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ごあいさつ

 私どもではここに、東京大学大学院情報学環が世に輩出しつつある新進気鋭のメディア・スタディーズの若手研究者たちが、今、全力で取り組んでいる研究を発表する新たなる学問のアリーナの立ち上げをご案内させていただきます。
 ご承知のように、東大社会情報研究所と同情報学環が合併をしたのは2004年のことでした。情報学環は文理融合の旗印の下、次々に新しいプロジェクトに取り組み、横型の大学院組織として順調に発展してまいりました。この間、私どもでも、「カルチュラル・タイフーン」「戦争とメディア」「ユビキタス・メディア」など、様々な新しい試みに関与してまいりましたが、他方、情報学環の大学院では、次世代のメディア研究を担って立つ実力を備えた若い研究者たちが育ってもきました。
 私どもがここに立ち上げようとしておりますのは、そのような新しい世代が、メディア研究や社会学の分野で重要な研究をしてこられた諸先輩、同世代の若手研究者、後輩の学生たち、出版社の編集者のみなさんやジャーナリズムや文化の実践に携わられているみなさんに向けて、メディアをめぐる最先端の研究成果を、自信をもって発表する学問的挑戦のアリーナです。
 今日、メディアやコミュニケーションをめぐる社会学や人類学、歴史研究、カルチュラル・スタディーズなどの分野は、ますますその重要性が増していますが、日本の大学教育のシステムの中ではしかるべき位置を占めてはいません。研究者も、若手人材も、様々な大学で異なる名称の異なる組織に分散しています。日本の国立大学では画期的な文理融合組織である情報学環でも、メディアの社会学、人類学、歴史研究、カルチュラル・スタディーズなどを志している若手研究者は部分集合で、必ずしも情報学環全体を代表するわけではありません。
 しかし、私どもは、現在の情報学環の大学院博士課程の中に、次世代の日本のメディア研究、その社会学や歴史研究、カルチュラル・スタディーズの中核を担っていく若手がいると確信しています。そのような若手研究者の優れた研究を世に問うていくことは、現在の日本のメディア研究の前線がどこにあり、いかなる将来性を有しているのかを、多くの同世代の大学院生や学生、メディアの研究に従事している人々に示し、新たな議論や知的冒険の機会を生んでいくこととなりましょう。
 今後、ここで取り上げていこうとしているのは、主に以下のようないくつかのテーマの研究です。

(1)近代日本、及び東アジアにおけるメディアとコミュニケーションの社会史に関する歴史社会学的研究
(2)トランスナショナルな文化消費とオーディエンス(ファン)に関するカルチュラル・スタディーズ
(3)情報(インターネット)社会と文化形成ないしは知識創造の公共的基盤に関する社会学的実践研究
(4)視覚表象(広告、映画、テレビ、ネット動画等)の構造と新しい知の公共的基盤に関する研究

 このアリーナでは、情報学環の大学院博士課程において、社会学やメディア研究、カルチュラル・スタディーズの流れのなかで展開されている実力派の研究を、次々に発表していくことにします。当面は、吉見俊哉、北田暁大等のゼミに在籍している博士課程院生を中心に始めますが、徐々にこの環を広げていきたいと思っています。
 みなさまにおかれましては、ご多忙とは存じますが、メディア研究の分野で、情報学環の若手の中からこんなに新しくて魅力的な人材が育ちつつあるのだということを知っていただくためにも、ぜひこの場に足をお運びいただきたく、心よりお願い申しあげる次第です。

東京大学大学院情報学環 吉見俊哉
北田暁大
(メディア学フロンティア・芽の会 アドバイザー)


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