教えてくれ
教えてくれ
俺のこの気持ちはどこへやればいいのか
忘れろと言うのか
捨て去れと言うのか
持っていてはいけないものなのか
なぜだ
何故だ
なぜ


俺は平凡な家庭に生まれ
平凡な両親から愛を受け
平凡に育ち
平凡な友人たちとともに
平凡な大人になった
そして平凡な妻を娶り
平凡な子供を授かった

でもそれは
周りから見た俺の境遇であり
俺自身の感想とは違う

俺にとってはこうだ

俺はとても幸せな家庭に生まれ
とても尊敬する両親から特別な愛を受け
両親に恥じないように成長し
かけがえの無い友人たちとともに
頑張って大人になった
そしてとても素敵な女性を伴侶とし
とても素晴らしい娘を授かった

でもそれはこの国では
誰もがそう感じていることであり
俺が特別だと言うわけではない
しいて言うならみんなが特別なのだ

だから俺は平凡であり
みんなも平凡なのだ

でも
それでも
俺は幸せだった
家族もみな幸せなはずだった

だが
ある日を境に
それは一変した

両親を奪われ
友を奪われ
妻を奪われ
子を奪われた

俺が
俺だけが残されてしまった

なぜ
何故だ

俺は何もしていない
ただ生きてただけだ
自分のため、家族のため、友人のため
ただ幸せであるために
生きていただけだ

何故だ
なぜなんだ
誰か答えてくれ!


俺一人がそんな境遇なのではなかった
周りも同じような状況だった
誰も彼も
理不尽に平凡を奪われていた
幸せを奪われたのだ

湧き上がる気持ちがある
抑えきれない衝動もある
これが怒りか
これが悲しみか
これが悔しさか
これが憎しみか


何も出来なかった自分が
奪っていった奴等が
何も出来なかった奴等が

全てが・・・!


『憎しみからは何も生まれない』
そんなことは知っている
両親が教えてくれた

『悔やんでばかりでは前に進めない』
そんなことは知っている
友が教えてくれた

『悲しんだままでは幸せはやってこない』
そんなことは知っている
妻が教えてくれた

『怒りでは何も解決しない』
そんなことは知っている
娘が教えてくれた

だが
こみ上げてくるこの想いは
怒りは
悲しみは
悔しさは
憎しみは

どうすればいい
どこにぶつければいい
どうすれば!


『忘れなさい』
と人は言う

『捨て去りなさい』
と人は言う

『持っていてはいけない』
と人は言う

無理だ
無理だ
無理なんだ

忘れてしまえば全てを忘れてしまいそうで
捨て去ってしまえば全てを捨て去ってしまいそうで
持っていなければもう何も持てなくなりそうで

前に進めない
立っていられない
『俺自身』を維持できない

怖い
怖い
怖いんだ


教えてくれ
教えてくれ

俺はどうしたらいい
俺は何をしたらいい

俺は弱い
俺は強くない

忘れることが出来るほど
捨て去ることが出来るほど
持たずにいられるほど

弱いんだ
強くないんだ

俺がどうすればいいのかを教えてくれ
俺が何をすればいいのかを教えてくれ

今のこの気持ちでは
自分では何も考え付かない
考えられない

誰か
誰か

誰か俺を
俺たちを
助けてくれ
救ってくれ
俺が俺らしく生きるために
俺たちが俺たちらしく生きられるために
みんながみんならしく生きていけるように

でないと
俺は

おかしくなってしまう!!


あのころに帰りたい
それは無理なことだ
俺が誰かと代わりたかった
それは無理なことだ
あんなことが起きなければよかった
それは無理なことだ

今生きているということが
過去にあった全てを肯定している

いいことだけを思い出して生きる
それは現実を見ないこと
悲しいことだけを糧にして生きる
それは現実を見ないこと

過去にこだわらず
囚われず

理屈ではわかっている
感情が追いつかない
どうすればいい
どうしたらいい

愛する子らのために戦った結果
愛する子らを失うことになり
もう同じ思いはしないと
強く心に誓い
この国を建てた建国の祖たち

彼らはどうやってこの怒りを抑えたのか
悲しみを乗り越えたのか
悔しさをこらえたのか
憎しみを止められたのか

教えてくれ
教えてくれ

俺はこの気持ちに
どうやって決着を付ければいいのか!


誰か!!
最終更新:2011年06月28日 23:33