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2010年11月のすぐさん

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2010年11月

ジャンキー

No.1 ▼次へ
飲めないわけではないのだが、私はあまりお酒が好きではない。
すぐ赤くなるし、身体が冷える。時には痒みも伴う。
しかし世間には、お酒を愛してやまないひとも多い。
体質的な差異によるところも大きいと思う。

当然、猫にも個体差がある。
それは承知していたつもりなのだが、実際目の当たりにするとその差には驚くべきものがある。
と言っても、愛猫たちに酒を飲ますような悪戯はしていない。
猫といえば、またたびである。

すぐさんの場合、植物の状態でのまたたびには全く興味なし。
実もしばらく転がしてあとは見向きもしない。
粉末の匂いには敏感に反応して、ちょうだいちょうだいと騒ぐ割に、ペロッとひと舐めする程度で満足らしい。
そこへ行くと、お豆の反応たるや凄まじいものがある。
まだ子猫ということもあり、積極的には与えていないのだが、すぐさんが鼻息で散らしたわずかな粉末に大興奮する。
右へ左へ激しく身体を捻って転げ回り、ペットグラスを毟りまくり、水入れをなぎ倒し、マットを抱え込んで猛烈な連続蹴りをかまして大暴れ。
後片付けの大変なことといったらない。

ただ、猫にとってのまたたびは、人間にとってのアルコールというより麻薬に近いものらしい。
「性的に興奮させ、大脳、脊髄、延髄を麻痺させ陶酔状態にさせる」物質が含まれているとのこと。
またたびの容器には「ストレス発散、元気回復」と書かれている。
かつて日本軍が同じうたい文句でヒロポンを利用していたのではなかったか。
確かに、神経を安定させるという効果もあるらしいのだが、麻薬と知ってなお愛猫に与えるのはよい飼い主なのか悪い飼い主なのか。
改めて考えてみると案外、難しい哲学的な問題だ。

味をしめたお豆は、暇さえあればまたたびをしまった引き出しの前をウロウロしている。


はじめてのヘリ

No.2 ▼次へ

空が高く澄んで、鰯雲が現れる季節になるとアレもやってくる。自衛隊のヘリだ。
全国共通というわけではないのだろうが、私の中では秋の風物詩のひとつ。
秋刀魚、焼き芋、自衛隊のヘリ演習である。

今年生まれたお豆は自衛隊演習初体験。
屋上で日課の日向ぼっこをしていたのだが、轟音の接近とともに耳が水平になり、しまいには室内に逃げ込んでしまった。
行ったかと思えば、すぐ次の編隊が来るので、いつまで経っても表に出られない。
すぐさんは慣れたものである。
お豆に邪魔されない分、かえってノビノビと日向ぼっこを満喫していた。

遥か上空を行く黒い影を八の字眉ならぬ、八の字髭で見上げ、普段からは想像もつかない程のびびり様。
お豆にはお気の毒だが、笑ってしまった。


性懲りもなく

No.3 ▼次へ
相方は猫と一緒にお風呂に入る。
普段は世の親父殿並みに疎外されているので、傍にいてくれるだけで嬉しいらい。
昨日はすぐさん、今日はお豆といった具合に日替わりで風呂場に連れ込んでいる。

ある日、風呂場から悲鳴が。
駆けつけてみると、相方が風呂場のドアから泡だらけの上半身を乗り出していた。
貞子が古井戸から這い出して来た、あの感じである。気色悪いこと夥しい。
その先にはずぶ濡れのお豆が縮こまっていた。
湯船に落ちたのだ。
大慌てでバスタオルに包み、暖房の入った居間に連れ戻した。

以前、すぐさんも何度か湯船に落ちたことがあり、対応出来る自信はあったのだが、今回特に慌てたのには訳がある。
お豆は前日、去勢手術を受けたばかりだったのだ。
ただでさえ弱っているところに、感染でもしたら一大事である。
丹念に水気を拭き取っていると、相方がのほほーんとした風情で風呂から上がって来た。
言うに事欠いて「このドジっ子がぁ」などと軽口まで叩くのでブチ切れてしまった。
「ちゃんと見ててやらなかったお前が悪いっ!土下座してお豆に詫びやがれっ!」
パンツ一丁でお豆に土下座する相方、毛づくろいに忙しいお豆、仁王立ちの私、そんなドタバタをしらけ顔で見ているすぐさん…。

これに懲りてしばらく風呂場には近づきはしまいと思っていたのだが、なんのその。
見ている方が怖いくらいに身を乗り出して水遊びに興じている。
まだまだ目が離せない日々が続きそうである。


被害甚大

No.4
我が家のキッチンに置いた分別ゴミ箱には引き出しが付いている。引き出しを中途半端に開けると、レシピ本を開いたまま挟んで置けるので重宝している。
作業しながらレシピを確認するのに便利なのだ。

そういう時は大抵、すぐさんがレシピの上にドーンと鎮座してお手伝い(邪魔)をしてくれる。
ペラペラのベニヤ板で出来た底板が、4キロの荷重に耐えられるかちょっぴり心配している。

ある日、背後がいつも以上にガタピシ騒がしいので振り返ると、すぐさんが変な体勢でもがいていた。
引き出しの奥に何か気になる物を見つけたらしい。
一度目をつけたものには恐るべき執念を発揮するすぐさん、夢中で引き出しをまさぐるうちにへんてこな体勢になってしまったのだろう。
こうなったら止めても無駄なので、気の済むまでさせておくしかない。

格闘の末、引き出しの奥から掻き出してきたものは、一本の輪ゴムであった。
折角の獲物だが、飲み込むと危険なのですぐさま回収。
すぐさんは舌打ちでもしそうな表情で去って行った。
舌打ちしたいのはこっちである。
開いたレシピのページは捩れ、出前のチラシが散乱し、ゴミ袋のストックも数枚、無残に引き裂かれていた。


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