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「砂の一粒は確かに独立した固体ではあるが、一粒でその存在が成り立つ訳じゃねぇ。それは別の何かから生まれ、他のあらゆるものと干渉し合い、関係し、一粒の砂として、そこに在る。
 ──そうは思わないか?」

「何が言いたいの?」

「お前はあの時、それを制約と言った──俺はな、肉体の制約は制約でありながら可能性でもある…そう思うぜ」

「あなたらしいわ」

立ち止まってバトーは少佐を見た、少佐はそれを見て笑った、微笑んだと言うべきか。

「制約を失った時、個は漂流する。お前はその朧げな個の輪郭を何で量る?」

「量らないわ」

「嘘だな」

「どうしてそう言い切れるの?」

少佐はバトーの目を見た、義眼から表情は読み取れない、それでも、量る様に。

「なら、どうして俺を選んだ」

バトーは少佐の赤い目を見た。
量産型の義体、その量産型の瞳。
何処にでもある、そしてここにしかない一対の目を。

「お前には俺という外部記憶装置があった。俺は犬だからな、どんな状態になっても、義体を乗り換えても、お前がお前であることを嗅ぎ分けてみせる。
 ──それが、必要なんじゃないのか?」

「凄い自信ね」

「ネットの海を漂流したければしろよ、相棒。
 漂流の果てにお前がお前と言う個を維持出来なくなったとしても、俺が捜しに行ってやる」

「迷子のサリュート7号みたいに?」

「そう、迷子のサリュート7号みたいに」







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サリュート7号は実在したソ連製の宇宙ステーション、迷子になったのも事実。
サリュート7号の逸話はかなりときめくものがあります。
少佐の義体が量産型だったか普及型だったか、その辺はかなり曖昧ですがお許しを。


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