散るは花












すっかり夜も更けた頃、真選組の屯所内に緊張が走った。


「攘夷志士だあーーー!!!」


過激派の攘夷浪士が真選組の屯所の近くで暴れているとの一報が入り、全員が慌ただしく廊下を走っている。

操も心持ち緊張していた。

怪我人が運ばれて来るかもしれないと、すぐに対応出来るように準備を急ぐ。

診察室の中をぐるりと見渡す。

沖田は夕方にはすっかり具合が良くなり、診察室からはもういなくなっていたので、恐らく戦闘に出たはずだ。


どうか皆が無事に戻ってきてくれますように。


そう祈るばかりだった。










どれくらい時間が過ぎたか、人気のなくなった屯所に少しずつざわめきが戻り始めた。

バタバタと近づいて来る足音に、操はぐっと力を入れる。


「先生っ! 怪我人ですっ!」


来た!


操は冷静に立ち上がった。

ドアが開けられ数人がなだれ込んで来る。


「取りあえず怪我人のおおよその人数を教えてください」

「10人ほどです!」

「一番酷い人は?」

「先生!!」


廊下の向こうから人を担いで走って来る隊員が、必死に操を呼ぶ。


「土方さんがっ!」


ドクン!


ドキリとした。

担がれているのは土方で、真っ青な顔をしている。


「やられそうになってる仲間を助けて、肩をっ!」

「こちらへ」


どうやら一番土方の怪我が酷いようだ。

操は素早く手当をする順番を決め、無傷の隊員達に処置の指示を与えた。

そして土方をベッドに座らせ、急いで両腕を消毒し手当を急ぐ。


「服を脱がせてください」

「はい!」

「それから全員カーテンの向こうに出ていてください。傷を縫います」

「は、はいっ!」


服を脱がされた土方が、情けないといった顔で操を見上げた。


「ハッ……ドジ踏んじまった……」

「しゃべらないでください。麻酔をします」

「っ……」


操の腕は確かだった。外科医として江戸でも名の知れている操は、元々大病院から引き抜きが来ていた。

それを蹴って町の診療所で働いていたのは、本当に治療の必要な人たちの力になりたかったからだ。

大きな病院ではしがらみが付いて回る。

手術の順番を地位や名誉で決めるなど、操には耐えられなかった。

自分のやり方で医療に携わりたかった。

真選組に来ることになったのは願っていた訳ではなかったが、やるからにはしっかりと自分の責任を果たしたい。

銀時の反対はそれはもう凄まじかったが、それでもここに来て人の役に立てるのは嬉しかった。

気がかりなのは攘夷浪士達。

こうやって真選組の隊員が傷ついているという事は、浪士達も怪我をしているという事。

そこには幼い時を共にした桂や高杉がいるかもしれないのだ。


一体いつまでこんな争いが続くのだろうか。







「よし、終わり……」


綺麗に縫い合わされた土方の傷にガーゼをあて、包帯で止めて行く。


「もう大丈夫ですよ。傷はしばらくすれば綺麗に治ります」


操が言うと、土方は目を伏せた。


「すまねえ」

「しばらく禁煙ですからね」

「……ちっ」


力なく舌打ちをした土方に安心すると、操はすぐに他の怪我人の手当へと向かった。










                               続く…






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