脳内出血であるが,アミロイド*,アンギオパシーangiopathyによるものや出血性素因に基づくものもある.脳梗塞は脳血栓*と脳塞栓*に分けられ,脳塞栓の原因として心疾患が最も多い.

クモ膜下出血[クモマクカシュッケツ]
【英】subarachnoid hemorrhage(SAH)
【独】Subarachnoidalblutung(SAB)
【仏】h*morragie sousarachno *dienne
クモ膜下腔に出血した状態であり,頭部外傷によるクモ膜下出血を除けば,脳動脈瘤*破裂によるものが最大の原因である(60〜80%).その他の原因としては,脳動静脈奇形*破裂(10%),高血圧性脳内出血*(10%),その他の順となっている.高血圧性脳内出血の場合は,出血が脳室内に穿破し,これがクモ膜下腔に流出したと考えてよい.〔症状〕 クモ膜下腔に広がった血液による髄膜刺激症状および脳圧亢進症状が前景となる.前者では項部硬直,Kernig徴候,Brudzinski徴候などの髄膜刺激症状が出,後者では頭痛,嘔気,嘔吐,さらには眼底出血などが出現する.破裂脳動脈瘤による出血では,一時的にしろ意識障害が約半数に出現する.また,頭痛はこれまで経験したことのない強烈な頭痛であることが特徴である.〔診断〕 血性髄液を証明することであるので,腰椎穿刺が行われる.頭蓋内圧上昇のケースが多いので,脳へルニア*を防ぐため髄液採取の際に流出する髄液の量を最少にする必要がある.クモ膜下出血急性期にはX線CTスキャン上では血液は高吸収域として現れ,脳底槽,大脳間裂,シルヴィウス裂に高吸収域が現れるので腰椎穿刺をしなくても診断がつく.C. M. Fisherはこれらの部位の出血の程度を検討して,脳血管攣縮発生の予測ができるとした.〔治療〕(→脳動脈瘤).なおクモ膜下腔閉塞による慢性的な髄液循環障害が約10%に生じ,正常圧水頭症を引き起こす.その症状である歩行障害,尿失禁,知能障害は,髄液シャント術によって回復する.→ハントの分類,フィッシャーの分類

脳ヘルニア[ノウヘルニア]
【英】cerebral herniation
【独】Gehirnbruch, Hirnhernie
【仏】hernie du cerveau
《同義語》脳嵌頓,圧迫円錐pressurecone
頭蓋内圧が異常に亢進した場合,脳組織が一定境界を越えて隣接腔へ嵌入した状態をいう.嵌入する部位は,4つの部位が知られている. 1)テント切痕嵌頓*(ヘルニア)transtentorial herniation:テント上圧の亢進により,テント切痕を越えて側頭葉内側部(鉤回・海馬回)が下方に嵌入するもので,中脳,動眼神経,後大脳動脈などが圧迫される.臨床的には,進行する意識障害と除脳硬直*に至る一連の症状を呈する.除脳硬直に至る前に減圧処置がとられなければ,死の転帰をとるか不可逆性の症状を残す. 2)小脳扁桃嵌頓*(ヘルニア)tonsillar h.:後頭蓋窩圧が亢進して小脳扁桃が下方に押し出され大孔内に嵌頓するもので,延髄が圧迫されて無呼吸を生ずる.小脳腫瘍や出血に際して生じ,特に不用意に腰椎穿刺を行い髄液を排除すると生じやすい.最も緊急の処置がとられなければ救命できない. 3)大脳鎌下ヘルニアsubfalcian h.:大脳内側面の帯状回が大脳鎌下縁を越えて対側に嵌入した状態で,帯状回ヘルニアcingulate h.ともいう.このヘルニアのみで重篤な臨床症状を呈することはない. 4)蝶形骨縁ヘルニアsphenoid ridge h.:前頭葉の占拠性病変で前頭葉下面が蝶形骨縁を越えて中頭蓋窩へ,または側頭葉占拠性病変で側頭葉の前部が前頭蓋窩に嵌入した状態をいう.このヘルニアは,テント切痕ヘルニアや小脳扁桃ヘルニアと違って,臨床的に重大な問題を起こすことは少ない.

一過性脳虚血発作[イッカセイノウキョケツホッサ]
【英】transient 〔cerebral〕 ischemic attack(TIA)
【独】transitorische Anf*lle von zerebraler Isch*mie
【仏】accidents isch*miques c*r*braux passagers
脳血管障害*により突然,片麻痺*,失語症*などの脳局所症状が出現し,24時間以内(通常10〜20分以内)に回復する病態をいう.その病因として現在広く受け入れられている考えによると頚動脈や椎骨動脈などの頭蓋外部分に粥状硬化があり,そこに付着した血栓がはがれて頭蓋内の末梢脳血管に流入し,そこを閉塞して症状が出現する.やがて血栓は溶解して症状が消失する.これを微小塞栓説(micro embolus)という.一方,古くから脳血管不全説があり,この考えで説明しうる症例もありうると考えるものもある.一過性脳虚血発作の症例でCTあるいは剖検でその症状に一致する梗塞巣が見出されることがある.TIAの約10〜20%の例は脳梗塞*に移行し,脳梗塞の前兆として重要である.脳梗塞の予防に抗血小板薬が用いられる.なお脳局所症状が24時間以上持続し,3週間以内に消失するものをリンドRIND*(reversible ischemic neurological deficit)という.

高血圧性脳内出血[コウケツアツセイノウナイシュッケツ]
【英】hypertensive intracerebral hemorrhage(HICH)
【独】hypertonisches Intracerebralh*matom
【仏】h*matome intrac*r*bral
《同義語》脳出血cerebral hemorrhage
脳血管障害の20%を占める.長期に持続する高血圧のために脳の細小動脈壁に類線維性壊死が起こり,壁が破綻し出血するとされている.また微小脳動脈瘤が発生し,それが破綻するとする説もある.好発年齢は60歳代である.出血の発生部位は大脳基底核視床部60%,大脳皮質下20%,小脳10%,中脳橋10%となっている.中大脳動脈*より出る外側線条体動脈の最外側枝は脳卒中動脈arteria apoplecticaと称されるほど破綻をきたしやすい.また基底核視床部に生ずる出血は内包を境にして外側型と内側型に分ける.外側型の方が1.5 /1で頻度が高い.〔診断〕突然に発症する意識障害*,片麻痺*などの神経脱落症状と高血圧の既往が参考になる.頭痛は出血が脳室からクモ膜下腔への流出があるさいに強度となるが,そうでない場合は脳梗塞*の場合と同じく伴わない場合が多い.確定診断には従来,脳血管写が用いられていたが,現在ではCTスキャンで確定的となる.出血巣は高吸収域として描出され,出血部位,広がり,進展方向,脳室穿破の有無などが明らかになる.脳実質内の高吸収域は出血の大きさにもよるが3週間ほど経過すると高吸収域から低吸収域と変化し徐々に吸収される.〔治療〕 原則的には保存的治療がなされ,出血の拡大防止,頭蓋内圧低下,全身合併症の防止,早期リハビリに向けられる.外科的治療の目的は救命である.血腫の量と一般に出血後1週間以内にピークとなる脳浮腫*とが相まって頭蓋内圧亢進*をきたして危険な状態となるので大きな血腫には血腫除去術が行われる.一般に基底核出血・皮質下出血では一つの径が4cm以上である場合,小脳出血では径が3cm以上である場合が血腫除去の対象となる.血腫除去の方法としては開頭による除去のほかに近年再び定位脳手術*による除去も試みられている.一般に径が5cm以上のもの,脳室内に穿破して鋳型を作っているものに関しては手術を行っても生命の予後は悪い.視床出血(内側型出血),橋・中脳出血は手術対象にはならないが,脳室に穿破したものでは血性髄液除去,髄液循環改善,頭蓋内圧低下の目的で脳室ドレナージ*が行われる

髄膜炎[ズイマクエン]
【英】meningitis
【独】Meningitis
【仏】m*ningite
【ラ】meningitis
《同義語》脳脊髄膜炎
髄膜は,硬膜,クモ膜,軟膜の3層よりなるが,髄膜炎とは,通常軟膜,クモ膜およびクモ膜下腔の炎症を意味する.病因により次のように分類される. 1)化膿性髄膜炎*purulent meningitis:化膿菌により起こり,急性の経過をとる. 2)ウイルス性髄膜炎*viral m.:急性の経過をとるが,一般に化膿性髄膜炎より程度が軽く,自然治癒することが多い. 3)結核性髄膜炎*tuberculous m.:亜急性の経過をとり,多くは肺結核巣からの血行性転移により起こり,粟粒結核に随伴することもある. 4)真菌性髄膜炎*fungal m.:クリプトコックスによるものが多く,カンジダ,アスペルギルスなどもある.全身消耗性疾患や免疫不全状態の患者に起こりやすく,亜急性の経過をとる. 5)その他:レプトスピラ性髄膜炎などである.各種髄膜炎の共通の臨床症状は髄膜刺激症状に頭蓋内圧亢進*症状が加わったもので,一般に発熱,頭痛,嘔気,嘔吐を訴え,ときに痙攣,意識障害あるいは精神症状が出現する.神経学的には項部硬直*, Kernig徴候, Brudzinski徴候を認め,症例により脳神経障害や脳巣症状を示すこともある.髄液所見は原因により異なり,化膿性髄膜炎では,外観は混濁ときに膿性,圧上昇,細胞数増加,とくに多形核白血球の増加,タンパク上昇,糖の低下を認め,ウイルス性,結核性,真菌性では細胞の種類は単核球が優位であり,ウイルス性では糖は低下しない.原因菌検索のため,化膿菌はグラム染色,結核菌は抗酸菌染色,真菌では墨汁染色を行い,菌の培養も必要となる.治療としては原因疾患に応じた療法を施行する.化膿性ではペニシリン系などの抗生物質,結核性では抗結核薬,真菌性では抗真菌薬を投与する.

化膿性髄膜炎[カノウセイズイマクエン]
【英】purulent meningitis
【独】eitrige Meningitis
【仏】m*ningite purulente
【ラ】meningitis purulenta
《同義語》化膿性脳脊髄膜炎
細菌感染による軟膜,クモ膜およびクモ膜下腔の炎症であり,主な原因菌は,髄膜炎菌*,肺炎球菌,インフルエンザ菌,レンサ球菌,大腸菌,ブドウ球菌などである.感染経路は,血行性,外傷性あるいは中耳,副鼻腔などからの波及などによる.病理組織学的には,脳槽や脳表の溝の部分に多形核白血球,マクロファージ,リンパ球などの炎症細胞や滲出液が認められる.臨床症状は,一般に発熱,頭痛,嘔気,嘔吐,痙攣,意識障害あるいは精神症状が出現し,神経学的には,項部硬直*,ケルニッヒ徴候*Kernig's sign,ブルジンスキー徴候*Brudzinski's signを認める.検査所見は,一般の炎症所見に加えて,髄液所見が重要である.髄液所見は,外観は混濁ときに膿性,圧上昇,細胞数増加,とくに多形核白血球の増加,タンパク上昇,糖の低下を認める.原因菌の検索のため,菌の培養,同定が必要となる.治療は,ペニシリン系などの抗生物質の全身投与が有効である.髄膜炎の後遺症として,髄液の吸収障害による水頭症や硬膜下水腫の出現に注意すべきである.

ウイルス性髄膜炎[ウイルスセイズイマクエン]
【英】viral meningitis
ウイルスによって引き起こされる髄膜炎*であり,無菌性髄膜炎*aseptic meningitisの大部分を占める.わが国ではコクサッキー,エコーなどのエンテロウイルスによるものが多いが,ヘルペスウイルス,アデノウイルス,パラミキソウイルス,ピコルナウイルス,トガウイルス,ブニャウイルス,アレナウイルスやHIVでも生じる(→HIV髄膜炎).まれではあるがアデノウイルス,サイトメガロウイルス,エプスタイン・バーウイルス,インフルエンザウイルス(A, B), 麻疹ウイルス, ムンプス,風疹ウイルス,パラインフルエンザウイルス,水痘・帯状ヘルペスウイルスによっても生じる.典型例では発熱などの一般の感染症状に加えて,頭痛,嘔気,嘔吐,髄膜刺激症状*(項部硬直*,ケルニッヒ徴候*)などを示すが細菌性髄膜炎*bacterial meningitisより軽度のことが多く,場合によっては髄膜刺激症状がはっきりしないことも多い.髄液所見では,単核球優位の細胞増多,軽度のタンパク増加を示すが,糖は減少しない.予後は,一般に良好である.

結核性髄膜炎[ケッカクセイズイマクエン]
【英】tuberculous meningitis
【独】tuberkul*se Meningitis
【仏】m*ningite tuberculeuse
【ラ】meningitis tuberculosa
結核症の一つとして,しばしば髄膜炎*が起こる.とくに,糖尿病などの基礎疾患をもち,感染に対する抵抗力の低下している症例などに起こりやすい.一般に,緩徐に発症する.髄液所見の特徴は,タンパク増加,糖の減少,単核球優位の細胞増多である.髄液から,染色標本や培養にて結核菌を証明して,確定診断が得られる.十分な抗結核療法を行う.

真菌性髄膜炎[シンキンセイズイマクエン]
【英】fungal meningitis
【独】mykotische Meningitis
【仏】m*ningite mycotique
真菌性髄膜炎は真菌感染による亜急性髄膜炎である.病原体としてはクリプトコックスCryptococcus neoformansによることが最も多く,その他カンジダCandida albicans,アスペルギルスAspergillus fumigatus,ムーコル菌などがみられる.臨床症状は徐々に発症し進行する頭痛,発熱,悪心,嘔吐,精神症状,さらに意識障害を認めることが多く,ときに局所症状を示す.髄液ではリンパ球増加と糖の減少が特徴的であり,結核性髄膜炎*との鑑別が困難であり,墨汁染色および培養により病原体を証明することが重要である.

頭蓋内圧亢進[トウガイナイアツコウシン]
【英】increased intracranial pressure
《同義語》脳圧亢進brain hypertension, Hirndruckssteigerung
脳脊髄腔の圧が高まることを頭蓋内圧亢進または脳圧亢進といい,以下のような原因により生ずる. 1)脳実質の増大(脳浮腫*), 2)脳循環血液量の増加(炭酸ガス分圧の上昇), 3)脳脊髄液の貯留(髄液流路閉塞,吸収障害,過剰分泌), 4)頭蓋内占拠性病変(腫瘍,血腫,膿瘍),5)原因不明のもの,などである.〔自覚的症状〕 1)頭痛:最も頻度が高いが,必発ではない.頭痛は早朝にみられることが多い(early morning headache). 2)嘔吐:嘔気を伴うことが多いが,嘔気を伴わず突然生ずることがあり,多くは噴出性projectileである. 3)視力障害:初期にはあまり自覚しない.一過性反復性の視力障害としてみられることが多い.頭蓋内圧亢進が長く続くと視神経萎縮を生じ,失明することがある. 4)複視:多くは外転神経麻痺により生ずる.動眼神経麻痺*によることもある.〔他覚的所見〕 1)うっ血乳頭:視神経乳頭が突出し,乳頭辺縁が不鮮明となる.乳頭周辺に網膜出血を生ずることがある. 2)眼球運動障害:一側の外転障害が多い. 3)意識障害:頭蓋内圧亢進に伴って意識障害の程度が進行する.テント切痕ヘルニアに陥ると昏睡となる. 4)瞳孔不同:テント切痕ヘルニアにより動眼神経が圧迫されて生ずる.同時に散瞳側の対光反射消失を伴う. 5)徐脈,血圧上昇,体温上昇:急激な内圧亢進により,視床下部や延髄が障害されて生ずる.

髄膜刺激症状[ズイマクシゲキショウジョウ]
【英】meningeal irritation sign
【独】Meningealreizerscheinung
クモ膜下出血あるいは各種髄膜炎による炎症などによって髄膜が刺激された時にみられる症候の総称で,項部硬直*,ケルニッヒ徴候*Kernig's sign,ブルジンスキー徴候*Brudzinski's signなどの徴候のほか頭痛,羞明,悪心・嘔吐その他がみられる.頭痛や意識障害を呈する症例には必ずこれら髄膜刺激症状の有無を検査することが大切であり,これを示す場合は脳炎*,髄膜炎*,クモ膜下出血*,脳出血(高血圧性脳内出血*)など髄液に異常がみられる疾患が大多数を占める

頭蓋内腫瘍[トウガイナイシュヨウ]
【英】intracranial tumor
《同義語》脳腫瘍brain tumor
頭蓋内に発生する腫瘍.脳実質のみならず,頭蓋内に存在する組織,すなわち骨,髄膜,血管,下垂体,脳神経,先天性遺残組織などから発生する原発性または転移性新生物をさす.寄生虫,結核などの肉芽腫*も頭蓋内腫瘍として取り扱うことがある.発生原因は現在のところ不明であるが,母斑症*の一部と網膜芽細胞腫*は遺伝因子が関与する.多数の頭蓋内腫瘍の分類があり統一されたものはないが,組織発生学的根拠に基づく分類が基礎となっている.最近はWHOの国際統一分類が提唱されている.神経膠腫*の頻度が多く(約40%),次いで髄膜腫*(約18%),下垂体腺腫*(約10%),神経鞘腫*(約10%)の順に多い.わが国と欧米の統計を比較すると,わが国において頭蓋咽頭腫*と松果体部腫瘍*の発生頻度が多い.頭蓋内腫瘍はあらゆる年代に発生するが,35〜55歳に好発する.頭蓋内腫瘍の症状は,頭蓋内腔の中で腫瘍が増大あるいは髄液流通障害による頭蓋内圧亢進*症状と腫瘍発生部位による局所症状である.頭蓋内圧亢進症状は, 1)頭痛, 2)悪心・嘔吐, 3)うっ血乳頭であり(三主徴),局所症状は,多くの場合は発生部位の脱落症状であるが,刺激症状として痙攣発作をきたす.発症からの経過は進行性である.〔診断〕 臨床経過および神経学的所見を基本とし,補助診断により確定される.補助診断としては,頭蓋単純撮影,CTスキャン,脳シンチグラフィ,脳血管撮影,脳波などがあるが,CTスキャンが最も有効である.最近では,MRI*が有用である.〔治療〕 基本的には手術による腫瘍摘除である.腫瘍の局在部位により根治手術が困難な場合は,放射線療法,化学療法が用いられる.〔予後〕 腫瘍組織により異なり,膠芽腫では5年生存率10%,星細胞腫50%であるが,髄膜腫,下垂体腺腫,神経鞘腫は80%以上と良好である.

神経膠腫[シンケイコウシュ]
【英】glioma
【独】Gliom
【仏】gliome
《同義語》グリオーマ
脳実質の神経外胚葉組織から発生した腫瘍の総称.原発性頭蓋内腫瘍の30〜40%を占め,最も頻度の高い脳腫瘍である.神経膠腫の分類は,1926年のBaileyとCushingによる組織発生学的分類により基礎が築かれた.彼らは神経膠腫を14に分類し,その名称は広く用いられている. Kernohanらは,臨床的悪性度を加味し,悪性度によりI〜IV度に区分する分類を提唱している.このほかにも多くの分類があるが,最近WHOによる国際統一分類が提唱されている.神経膠腫に含まれるものに,星細胞腫(アストロサイトーマ*astrocytoma),多形性膠芽腫glioblastoma multiforme,髄芽腫*medulloblastoma,脳室上衣腫*ependymoma,乏突起膠腫oligodendroglioma,脈絡叢乳頭腫choroid plexus papilloma,その他がある.星細胞腫は,全神経膠腫の20〜30%を占め,組織形態によりfibrillary, protoplasmic, gemistocyticの3型に分けられる.星細胞腫は,中枢神経系のどこにでも発生するが,大脳半球に好発する.良性から悪性までみられ,一般に正常組織との境界は不鮮明である.若年者では,小脳,脳幹部,視神経に好発し,fibrillary typeが多い.多形性膠芽腫は神経膠腫の約30%を占め,成人の大脳半球に好発し,最も悪性の腫瘍であり,手術,放射線,化学療法を併用しても,5年生存率は10%程度である.髄芽腫は神経膠腫の約10%を占める.組織発生学的に幼若なもので,悪性度は高く,小児の小脳に好発する.脳室上衣腫は5〜8%を占め,脳室壁から発生し,脳室内あるいは脳実質に進展する.部位的に第四脳室,第三脳室,側脳室の順に多い.若年者に好発する.乏突起膠腫は5%を占め,成人の大脳半球に好発する.緩慢に発育する腫瘍で,しばしば石灰沈着を伴う.脈絡叢乳頭腫は,頻度の少ない腫瘍で,小児の脳室に発生する.

髄膜腫[ズイマクシュ]
【英】meningioma
【独】Meningiom
【仏】m*ningiome
《同義語》メニンジオーマ
クモ膜顆粒*のクモ膜絨毛細胞から発生する.肉眼的に一部硬膜と癒着し,一般に球状の被膜を有し,脳とは明らかな境界を有する.頭蓋内腫瘍の約15%を占め,神経膠腫*についで頻度が高い.成人に好発し,やや女性に多い.好発部位は,傍矢状洞部,とくにその中央1/3および大脳鎌付近である.このほかに,蝶形骨縁,嗅溝,鞍結節部,小脳テント,小脳橋角部にみられる.まれに脳室内脈絡叢から発生することがある.髄膜腫は,頭蓋内のほかに,脊椎管内に発生し,神経鞘腫*とともに脊椎管内の硬膜内髄外腫瘍の大部分を占める.組織学的には,大部分の髄膜腫は内皮細胞型,線維芽細胞型,移行型に属し,ほかに血管芽細胞型,肉腫型があるが,数は少ない.経過は長く,徐々に脳を圧迫する形で増大する良性腫瘍であり,悪性の髄膜腫はまれである.〔症状〕 発生部位に対応する神経症状であり,側頭葉てんかん(精神運動発作*)やジャクソンてんかん*などの焦点性てんかんを初発症状とすることがある.〔診断〕 CTスキャンにより容易となり,限局した腫瘍像がよくみえ,増強CTによりびまん性の高吸収域となる.頭蓋単純撮影上,頭蓋骨内板肥厚,石灰沈着などの異常がみられる.脳血管撮影上の異常として,外頚動脈からの血流支配および腫瘍陰影が特徴とされる.〔治療〕 手術により付着硬膜を含めての全摘出が可能であり,その場合は根治できる.発生部位により,全摘出不能の場合も,発育が緩徐なため,有意義な生活をおくることが比較的長期にわたり可能である.

下垂体腺腫[カスイタイセンシュ]
【英】pituitary adenoma
【独】Hypophysenadenom
【仏】ad*nome hypophysaire
下垂体前葉細胞から発生する良性腫瘍.頭蓋内腫瘍の約10%を占め,好発年齢は成人(30〜50歳)で小児はまれである.従来,組織の染色により,嫌色素性腺腫,好色素性腺腫(好酸性腺腫,好塩基性腺腫)に分類されたが,下垂体ホルモン分泌による次のような分類が重要視されている.分泌性腺腫(プロラクチン分泌腺腫,成長ホルモン分泌腺腫,副腎皮質刺激ホルモン分泌腺腫,甲状腺刺激ホルモン分泌腺腫,性腺刺激ホルモン分泌腺腫,混合腺腫)および非分泌性腺腫.〔症状〕 視力障害,頭痛の圧迫障害と内分泌障害(腫瘍組織による下垂体前葉機能低下,および腫瘍組織より分泌されるホルモンによる機能障害)に大別される.〔治療〕 手術による腫瘍の摘除である.手術到達法としては,前頭開頭術と経蝶形骨洞到達法がある.プロラクチン分泌腺腫に対して,ブロモクリプチン内服が有効であるが,長期投与に関してはいまだ不明である.

神経鞘腫[シンケイショウシュ]
【英】neurilemoma, neurinoma
【独】Neurilemom, Neurinom
【仏】neurinome
シュワン腫schwannomaとも呼ばれ,線維性被膜に囲まれた良性の病変で,組織学的には紡錘形細胞と線維が豊富で核の柵状配列palisadingの目立つ成分(Antoni A型)と,細胞および線維に乏しい疎な部分(Antoni B型)とからなる.臨床的にはあらゆる年齢層に生じるが,20〜50歳に多い.頭頚部,四肢の伸側に好発する.後縦隔や後腹膜に発生することもある.通常は単発性であるがまれには多発し,フォンレックリングハウゼン病von Recklinghausen disease(神経線維腫*)に合併する場合もある.肉眼的には腫瘍は,神経鞘内に発生するため,神経外膜からなる被膜で囲まれている.大きな神経内に生じた場合は神経内に偏在性に存在する.腫瘍は通常は直径5cmくらいの大きさであるが,後腹膜や縦隔に生じた場合は相当に大きな腫瘤を形成する.大きな病変では嚢胞形成や石灰化などの二次的な変性が起こっていることが多い.組織学的には前述のようにAntoni A型とB型の像を有することが特徴であるが,A型のみからなる場合もある.前述のような核の柵状配列のほかに,細胞と線維のうずまき状の配列が特徴である.Antoni B型のところでは,嚢胞変性や不整の大きな血管や炎症細胞浸潤がみられ,時には腫瘍全体が血管腫のようにみえることがある.軽度の核異型や少数の核分裂像を伴う場合もある.電顕的には神経線維腫とは異なり,神経鞘腫はシュワン細胞のみからなる.腫瘍細胞には細長い突起が目立ち,細胞は基底膜で囲まれている.腫瘍細胞間にはしばしばlong-spacing collagenがみられる.免疫組織化学的にはS-100タンパク*陽性である.

転移性脳腫瘍[テンイセイノウシュヨウ]
【英】metastatic tumor of the brain, metastatic brain tumor
頭蓋内腫瘍*の約15%を占めるが,原発巣の治療成績の向上により,その頻度は増加している.脳転移を起こす悪性腫瘍の70%は癌であり,原発病巣で最も頻度の高い部位は,肺,次いで乳腺,胃,頭頚部,腎である.欧米では,胃癌*は少なく,悪性黒色腫*の頻度が多い.癌の中で脳に転移をきたしやすいものは悪性黒色腫, 悪性絨毛上皮腫であり, 肺癌*,乳癌*では約20%に,胃癌では0.5%に脳転移をきたすにすぎない.年齢では30〜60歳に多く,10歳以下では,肉腫や神経芽細胞腫*の転移がみられる.転移部位は,下垂体*を含む大脳*に多い.約2/3が多発性で,約1/3が単発性である.軟膜にびまん性に広がるびまん性髄液腔癌腫症の形をとる場合がある.臨床上の問題として,原発巣が明らかで脳転移が疑われる場合と,脳腫瘍として発現し,後に原発巣が発見される場合がある.脳転移の摘出により有意義な生活が期待される場合は,手術適応となる.
脊髄腫瘍[セキズイシュヨウ]
【英】spinal cord tumor
【独】R*ckenmarksgeschw*lste
【仏】tumeur de moelle *pini*re
【ラ】tumor medullaris(spinalis)
脊髄の周囲あるいは内部に発生した腫瘍の総称で,神経根あるいは脊髄の圧迫症状を呈する.初期には疼痛を示すが,腫瘍の増大とともに,しびれ感,歩行障害,排尿障害などの脊髄麻痺症状を呈するようになる.腫瘍の脊柱における横断面上の占拠部位から,髄内腫瘍intramedullary tumor,硬膜内髄外腫瘍intradural-extramedullary t.,硬膜外腫瘍extradural t.と分類される.また,脊柱管spinal canalの内外に及ぶものを砂時計腫*dumbbell shaped tumorと呼ぶ.病理組織学的には,髄内腫瘍には上衣腫ependymoma(脳室上衣腫*),アストロサイトーマ*astrocytoma,硬膜内髄外腫瘍には神経鞘腫*neurinoma, neurilemmoma,髄膜腫*meningiomaが,硬膜外腫瘍には転移性腫瘍metastatic tumor,悪性リンパ腫malignant lymphoma,癌腫などが多い.また,多発性腫瘍として,神経線維腫症*neurofibromatosisがある.腫瘍の発生年齢は,小児には少なく,大部分は青壮年にみられる.好発高位は胸椎部である.診断には,発生部位により特徴的な像(髄内腫瘍の脊髄腫脹像,硬膜内髄外腫瘍の騎袴状像,硬膜外腫瘍の筆の穂先状像)を呈するミエログラフィーにより診断される.最近は,核磁気共鳴画像(MRI*)により,早期に診断されるようになってきた.造影剤としてGD-DTPAを静注すると腫瘍の輪郭がより明らかになる.治療は腫瘍の全摘出術が原則であるが,境界不明瞭な髄内腫瘍では術後の麻痺の増悪を考慮にいれ切除範囲を決めるべきである.


パーキンソン病[パーキンソンビョウ]
【英】Parkinson disease(PD)
《同義語》振戦麻痺paralysis agitans, shaking palsy,特発性パーキンソニズムidiopathic parkinsonism
中脳黒質のドパミン作動性神経細胞の変性脱落によって,神経終末がある線条体でドパミン不足をきたし,錐体外路性運動障害が出現する変性疾患で,静止時振戦*,筋強剛,動作緩慢*・無動,姿勢反射障害を四主徴とする.とくに,親指と示指で丸薬をこねるような振戦*(丸剤製造様運動pill-rolling movement)は本症に特徴的である.他に,仮面様顔貌*,瞬目減少,脂顔,小声で早口,前傾で四肢を屈曲した姿勢,小刻み歩行,すくみ足,突進歩行,方向転換困難などが出現し,便秘や排尿障害,低血圧などの自律神経症状も合併する.高齢者では痴呆の頻度が高い.補充療法である(L)-ドパが著効し,ドパミン受容体刺激薬,抗コリン薬も有効である.病理学的には,中脳の黒質と橋の青斑核*のメラニン含有神経細胞の変性脱落と,残存神経細胞質内に出現する好酸性封入体(→レヴィー小体)が認められる.有病率は10万人当たり約100人である.病因は不明であるが,何らかの中毒物質の関与が推定されている.

ハンチントン病[ハンチントンビョウ]
【英】Huntington's disease(HD)
【独】Huntington-Krankheit
【仏】maladie de Huntington
《同義語》遺伝性舞踏病hereditary degenerative chorea
従来は,ハンチントン舞踏病Huntington's chorea,Huntington-Chorea,choree de Huntingtonという名称が用いられていたが,最近では,舞踏病症状が必発というわけでなく,ハンチントン病とされることが多くなった.本病は,1872年,Huntingtonによって,小舞踏病*chorea minorから区別されるものとして提唱された一疾患である.単純優性遺伝の形式をとる遺伝性変性疾患である.わが国での家系は欧米に比べはるかに少ない.30〜40歳代に発症し,手,四肢,顔,頚,肩などに舞踏様の不随意運動(ヒョレアchorea)がみられる.動きは緩慢で,振りも大きく,踊りを踊っているようにみえるので,舞踏病という名がつけられた.筋緊張は亢進し,協調運動の障害を伴う.不随意運動は全身に広がり,随意運動ができなくなるほど進行する.不随意運動に続発,あるいは先行して,精神症状が出現するのが特徴である.痴呆と人格障害*が目立ち,まとめて皮質下痴呆*ともいわれている症状を示す.抑うつ,不活発,無欲,投げやり,怠惰,易怒,衝動的となり,道徳感情が失われ,社会的逸脱行為を示す.判断力,抽象能力,見当識障害などもみられてくる.経過は慢性進行性で,10〜15年ののち,全身衰弱,合併症で死の転帰をとる.なお,以上の古典型のほかに,亜型として若年発症型,パーキンソン症候群(パーキンソニズム*)を主徴とする筋固縮型rigid form(あるいはウェストファール変異型Westphal's variant)が知られている.本病の主な脳病変は,線条体(尾状核,被殻)の著明な変性・萎縮である.その部の小形神経細胞が変性・消失し,線維性グリオーシスを示す.大脳皮質や白質も萎縮し,大脳皮質の神経細胞の変性・消失もみるが,細胞構築は保たれるなど,他の大脳皮質病変を主とする疾患とは異なった皮膚病変を示す.CTやMRI,あるいはSPECTやPETなどの画像検査によって,臨床的にもこの疾患の診断はより確実となった.線条体の変性に対応してGABA,P物質,エンケファリンなどの神経伝達物質の異常がみられる.本病の病的遺伝子の座が第4番染色体の長腕q16.3にあり,そこでCAGの3塩基配列の異常繰り返しがあることが明らかとなっている(George Summer Huntingtonはアメリカの神経学者,1862-1927).

ウィルソン病[ウィルソンビョウ]
【英】Wilson's disease
【独】Wilson-Krankheit
【仏】maladie de Wilson
《同義語》肝レンズ核変性症hepato-lenticular degeneration
肝硬変*,進行性錐体外路症状およびカイザー・フライシャー角膜輪*Kayser-Fleischer corneal ringを三主徴とする先天性銅代謝異常症である.常染色体性劣性遺伝形式をとり,男女両性に出現する.発症は,4〜60歳と幅広い.小児期には,肝障害や溶血をもって発症する肝型が多く,神経症状をもって発症する神経型や肝神経型は10歳以降にみられる.肝障害は,軽い黄疸・軽度の肝機能障害から腹水を認めるものまでいろいろの型をみるがいずれも進行性の結節性肝硬変となる.神経症状は,構音障害,特有の振戦などから始まり次第に歩行障害が出現し荒廃する.Kayser-Fleischer角膜輪は,肉眼的には10歳以降にみられ,神経型には必発といわれる.血清セルロプラスミンの低値,尿中銅排泄過多があり,生体内に過剰銅が蓄積するために諸症状を呈する.〔治療〕 キレート剤であるD-ペニシラミンが使用され,発症予防や治療が可能となっている.D-ペニシラミンの副作用も多く報告され,トリエンが使用されることもある(Samuel Alexander Kinnier Wilsonはイギリスの神経科医,1878-1918).

脊髄小脳変性症[セキズイショウノウヘンセイショウ]
【英】spinocerebellar degeneration(SCD)
【独】spinale cerebellare Degeneration
【仏】d*g*n*ration spinoc*r*belleuse
脊髄小脳変性症(SCD)は1954年にGreenfieldがそれまでの小脳性運動失調症cerebellar ataxiaや遺伝性運動失調症hereditary ataxiaなどをSCDの名のもとにまとめたが,現在に至るまで臨床病型に合致しない症例が出現し混乱に陥ってきた.SCDは疾患群の総称であり,単なる概念にすぎず疾患単位(病名)ではない.運動失調*,体幹運動失調truncal ataxia,協調運動*障害,小脳性言語障害,錐体路障害,眼振*や不髄意運動を主要な神経徴候とする.主要病変部位による分類では, 1)小脳型(小脳皮質に病変を有するHolmes型など), 2)脊髄小脳型(Menzel型オリーブ・橋・小脳萎縮症など), 3)脊髄型(Friedreich運動失調症,遺伝性痙性失調症hereditary spastic ataxiaなど)に分けられている.近年,分子遺伝学的研究の導入により遺伝性SCDを中心として従来の疾患分類が大きく変わりつつある.とくに遺伝性オリーブ・橋・小脳萎縮症(遺伝性OPCA)やMenzel型遺伝性OPCAとされてきた一群に認められる.1つは遺伝子座がSCA(spinocerebellar ataxia)1と命名され第6染色体短腕上6p22-23に決定されているもので,他の遺伝子座はSCA 2(脊髄小脳変性症2型)と命名され,第12染色体長腕12q23-24.1に決定されている.遺伝性OPCAに包含されてきたマシャド・ジョセフ病Machado-Joseph disease(MJD)も,わが国の家系の遺伝子座は第14染色体長腕(14q23.4-32)にあり,さらにフリードライヒ運動失調症Friedreich ataxia(フリードライヒ病*)では遺伝子座が第9染色体長腕の動原体側9q13-21に決定された.このように従来の臨床病型などから分子遺伝子解析に基づく病型分類の作成へと移りつつあり,SCD領域にも新しい動きが出現してきている.

脊髄(延髄)空洞症[セキズイクウドウショウ]
【英】syringomyelia(‐bulbia)
【独】Syringomyelie(‐bulbie)
【仏】syringomy*lie(‐bulbie)
脊(延)髄に液貯留が起こり,脊(延)髄が嚢胞性拡大をきたした状態.中心管と交通をもつ交通性と,交通のない非交通性に分類可能.交通性では第四脳室の出口の閉塞が先天性あるいは後天性に起こり,第四脳室と中心管が交通しており,髄液脈圧が中心管に伝達されて脊髄内水腫hydromyeliaになるが,上衣細胞が破綻すると傍中心管性syrinxが発生する.syrinxとは管とかパイプという意味で,中心管とは無関係.hydromyeliaの壁は上衣細胞.しかしこの説は非交通型や,中脳水道狭窄型にみられるsyrinxの説明にはならない.本症は頚部に多いが,延髄にあればsyringobulbiaとなる.診断は最近ではMRIやCT脊髄造影法で数時間後に造影剤(メトリザミドmetrizamide)がsyrinx内に取り込まれドーナツ型になる点に留意する.治療は第四脳室内中心管開口部に筋肉小片や他のprosthesisをつめたり,嚢胞とクモ膜下腔の短絡術を行う.

進行性核上性麻痺[シンコウセイカクジョウセイマヒ]
【英】progressive supranuclear palsy(PSP)
【独】progressive supranukleare Paralyse
【仏】paralysie progressive supranucl*aire
《同義語》スティール・リチャードソン・オルゼウスキー症候群Steele-Richardson-Olszewski syndrome
Steele, Richardson, Olszewski(1946)によって独立疾患として認識され,垂直注視麻痺,項部ジストニー,仮性球麻痺,錐体外路徴候,痴呆を主徴とする.男性にやや多く,40〜60歳代に,不安定な歩行,言語障害,性格変化などで徐々に発症する.特徴的なのは注視麻痺で,垂直注視,とくに下方視の障害が顕著で,進行すると側方注視も困難となる. oculocephalic reflexや人形の目徴候*が存在し,麻痺は核上性と考えられる.また頚筋のジストニー,固縮により頭部の後屈がみられる.体幹筋,四肢の固縮も存在する.中期以降には仮性球麻痺が出現し,軽〜中等度の痴呆も伴う.病理学的には淡蒼球,黒質などの大脳基底核,上丘,中脳水道周囲灰白質,橋被蓋などに神経細胞の脱落,神経原線維変化,グリオーシス,脱髄がみられる.原因は不明であるが,変性疾患と考えられている.有効な治療法はなく,徐々に進行性で,平均5〜6年で感染症,栄養障害のために死亡する.

アルツハイマー型痴呆[アルツハイマーガタチホウ]
【英】dementia of Alzheimer type(DAT)
初老期発症のタイプを最初に記載したアルツハイマー Alzheimerにちなんでアルツハイマー病Alzheimer's disease,高齢期発症のタイプを19世紀初頭のピネル以来の記載にならって老年痴呆senile dementia,あるいはアルツハイマー型老年痴呆senile dementia of Alzheimer type(SDAT)と称し,あわせてアルツハイマー型痴呆という.初老期では,40歳代後半から50歳代にかけ,高齢期では70歳代後半以降に発症し,記憶障害,意欲障害,判断障害,失語,失行,失認,人格障害,感情障害,鏡現象,クリューヴァー・ビューシー症候群Kl*ver-Bucy syndromeなどの症状が現れ,高度の痴呆におちいり,さらに,てんかん発作や筋固縮などの神経症状が加わり,最後は失外套症候群*を示し,寝たきりとなって死に至る脳の変性疾患である.脳の病理変化としては,老人斑*(アミロイドタンパク,βタンパク*の沈着),アルツハイマー神経原線維変化*,神経細胞消失がみられ,症状の進行とともに病変は高度となり,著明な脳萎縮(→脳萎縮症)をきたす.側頭葉内側部と側頭・頭頂・後頭葉接合部に病変が強い.病態として,アミロイドタンパク,βタンパクの異常かつ早期の沈着,神経細胞内のリン酸化タウタンパクの貯留が重要であり,またアセチルコリンなどの神経伝達物質の異常減少が背景にあることなどが明らかにされている.アルツハイマー型痴呆のなかに家族性アルツハイマー病familial Alzheimer disease(FAD)といわれ,親子,同胞に同疾患が多発する遺伝性のある一群があり,そこでは第14, 19, 21のそれぞれの染色体における遺伝子の異常が報告され,またアミロイドタンパクの前駆体タンパクにおけるアミノ酸配列の点変異(→点〔突然〕変異)の存在が証明されている.このように最近になって詳しい病態が明らかとなってきたが,絶対的な予防や治療は,なお,見いだされていない.現段階では,脳機能改善薬(脳代謝賦活薬,脳循環改善薬,神経伝達機能調整薬)を主体とした薬物療法,リハビリテーション,生活指導,ケアと看護などが治療の主流である(Alois Alzheimerはドイツの著名な精神医学者,1864-1915).

アルツハイマー型痴呆[アルツハイマーガタチホウ]
【英】dementia of Alzheimer type(DAT)
初老期発症のタイプを最初に記載したアルツハイマー Alzheimerにちなんでアルツハイマー病Alzheimer's disease,高齢期発症のタイプを19世紀初頭のピネル以来の記載にならって老年痴呆senile dementia,あるいはアルツハイマー型老年痴呆senile dementia of Alzheimer type(SDAT)と称し,あわせてアルツハイマー型痴呆という.初老期では,40歳代後半から50歳代にかけ,高齢期では70歳代後半以降に発症し,記憶障害,意欲障害,判断障害,失語,失行,失認,人格障害,感情障害,鏡現象,クリューヴァー・ビューシー症候群Kl*ver-Bucy syndromeなどの症状が現れ,高度の痴呆におちいり,さらに,てんかん発作や筋固縮などの神経症状が加わり,最後は失外套症候群*を示し,寝たきりとなって死に至る脳の変性疾患である.脳の病理変化としては,老人斑*(アミロイドタンパク,βタンパク*の沈着),アルツハイマー神経原線維変化*,神経細胞消失がみられ,症状の進行とともに病変は高度となり,著明な脳萎縮(→脳萎縮症)をきたす.側頭葉内側部と側頭・頭頂・後頭葉接合部に病変が強い.病態として,アミロイドタンパク,βタンパクの異常かつ早期の沈着,神経細胞内のリン酸化タウタンパクの貯留が重要であり,またアセチルコリンなどの神経伝達物質の異常減少が背景にあることなどが明らかにされている.アルツハイマー型痴呆のなかに家族性アルツハイマー病familial Alzheimer disease(FAD)といわれ,親子,同胞に同疾患が多発する遺伝性のある一群があり,そこでは第14, 19, 21のそれぞれの染色体における遺伝子の異常が報告され,またアミロイドタンパクの前駆体タンパクにおけるアミノ酸配列の点変異(→点〔突然〕変異)の存在が証明されている.このように最近になって詳しい病態が明らかとなってきたが,絶対的な予防や治療は,なお,見いだされていない.現段階では,脳機能改善薬(脳代謝賦活薬,脳循環改善薬,神経伝達機能調整薬)を主体とした薬物療法,リハビリテーション,生活指導,ケアと看護などが治療の主流である(Alois Alzheimerはドイツの著名な精神医学者,1864-1915).

ピック病[ピックビョウ1]
【英】Pick's disease
【独】Pick-Krankheit
【仏】maladie de Pick
アルツハイマー病(アルツハイマー型痴呆*)とともに,初老期痴呆*症を代表するもので,現在なお原因不明の変性疾患である.1892年,プラハ大学のPickによって特有の痴呆症状と限局性脳病変を呈した症例が報告され,のちに大成潔‐H. Spatzによってピック病と命名された.臨床的には,人格変化,意欲減退,判断力低下などの症状で始まり,加えて,感覚失語や語義失語などの言語障害,滞続現象,怠け思考,衝動行為,無関心,無為などの症状が現れ,痴呆が進行性に悪化し,末期には失外套症候群*様の状態となり,最後は合併症で死に至る.8〜10年の経過をとる.なお,経過中,記憶障害*は軽度であるのが特徴である.神経病理学的には,脳葉の限局性萎縮,萎縮部位の皮質神経細胞の消失とグリオーシス,皮質下白質の萎縮と硬化が存在するのが主病変である.アルツハイマー病にみるような老人斑*や神経原線維変化(アルツハイマー神経原線維変化*)のような老人変化は存在しない.残存した皮質神経細胞が腫脹し,あるいは胞体内に嗜銀性封入体がみられることがある.後者の所見をピック嗜銀球というが,必発の所見ではない.まれな疾患で,アルツハイマー病との比率は,1対100ほどの頻度であるといわれている.原因,詳しい病態もまだよくわかっていない.したがって,効果ある治療法もまだ開発されていない(Arnold Pickはプラハ大学の精神医学教授,1851-1924)

重症筋無力症[ジュウショウキンムリョクショウ]
【英】myasthenia gravis(MG)
神経筋接合部の興奮伝達ブロックにより,筋の脱力,易疲労性が生じる疾患で,自己免疫疾患*とされている.運動機能は末梢神経終末からアセチルコリンが分泌され,それがシナプス後筋線維膜に存在するアセチルコリン受容体タンパクと結合して終板電位を起こし,これが閾値に達すると筋活動電位が発生することで保たれている.本症においてはこのアセチルコリン受容体タンパクが障害を受けて減少し,そのために興奮伝達が阻害されている.症状としては眼症状が高頻度で,眼瞼下垂,外眼筋麻痺,複視がみられる.顔面筋,喉頭筋の症状も多く,嗄声,嚥下障害などをみる.四肢では肩,腰の筋の脱力が強い.こうした症状は少しの時間休養すると消失し,動作をくり返すと悪化する.また朝は比較的症状が軽く,夕方悪化することも多い.こうした症状の不安定性と休息による回復性が本症の特徴である.こうした特徴に加えて,誘発筋電図での活動電位の減衰,抗コリンエステラーゼ薬の有効性(テンシロン試験*),血清抗アセチルコリン受容体抗体価上昇などが確かめられれば診断は確定する.本症では胸腺肥大,胸腺腫の合併の頻度が高く,胸腺摘出が根治療法につながる重要な方法である.ほかに副腎皮質ステロイドや免疫抑制剤での治療法もあり,対症的には抗コリンエステラーゼ薬を用いる.急性増悪(クリーゼ)の際は呼吸管理が重要で,また血漿交換療法(プラスマフェレーシス*)が役に立つこともあり,予後は従来に比してはるかに良好である.

進行性筋ジストロフィー[シンコウセイキンジストロフィー]
【英】progressive muscular dystrophy(PMD)
【独】progressive Muskeldystropie
【仏】atrophie musculaire progressive
【ラ】dystrophia muscularis progressiva
進行性筋ジストロフィーとは「筋線維の変性・壊死を主病変とし,進行性の筋力低下をみる遺伝性疾患である」と定義されている.遺伝形式により表のように分類されている.この中で最も頻度が高いのはデュシェンヌ型筋ジストロフィー Duchenne muscular dystrophy(DMD)である.わが国では福山型先天性筋ジストロフィー Fukuyama type congenital muscular dystrophy(FCMD),ベッカー型筋ジストロフィーBecker muscular dystrophy(BMD)が次に多く,肢帯型筋ジストロフィー limb-girdle muscular dystrophy,顔面・肩甲・上腕型筋ジストロフィー facioscapulohumeral muscular dystrophyと続く.筋力低下や筋萎縮の分布,進行度は上記の疾患間で異なる.いずれの型も筋電図は筋原性,血清クレアチンキナーゼ(CK)値は上昇する.筋生検muscle biopsyでは筋線維の大小不同,壊死と再生,間質結合〔組〕織や脂肪〔組〕織の増加をみる.デュシェンヌ型のような進行が速いものでは呼吸筋,心筋が侵され,死の転帰をとる

筋萎縮性側索硬化症[キンイシュクセイソクサクコウカショウ]
【英】amyotrophic lateral sclerosis(ALS)
【独】amyotrophische Lateralsklerose
【仏】scl*rose lat*rale amyotrophique
【ラ】sclerosis lateralis amyotrophica
運動ニューロンの選択的変性がみられる,いわゆる運動ニューロン疾患*motor neuron diseaseの代表的疾患である.本症は中年以降に発症し,男性にやや多い.有病率は10万当たり2〜6とされているが,わが国では紀伊半島に,世界的にはグアムで多発している.原因は不明である.〔症状〕 二次ニューロン障害としての小手筋の筋力低下,筋線維束性攣縮,筋萎縮などから始まり,四肢筋に及ぶ.感覚障害はみられない.一次ニューロン障害としての深部腱反射亢進,Babinski徴候などの病的反射出現という錐体路徴候*が認められる.また,舌の萎縮,構語・嚥下および呼吸障害などの球麻痺*症状が出現する.〔予後〕 きわめて不良で,治療法はなく5年以内に球麻痺症状の悪化によって死亡する.最近は,人工呼吸器などの使用によって,呼吸管理が容易となり,延命が可能になった.1974年,難病(特定疾患)*に指定.

ギラン・バレー症候群[ギランバレーショウコウグン]
【英】Guillain-Barr* syndrome
【独】Guillain-Barr* Syndrom
【仏】syndrome de Guillain-Barr*
《同義語》感染性多発神経炎infective(infectious)polyneuritis,急性炎症性多発ニューロパシー acute inflammatory polyneuropathy
Guillain, Barr*,Strohlによって1916年,〔脳脊〕髄液cerebrospinal fluidのタンパク細胞解離を特徴とした予後良好な急性多発性神経根炎acute polyradiculitisとして記載された疾患.前駆症状として感冒様症状,あるいは下痢,腹痛などの腹部症状があり,その後1〜2週間ぐらいして急性に神経症状が発現し,1ヵ月以内に症状が完成し,以後しばらくプラトーの状態が続き,その後3ヵ月〜1年で徐々に回復し,多くは単相性の経過をたどる.神経症状の中心は,弛緩性の運動麻痺*で,深部腱反射は早期より消失する.顔面神経麻痺*,嚥下障害,構音障害*,深部感覚障害,自律神経症状(不整脈,洞性頻脈,血圧の変動,発汗異常)を伴う場合がある.臨床型として,急性脱髄型と急性軸索型があり,急性脱髄型は比較的予後は良好である.急性軸索型は,グラム陰性桿菌(Campylobacter jejuni, Penner 19型)感染が前駆することが多く,血清中に抗ガングリオシド抗体(GM(1), GD(1a))が出現し,症状は重症で回復が遷延することが多い.治療としては,血漿交換(免疫吸着immunosorbent technique)療法(プラスマフェレーシス*),高ガンマグロブリン大量静注法などが行われている(Georges Guillain, 1876-1961;Jean Alexander Barr*, 1880-1971はともにフランスの神経科医).

顔面神経麻痺[ガンメンシンケイマヒ]
【英】facial nerve paralysis, facial palsy
【独】Fazialisl*hmung
【仏】paralysie faciale
《同義語》ベル麻痺Bell's palsy
末梢性麻痺と中枢性麻痺に分けられる.前者の代表的なものはベル麻痺である.スコットランドの医師Bellが種々の原因による末梢性顔面神経麻痺を記載したため,古くは末梢性の顔面神経麻痺をベル麻痺と呼んだが,現在では病因が不明の「特発性」のものに限ってベル麻痺の名を用いるのが一般的である.末梢性顔面神経麻痺peripheral facial paralysisの病因として,外傷,新生物,感染症(中耳炎*,乳様突起炎*,脳炎*,髄膜炎*,骨髄炎などに続発するもののほか,帯状疱疹*,単純ヘルペス,ポリオ,ハンセン病*などの直接的感染),肉芽腫(サルコイドーシス*など),血管障害(多発性動脈炎*,糖尿病*など),脱髄性(ギラン・バレー症候群*)などが知られるが,日常もっとも多く経験するのは病態不明のもの,すなわちベル麻痺である.ベル麻痺はしばしば一側の顔面に寒冷刺激が加わった後に発症する.このため,顔面神経自体の循環障害を生じたり,細い骨性の顔面神経管内で浮腫が生じたりすることが原因として考えられているが,証明はない.単純ヘルペスの活性化によるとの説もある.ベル麻痺は男女,性を問わず,また特別の発症季節もなく発症する.急性の一側性の全表情筋の麻痺を主徴とし,これに同側の味覚低下,涙腺分泌障害,アブミ骨筋麻痺による聴力過敏を伴うことがある.予後は比較的良好で,50〜80%の症例はほぼ完治する.ときに再発する.両側同時に発症する顔面神経対麻痺facial diplegiaはギラン・バレー症候群Guillain-Barr* syndromeの一型であることが多いとされる.中枢性麻痺(核上性)は脳血管障害などでみられ,前頭筋が侵されないのが特徴的である.顔面筋の随意収縮時は麻痺がないのに,笑ったときなど情動発現時のみにみられる麻痺はmimetic facial palsyと呼ばれ,対側側頭葉損傷時などにみられる(Sir Charles Bellはイギリスの解剖学者,1774-1842).

ハント症候群[ハントショウコウグン]
【英】Hunt syndrome
【独】Hunt-Syndrom
【仏】syndrome de Hunt
《同義語》ラムゼイハント症候群Ramsay Hunt syndrome, dyssynergia cerebellaris myoclonica, facial paralysis with herpes zoster of ganglion geniculi
ハントにより報告された症候群である. 1)1921年, Huntは進行性小脳失調症とミオクローヌスてんかんの合併例をdyssynergia cerebellaris myoclonicaとして報告しRamsay Hunt症候群と呼ばれている.常染色体劣性の遺伝様式で小児期に発症し,企図振戦,動作時ミオクローヌスおよび運動失調がみられ,しばしば全身痙攣を伴う.病理学的には歯状核と上小脳脚の変性が著明である.つぎに 2)耳介,外耳道や口腔内の帯状疱疹,外耳道および顔面深部の痛み,および末梢性顔面神経麻痺facial paralysis atalgiaを伴うものもRamsay Hunt症候群と呼ばれている.この場合は膝神経節が帯状疱疹herpes zosterにより侵されている. 3)Huntは進行性淡蒼球変性症progressive pallidal degenerationについても研究しているが(1917),これはHunt症候群とは呼ばれていない(James Ramsay Huntはアメリカの神経学者,1872-1937).
最終更新:2007年09月07日 07:52