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    <title>チェンジ・ザ・ワールド☆</title>
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    <description>チェンジ・ザ・ワールド☆</description>

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    <item rdf:about="http://www28.atwiki.jp/streetpoint/pages/888.html">
    <title>act.12（春日）</title>
    <link>http://www28.atwiki.jp/streetpoint/pages/888.html</link>
    <description>
      &amp;sizex(6){就職難民　黙って俺についてこい！}









　
　春日さんの病院へ戻って来た。

　けど、何だか足が重たい。

　目の前の扉を一瞥し、すうっと息を吸い込んでノックする。


「はい」


　と春日さんの返事が聞こえ、ゆっくりと病室に入った。


「気分はどうですか？」

「―――あんたの顔見るまではそこそこ良かったけど」

「そうですか……」


　くっ、ムカつく……


「で？　仕事はどうなったの？」

「あ、はい。無事に契約取りました。うちの製品を大々的に売り出してくれるそうです」


　―――あれ？　何か言われると思ったけど、何も無し？

　じっと春日さんの顔を見つめていると、しばらく黙っていた春日さんがいきなり顔を上げて目を丸くさせた。


「ほ、本当に？」

「はい、頑張りました！」


　やった、びっくりしてる。そりゃそうよね、なんせ私自身一番びっくりしたんだもん。


「―――あんた」

「はい？」

「その書類見せて」

「あ、はい」


　まだ信じられないのかしら？　まあ、無理も無いけど、もう少し私の事信じてくれてもいいと思うのは私だけ？

　パラパラと書類をめくり、内容を確認すると、春日さんはページをめくる手を止めて深いため息を吐いた。


「あの、何かまずかったですか？」


　私の問いにも無言で書類を差し出して、バサリと布団を被って横になってしまった。

　何か失敗したの？　もしかして……？

　ドキドキと緊張を走らせていると、春日さんがボソリと言った。


「よくやったんじゃない？」


　え……？　聞き間違い……じゃないよね？　今、『よくやった』って、春日さん言った―――

　嘘、初めて褒められた！！！


「あっ、ありがとうございます！！」


　思わず大きな声になる。


「うるさい。僕は休む……ああ、何か入院手続きしろって言われたけど、保険証家なんだよね。あんた持って来てよ」

「え？　私が？　いいんですか？」

「他に暇な人間いないし、仕方ないからあんたに頼んでんの。適当に着替えも持って来て。……これ、僕のマンションの鍵。住所はそこにメモしておいたから、よろしく」

「はい……」


　てっきり“あんたにだけは頼まない”とか言われると思ってたから、私は拍子抜けした。


「それじゃあ、行ってきます」


　無言でもう何も言ってくれない春日さんの病室から出て、私はマンションへと急いだ。
















　すごく綺麗なマンションで、部屋もきちんと片付けられている。男の人の一人暮らしにしては広過ぎる気がするけど、窓からの眺めがとても綺麗だ。


「すごいなあ、こんな高級マンションに住めるくらい、稼いでるんだ。テーブルもちょっとアンティークっぽいし、本棚とか机もセンス良い感じ。台所も広くて片付いてるっぽいし、すご〜い。彼女さんきっとすごくマメな人なのね……おっと、保険証と着替えっと」


　メモに書いてある引き出しに保険証を見つけ、次は申し訳なく思いながら着替えをバッグに詰める。

　男の人の下着に触るなんて、お父さん以外で初めてだよ。うう、何か見ちゃいけないのに見てしまう……お父さんのと違ってお洒落なんだなあ。今度お父さんにお洒落なパンツプレゼントしてあげよう。

　―――あ〜もう！　何でこんなにやらなきゃいけない事から脱線しまくってるのよ！！

　春日さんの彼女さんって、どんな人なんだろ？　春日さんが可愛らしい顔立ちだから、お人形さんみたいにふわふわ柔らかそうな人かな？　それともバリバリ仕事をこなして春日さんとも対等に戦うようなキャリアウーマンみたいな人かな？　――まあ、間違いなく面食いだろうから、彼女さんは美人に違いないわね。


　……なんで私自分で考えててちょっと傷ついてるの？　べ、別に春日さんはただの上司で、私の事を邪魔者の虫けらくらいにしか思ってないのに。そりゃあ確かに顔は可愛いし仕事もできるけど、無理無理無理！　……はっ！？　ってか私のバカ！！


　突如浮かんだ思いを振り払うように、私はブンブン！　と大げさに頭を降った。――ちょっとクラクラする。


「とにかく、早く病院行かなきゃ！」


　荷物をまとめ、私は急いで春日さんのマンションを出た。

　何だかあまり長居していると、余計に春日さんやまだ見ぬ春日さんの彼女の事とか、色々と考えて傷つきそうな気がした。









次へ　→　[[act.13（春日）]]




お帰りの際は、窓を閉じてくださいv
&amp;link(お話はこちらに戻る){http://www19.jimdo.com/app/sd5d45984515212ef/p6dc026a38c980a7b/}    </description>
    <dc:date>2012-05-26T14:31:44+09:00</dc:date>
  </item>
    <item rdf:about="http://www28.atwiki.jp/streetpoint/pages/887.html">
    <title>act.11（春日）</title>
    <link>http://www28.atwiki.jp/streetpoint/pages/887.html</link>
    <description>
      &amp;sizex(6){就職難民　黙って俺についてこい！}









　
　私って意外とやるんじゃない！？


「ありがとうございました。よろしくお願いします！」


　取引先との話し合いはなんと大成功を修め、満面の笑顔で頭を下げている。


「秀麗さんからも新製品の営業にこられたんですけど、美成堂さんの方が商品に対する自信と良さが伝わって来ました。全面的にうちでも美成堂さんの新製品を売り出させて頂きます」


　なーんて言われちゃった。ライバル会社の秀麗より一歩先を行ってるって感じ！














　ほくほくで帰社すると、部長に呼び出された。


「よくやった、これでひとまず安心だ」

「ありがとうございます。私もほっとしています」

「お前、今日はもう仕事あがっていいから、春日のマンションに行って必要な物を病院に持って行ってやれ」

「え？」

「あいつの家族は来られないから、お前が代わりに世話をしてやれ。春日がいないとどうも安心できんからな。早く退院してもらわんと」

「お医者さんの話では２、３日入院すれば大丈夫という事だったので、そんなに心配されなくても大丈夫と思いますけど……それに、私春日さんのマンションなんて知りませんし」


　まあ、今日の事を報告には行くつもりだったから様子見て来いならいいけど、春日さんのマンションに行って勝手に荷物持って行けだなんて無理にきまってるじゃない！


「２、３日でも入院は入院だ。病院から入院の手続きをしたいから保険証なども持って来て欲しいと言われている」

「それは分かりますけど、女の私が着替えを持って行くより、男性が行った方がいいんじゃないですか？」


　き、着替えなんてはずかしくて無理！　絶対無理！！


「それに、春日さんもきっと男性の方がいいですよ！」


　必死に訴えるけど、部長はあまり聞いてくれてない。電話が鳴ってそれに出ながら、


「取りあえず一度病院に行ってくれ。――はい、美成堂営業部です」

「そ、そんなぁ」


　周囲を見回してもほとんど人はいなくて、まあ、営業部だから営業回りに出てる人ばっかりだから仕方ないんだけど……。さっきまで一緒に営業に行っていた男性社員も別の会社に出かけていない。


「―――はあ。どうせ春日さんに他の人に行ってもらうからいい。とか言われるんだし、取りあえず病院行こ」


　肩を落とし、私は営業部を後にした。









次へ　→　[[act.12（春日）]]




お帰りの際は、窓を閉じてくださいv
&amp;link(お話はこちらに戻る){http://www19.jimdo.com/app/sd5d45984515212ef/p6dc026a38c980a7b/}    </description>
    <dc:date>2012-05-26T14:28:26+09:00</dc:date>
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    <item rdf:about="http://www28.atwiki.jp/streetpoint/pages/886.html">
    <title>act.10（春日）</title>
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    <description>
      &amp;sizex(6){就職難民　黙って俺についてこい！}









　
　翌朝、私は会社に出社して背筋が凍り付いた。

　何故なら、春日さんが今朝早く倒れて病院に運ばれたと言うのだ！


「そ、そんな。春日さん、大丈夫なんですかっ！？」


　同じ営業部の人に詰め寄る。けど、誰も詳細は分からないらしい。

　ど、どうしよう！　今日も営業のはずなのに、春日さんいないなんて！　他の人が代わりに行くの？　いや、そうじゃなくて、春日さん大丈夫なの！？

　頭の中は混乱しっぱなし、誰に助けを求めたら良いかも分からない。部長？　そうだわ、営業部には部長っていう偉い人がいるじゃない！

　私は急いで部長の元へ行く。


「おはようございます、部長。あの、春日さんが病院に運ばれたと聞いたのですが……」


　私はどうしたらいいでしょうか？

　と尋ねる前に、こちらも随分慌てた様子の部長が私の顔を見て両肩を掴んだ。


「葉月君。きみ、急いで病院まで行って春日の様子を見て来てくれ！」

「はっ！？」

「今日君達が行く予定の取引先はかなりの大手なんだ。春日がいないとまずい！　様子を見て、行けそうなら引きずってでも連れて行ってくれんか！？」

「そんな！　無茶苦茶です！　と、取りあえず病院に行ってきます！！」


　酷いわ部長！　倒れて病院に運ばれた春日さんより、取引先との契約の方が大事だって言うの！？















　会社を出てタクシーを拾い、教えられた病院へと急いだ。受付で春日さんがいる場所を聞き、病室へと今度は小走りに急ぐ。


「あの、すみません。こちらに春日雅さんが運ばれたと伺ったのですが……」


　ドアから出て来た看護士さんを捕まえて尋ねると、優しく微笑んでこう言った。


「春日さんのご家族の方ですか？　随分と無理をされていたみたいで今は眠っておられますけど、しばらく休めば大丈夫ですから安心してくださいね」

「はあ、中に入っても大丈夫ですか？」

「ええどうぞ」


　家族に見えるかな？　似てないのに。

　そんな事を考えて遠慮がちにノックをする。男性の低い声で返事が返って来て、私は静かに中に入った。

　中には白衣を着た先生がいて、ベッドの上には春日さんが横になっている。顔色が真っ白だ。


「ご家族の方ですか？」

「い、いえ。春日の部下です……」

「会社の方ですか」

「あの、春日はどうして救急車で？」

「出社途中に駅のホームで倒れたみたいですね。診察した所、かなり無理をしていたみたいです。いわゆる過労です」

「過労？」

「寝不足と栄養不足です」

「酷い病気とかじゃないんですね？」


　良かった―――。でも、過労だなんてそんなに無理してお仕事してたんだ。

　私がほっとしたのが分かったのか、中年のお医者さんは点滴をいじって小さく頷く。


「２、３日入院して休養を取れば大丈夫。ご家族に連絡出来ますか？」

「あ、はい。会社の方に頼みます」

「お願いします。ではまた後で様子を見にくるので」

「ありがとうございました」


　病室を出て行くお医者さんにペコリと頭を下げ、春日さんのベッド脇に立ってその姿を見つめる。

　労働基準法違反じゃないの？　あの鬼社長、春日さんをこき使ってたのね。

　なんだか無性に腹が立つ。と、その時春日さんがうっすらと目を開けた。


「春日さん、大丈夫ですか？　分かりますか？」


　私の問いにこちらに顔を向け、驚いたように目を見張る。


「あんた、なんで？　て、ここどこ？」

「ここは病院です。春日さん出社途中に倒れて、救急車で運ばれたんですよ」

「―――あ」


　思い出したらしく、春日さんは顔をしかめてベッドから起き上がろうとした。


「ちょっと、まだ動いちゃ駄目ですよっ！」

「こんな所で寝ている場合じゃない。今日は大事な取引があるんだから。今何時？」

「駄目です！　さっき先生が過労だって言ってました、春日さんお仕事頑張り過ぎなんです！　２、３日休んで下さい！　今日の取引は他の営業の方と行って来ますから！」


　本当にこの人なに考えてるの！？　倒れた直後なのにもう仕事！？


「僕が行かなきゃ今日の仕事はうまく行かないんだ。あんたと他の人じゃ無理」

「どうして無理なんて分かるんですか！　私、一生懸命頑張りますから！　春日さんのお役に立ちますから！　やる前から無理だなんて決めつけないでくださいっ！！　少しは周りの人間も信用してください！！」


　冗談じゃないわ！　無理してまた倒れたらどうするつもりなの！？


「仕事のし過ぎです！　春日さんが過労死なんて事になったら、私は誰に仕事を教わればいいんですか？　お願いだから、休んで下さい……」


　や、やだ。涙が出て来た。

　ぐいっと手の甲で涙を拭い、春日さんを睨みつける。

　しばらく無言で私の顔を見ていた春日さんは、必死さが伝わったのか観念したようにため息を吐いた。


「……はあ。分かった。僕も今日は動けそうにないし、あんたに任せる。―――けど、もしも取引失敗したらもう二度とあんたの面倒は見ないから。そのつもりで営業に行って来てよね」

「はいっ！　頑張ります！　死にものぐるいで仕事取って来ます！！」


　良かった！　取りあえず大人しく寝ててくれるのね！　後は部長に連絡して、春日さんのご家族に伝えてもらわなきゃ。


「私、会社に戻ります。ご家族に連絡するように伝えますから、寝てて下さい」

「そんなのいいから、さっさと仕事に行ってくれる？　取引先の会社の担当者と会う時間が迫ってるから」

「はい」


　そんな事分かってるもん。もうちょっと言い方ってもんがあるでしょう？　本当に顔と正反対の性格なんだから。
　

「それじゃ、行ってきます」


　すぐに病院を後にし、部長に連絡をする。

　と、春日さんの実家はここから随分と遠いらしく、連絡はするけど来られないだろうという事だった。

　春日さんって一人暮らしだったんだ。男の人の一人暮らしじゃ、栄養不足になってもおかしくないよね。あ、でもきっと彼女とかいるだろうから、やっぱり仕事が忙しくて疲れが溜まってるのよ。

　取りあえず部長にお願いして他の営業で時間のある人を寄越してもらうようお願いし、私は取引先へと向かった。








次へ　→　[[act.11（春日）]]




お帰りの際は、窓を閉じてくださいv
&amp;link(お話はこちらに戻る){http://www19.jimdo.com/app/sd5d45984515212ef/p6dc026a38c980a7b/}    </description>
    <dc:date>2012-05-26T14:26:37+09:00</dc:date>
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    <title>act.9（御影山）</title>
    <link>http://www28.atwiki.jp/streetpoint/pages/885.html</link>
    <description>
      &amp;sizex(6){就職難民　黙って俺についてこい！}









　
　「はあ〜。楽しかった！　白波瀬さんって物腰が柔らかいせいかすごく話してて気持ちが穏やかになるなあ。私なんかの話しも真剣に聞いてくれるし」


　家に帰ってベッドに横になった私は、先ほどの白波瀬さんと一緒に過ごした時間を振り返っていた。社長と一緒だと気づかないうちにすごく緊張してるみたいで、会社を出た後の疲れが半端無いのよね。昨日気づいたけど……。

　そんな後でリラックスして食事が出来たし、明日も頑張ろうって気持ちになる。

　ゴロリと反対に寝転がると、社長のあの冷めた視線と言葉を思い出す。

　研修中だからって仕事を甘く考えている訳じゃない。新製品をヒットさせるって大見得切ったんだし、もちろんそのつもり。社会に出たら今までの学生気分じゃいられないのも分かってる。でも、社長ってば本当に鬼なんだもんなあ。


「鬼社長のばかーーっ！」


　取りあえず枕に顔を突っ伏して叫んでみる。ちょっとスッキリしたかも。お話を共有出来る白波瀬さんという存在にも出会えたし、諦めない、投げ出さない、後悔しない、で頑張るんだ！

　よし、早く寝て明日に備えよう！　社長に迷惑かけたら商品ヒットの前にクビになりかねないもんね！

　おやすみなさい！




次へ　→　[[act.10（御影山）]]




お帰りの際は、窓を閉じてくださいv
&amp;link(お話はこちらに戻る){http://www19.jimdo.com/app/sd5d45984515212ef/p6dc026a38c980a7b/}    </description>
    <dc:date>2012-05-24T19:48:48+09:00</dc:date>
  </item>
    <item rdf:about="http://www28.atwiki.jp/streetpoint/pages/884.html">
    <title>act.8（御影山）</title>
    <link>http://www28.atwiki.jp/streetpoint/pages/884.html</link>
    <description>
      &amp;sizex(6){就職難民　黙って俺についてこい！}









　
　待ち合わせの場所に着くと、既に白波瀬さんは立っていた。私の姿を見留めると、右手を軽く上げてくれる。


「ご、ごめんなさい！　お待たせしましたっ！」


　慌てて頭を下げると、白波瀬さんも恐縮したように背筋を伸ばす。


「い、いえそんなっ。僕の方こそ少し早く来てしまいました。気を遣わせてしまってすみません」


　私と同じように頭を下げる白波瀬さん。二人でぺこぺこしあってしまい、思わず二人同時に笑いだす。


「あははっ、何かおかしいですね、僕達。えっと、それじゃこの近くに知ってるお店があるんで、そこでいいですか？」

「はいっ！」


　白波瀬さんの案内してくれたお店は、社長と出会ったあのバーのすぐ近くのイタリアンレストランだった。


「こんなお店もあるんですねぇ」

「この辺は実は結構穴場なお店が多いんですよ。あそこのバーも雰囲気がいいんです」

「そ、そうなんですかぁ〜」


　指し示されたバーはまさしくあのバーで、思わずあの日の失態を思い出してしまい、軽く口ごもってしまった。変な風に思われないといいけど。


「じゃ、入りましょう」


　そんな私の内心は気にも留めていない様子で、白波瀬さんがレストランの扉を開けて中へと促してくれた。中はオシャレではあるけれど、オレンジ色の照明が優しい雰囲気で白波瀬さんのイメージにぴったりのお店だなぁ、なんて思わず感心してしまう。

　席に通され、各々注文を済ませると話は自然に仕事の方へと向いていく。


「そういえば葉月さんは学生さん――ですか？」

「はい。大学４年です」


　そう言えばまだちゃんとした自己紹介もしていなかった、なのに一緒に食事をする事が嫌じゃない。やっぱり白波瀬さんの持つ柔らかい雰囲気のおかげなのかな？　そんな事を内心でぽつりと考える。


「じゃあ就職はもう？」

「いえ、それが……まだ」

「今は厳しいっていいますもんねぇ」


　そう言う白波瀬さんの顔には心底私を心配してくれているという表情が張り付いていた。


「あ！　でも今、研修はしてるんです！」


　心配そうなその表情を少しでも和らげたくて、思わずそんな事を口走った。

　私がそう言うと白波瀬さんはほっと小さく息を吐いた。


「それは良かった！」

「はい！　しかも化粧品メーカーなんですよ〜。白波瀬さんと一緒ですね！」

「えぇ！？　そうなんですか！　うわぁ、すごい奇遇ですね〜！」


　化粧品メーカーというと、白波瀬さんは本当に嬉しそうに微笑んだ。やっぱり同じ業種の人とこんな風に知りあえるのって嬉しいし、親近感もわいちゃうよね！


「ちなみにどちらの？」

「美成堂です！」


　美成堂と言う時に思わず少し胸を張ってしまう。だってあの美成堂なんだもん！　白波瀬さんも美成堂という名前に驚きを隠せないようで、思わず目を丸くしている。


「美成堂とは凄いですねぇ！　葉月さんは優秀なんですね」

「いえっ、そういうわけじゃないんですっ。たまたま御縁があって……」

「いえいえ、葉月さんはとっても魅力的な方ですし、美成堂さんの採用担当の方の気持ちも分かります」


　採用担当――私を採用してくれたのはあの鬼社長。あの鬼社長の気持ちをこの心優しい白波瀬さんが理解する日は一生ないと思う……なんて言いすぎかしら。更に言うと今日の私が多少なりとも魅力的に見えるのであれば、それは間違いなくその鬼社長のおかげで……。なんか複雑。


「で、研修はどうですか？　楽しいですか？」

「はいっ！　分からないことばかりで大変ですけど」

「そうですよねっ、僕もこの業界が大好きなので、葉月さんにそう言って貰えると何だかとっても嬉しいです」


　白波瀬さんが本当に嬉しそうに笑ってくれたので、私も思わず肩の力が抜けていく。


「白波瀬さんはどうですか？　お仕事順調ですか？」

「そうですねぇ、ボチボチ――ですかね。葉月さんは具体的にはどんな事をなさってるんですか？」

「あ、私は今は雑用です……」

「コピーとかお茶だしとか？」

「いえ、パソコンで資料をまとめたり、明日は市場調査に行くんです。右も左も分からなくて色んな人に迷惑かけてるんですけど、今まで知らなかった化粧品の勉強ができて、すごく奥深いな〜って感じて……とても楽しいです！」

「いいですね。仕事が楽しいと感じられるのは本当に素敵な事ですから。新製品だとヒットした時の喜びもなおさら大きいですし」


　ヒットした喜び――うん、味わってみたいな。ていうか味わえなかったら私の就職戦線も終了なんだけど……。


「開発している段階から欲しくなってしまう商品で。完成が今から楽しみなんです」

「素敵な商品なんでしょうねぇ」

「はい！　とっても魅力的なリップグロスなんです！」

「ふふっ、楽しそうで僕も関わりたくなっちゃいます」

「私も白波瀬さんみたいな方とお仕事出来たら、凄く嬉しいんですけど」


　私がそう言うと、白波瀬さんは一瞬目を伏せた――ように見えた。けど、気のせい、かな？


「うちに来ませんか？」

「え？」

「なーんて、僕が社長だったら言えるんですけどねぇ」


　そう言って苦笑する白波瀬さん。なんだか胸の奥でドクンと音が鳴った気がする。


「そう言えば白波瀬さんはどちらの会社なんですか？」

「いや〜、美成堂さんの前ではもう弱小も弱小なので。内緒にさせておいて下さい」

「そんな事……」

「でもっ！　心意気だけは負けてませんよ〜」

「あははっ」


　白波瀬さんと話しているとリラックスしている自分がいる。

　美味しい料理に舌鼓を打ちながら、私と白波瀬さんは楽しいひと時を過ごした。




次へ　→　[[act.9（御影山）]]




お帰りの際は、窓を閉じてくださいv
&amp;link(お話はこちらに戻る){http://www19.jimdo.com/app/sd5d45984515212ef/p6dc026a38c980a7b/}    </description>
    <dc:date>2012-05-24T19:47:10+09:00</dc:date>
  </item>
    <item rdf:about="http://www28.atwiki.jp/streetpoint/pages/883.html">
    <title>act.7（御影山）</title>
    <link>http://www28.atwiki.jp/streetpoint/pages/883.html</link>
    <description>
      &amp;sizex(6){就職難民　黙って俺についてこい！}









　
　開発センターは会社から車で２０分ほどの郊外にあった。思ったよりすごく立派な建物で、一見化粧品会社関連の施設とは思えないほど。

　社長と川島さんの３人で開発センター内の口紅やグロスを専門に扱う部署まで行き、部長と研究室主任に挨拶をする。


「今度からこの葉月を本社との連絡係として使う。市場調査も基本的に葉月が行ない、お客の要望をふまえ改良点を考えて、より良い製品にして欲しい」


　社長の言葉に、二人は私の顔を見て「よろしく」と軽く頭を下げた。私もすぐに頭を下げる。


「よろしくお願いします！」


　その後、研究室を案内してもらったのだけど、まさに研究室！　って感じで驚いた。化粧品ってこうやって出来て行くんだなあ。また勉強になった。


「化粧品を作るには主成分と他の成分の配合を科学的に検証し、人体に影響がないかアレルギーの分野からも細かく試験を重ねて行く。流行っているからといって無闇矢鱈と体に良さそうなものを詰め込んでも、長く使ってもらえるとは限らない」

「美成堂化粧品のコンセプトをベースに、従来の良さと今のお客様のニーズに合わせた開発をしていくんですよ」


　社長の後に川島さんが付け足して説明してくれた。

　そうよね、美成堂と他製品との差別化を図らないと長く愛用してもらえないもんね。


「お前の仕事は重要なものだという事を肝に銘じておけ。研修だからと甘く考えるな」

「分かってます……」


　どうしてやる前から人の意気をくじくような事を言うかな。

　多分私の為だと思うけど、社長は他のファンデーションや化粧水などを開発している様々な部屋を見せてくれた。

　気づけば夕方近くになっていて、帰りの車の中で川島さんから明日のスケジュールを渡された。もちろん私の。明日は中心街にどんと構える自社店舗で、お客様にアンケートを取る市場調査の仕事。一人で朝から夕方までやらないといけないらしい。ちょっと不安……。
　

「大丈夫、本店近くの路上で和田も調査するし、行き帰りは一緒に出来るから。何かあれば本店の人間に聞くといいですよ」

「はい、頑張りますっ」


　川島さんが私の緊張を読み取ったらしく、そう言ってくれた。

　和田さんが近くにいるならちょっと安心だ。良かった。


「川島、あまりこいつを甘やかすな。自分で考えて行動するようにさせないと、困った時に投げ出されては困る」


　不機嫌丸出しで言う社長。いくらなんでも困ったからって仕事を投げ出したりなんかしないもん！















　会社に戻り、書類の整理をしていると終業時刻になっていた。今日もたくさん勉強になったなあ。開発センターもこれから何度も足を運ぶだろうし、何だかんだ言って社長は私の為に忙しい合間に色々と教えてくれるし。―――と言っても自分に迷惑がかからないようにだろうけど。でも、それならわざわざ私みたいな素人を自分の手伝いに付けるのは不自然よね。うーん。一番最初があんなだったから面白がってるのかも。

　なんて帰り支度をしながら頭の中でぐるぐると物思いに耽っていると、ふいに携帯がメールの着信を知らせた。


「あれ。誰だろ」


　カレンかな、なんて思いながら携帯を操作すると、メールの送信者は白波瀬さんだった。

　うわっ、本当にメールしてきてくれたんだ！　なんてちょっと頬が緩んでしまう。だってあんな出会い方なんだもの。なんだかんだ言ってもその場限りかな〜なんて、ちょっと思ってたりもした。


『お疲れ様です。先日はどうも有難うございました。今晩のご予定は何かありますか？　良かったら一緒に食事に行きませんか？』


　胸の高鳴りを覚えながらメールを開くと、そこにはこんな文面が躍っていて、鼓動は今度こそ完璧に早くなった。


「ど、どうしよう」


　すごく嬉しい！　でも、よく知らない男の人と一緒に食事って言うのもちょっと……あれかな？　でもでも、白波瀬さんは私と同じく化粧品メーカーで奮闘していて、しかもうちの会社の人達みたいに完璧な出来る人間！　っていう感じでもないのよね……。我ながら失礼な評価だとは思うけど、あの少し気弱そうな柔らかい雰囲気がなんともいえなく安心させてくれるっていうか……。会社は違うけど、一緒に頑張れたらいいな！　ってそんな風に思える相手なんだもん。

　うん、白波瀬さんと会って、緊張をほぐそう！

　嬉しい旨を伝えるメールを打つと、ちょうど終業時刻になった。鞄をひっつかんで急いで会社を出た。

　今朝社長にメイクしてもらっておいて良かった！　朝から化粧が崩れないっていうのがまたすごいけど、社長に感謝だわ！





次へ　→　[[act.8（御影山）]]




お帰りの際は、窓を閉じてくださいv
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    <dc:date>2012-05-24T19:43:52+09:00</dc:date>
  </item>
    <item rdf:about="http://www28.atwiki.jp/streetpoint/pages/882.html">
    <title>act.6（御影山）</title>
    <link>http://www28.atwiki.jp/streetpoint/pages/882.html</link>
    <description>
      &amp;sizex(6){就職難民　黙って俺についてこい！}









　
　「なんだその顔は？」


　社長室の前で、私は御影山社長に睨まれた。


「はあ、寝不足で……」

「そんな事は見れば分かる。俺はどうしてそんなクマが出来ているのかを聞いてるんだ」

「昨日、カレンに借りた化粧品に関する本や新製品の資料を読んでいて、気づいたら外が明るくなっていて」

「ふう。俺は美成堂の社長だ。そしてお前はその美成堂の社員研修を受けている。俺が言いたい事は分かるな？」

「はい……すみません」　


　怒られて当然。化粧品会社の人間が、こんなひどい顔と肌で出社だなんて、ましてやまだ研修２日目だというのに、自覚がないにもほどがある。


「ちょっと来い」


　肩を落としていた私に、いつもよりさらに怖い顔になった社長。次には私の腕を掴んで少し強引に社長室に入った。


「お、おはようございます」


　昨日と同じように、秘書の女性がすぐに立ち上がったので、私は慌てて挨拶をした。けど、社長の雰囲気が怖かったのか驚いた顔で固まってしまってた。

　それと、部屋の隅に新しい机が用意されていた。翌日には準備されてるなんて、さすがだなあ。

　―――なんて感心していると、社長室のソファに投げるように座らされる。


「あのっ、社長。本当に今日の私の顔に関しては申し訳ないと思っています。明日からは分をわきまえた行動をしますから……」


　だからもう、そんなに怒らないでよっ！

　半分泣きそうになっている私の前に、社長は何やら銀色の箱を置くとおもむろにその蓋を開けた。


「あ……」


　そこにはメイク道具がぎっしりと、しかも整然と並べられていて、カレンが持っているメイク道具と瓜二つだった。その中から社長はいくつか取り出すと、無言で私の顎を持ち上げた。


「仮にも社長秘書として行動するんだ、そんな顔でうろうろされたら俺の社長としての資質が疑われるからな。今から人前に出られるようにしてやる」

「えっ？　社長がですかっ！？」

「当たり前だろう。化粧品会社の社長がメイクの仕方も知らないで務まるとでも思っているのか？」


　なるほど、確かにそうだわ。

　って、でもでも！　意外にもほどがある！　だって、あの、御影山社長がよ！　あの鬼がメイク出来るなんて、誰が信じるのよっ！？


「分かったら大人しくしていろ」

「はいっ」
　

　あまり考えないようにしよう。また顔に出て怒られちゃう。

　私は気まずさと恥ずかしさで目をつぶっていて、社長の手が顔に触れるたびにびくびくしてしまった。だけどパフやブラシはとても優しくて、まるでカレンにメイクをしてもらっている時のような心地よささえ感じた。


「―――その不細工な顔をやめろ、もう終わった」


　不細工って、失礼な！

　私はゆっくりと目を開け、メイク道具箱に据え付けられている鏡をのぞいて目を見張った。


「え……？　これ……」


　すごい。あまりの変貌ぶりに言葉が出ない。本当にこれが私？

　目の下のクマはすっかり消え、その鏡には見た事の無い私の顔が映し出されていた。


「これで少しはましだろう。今日は午後から開発センターに行くから付いて来い」

「はいっ！　あの、ありがとうございます！」

「忙しいんだ、俺の手を煩わせるな。本当にお前は手がかかる女だな、質が悪い」


　呆れたようにメイク道具を片付け、社長は自分のデスクにドサリと座って仕事を始めた。

　私はドアの前で深々と頭を下げ、隣りの部屋へ戻る。


「葉月さん、大丈夫だった！？」

「はい、あの、お騒がせしました」


　秘書室に戻ると、二人が心配そうに顔を覗きこんで来る。

　背が高くて綺麗な人が和田さんで、小柄で可愛らしい人が田村さん。


「良かった〜。社長があんな顔して入って来るからびっくりしちゃった」


　と、和田さん。そうよね、私もいつもより１．５倍増しで怖かったもん。


「御影山社長、先代の上にあぐらをかいて社長に座ったって思われたくないから、自分にも他人にも厳しいのよね」

「でも女の人をあんなふうに引っ張ってるのなんて、見た事無いけど」

「えっ？　そうなんですか？」


　怒って怒鳴りつけそうなイメージが勝手にあるけど、暴力とかはさすがにしないよね、社長だし。ってか、見た目は冷たくて怖そうだけど、手を上げるほど横暴じゃなさそう。

　ん？　じゃあなんで私はひっぱられたの？　そんなに酷い顔が許せなかったって事かな？

　悩んで頭を捻っていると、田村さんが笑った。


「大丈夫よ、殴ったりは絶対にしない人だから。怖そうだけど紳士なのよ、社長は」


　あ、そうね紳士。うん、鬼だけど確かに紳士―――って、人の家に勝手に上がり込んで叩き起こして２分で用意しろって言う人のどこが紳士なのよ！　

　
「きっと葉月さんの事気に入ったのね」

「まさか！」


　なんだか二人とも年上の優しいお姉さん。って感じで良かった。これなら分からない時も色々教えてくれそう。川島さんといい、和田さん田村さんといい、社長以外のこの秘書室はほんわかだわ。

　その後、私は真新しい机に座り、田村さんに教わりながら簡単な仕事内容をメモして行った。

　基本的には社長宛の郵便物のチェックや電話の応対、自社や取引先からの報告などの資料作成。そして社長から社員や取引先への通達がお仕事。社長自らが行なう仕事のスケジュールは、その中から川島さんがチェックして社長に伝えるみたい。社長の仕事って結構面倒なのね。






次へ　→　[[act.7（御影山）]]




お帰りの際は、窓を閉じてくださいv
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    <dc:date>2012-05-24T19:39:34+09:00</dc:date>
  </item>
    <item rdf:about="http://www28.atwiki.jp/streetpoint/pages/881.html">
    <title>act.10（明月院）</title>
    <link>http://www28.atwiki.jp/streetpoint/pages/881.html</link>
    <description>
      &amp;sizex(6){就職難民　黙って俺についてこい！}









　
　「はあ〜。楽しかった！　白波瀬さんって物腰が柔らかいせいかすごく話してて気持ちが穏やかになるなあ。明月院さんは表情がいつも暗いし、大きな声出すとすぐ怒るし、結構気を遣うのよね……」


　家に帰ってベッドに横になった私は、先ほど白波瀬さんと一緒に過ごした時間を振り返っていた。緊張する仕事の後にリラックスして食事が出来たから、明日も頑張ろうって気持ちになる。

　ゴロリと反対に寝転がると、明日レコーディングに着いて来いと言った明月院さんの顔を思い出す。

　本当に失敗ばっかり。なのに明日着いて来いだなんて、一体何考えてるのかしら？　う〜ん、何を考えているか分からなさすぎる！　仕事も明月院さんの扱いも、分からない事だらけだわ！！


「―――あ〜やめよ、使えないというのは事実だし、まだ何も出来ないのも事実だもん。でも、絶対、明月院のお手伝いが出来るようになるんだから。そして新製品がヒットしたら『頑張った』って褒めてもらうんだ！　よし、明日は明月院さんにどんな事をすれば役に立てるか、勇気を出して聞いてみよう」


　それから、何か雑誌や専門書を買って……でも専門的な単語が出て来たらそれ用の辞書とかもいるよね……。どうしよう、ああ！　どうして私は子どもの頃、親にピアノを習いたいと言わなかったのかしら！！

　って、また色々考えてる！　また寝不足で怒られちゃうよ、早く寝てコンディションを整えなきゃ。

　そうよ、まずは睡眠！　よーし、明日も頑張るぞ！






次へ　→　[[act.11（明月院）]]




お帰りの際は、窓を閉じてくださいv
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    <dc:date>2012-05-15T17:31:24+09:00</dc:date>
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    <item rdf:about="http://www28.atwiki.jp/streetpoint/pages/880.html">
    <title>act.9（明月院）</title>
    <link>http://www28.atwiki.jp/streetpoint/pages/880.html</link>
    <description>
      &amp;sizex(6){就職難民　黙って俺についてこい！}









　
　待ち合わせの場所に着くと、既に白波瀬さんは立っていた。私の姿を見留めると、右手を軽く上げてくれる。


「ご、ごめんなさい！　お待たせしましたっ！」


　慌てて頭を下げると、白波瀬さんも恐縮したように背筋を伸ばす。


「い、いえそんなっ。僕の方こそ少し早く来てしまいました。気を遣わせてしまってすみません」


　私と同じように頭を下げる白波瀬さん。二人でぺこぺこしあってしまい、思わず二人同時に笑いだす。


「あははっ、何かおかしいですね、僕達。えっと、それじゃこの近くに知ってるお店があるんで、そこでいいですか？」

「はいっ！」


　白波瀬さんの案内してくれたお店は、社長と出会ったあのバーのすぐ近くのイタリアンレストランだった。


「こんなお店もあるんですねぇ」

「この辺は実は結構穴場なお店が多いんですよ。あそこのバーも雰囲気がいいんです」

「そ、そうなんですかぁ〜」


　指し示されたバーはまさしくあのバーで、思わずあの日の失態を思い出してしまい、軽く口ごもってしまった。変な風に思われないといいけど。


「じゃ、入りましょう」


　そんな私の内心は気にも留めていない様子で、白波瀬さんがレストランの扉を開けて中へと促してくれた。中はオシャレではあるけれど、オレンジ色の照明が優しい雰囲気で白波瀬さんのイメージにぴったりのお店だなぁ、なんて思わず感心してしまう。


　席に通され、各々注文を済ませると話は自然に仕事の方へと向いていく。


「そういえば葉月さんは学生さん――ですか？」

「はい。大学４年です」


　そう言えばまだちゃんとした自己紹介もしていなかった、なのに一緒に食事をする事が嫌じゃない。やっぱり白波瀬さんの持つ柔らかい雰囲気のおかげなのかな？　そんな事を内心でぽつりと考える。


「じゃあ就職はもう？」

「いえ、それが……まだ」

「今は厳しいっていいますもんねぇ」


　そう言う白波瀬さんの顔には心底私を心配してくれているという表情が張り付いていた。


「あ！　でも今、研修はしてるんです！」


　心配そうなその表情を少しでも和らげたくて、思わずそんな事を口走った。

　私がそう言うと白波瀬さんはほっと小さく息を吐いた。


「それは良かった！」

「はい！　しかも化粧品メーカーなんですよ〜。白波瀬さんと一緒ですね！」

「えぇ！？　そうなんですか！　うわぁ、すごい奇遇ですね〜！」


　化粧品メーカーというと、白波瀬さんは本当に嬉しそうに微笑んだ。やっぱり同じ業種の人とこんな風に知りあえるのって嬉しいし、親近感もわいちゃうよね！


「ちなみにどちらの？」

「美成堂です！」


　美成堂と言う時に思わず少し胸を張ってしまう。だってあの美成堂なんだもん！　白波瀬さんも美成堂という名前に驚きを隠せないようで、思わず目を丸くしている。


「美成堂とは凄いですねぇ！　葉月さんは優秀なんですね」

「いえっ、そういうわけじゃないんですっ。たまたま御縁があって……」

「いえいえ、葉月さんはとっても魅力的な方ですし、美成堂さんの採用担当の方の気持ちも分かります」


　採用担当――私を採用してくれたのはあの鬼社長。あの鬼社長の気持ちをこの心優しい白波瀬さんが理解する日は一生ないと思う……なんて言いすぎかしら。更に言うと今日の私が多少なりとも魅力的に見えるのであれば、それは間違いなくカレンのおかげで……ああ、もう！　本気でカレンに感謝！


「で、研修はどうですか？　楽しいですか？」

「はいっ！　分からないことばかりで大変ですけど、でもやっぱり楽しいです」

「そうですよねっ、僕もこの業界が大好きなので、葉月さんにそう言って貰えると何だかとっても嬉しいです」


　白波瀬さんが本当に嬉しそうに笑ってくれたので、私も思わず肩の力が抜けていく。


「白波瀬さんはどうですか？　お仕事順調ですか？」

「そうですねぇ、ボチボチ――ですかね。葉月さんは具体的にはどんな事をなさってるんですか？」

「あ、私は今は新製品のCM曲なんかを作る音楽部の方にいます」

「へえ、CM曲？　葉月さんは音楽の経験があるんですね！」

「いいえ、全くのズブの素人なんです」

「え？　それなのにどうして？」


　白波瀬さんの言いたい事はよーく分かるわ。社長だって明月院さんだって、かく言う私だって何でだろうっていまだに思ってるし。

　でも……


「全然分からないお仕事なんですけど、やっぱり化粧品のCMって映像も音楽もすごく重要だと思うんです。たくさんの人たちが一つの商品を作るのに一生懸命になってて、その中でもすごく音楽に惹かれたんです。だから、頑張ってみようと思って」

「そうですかあ。確かに曲によってイメージが随分変わりますもんね、分かりますよ葉月さんのその気持ち」

「あ、ありがとうございます！」

「それじゃあ、お仕事は楽しい、ですか？」

「はい。―――あ、うちの音楽部の上司ってちょっと変わり者というか、読めない人なんですけど、本当に素敵な曲を作って演奏するんです。それを聴いてたら何だかこっちまでピアノが弾けるような気になっちゃって」

「ふふ、葉月さんは感受性が豊かな人なんですね。仕事が楽しいなら、新製品だとヒットした時の喜びもなおさら大きいですし、やりがいのある内容のお仕事だと思いますよ」


　ヒットした喜び――うん、味わってみたいな。ていうか味わえなかったら私の就職戦線も終了なんだけど……。


「開発している段階から欲しくなってしまう商品で。完成が今から楽しみなんです」

「素敵な商品なんでしょうねぇ」

「はい！　とっても魅力的なリップグロスなんです！」

「ふふっ、楽しそうで僕も関わりたくなっちゃいます」

「私も白波瀬さんみたいな方とお仕事出来たら、凄く嬉しいんですけど」


　私がそう言うと、白波瀬さんは一瞬目を伏せた――ように見えた。けど、気のせい、かな？


「うちに来ませんか？」

「え？」

「なーんて、僕が社長だったら言えるんですけどねぇ」


　そう言って苦笑する白波瀬さん。なんだか胸の奥でドクンと音が鳴った気がする。


「そう言えば白波瀬さんはどちらの会社なんですか？」

「いや〜、美成堂さんの前ではもう弱小も弱小なので。内緒にさせておいて下さい」

「そんな事……」

「でもっ！　心意気だけは負けてませんよ〜」

「あははっ」


　白波瀬さんと話しているとリラックスしている自分がいる。

　美味しい料理に舌鼓を打ちながら、私と白波瀬さんは楽しいひと時を過ごした。







次へ　→　[[act.10（明月院）]]




お帰りの際は、窓を閉じてくださいv
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    <dc:date>2012-05-15T17:29:45+09:00</dc:date>
  </item>
    <item rdf:about="http://www28.atwiki.jp/streetpoint/pages/879.html">
    <title>act.8（明月院）</title>
    <link>http://www28.atwiki.jp/streetpoint/pages/879.html</link>
    <description>
      &amp;sizex(6){就職難民　黙って俺についてこい！}









　
　「カレン〜〜！」


　カレンのいる教育部に向かう途中でカレンにメールをしておいたら、カレンは廊下で既に私を待ってくれていた。


「お疲れ〜ってどうしたの？　今日の顔ひっどいわねぇ」

「うっ。そこでお願いがあるの！」


　私は白波瀬さんとの約束をかいつまんで話すとカレンは呆れ顔で私を見下ろした。


「はーっ、あんたねぇ、男と遊んでる場合？」

「遊ぶっていうか……」


　確かに遊んでる様に見えるだろうし、危機感がないように思われるのも無理はない。

　せっかくのチャンスなのに何してるの――って。でもそうじゃなくて、そう思われても仕方ないけど、そうじゃなくて。自分と同じような立場の人と、共有したいっていうか。そうしないと重圧に負けてしまいそうな気がするっていうか――そんな正直な気持ちをポツリ、ポツリと吐露していくと、カレンは一つ大きく息を吐いた後、私の頭をそっと撫でてくれた。


「分かった。しょーがないな、水那は」


　カレンがそっと微笑んでくれている。いつものカレンだ。昔から私を助けてくれる優しいカレン。


「よし、じゃあちゃちゃっと直してあげるから、気を付けて行ってくるのよ。それと、そんなにイイ男なら今度ちゃんと紹介しなさいっ」

「はぁい」


　カレンの手が動くたびに、私の顔がグッと華やかになっていく。くまもくすみも消えていって、夕方なのに朝みたいな肌質に変わる。


「よし、と。我ながらさすがな出来栄え！　これならその彼も好印象間違いなし！」

「有難うカレン〜〜〜！」


　鏡を確認してすっかり爽やかな顔色に変化した自分を見つけると、思わずカレンをギュッと抱きしめた。


「はいはい、って時間はいいの？」

「あー！　もうこんな時間！？　ごめんね、カレン！　私行ってくる〜！　本当にありがとね〜〜！」


　待ち合わせの時間が迫っている事を知り、今度は駆け足。我ながら慌ただしくて申し訳ないことこの上ない。どうか間に合いますように！







次へ　→　[[act.9（明月院）]]




お帰りの際は、窓を閉じてくださいv
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    <dc:date>2012-05-15T17:28:01+09:00</dc:date>
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