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4月のすぐさん

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2009年4月

狩りの練習

No.1 ▼次へ
すぐさんと暮らし始めた頃、嬉しくてペットショップでいろいろな玩具を買った。
小さな釣竿の先に、うさぎの毛皮を貼ってつくったネズミがついた玩具とか、プラスチックの球に尻尾がついていて、
床に置くと勝手に転がり続ける玩具とか、もう本当にいろいろ。
でも、そういったものはひとしきり遊ぶとすぐに飽きてしまう。


何てことない紐や丸めたレシートの方が断然そそられるようだ。
中でも輪ゴムは噛んだ時の弾力がたまらないらしく、グチャグチャ噛みしめてしまう。
飲み込んで内臓にキズがついたら可哀相なので、おちおちその辺に置いておけない。
一緒に遊びたい時、伸ばした輪ゴムをはじいてビヨーン、ビヨーンと音をたてると、どこにいてもすっ飛んで来る。

猫はハンティングを模した遊びが好きなので、輪ゴムをバッタにでも見立てているのだろうか。
指鉄砲で飛ばした輪ゴムを追いかけて、走る、走る。
フローリングの床がツルツル滑るので、しまいにはスライディングすることまで覚えた。
少し他の事に気を取られて中断すると、「にゃうあう」と鳴いて早く飛ばせと催促してくる。
子どもと一緒で楽しいことには貪欲で本当にしつこいくらい同じことを繰り返す。
そして息があがると、その場にごろりと横たわり、遊びは急に終わる。
一緒に走り回った私は、その頃にはとっくに疲れ果てているのだが。

疲れるけど、遊んでくれるうちが華かな。と思いつつ6年が経過。
避妊や虚勢をした猫が「大人にならない」というのは、どうやら本当の話のようだ。

お客様

No.2 ▼次へ
我が家の庭は猫の通り道になっているらしい。
今まで確認しただけで野良猫、飼猫合わせて5頭。
そして今日また新たにもう1頭発見した。


朝、めだかに餌をやりに庭に出たら、ベージュ色の猫が踏み石の上で寝そべっていた。
私を見ても微動だにしない。
それ以前に、目の前の空家を解体していて凄まじい騒音だというのにどこ吹く風。
さすがは野良、図太い。

家に入り、すぐさんを窓辺に誘導する。
外猫を見つけると、異常に機敏になって面白いのだ。

すぐさんが近づくと外猫はとっさに座りなおし、威嚇の声をあげた。
実際は騒音が激しすぎて聞こえなかったんだけど、口の形と表情はまさにそれ。
一方すぐさんはおっとりさんなので、なかなか外猫の存在に気づかず、「なに?なに?なんなの?」と窓のそばをウロウロ。
やっと気づくと「あっ!」っという声が聞こえてきそうな勢いで背筋を伸ばし、一瞬固まる。
うひひ。これ、これ。これが面白い。

外猫の眼光の鋭さといったらお客さんというより、刺客。
その迫力にすぐさんはタジタジである。
しまいにはちょっとづつ後ずさり、カーテンの陰からそーっとのぞいていた。

ちなみにこれまで現れた外猫には、モコモコの「モコちゃん」、すぐさんと同じ茶トラの「偽(ぎ)ぐり」、面長の「長さん」などと捻りのない通り名をつけてきた。
今後、今日来たヤツのことは「刺客」と呼ぶことにする。

すぐさんは王子がお好き

No.3 ▼次へ
パソコンに向かっていると、すかさずすぐさんが邪魔しに来る。
キーの上をノシノシ歩くので、いつの間にかにNumLKやCapsLkがかかってしまう。Enterキーあたりにおしりを乗せるのが得意なので、何かが勝手に実行されてしまう。困ったことだ。

どんなに人間がしてほしくないことでも、猫は習性上当たり前の行為をしていることが多いので叱るのも難しい。
でも、共同生活をする上で、どうしてもどうしてもそれはやめてくれ~!ということは少なからずある。
では、どうすればよいか。
雑誌などで紹介されている猫の躾方法に「天罰式」というのがある。
猫は身体が濡れるのが大嫌い。
それを利用して、「ある行動をとると雨が降る=天罰が下る」という認識をさせるというもの。
例えばカーテンなどで爪を研いだ時、猫にバレないように霧吹きなどでシュッと「雨」を降らせるとびっくりしてその行動を止める。
しかし、すぐさんはお利巧猫なので、私がやっているとすぐに見破ってしまった。
単にやり方が下手くそだったのかもしれないけど、それでもすぐさんはお利巧なのだ。
今では霧吹きを持ち上げるわずかな物音で「雨」の気配に感付き、「別に何もしてませんけど?」とおとぼけ顔をする。
言わずもがな、この方法はパソコンには使えない。
もうひとつの「天罰」は大きな音をたてるというものなのだが、この方法は私が嫌いだから採用していない。
だって、気に入らないことがあると大きな物音を立てたりするひとって凄く感じが悪い。
それで結局、泣き寝入りである。

先日、すぐさんがキー散歩をした後には「おいかわ」の検索結果が表示されていた。
一番上は「及川光博オフィシャルサイト バラ色帝国 ~the empire of Roses」であった。
すぐさんも、乙女。白馬の王子に憧れているのかしらん。
ただ、私の趣味とはかけ離れているので、検索履歴にそれが残るのはちょっと恥ずかしい。

悪知恵

No.4 ▼次へ
 暖かくなってきたからか、すぐさんの行動が活発だ。
朝は目覚ましが鳴る15分前に騒ぎ出し、昼寝も少な目。
なりをひそめていたいたずらも激しさを増している。


 以前から、脱衣所にある絶壁の棚に登ってみたかったらしいすぐさん。
「あすこへ行きたいの。」と視線で訴えてみるものの無視され続け、知恵を絞ったのだろう。
ある晩の風呂上り、着替えを取ろうとかがんだ私の背中を踏み台にしてジャンプ!
「ぐあぁぁああああ!!」
血行がよくなった三十路の柔肌に猫の爪。これが叫ばずにいられるか。
そして、すぐさんはまんまと絶壁棚登頂に成功。

 この後、バスタオルの隙間に身体を捻じ込み、裏に回って押し出す要領で一枚残らず床に落とした。
見晴らしのよいスペースを確保したすぐさんは満足げに長々と寝そべるのであった。
贅肉が邪魔する身体を無理やり捻って傷を確認したところ、私の背中には見事な四本線が刻まれていた。
うっすらと血が滲んでいる。
恨めしい気持ちで鏡越しにすぐさんを見ると、「何か?」という冷たい視線を一瞬投げた後、毛づくろいをはじめた。
ええ、あなたが満足なら私はそれでいいんですけどね。

 以降、着替える時は周りにすぐさんがいないか確認するクセがついた。
それでも時々、不意をつかれてその度に泣きをみている。

行方不明

No.5 ▼次へ
家事に没頭していたらすぐさんの姿が見えないことに気づいた。
カーテンの裏で外を眺めているのかしら。
それとも、お気に入りのカゴの中で寝ているのかしら。
心当たりはすべて探したのに見つからず、次第に焦りはじめる私。

私はかなりのすぐり依存症だ。
家の中にいるのはわかっているのに姿が見えないと不安になる。
もしかして、さっき宅急便が来た時、隙をついて表に出てしまったのかも。そんな気がしてくる。
「にゃうぉう」
すぐさんではない。そんな時は私が鳴く。
名前を呼ぶよりこっちの方が反応がよい。
返事があるまで家中歩きながら「にゃうぉう、にゃうぉう」と繰り返し呼びかける。
なりふり構わず大声で鳴くので、ご近所から「イカレてる」とか「猫憑き」とか言われていてもおかしくない。

するとどこからか「チリチリ」と鈴の音がしてくる。
あっ!いた。音のする方へ。
寝室…ベッドカバーの中を見る…いない…ベッドの下にもいない。
ふと、押入れのドアが薄く開いているのに気づいた。
畳んだベッドパットがこんもりとふくらんでいる。
そっとめくってみると…。
ガビーーーン!!!かわゆいいいい!!
寝ぼけ眼で迷惑そうに顔を出すすぐさんにメロメロになってしまった。
嗚呼、今日も猫馬鹿丸出しである。