killer7 #0 ※第0話にあたるこの号は、ゲームの初回特典として用意された特別号である。 COVER ※右上からハーマン、女性、マスク、ダン、ガルシアン。女性は顔のアップしか描かれていないため誰か判別し辛いが、かろうじて黒髪が見えることからカエデかリンダ・バーミリオンと思われる。特にハーマンが被っている帽子が彼女の額にもかかり彼女自身の帽子のようにも見える点、ハーマンの顔と融合しているかのように触れ合って描かれている点は意味深である。 P.1 PANEL1 〈ワシントンD.C.〉 〈2003年、6月3日〉 巨大な白い塔が見える。 ※副読本では2003年6月は国連本部ビルで「笑う顔」テロが起きた日付。巨大な塔はワシントン・モニュメントである。 P.1 PANEL2 〈世界統一10周年記念日〉 ライトアップされた塔に向かう人々の横を、ガルシアンが逆方向に通り過ぎて行く。 ※後に明らかになるが、世界統一とは原作における1998年の「世界平和元年」を指す。コミック版では年代が1993年にずれているようだ。 P.2 PANEL1〜5 薄汚れた道。ガルシアンの前にミルズが現れる。二人は歩みを止めずすれ違いながら、さりげなくファイルがミルズからガルシアンへと手渡される。 ※場面転換とともに年代も変わっていることに注意。ミルズは黒いジャケットの襟を立てて原作よりもお洒落な様子である。ミルズがガルシアンに渡したファイルにはの表紙にはKiller7を表す「K7」の文字。 P.3 PANEL1 ガルシアンの部屋。ソファに腰を下ろしたガルシアンは携帯でミルズと連絡をとる。 ガルシアン「この場所が?」 ミルズ『ああ。連中の群れだ』 ※質素なイメージだった原作と違い、天井も高く高級そうな調度品に囲まれた広い部屋である。「誠」の字の掛け軸(?)に観葉植物、「G」と大書されたパネルはガルシアンの頭文字か。この部屋は1話以後登場せず、以後原作に近いトレーラーハウスがガルシアンの住居として描かれる。 P.3 PANEL2 ガルシアンは片手でファイルの中身をチェックしている。 ガルシアン「何人いる?」 ミルズ『さあな。1ダース、それ以上かも』 ※手にしたビルの写真には「セルティック・アームス(銃器)」の文字。コミック版ではセルティックは多目的施設ではなく、銃器商のビルという設定らしい。 P.3 PANEL3〜4 携帯で話すガルシアンと、電話ボックスから話すミルズ。 ガルシアン「全部殺っていいのか?」 ミルズ『1匹は生け捕りにしてくれ。糸を引いてる奴を捕らえなきゃならん』 P.3 PANEL5 ガルシアン「わかった。情報は?」 ミルズ『そうだな…会えばわかるさ。連中とは決定的に違う』 P.3 PANEL6〜7 ミルズ「神に笑いを…」 ガルシアン「悪魔に慈悲を」 P.4 PANEL1 〈セルティック銃器〉 「立入禁止!」の看板とビルの前に立つガルシアン。窓はすべて板で塞いである。 ※コミック版のセルティックの外観は10階建ての古めかしいビルである。 P.4 PANEL2〜5 ビルの入口に据えられた監視カメラを見すえるガルシアン。モニターに映る姿がダンへと変わる。監視カメラのモニターは返り血にまみれている。 ※コミック版では画面が乱れて変身するのではなく、モーフィングのようにスムーズに変身している。 P.4 PANEL6 ビルの中に入るダン。壁一面に血の跡が飛び散っている。 P.5 PANEL1〜2 受付のカウンターには死体と思しき肉塊。ダンは嫌悪の表情。 P.5 PANEL3〜4 廊下の奥から足音が聞こえる。 P.5 PANEL5 扉を開けて現れる男。 男「おい! ここに近付くな!」 ダン「よう」 男「ここに近付くんじゃない! 俺の仲間が殺されちまった」 ※原作では不良少年の役所だが、コミック版では中年男の様子。 P.6 PANEL1 ダン「だろうな。だから俺達が来た……待てよ、警備員はどこだ?」 P.6 PANEL2〜3 服を破りヘヴンスマイルへと変貌する男。 男「みんな殺られちまったのさ。こんな連中にな…」 衝撃を受けるダン。 ※コミック版のヘヴンスマイルへの変身は段階的で、花が散るように服が破け飛び散るカットが印象的。 P.6 PANEL4〜5 HS「俺は選ばれたんだ!」 ダンに飛びかかるHS。 P.7 冷静に銃を構え、HSを撃ち抜くダン。HSは血しぶきをあげて地面に斃れる。 ※火炎放射器のような激しいマズルフラッシュは魔弾の表現か。ダンが両手で銃を構えているのは珍しいポーズ。 P.8 PANEL1〜2 HSの血しぶきがダンの体に引き寄せられるように飛び散る。 ※原作の血液採取のコミック的表現か? 似た表現はこの後の回でも見られる。 P.8 PANEL3 血のりを払い落としながら、 ダン「糞が。増殖してやがる」 P.8 PANEL4〜6 階段の先を見つめるダン。 ダン「1匹は生け捕りだと? 気楽に言ってくれるぜ」 P.8 PANEL7 ダン「上か…」 ダンは階段を慎重に上り始める。 〈続く〉 killer7 #1/2 ※「第0.5話」と言うべきこの号は、2005年サンディエゴ・コミコン(コミック・コンベンション:大型のコミックイベント。日本のコミックマーケットと異なり、企業ブースがイベントの中心である。特にサンディエゴ・コミコンはアメリカ最大級のコミコンとして名高い)限定で販売されたもので、その性質上流通量が非常に少ない。第0話の続編で原作「天使」の章の後半にあたるはずだが、訳者はネットショップにアップされた表紙しか確認できていない。 COVER 〈「悪魔に慈悲を」第2章  2006/6/14-17 サンディエゴ・コミコン限定〉 ※表紙は路上で銃撃戦を演じるダン・スミス。銃(いわゆるHANDSOME DEVIL)の銃把の飾りがしっかり再現されている。 killer7 #1 COVER ※左上から順にハーマン、ガルシアン、マスク、ダン、ケヴィン、コヨーテ、エミール、カエデ、コン。この時点でエミールが描かれているのは大胆な伏線と言えるだろう。エミールの第三の目の瞳が緑色に輝いているのは、原作「獅子」でのガルシアンの緑の目を意識したのだろうか? コヨーテが煙草を吹かしているレアショットにも注目。 P.1 〈「落日」第1章 鮮血歌劇・序曲〉 机の上には乱雑に積まれた書類。タイプされた2枚の文章が読み取れる。 『1993年6月3日。あらゆる国際紛争は終結した。この日は人種・宗教・肌の色を超えた平和の象徴として記憶される。  四大国は国際倫理機関(IEC)を設立し、世界規模の治安維持活動を早急に押し進めた。世界は一丸となって諸悪の根源の撲滅に全力を尽くす。  二年の内にIECはテロリズムからの保護を旗印に、全ての航空輸送の撤廃とインターネットの禁止を完了した。2002年、大西洋上に開通した大陸間横断道路網が東西を繋ぐ。翌年国倫は大陸間物資搬送システムを着工。都市人口の居住すら可能な巨大カーゴを海上に浮かべた』 『核エネルギー技術は封印され、インド洋沖の群島に設置された縮減ドーム内で放射性物質の処分が実施された。  そして現在2006年。残された脅威、大陸間横断ミサイルの廃絶が国際社会の最終目標となった。  しかし新時代の脅威が出現した。謎の『ヘヴンズスマイル』である。死と破壊と恐怖のみを与える、人間の皮を被った生物爆弾。彼らがどのようにして生まれたのか、そして彼らを操る者の目的はいまだ謎に包まれている…』 ※最後の段落以外はほぼ原作のナレーション通りだが、微妙に言い回しが変わっている。注目すべきはこの時点ですでに国際倫理機関が登場し国連の存在が無視されている点、「花火」がカットされている点、ヘヴンスマイルが「ヘヴンズスマイル」に変わっている点だろう。Heaven's Smileと「天国『の』笑顔」という所有格がより明確にされている。書類に隠れて一部しか見えないが、「機密文書」と書かれた書類に混じってハンサムマンのコミックらしき表紙や、「JACOB'S REPORT」の文字も見える。副読本のJaco's Reportとそこに登場するミス・ジェイコブ (Jacob) と関連するのだろうか? 机の上のサングラスの存在によって、この書類の主は後に登場するミルズだとわかる。 P.2 PANEL1〜2 〈ニューヨーク 国際倫理機関本部〉 本部ビルの前に各国の旗が翻る。スピーチの声。 〈「地球の全生命を9度滅ぼしうる量の核兵器が、兵器庫を満たし続けてきました」〉 〈2006年2月10日 午前9時9分〉 〈「世界はもはやこの死の使いを恐れることはなくなるでしょう」〉 ※ビルの前に立つ旗は順に日本、イギリス、国倫、アメリカ、左半分だけ見える旗。最後の旗は白地に左上がユニオン・フラッグという架空の国旗か(イギリス領南極地域の旗にも見えるが、まさかそんな事はないだろう)。国倫の旗は国連旗のデザインに似せてあるが、地色が赤色で、下部に2本のサーベルが描かれているのが決定的な違いである。 P.3〜P.4 ※明らかに3ページ目と4ページ目が入れ違った乱丁なので、ここでは正しいページ順に並べ変えている。 P.3 PANEL1 〈IEC総会議場 事務局長演説〉 「核ミサイルと迎撃用ミサイルの高高度での激突による廃棄処分を展開します」 P.3 PANEL2〜3 「人々は上空で炸裂する輝きを目にし──」 〈IEC事務局長〉 事務局長「──光のショーの目撃者達は、核兵器廃止条約の条約国が義務を果たしたことを知るでしょう」 背後の席で一人が唐突に笑い声をあげる。 男「HEE HEE!」 P.3 PANEL4 事務局長「この爆発は平和の象徴であり、新世界秩序の象徴、──」 事務局長の背後でHSへと変貌する男。 事務局長「──そして核の恐怖の終焉を意味します」 HS「HA-HAHAHAHAHAHA!!」 P.3 PANEL5 HSが事務局長に迫る。 事務局長「世界は希望に満ちています!」 P.4 PANEL1〜2 HS「HA-HAHAHAHAHAHA!!」 事務局長に襲いかかるHS。 大爆発。 P.5 PANEL1 小学校。合衆国大統領の学級参観の様子。 〈ルイジアナ州マジソンヴィル 午前9時25分〉 女教師「みんな聞いて! 大統領が『はらぺこあおむし』を読んで下さるわよ。さあどうぞ、大統領閣下!」 ※このシーンは9・11当日のブッシュ大統領の姿にだぶらせて描かれている。『はらぺこあおむし』は実在のベストセラー童話。 P.5 PANEL2 大統領「むかしむかし、おなかをすかせた小さなあおむしがいました。あおむしはとてもおなかがすいていたので……」 〈アメリカ合衆国大統領ハーバート・ウォーカー〉 ※「合衆国」としか呼ばれなかった原作と異なり、明確に「アメリカ」の国名が使われている。現職大統領の姿が描かれるのもコミック版独自の展開。ハーバート・ウォーカー大統領の名は原作に登場するFBI捜査官ハルバートを連想させるが、スペルが違っている。 P.5 PANEL3〜5 大統領「あおむしは……」 大統領に耳打ちするSP。 大統領は天を仰ぎ見る。 泣き出す子供。 P.6 PANEL1〜3 大統領車内。 副大統領「──そうです大統領。テロリストはIECの核兵器廃止条約調印式の真っ最中に現れました」 大統領「ヘヴンズスマイルだと?」 副大統領「はい、閣下」 頭痛に眉間を押さえる大統領。 P.6 PANEL4 車内のモニターには爆発するビルのニュース映像。大統領は薬(頭痛薬?)を飲み干す。 副大統領「情報規制を敷きましたが、時間の問題です。事務総長をはじめ、我が国の大使とロシア代表の大半が爆死しました」 ※ニュース映像には「VOX NEWS」の名。実在のニュース専門局FOX NEWSのもじりだろう(VOXは「言葉」の意)。 P.6 PANEL5〜6 国務長官「FBIの科学捜査で判明しましたが、あの笑う顔は我が国の代表団の一員だったようです」 〈合衆国国務長官 コンスエラ・ホワイト〉 大統領「何という事だ…」 〈副大統領 リチャード・マレー〉 副大統領「何より悪い事に…、調査によれば日本の仕業らしいと。昇風会です。もしこの件が漏れれば…」 ※2人のスタッフもコミック版オリジナルキャラクター。それぞれブッシュ政権のコンドリーザ・ライス国務長官とディック・チェイニー副大統領がモデルのようだ(リチャードの愛称はディックである)。昇風会は原語では「RISING WIND」。強まる風という意味だが、ここでは固有名詞。後に出る「RISING WIND PARTY」という表現と合わせて日本語として訳した。 P.7 PANEL1 大統領「昇風会だと? 日本は同盟国だろう! 一体…一体どうすれば?」 P.7 PANEL2 国務長官「我々には…この種の問題にうってつけの切り札があります」 大統領「SOCOMか?」 ※SOCOM=特殊作戦軍 P.7 PANEL3 副大統領「いいえ。連中はもっと…非公式な、フリーエージェントです」 大統領「傭兵かね?」 P.7 PANEL4 副大統領「厳密には違います」 大統領「もったいぶるのはよさんか!」 P.7 PANEL5 副大統領「通称スミス同盟、コードネームはキラー7。できれば使いたくない連中ですが、この状況下では他に手はありません」 国防長官「言うまでもなく、コレは極秘事項です。彼らとの交渉には代理人を通してください。平たく言えば斡旋屋ですが。名前はクリストファー・ミルズ」 ※国務長官が差し出している書類の表紙には「K7」の字。 P.7 PANEL6〜7 大統領は決意した表情。 大統領「よかろう。ミルズ君とやらをホワイトハウスへ」 P.8 PANEL1〜4 〈ワシントンD.C. 午後13時56分〉 陸橋の上にたたずむミルズ。 〈クリストファー・ミルズ〉 ミルズがふと気付くと、隣には── 〈ガルシアン・スミス〉 ※今回のミルズは服こそいつものタートルネックだが、ケヴィン・スミスばりの派手でごついサングラスにライダーグローブという出立ち。路上にスポーツカーを停めているのは原作通りだが、色は赤(原作では笑顔の章まで赤い車に乗る事はない)。ナンバープレートはかろうじて「KIN ETIC」と読める(killer7のコミックシリーズは「Kinetic Komicz」レーベルから発売されている)。高架の下を通るトラックには『バイオハザード』の悪役「アンブレラ・コーポレーション」の文字。カプコンゲーム繋がりのお遊びだろう。 P.9 PANEL1〜2 ミルズ「ヘヴンズスマイルがIECの調印式を吹っ飛ばした。我らが祖国は原因究明をご所望だ」 ガルシアン「手掛かりはあるのか?」 ミルズ「怪しいのは昇風会だ。日本の国際化に反対する過激な右翼系政党。第二次大戦中の日本の悪行も肯定する連中だ。まずはココを探ってくれ。反ミサイル条約に抵抗している唯一の勢力だからな」 ミルズは書類を渡す。 ※昇風会は原作での国連会。あえて名を変えたのは国連会の名がいたずらに国際連合と混同されるのを避けるためか。 P.9 PANEL3 ガルシアンは書類に目を通しながら、 ガルシアン「ワシントンか?」 ミルズ「ああ。『料亭フクシマ』 人気の高級店だ。先週ケネディ上院議員とウェイトレスのお熱い情事がバレた場所さ」 P.9 PANEL4〜5 ガルシアン「なるほど。誰を殺る?」 ミルズ「主宰のトオル・フクシマ。昇風会と政府の仲介役だ」 P.10 PANEL1 ガルシアン「なぜkiller7を? 祖国の領分では?」 ミルズ「そこが問題だな。俺の見立てじゃ、連中は自分の手駒で勝負に出たくないようだ。ホワイトハウスは警戒している。昇風会にはビビるだけの何かがあるんだ」 P.10 PANEL2 ミルズ「ガキの使いを同盟に頼むはずがない。狙いは昇風会潰しだろう」 P.10 PANEL3 ガルシアン「裏の世界というわけか。ワシントンが主戦場とは、荒れ模様になりそうだな」 P.10 PANEL4 ミルズ「それと、情報が要るならカサイという男に会ってくれ。使える情報屋で…数ヶ月前に昇風会を脱けている。とにかくまずはトオル・フクシマだ。2500万USドルがあいつの首に懸かっている」 P.10 PANEL5〜6 ガルシアン「了解」 P.11 PANEL1 トレーラーハウスに入るガルシアン。 ※第0話と違って、原作に忠実な質素で薄暗い室内である。 P.11 PANEL2〜3 留守番電話『EEP! 1件 ノ 伝言ガアリマス』 留守番電話が再生される。 『こんにちはスミスさん。選挙が近づいています。投票の決断はお済みですか? 我が民産党に清き1票を! 良い一日を!』 P.11 PANEL4 ガルシアンの指が消去ボタンに伸びる。 『EEP! 消去シマシタ』 P.11 PANEL5 鉄の扉を開くガルシアン。 P.12 PANEL1 乱雑に散らかった部屋。ベッドの上に座り込んだ人物の声がする。 「起きなさいよハーマン、この糞ジジイ!」 ※原作ではハーマン部屋にあたるが、ベッドやPCなど調度が追加されている。乱雑に床に放置されたタバコや空き缶、飛行機の玩具は誰の物か? 点けっ放しのテレビに映っているのはアメリカンフットボールの映像だろうか。 P.12 PANEL2〜3 サマンサが車椅子の上で身じろぎしないハーマンの頬を打つ。 サマンサ「3時から講義だってのに、とっくに遅刻よ!」 〈サマンサ・シットボーン〉 ※非覚醒状態のハーマンだが、車椅子にはしっかりと対戦車ライフルが備え付けられている。これは以後も同様。 P.12 PANEL4〜5 ガルシアンはその様子を横目に、部屋の明かりのスイッチを切る。 ※原作ではテレビがハーマン覚醒のスイッチだったが、ここでは部屋の明かりがスイッチに変わっている。 P.13 PANEL1〜2 覚醒するハーマンとメイド姿になったサマンサ。 サマンサ「御主人様がお目覚めです」 P.13 PANEL3 跪くガルシアンに、 ハーマン「ガルシアンよ、楽にしろ」 〈ハーマン・スミス〉 P.13 PANEL4 ガルシアン「マスター。勅命を預かっています」 ハーマン「意識を感じた…。嵐が来るぞガルシアン。虐殺の日だ。日本と合衆国は旧友であり旧敵なのだ。我が友は国を消そうとしている」 P.14 PANEL1〜2 ガルシアン「昇風会。トオル・フクシマという男を殺す依頼です」 ハーマン「ガルシアンよ、それでいい。動き出した時代は止められんのだ」 ガルシアン「仰せのままに、マスター」 P.14 PANEL3〜5 ハーマン「サマンサ、明かりを」 サマンサはリモコンを手に取り、ONボタンを押す。 P.15 PANEL1 再び私服に戻ったサマンサ。ガルシアンの背中に呼びかける。 サマンサ「もう帰っていい? ガルシアン」 ※サマンサの服は原作よりさらに扇情的である。 P.15 PANEL2〜6 ガルシアン「ああ。ありがとう」 サマンサ「またね、ガルシー」 ガルシアンはサマンサを見もせずに紙幣を差し出す。 背中越しに受け取るサマンサ。 「ありがと」 投げキスをして去っていく。 P.16 PANEL1 〈ワシントンD.C.郊外〉 〈料亭フクシマ〉 〈午後17時32分〉 正門前にたたずむガルシアン。 ※これ以降、店構えは常に典型的な中国文化と日本文化を混同した上にどちらの視点でも間違った風景。ここで描かれている門は鳥居か。鞄を持ったガルシアンが描かれるのはコミック版ではこのシーンが初めてである。鞄が(とても首が入りそうにないほど)薄く描かれているのは意図的なものか作画ミスか。 P.16 PANEL2 銃を構えるガルシアン。 ガルシアン「始めるか」 P.17 PANEL1 突然、ガルシアンの前にイワザルが宙から出現する。 ガルシアン「!」 P.17 PANEL2 ガルシアン「イワザルか」 イワザル「御主人様。キツイです」 P.17 PANEL3 イワザル「マジでキツイです。ココには御主人様以外にも殺し屋がいます。2人もです! 信じられません。この場所に2人の殺し屋ですよ」 P.17 PANEL4 イワザル「1人はフクシマを殺すため──御主人様の商売敵です! もう1人は護衛です。お気をつけ下さい。1人でも尻尾を巻きたくなる強敵ですわ」 P.17 PANEL5 ガルシアン「他には?」 イワザル「いいえ御主人様。くれぐれもお気をつけを──」 P.17 PANEL6 イワザル「我はハーマンの名の下に…」 宙に消えて行くイワザル。 P.17 PANEL7〜8 ガルシアン「殺し屋が2人か。上等だ」 P.17 PANEL4〜6 入り口の扉を叩くガルシアン。門に据えられたカメラに向かって挑発的に銃を掲げる。 P.18 PANEL1 門の内側ではジュリア・キスギがガルシアンの姿をモニターしていた。 ※キスギは常に毅然としていた原作よりも親しみやすいイメージで描かれている。 P.18 PANEL2 キスギはインターホンでフクシマに連絡する。 キスギ「正面入口に黒人男性が来訪中です。扉を開けますか、フクシマ殿?」 ※「フクシマ殿」は原文ママ(「FUKUSHIMA-DONO」)。 P.18 PANEL3〜4 マイクに向かって話すフクシマの顔は口までしか見えない。 フクシマ「黒人男性?」 キスギ「はい。白いスーツを着て、大きな鞄とサイレンサーの付いた拳銃をお持ちですわ」 P.18 PANEL5 フクシマ『サイレンサー付きの銃を持った白いスーツの黒人男性が正面入口にいるのだな?』 キスギ「その…どういたしましょうか、フクシマ殿?」 P.18 PANEL6〜7 フクシマ『彼がトラブルをお求めのようなら、相応にもてなしてやるといい』 キスギは通信を切る。 P.19 PANEL1 マスク「RRRR」 突如扉を素手で破ってマスク・ド・スミスが乱入してくる。 ※マスクの覆面は原作「天使」登場時の最も有名なデザイン。 P.19 PANEL2 キスギ「そんな!? あの男は一体どこから…」 P.19 PANEL3 〈マスク・ド・スミス〉 マスクは両手のグレネードを構える。 ※アップになると分かるが、原作で描かれていた覆面の下の火傷の跡はコミックでは描写されていない。 P.20 PANEL1〜2 キスギは逃走し、マスクがそれを追って広間に出る。 P.20 PANEL3 3人の店員がにこやかにマスクを迎える。 店員「イラッシャイマセ。お一人様でしょうか?」 P.20 PANEL4 マスク「7名。だがサケ・バーではなく、フクシマさんに会いたい」 店員「ご用件をお聞きしてよろしいですか?」 P.20 PANEL5 マスク「フクシマオーナーを殺りに来ました」 P.21 PANEL1〜3 店員「どうぞお召し上がりください」 HSに変貌していく店員達。 HS「HA-HAHAHAHAHAHA!!」 P.21 PANEL4〜5 飛びかかるHSにグレネード弾を見舞うマスク。激しい爆発。 P.22 PANEL1 燃え上がるHSの死体と、その前に傲然と立つマスクの姿。 〈次回に続く〉 killer7 #2 COVER ※料亭フクシマでのマスク・ド・スミスの戦い。マスクが多数のHSに食らいつかれているが、HSはクリーチャー然として描かれており原作の面影は薄い。画面の隅でさりげなくキスギが銃を抜こうとしているのは巧妙な伏線である。あちこちにニセ漢字がちりばめられているが、一番大書された書は「銀冬山」とかろうじて読める(意味は無いだろう)。 P.1 PANEL1〜2 HSの顔のアップ。 HS「HA-HAHAHAHAHAHA!!」 それを踏みつけるマスクの靴。 HS「*」 P.1 PANEL3 炎に包まれた料亭フクシマに悠然と立つマスクの姿。 〈「落日」第2章 トゥ・モック・ア・キリングバード〉 ※題名は古典映画およびその原作小説『To Kill a Mockingbird(邦題:アラバマ物語)』と、それをもじった題名の有名なパズル本『To Mock a Mockingbird』をさらに合成したもので、直訳すれば「殺しの鳥を嗤え」。謎が謎を呼ぶ展開と、翻弄されるキリングバード──killer7の姿をかけている。 P.2 PANEL2〜3 マスク「ミエーダ!」 ※スペイン語で「くそっ!」 P.2 PANEL4 6体のHSが一気に襲いかかる。 P.2 PANEL5〜6 マスクは頭上の気配に気付く。 マスク「!」 P.3 PANEL1〜2 HS「HA-HAHAHAHAHAHA!!」 1体のHSが天井にぶら下がっている。 ※原作のアナザースマイル。 P.3 PANEL3〜4 アナザースマイルが落下、マスクは避ける。 P.3 PANEL5 グレネードをアナザースマイルに発射するマスク。 P.4 PANEL1 グレネード弾を口の中に受けてしまったアナザースマイル。 HS「HURK!」 P.4 PANEL2〜3 マスクはすかさずアナザースマイルを残りのHSに向けて蹴り込む。 大爆発。 ※原作でのヘッドボムスマイルの誘爆を思わせる描写である。 P.5 PANEL1〜3 マスクは炎の中を悠々と歩き、ドアを開く。 P.5 PANEL4 血しぶきにまみれた調理室。切り刻まれた豚の肉塊が散乱している。入ってきたマスクに驚きおびえる若い料理人の手には、血まみれの料理ナイフが握られている。 料理人「OH NO!」 ※もちろんこの料理人は変装したジャン・デポール。原作ではコック服で登場したが、コミック版では日本の板前のような服装(考証がひどく間違っているのは言うまでも無い)。なぜかこの一連のシーンでは常にデポールの周囲に蝿が舞っているのだが、この部屋の不潔さの表現か、あるいは他の料理人を殺したことの暗示か。 P.5 PANEL5 マスク「笑い声をあげれば撃つ」 P.6 PANEL1〜2 料理人「待ってくれ! 俺はただの副コック長だよ!」 マスク「ではここで何をしていた?」 P.6 PANEL3〜4 料理人「片づけさ」 マスク「片づけね。アミーゴ達はどうした?」 料理人「あんたが見た“笑う顔”がそうだよ」 P.6 PANEL5 マスクは背を向け去ろうとする。 マスク「なら早く逃げろ。上手く立ち回れば正面玄関にたどり着けるはずだ」 料理人「ま…待って!」 P.7 PANEL1 料理人「あんたマスク・ド・スミスじゃないか?」 マスク「ああ」 P.7 PANEL2 料理人「死んだって聞いてたのに! あんた最高のレスラーだったよ! 一体どうなってるの?」 P.7 PANEL3〜4 マスク「転職…と言うほど簡単じゃないが、今は君同様『片づけ』をしている。さあ、ココから逃げるんだ」 去って行くマスクの後ろ姿と見送る料理人。 P.7 PANEL5 料理人「カッコいいね!」 P.8 PANEL1 庭園の橋を渡るマスク。 マスク「ここまで広大なレストランは初めてだ…」 P.8 PANEL2〜3 マスクは「離れ」らしき建物の前に立つ。 P.9 突如、全身から血液を撒き散らすマスク。 P.10 PANEL1〜5 マスクの体そのものが血液となり拡散し、それが再び1つになりガルシアンの姿に変わる。 〈ガルシアン・スミス〉 ※原作での人格交替シークエンスの忠実な再現。 P.11 PANEL1〜2 扉を開け中に入るガルシアン。 P.11 PANEL3 中には数珠を持ったキスギが待ち構えていた。銃を向けるガルシアンに向けて、 キスギ「フクシマがお会いになるそうです」 P.11 PANEL4〜6 ガルシアン「私がココに来た理由を知った上で?」 キスギ「はい。フクシマはあなたと会談をお望みです」 ガルシアン「死もお望みなのか?」 P.12 PANEL1 キスギ「フクシマと話せばお分かりになるでしょう。どうぞ」 扉を開けて迎え入れるキスギ。 P.12 PANEL2 ランプの明かりだけが点く暗い部屋。テーブルの奥にフクシマが座っている。 フクシマ「ようこそ、スミス君」 P.12 PANEL3 〈トオル・フクシマ〉 ※フクシマはバスローブ状のものを着ているが、これは着流しのつもりか。原作と異なり車椅子に座り、総髪ではなくオールバックに前髪をひとすじ垂らし、顔に古傷のある姿である。 P.12 PANEL4〜5 ガルシアン「どうして私の名を?」 フクシマ「知っているのはそれだけではないさ」 ガルシアン「たとえばあなたを殺しに来た事も?」 P.13 PANEL1〜2 フクシマ「大した問題ではないよ、スミス君。死は羽毛より軽く、宿業は山よりも重い」 ガルシアン「興味深いな」 P.13 PANEL3 フクシマ「お茶などいかがかな。ジュリア、緑茶を」 P.14 PANEL4 キスギ「はい、フクシマ殿」 フクシマ「政治屋になる前は茶人に憧れていてね」 P.14 PANEL5 ガルシアン「政治とは昇風会の事か?」 フクシマ「第二次大戦の沖縄戦だった」 P.14 PANEL6 ガルシアン「何?」 P.15 PANEL1 フクシマ「7人の日本兵だけが生き残り、他は皆死んだ。10万人以上だ。彼らは敗北し死を受け入れたのだ。死は羽毛より軽く、宿業は山よりも重い」 P.15 PANEL2 フクシマは狂的な笑みを見せる。 フクシマ「生き残った7人のうち1人が私だ」 P.15 PANEL3 着席したガルシアンとフクシマの会話は続く。 ガルシアン「歴史の講義は結構だが、昇風会とどう繋がる?」 フクシマ「まあ待ちたまえ。死にゆく者の最後のお喋りだよ」 P.15 PANEL4 フクシマの回想。火炎放射器を構えた米兵。 米兵「繰り返す、手を上げて出てこい!」 フクシマ「沖縄戦だ。小隊で唯一生き残った私は、洞穴を掘り逃げ込んだ」 P.15 PANEL5 米兵「駄目です。出てきやがりません」 上官「丸焼きにしてやれ」 米兵「イエス・サー!」 フクシマ「米兵は火炎放射器を使った。洞穴の酸素を奪い尽くす勢いでな」 P.15 PANEL6 炎に晒される回想のフクシマ。 フクシマ「死ぬはずだった。だが不意に私には理解できたのだよ。気付いたのだ。神が私を救ったのだと」 P.16 PANEL1 ガルシアン「神とは愉快だな」 フクシマ「数週間後、私は米軍の野戦病院にいた」 P.16 PANEL2 フクシマ「広島も長崎も滅ぼされ、私も滅ぼされた。日本は世界大戦に負けたのだ」 P.16 PANEL3〜5 フクシマの顔が冷静さを失い始める。 フクシマ「日本は高みに昇る。世界を支配するぞ、スミス君。神の望みなのだ」 フクシマ「死を受け入れる? 冗談では無い!」 フクシマ「神は言ったのだ。私は選ばれて救われたと。沖縄で生き残った6人同様、神が選んだのだ」 P.16 PANEL6 ガルシアン「昇風会を生むためにか」 P.17 PANEL1〜3 フクシマ「日本は西洋に取り込まれた。合衆国の奴隷としてな。だが下僕と主人が入れ替わる日がやって来る」 フクシマ「生き残り7人の前に神が降りたのだよスミス君。彼は八雲の秘蹟を授けてくれた。スミス君、八雲だよ。日本の誇りを取り戻し、復活するための力だ!」 フクシマ「今がその時だ。動き出した時代は止められん! 私が死ぬ筈が無いのだ。国際倫理機関への攻撃は始まりにすぎんぞ!」 P.17 PANEL4 フクシマ「ああ、お茶が来たようだ」 キスギが茶を運んでくる。 P.17 PANEL5〜6 フクシマ「どうもありがとう。八雲は…」 フクシマが茶を飲もうとしたその時、その額を銃弾が撃ち抜く。 P.18 PANEL1 驚愕するガルシアン。 P.18 PANEL2〜4 倒れたフクシマの死体。ガルシアンが睨み付けるその先には、銃を構えたキスギ。 P.19 PANEL1〜2 ガルシアン「私の仕事だったはずだが?」 キスギは無言。 P.19 PANEL3 ガルシアン「失礼する」 背を向けたガルシアンに銃を向けるキスギ。 キスギ「八雲を出せ」 P.19 PANEL4 ガルシアン「何だと? 八雲とは一体何だ?」 P.20 PANEL1〜4 キスギの銃撃をかわし、すかさず反撃するガルシアン。正確にキスギの利き手を撃ち抜く。 P.21 PANEL1 ガルシアン「フクシマを狙う殺し屋がもう1人いると聞いていた。任務成功のようだな」 キスギ「この期に及んで白を切るつもり?」 P.21 PANEL2 キスギ「まさか本当に八雲を知らないの?」 P.21 PANEL3 笑い出すキスギ。 キスギ「HA HA HAH!」 P.21 PANEL4 キスギ「八雲は合衆国を滅ぼすぞ」 P.21 PANEL5〜6 キスギはネックレスを掴み、仕掛けられたスイッチを噛む。 ガルシアン「止せ!」 P.22 PANEL1〜2 ネックレスに内蔵された爆弾が爆発する。 P.22 PANEL3〜4 爆発を避けたガルシアンが見たのは、無惨に生首が転がるキスギの死体。 P.23 PANEL1〜4 〈10分後…〉 庭園。ガルシアンは携帯にミルズからの着信を受ける。 ミルズ『ガルシアン!』 P.23 PANEL1 薄汚れた路地の公衆電話から電話するミルズ。公衆電話には特殊な機器が繋いである。 ミルズ「殺し屋が2人放たれたって情報を掴んだ。一人はジュリア・キスギ。フクシマの組織に秘書として潜り込んでいる」 ※電話に繋げられた機器は原作「落日」の章オープニングで公衆電話が連絡に使われた時の描写を意識したものか。ここで描かれているのはより簡素な携帯型の端末である。 P.23 PANEL2 ガルシアン「らしいな。彼女は死んだ」 ミルズ『死んだ!?』 ガルシアン「フクシマを殺った後、自分の命も絶ったのさ」 P.23 PANEL3 ミルズ「オーケー、その件はいい。フクシマの護衛に派遣されたもう1人の殺し屋はどうだ? 見習いコックに化けている」 P.23 PANEL4 ガルシアン「あのコックが殺し屋だと!?」 ミルズ『名前はジャン・デポール』 P.23 PANEL5 ミルズ「昇風会の手の者だ。奴は今進められている合衆国国務省と日本自民会の秘密会談を阻止しようとしている。自民会は昇風会の反対勢力。連中と合衆国が手を組めば、昇風会の風が凪ぐ…」 ※原作ではデポールは国倫の諜報員。「落日」の章の複雑に交錯する組織関係を、コミック版では当面の悪役を昇風会ひとつに担わせて読み手に分かりやすく簡略化している。 P.24 PANEL1 ガルシアン「よし。八雲という言葉に聞き覚えは?」 P.24 PANEL2 ミルズ「ヤクモ? 初耳だな。日本語か?」 ガルシアン『恐らくは』 P.24 PANEL3 ガルシアン「IEC襲撃に噛んでいるようだ。それ以上の事は分からない」 P.24 PANEL4 ミルズ「そうか… とりあえずは例の秘密会談の件だ。今すぐそこを発ってくれ」 P.24 PANEL5 ガルシアン「了解」 P.24 PANEL6 携帯を切るガルシアン。 〈次号:トラ・トラ・トラ!〉 killer7 #3 COVERS ※第3巻と第4巻はマルチカバー仕様になっている。元来アメリカン・コミックでは読者の目につく表紙のみ花形アーティストが務める場合が多く(killer7 #1、#2の表紙も中身と別人の筆である)、特にマルチカバーはこれを一歩進めて「同じ内容で表紙違い」のバリエーションを用意するという、ファンのコレクター気質をあてこんだ一種の限定品商法である。 COVER-Normal ※ウルメイダのステージ爆破事件の一コマ。爆破の光をウルメイダの頭上に天使の輪のように配置して、キリストを思わせるウルメイダのポーズとあわせて神秘的なイメージで描かれている。実際にはこの号ではステージ爆破事件は起こらず、ウルメイダもラスト2コマしか登場しない。 COVER-Collector's Edition ※1巻〜2巻のカバー画も担当したサンフォード・グリーンによる特別仕様カバー。左からコヨーテ、コン、カエデ。中国街らしき背景には相変わらずインチキ漢字が踊っていて、ひときわ目立つ看板にはなぜか「定価」と大書されている。コヨーテはやはりタバコを銜えた姿。グリーン独自の解釈なのだろう。 P.1 PANEL1 〈2006年2月11日 午前8時47分〉 血まみれの麻雀牌。 ※日付はIEC爆破事件から約24時間が経過していることを示す。 P.1 PANEL2〜3 ガルシアンの眼前には麻雀卓に血を流して突っ伏す4人の男性。 ガルシアン「SHIT」 ※原作では彼らは互いの利害が一致せず交渉決裂、暗殺者デポールの到着を待たずして撃ち合いとなり全員死亡するという筋立てだが、コミック版では単純化してデポールに殺されたという形になっている。麻雀卓のところどころに置いてあるカジノチップは点棒の代わりだろうか。 P.1 PANEL4 〈トラ! トラ! トラ!〉 ※タイトルのトラ・トラ・トラは言うまでも無く、日本軍の真珠湾攻撃成功を伝えた電信文で「ワレ奇襲ニ成功セリ」の意。昇風会の動向を暗示している。 P.2 PANEL1 携帯を取るガルシアン。 ガルシアン「ミルズ」 P.2 PANEL2 ミラーボールのある店内で携帯を受けるミルズ。 ミルズ「ガルシアン、首尾は?」 P.2 PANEL3 ガルシアン「一本取られてしまった」 P.2 PANEL4 ガルシアン「昇風会に先を越された。合衆国と日本の代表全員で脳漿を3オンスはぶち撒けている。いや…待て」 P.2 PANEL5〜6 倒れた一人に目をやるガルシアン。まだ息がある。 代表「UHHHNGH…」 P.3 PANEL1 代表「昇…風会の…親父どもが…屋上階に…。行け…犯人が…」 P.3 PANEL2〜3 代表「UHHN」 事切れる男。ガルシアンは携帯を手にする。 P.3 PANEL4 ガルシアン「聞こえたな?」 ミルズ『ああ』 ガルシアン「まだツキはある。昇風会の大物が屋上にいるようだ」 P.3 PANEL5 ミルズはストリップバーから電話している。 ミルズ「願ってもないが、気を付けろよガルシアン。罠かもしれん。フクシマ亭の殺し屋ジャン・デポールの事を忘れるな。奴もビルの中にいる筈だ」 P.3 PANEL6 ガルシアン「了解」 携帯を切るガルシアン。 P.4 PANEL1 〈一方、屋上階では…〉 テーブルについた老人二人。 アキバ「フクシマが死んだか、クラハシよ」 クラハシ「感じたぞ、アキバ様」 ※「アキバ様」は原文ママ(「AKIBA-SAMA」)。 P.4 PANEL2 クラハシ「戦後復興から65年、儂らが必死に作り上げた愛しき日本。幕を引かねばな。1944年の沖縄を逃れたツケを払う時よ」 P.4 PANEL3 アキバ「風が吹いておる。風は木を揺らし腐った果実を落とすじゃろう」 P.4 PANEL4 アキバ「倫理屋どもが風を骨抜きにして大樹を守ろうとも無駄なことよ」 厳しい視線の二人。 P.5 PANEL1 憤って立ち上がるマツオカ・ケンジロウ。 マツオカ「何を…何様のつもりじゃ!? わしゃあ昇風会にきっちり命ァ捧げとるわい。疑うんなら──」 ※コミック版では「キバ」「クララ」「マツケン」といった3人のあだ名は出ない。 P.5 PANEL2 クラハシ「黙れマツオカ!」 P.5 PANEL3 クラハシ「若い奴はキレやすくてたまらんよ、アキバ」 アキバ「老人に対する礼儀を知らんのだ」 P.5 PANEL4〜6 胸の拳銃を机に叩きつけるクラハシ。 クラハシ「忠誠を示したいそうだな」 P.6 PANEL1 クラハシ「自害しろ」 銃をマツオカの前に滑らせる。 P.6 PANEL2〜3 マツオカはためらったあげく銃を2人に向ける。 P.6 PANEL4 アキバ「儂らを殺るか? いいぞ、殺っても。死など覚悟の上よ」 P.6 PANEL5〜6 躊躇するマツオカを見て、2人は笑う。 クラハシ「撃つ根性もないか」 アキバ「この会も終わりだな」 P.7 PANEL1〜2 マツオカ「黙らんか、ジジイ共!」 逆上したマツケンは2人の頭を撃ち抜く。 P.7 PANEL3〜4 頭から脳漿を溢して死んだはずの2人が笑いながら起き上がる。 「HAHAHAHAHA!!」 P.7 PANEL5〜6 クラハシ「死は羽毛よりも軽い。これぞ八雲の力よ」 ぼう然とするマツオカ。 P.8 PANEL1〜2 マツオカは自害しようと銃を口に銜える。 P.8 PANEL3〜4 そのマツオカの肩に何者かが手を置いた。 P.8 PANEL5 マツオカ「お…おどれは何者じゃ?」 P.8 PANEL6 マツオカの背後に忽然と現れたのはクン=ラン。 クン「死ぬには早いよケンジロウ・マツオカ。そう、まだね」 P.9 PANEL1 〈地下室では…〉 場面転換。マスク・ド・スミスが階段を下りる。 P.9 PANEL2 マスクの顔の傍を銃弾が横切る。 P.9 PANEL3 マスク「そこにいるのはジャン・デポールだな!」 曲がり角の死角越しにデポールの声。 デポール「また会ったね、われらがマスク!」 P.9 PANEL4 マスク「地下室の代表団を殺したのは君か!」 P.10 PANEL1 戦闘服に身を包んだデポール。 デポール「そうとも。そして次はあんたの番だ! 生きた伝説を殺すのが俺の夢だった。そんな男は何になると思う?」 ※デポールの服装は原作よりもSFテイスト。額に巻いたバンダナ(?)といい、どことなく『メタルギア・ソリッド』シリーズを思わせるデザインである。 P.10 PANEL2〜3 マスク「殺し屋だ」 デポール「そう言うあんたは何者かな?」 P.10 PANEL4〜5 二人は互いに死角から飛び出し銃を撃つ。 P.11 PANEL1 マスクは銃弾を避け、一方── P.11 PANEL2〜4 デポールの頭上の天井が砕け、デポールは下敷きとなる。 デポール「AHHH!」 P.11 PANEL5〜7 瓦礫に押しつぶされ、銃を取り落とし傷だらけで身動きできないデポールに、マスクは銃口を向ける。 マスク「最強の殺し屋だ」 P.12 PANEL1〜2 〈屋上階……〉 ペントハウスの扉を蹴破るマスク。 ※原作では武骨なビルだった角ビルだが、コミック版ではやはりアジアンテイストの奇妙なペントハウスになっている。 P.12 PANEL3 部屋の中にはマツオカ、クン、そして血まみれで立つアキバとクラハシ。 マスク「エスタモス・リストス?」 ※スペイン語で「何事だ?」 P.13 PANEL1 マスクに向けて口から脳漿を吐き出すクラハシとアキバ。 P.13 PANEL2〜4 マスクは体にかかる脳漿をものともせず、両手のグレネードを発射する。 激しい爆発。 P.14 PANEL1〜3 二人「HAHAHAHAHA!!」 クラハシとアキバは炎に焼かれ、笑いながら消し炭と化していく。 二人「HAHAHAHAHA!!」 P.14 PANEL4〜5 その様子を見届けるマスクの背後で、マツオカが部屋から去って行く。 マツオカ「HM」 ※マツオカは前段の取り乱した描写と正反対の、冷静で男っぽい表情。コミックでは省略されているが、クンの神の手の作用と考えるべきだろう。 P.15 PANEL1 微笑んでマスクを迎えるクン。 クン「ようこそスミス君」 P.15 PANEL2 マスク「一体全体何者だ?」 P.15 PANEL3 マスクの銃撃を笑って受け流すクン。 クン「HEE HEE HEE HEE!」 P.15 PANEL4 マスク「何だと?」 P.15 PANEL5 マスクは不意に何事かに気付いた様子。 P.16 PANEL1 マスク「これはマスター・ハーマンの気配…」 銃を持った腕を組み、祈るような気を付けの姿勢。 P.16 PANEL2〜4 マスクの全身が血液のように弾け、ガルシアンの姿として再び凝結する。 P.16 PANEL5 ガルシアン「マスター?」 ガルシアンが見る先には、空中に浮遊するクンと、屋上でクンと対峙するハーマン。 ※ガルシアンの家以外でハーマンとガルシアンが同時に存在している様を描くのはコミック独自の表現。大胆な改変だが、副読本の内容と考え合わせれば意外ではない。 P.17 PANEL1 クンは空中で腕を組んだまま優雅に立つ。 クン「まさか君に会えるとは思わなかったよ。ハーマン・スミス」 ※クンが空中を浮遊しているのも意外と言えば意外な描写である。背景には第0話にも登場したワシントン・モニュメント。象徴的な意味合いを持たせる意図があったのか? P.18 PANEL1 ハーマン「児戯に付き合うつもりはないぞクン=ラン。私には分かる。昇風会。IEC爆破。すべて貴様の仕業だ」 ※ハーマンは原作のポーカーフェイスではなく、クンへの敵意をあらわにしている。 P.18 PANEL2 クン「君に嘘はつけないな! 新しい世代がこの時代を清算するぞ。我が子供たち──」 P.18 PANEL3 クン「ヘヴンズスマイルがな」 ※初登場時は原作通り赤く塗られていた瞳が、このコマでは着彩ミスか、なぜか常人の青色で塗られている(他のコマでは瞳の色が判別できるほど大きく描かれていない)。 P.18 PANEL4 ハーマン「只の繰り返しだ。何度殺っても結果は変わらない」 クン「ハーマン、君は分かっていない! 世界は変転している。君が統率できる世界はパスポートサイズになりつつあるぞ」 P.18 PANEL5 哄笑するクン=ラン。 クン「HAHAHAHAHAHAHAH!」 P.19 PANEL1〜2 ハーマン「地獄へ墜ちろ」 背中の対戦車ライフルを取り出しクンに撃つ。 P.19 PANEL3〜4 クン「HAH-HA--」 クンは銃弾を笑ってかわし、遠くへと飛んで行く。 クン「HAHAHAHAHAHAHA!」 P.19 PANEL5 ハーマンの肩に手をかけるガルシアン。 ガルシアン「マスター…」 P.20 PANEL1 〈2月11日 午後5時15分〉 ひどく薄汚れた食堂の外観。窓はひび割れ、空き缶が散乱している。 ※この回の冒頭から約8時間半後。食堂は原作での「The Real cafe」に相当する場所である。狭苦しい軽食店だったRealに対して、コミック版は「TRUCKER」「DINER」の看板が示すようにトラック運転手やバイカー向けの食堂のイメージで描かれている。画面手前に駐車されているオープンカーとバイクはこの後に登場する二人のものだろうか? P.20 PANEL2 店内ではテーブルについた二人の男。片方が話しかけている。 男「ここのミルクセーキは絶品ですよ」 店の奥のテレビモニターには「スパイク・ガールズ」のロゴ。 ※原作ほど狭そうではないが、少なくとも座り心地の悪そうな席。スパイク・ガールズ(SPIKE GIRLS)のモデルは実在のグループ、スパイス・ガールズのもじりだろう。 P.21 PANEL1 ミルクセーキを勧めていた男はヒロ=カサイ。 カサイ「留学してた頃から使ってる店でしてね。汚い感じがいいでしょ」 P.21 PANEL2 その話相手はガルシアン。 ガルシアン「ミルクセーキも世間話も不要だ、カサイ。情報を伝えればいい。八雲だ」 ガルシアンの手にはコーヒー。カサイはミルクセーキを飲んでいる。 ※なぜかこの号ではカサイの名が「クサイ」と書かれている。第1話では正しく「カサイ」と呼ばれていたので、おそらくライターが慣れない日本語を書き間違えたのだろう。 P.21 PANEL3 カサイ「随分とビジネスライクですな!」 P.21 PANEL4 カサイ「八雲ね。正直言って、私はそれが何なのか知らんのです」 P.21 PANEL5 席を立つガルシアン。 ガルシアン「情報感謝する。この件は忘れてくれ」 P.22 PANEL1 その腕をつかみ引き止めるカサイ。 カサイ「ただ力ある物という事は確かです! アキバとクラハシ──」 P.22 PANEL2〜4 テレビモニターに映るセクシーな4人組、スパイク・ガールズのライブ映像。 カサイ「──彼らが、その、今朝殺されたことで…昇風会の創設メンバーが全員消えました。長老連の代行はマツオカ。彼が計画の跡を継ぐでしょう」 ガルシアンは話に興味を惹かれた様子。 P.22 PANEL5 ガルシアン「計画とは?」 P.22 PANEL6 カサイ「合衆国の破壊」 ガルシアン「それが可能だと?」 P.22 PANEL7 一時考えるカサイ。 P.23 PANEL1 カサイ「はい」 P.23 PANEL2 カサイ「私が知っているのは正真正銘ここまでです。下っ端に分かることと言えばね。八雲について知りたいなら、会うべき男がいます。テキサスのアンドレイ・ウルメイダ」 P.23 PANEL3 ガルシアン「あのアンドレイ・ウルメイダか?」 カサイ「そう」 ガルシアン「ファーストライフ社のウルメイダと八雲に関係が?」 P.23 PANEL4 カサイ「ええ。昇風会にいた頃は何度もその名を聞きましたよ。ウルメイダは八雲の何かを知っている。秘密をね。殺されて然るべきでしょうが、なぜか昇風会は彼を恐れていた」 P.23 PANEL5 ガルシアン「なるほど。八雲は昇風会だけの物ではないという事か。並の狂信者ならともかく、テキサスの狂信者と関わり合いたくはないが…」 ※テキサス州はアメリカに属さない独立国だった時代もあり、米国の中でも独特の気風を持つ州として知られている。 P.23 PANEL6 突然ノイズで乱れるテレビモニター。二人が注目する。 P.24 PANEL1〜5 ノイズの中に不意に浮かぶスパイク・ガールズの顔写真と文章。 『技術的障害が発生しています。スパイク・ガールのライブ再開までしばらくお待ちください』 再びノイズ。 なぜかファーストライフのクレジットが表示される。 『魂の準備を!(TM) ファーストライフ(TM) 創業者/救世主/CEO アンドレイ・ウルメイダ』 画面に映るウルメイダの顔。 ウルメイダ『俺の名はアンドレイ・ウルメイダ。この先重要な男となる。大衆は俺を求める』 P.25 PANEL1 画面の中のウルメイダはライブ会場のドームを背に、恍惚とした様子で演説する。 ウルメイダ「スパイク・ガールズの邪魔をして悪いが聞いてくれ。神の言葉を伝えよう。とても自分を抑えられそうにないんだ。言っちまおう! 神を讃えよ! 神を讃えよ!」 ※背景の看板には「スパイク・ガールズ 2/11〜13!」の文字。原作ではこのエピソード(「雲男」の章)は「落日」の数ヶ月後という設定だが、コミック版では一続きの流れで語られている。 P.25 PANEL2 ガルシアン「よかろう。神を讃えに行こうじゃないか」 〈次号:ようこそ天国へ!〉 killer7 #4 COVER-Normal ※ジャイアントスマイルの瞳に狙いを付けるコヨーテ・スミスの図。組立中のやぐらを舞台に俯瞰で描いたダイナミックな構図だが、本編中にはこのような場面は登場しない。アメリカン・コミックスでは扉絵はあくまで内容の象徴であって、実際に起きない事件を具体的に扉絵に描いてしまうことも多い。 COVER-Collector's Edition ※3巻同様サンフォード・グリーンによる特別仕様カバー。コヨーテが掴みかかるHSの群れごとビル(?)の窓から飛び降りるシーンを描いている。 P.1 PANEL1 前回のラストシーンの続き。テレビモニターに注目する食堂の客たち。その中にはガルシアンとカサイもいる。 ウルメイダ『そう、俺はアンドレイ・ウルメイダ! この先重要な男となる! 大衆は俺を求めるだろう!』 ※前回ウルメイダのシャツのプリントは「TEXAS BRONCOS」と複数形だったが、今回は原作に忠実に単数形で「TEXAS BRONCO」と書かれている。前回は作画ミスだったのだろう。 P.1 PANEL2 ウルメイダ『恐るべき予感を君たちに伝えよう。後ろではスパイク・ガールズのライブが始まっている。…』 P.1 PANEL3 ガルシアンはウルメイダの演説に不穏な物を感じた様子。 ウルメイダ『コレから大変なことが起こる』 P.2 PANEL1 手でしごくジェスチャーと共に、 ウルメイダ「スパイク・ガールズのファン層を知っているか? 性欲を持て余している若者たちだ。毎日4回自慰している連中さ」 P.2 PANEL2 狂的な表情のウルメイダ。 ウルメイダ「だが残念ながら、彼らが愛するスパイク・ガールズは偶像だ。ただの偶像だ! 時代は抜いてしまったんだ! 偶像が実存できない新しい時代が到達した!」 P.3 PANEL3 ウルメイダ「ダメだ! 抑えられない!」 P.3 PANEL4 絶叫するウルメイダ。 ウルメイダ「神を讃えろ! イッちまうぜ! WHA-HOOOOO!」 背後で大爆発するドーム。 P.4 PANEL1 ウルメイダ「コレがライブだ」 P.4 PANEL2 瓦礫と化し炎上するドームを背後に、恐ろしげな笑みを浮かべるウルメイダ。 ウルメイダ「さあガルシアン・スミス! アンタに挑戦状だ。俺を探し出してくれ。新たな信仰が俺から生まれる──ファーストライフだ」 P.4 PANEL3〜4 ガルシアンはモニターを睨むように見入っている。 ウルメイダの声『アンタが探してくれないとファーストライフは成立しない。ココに来るんだ』 P.4 PANEL5〜6 再びノイズにまみれるテレビ画面。 ガルシアン「…」 騒然とする客たちがいつしか消えていく。 P.5 PANEL1 場面転換。何か大量の文字列が映っているテレビからは、同じようにノイズが鳴り続けている。 ※画面に映っているのは明らかに映画『マトリックス』の滝のように文字列が流れる演出。 P.5 PANEL2 〈ガルシアンのトレーラー〉 〈2006年 2月13日 午後8時19分〉 暗い室内で、車椅子のハーマンの上に跨がり喘ぎ声をあげるサマンサの姿。 サマンサ「OH! OOOOH!」 ※時刻はウルメイダのドーム爆破から2日後、IEC爆破事件からは3日と約半日後にあたる。 P.5 PANEL3 その様子を扉の影から見ているガルシアン。 サマンサの声「MMM...OOOOOO!」 P.5 PANEL4〜5 ガルシアンはスイッチに手を伸ばし、部屋の明かりを点ける。 P.6 PANEL1 明るくなった室内にはハーマン、ガルシアン、メイド姿のサマンサ。 サマンサ「御主人様がお目覚めです」 ※前回は明かりを消すのがハーマン覚醒のスイッチだったのに対し、今回は逆に明かりを点けることがスイッチになっている。 P.6 PANEL2 ハーマンの前に片膝をつくガルシアン。 ハーマン「ガルシアンよ。南が騒がしいようだな」 ガルシアン「御意。名はアンドレイ・ウルメイダ」 P.6 PANEL3 ハーマン「預言者か?」 P.6 PANEL4 ガルシアン「それほどの器量者ではないようです。伝道師を自称するテロリスト。付け加えるならテキサス人です。ファーストライフ社…彼の会社兼宗教団体の資産価値は10億ドル以上。世界最大の成長企業です」 P.6 PANEL5 ガルシアン「如何なる訳か八雲にも関わっています」 P.7 PANEL1 ガルシアン「マスター…先日屋上で見た男、クン=ランは貴方の旧友だった筈では?」 P.7 PANEL2 ハーマン「その通り。そして旧敵でもある」 ガルシアン「彼もまた八雲に繋がりが?」 ハーマン「恐らくはな。ガルシアン」 ガルシアン「一体…八雲とは何なのです?」 P.8 PANEL3〜5 ハーマン「分からん。それも探るのだ。手遅れでなければ良いが。発て、テキサスへ。その間、儂はココでサマンサと戯れていよう。サマンサ、消せ」 P.8 PANEL6 サマンサ「御意」 リモコンを取り出し明かりを消すサマンサ。 P.9 PANEL1〜2 再び暗い部屋の中。ハーマンに跨がり体を揺らすサマンサの姿。 ※原作ではこの場面のサマンサはスカート姿だったが、コミックではパンツルックでズボンを履いたままなのでいささか違和感があるシーンである。 P.9 PANEL3 サマンサ「覗きが趣味なわけ、ガルシアン? ちょっと、マジで気色悪いわ。さっさと出てってよ」 P.9 PANEL4 無言で背を向けるガルシアン。 ガルシアン「…」 P.10 PANEL1 〈テキサス ウルメイダシティ〉 〈2006年2月15日 午前10時49分〉 サボテンが見えるばかりの荒れた大地。遠くには巨大なビルと、その周囲を囲む家々。バリケードのように壁と鉄条網で囲まれている。すぐ傍にはウルメイダの姿が派手な看板「天国へようこそ ファーストライフ・コーポレーション -1億の魂の救済-」と、トラクターに乗った人物。 ※原作では「ウルメイダ・インターシティ」という意味不明な地名(インターシティとは本来「都市間」の意である)だったが、コミック版では分かりやすく「ウルメイダシティ」に改められている。日付はハーマンとの会話からさらに2日後。 P.10 PANEL2 ガルシアンに話しかける声。 声「よう、そこの。天国へようこそ」 P.10 PANEL3 声の主はトラクターの老人。 老人「珍しいな、黒人たあ。こんなところに何の用だ?」 ※原作では特に強調されていなかったが、コミック版では極端な南部なまりで描写されている。 P.11 PANEL1 ガルシアン「ウルメイダを探している」 P.11 PANEL2 老人「ウルメイダかい? 儂ぁ関わり合いはゴメンだね。なんでもあの人の血はどんな病気も治すそうだが、そんな妙な話あるかい」 P.11 PANEL3 老人は背後の巨大なポスターを指さし、 老人「あのポスターが気味悪いかね? 儂も同感だが町の連中には内緒よ。自分の身が可愛けりゃそうするこった」 P.11 PANEL4 老人「皆あの方を守るんだったら何でもする。恐ろしい土地じゃ」 P.11 PANEL5 苦笑するガルシアン。 ガルシアン「忠告ありがとう」 P.11 PANEL6 老人に背を向け、何か念ずる様子。 ガルシアン「…」 P.12 PANEL1〜3 老人の目の前でガルシアンの体が血液となって飛び散り、コヨーテの姿に凝結する。 P.12 PANEL4〜5 ウルメイダシティを囲む高い塀を軽々飛び越すコヨーテ。 老人「なんちゅうこっちゃ! こったら無茶苦茶なもん生まれて初めて見たわい」 ※この高い塀を飛び越す姿はコヨーテの特殊能力の表現のようにも見える。コヨーテの服の柄は原作より控え目。これは各号の表紙でも同様である。ベルトのバックルには髑髏のシンボル。アメコミ『パニッシャー』のシンボルマークにも似ているがたまたまだろうか。 P.13 PANEL1〜2 コヨーテはウルメイダシティに降り立つ。 〈コヨーテ・スミス〉 P.13 PANEL3 荒廃したウルメイダシティの様子を見て、 コヨーテ「コレが天国じゃと?」 ※原作では(少なくとも見た目は)健康的な現代都市のように描かれていたが、コミック版では荒れ果てた南部のスラムといった様子である。駐車してあるトラックはファーストライフのもので、キャッチフレーズ「1億の魂の救済」が書かれている。 P.14 PANEL1 突如店の窓を破り襲いかかるHSの群れ。 HS「YIP! YIP! YIP! YIP!」 コヨーテ「!」 ※3匹のHSのうち2匹は胸に「TEXAS BRONCO」と書かれた黄色いシャツ。原作でのウルメイダスマイルにあたるが、四足で走る姿はむしろアナザースマイルを彷彿とさせる。 P.14 PANEL2 コヨーテ「糞ッタレども、今度はアヒルの真似か?」 ※コミック版のコヨーテの台詞は極端なメキシコなまり(ちなみに広島弁風に翻訳しているが、これはメキシコ訛りとは関係ない。単に原作に準じて広島弁風にしているだけである。広島弁に馴染みがない訳者の言い回しの間違いについては御容赦いただきたい)。コヨーテは全体的に表情豊かで荒っぽくもどこか三枚目なとぼけた味わいのある(なんと前歯が一本欠けている!)キャラクターとして描かれている。 P.14 PANEL3 銃を構えるコヨーテに迫るHS。 HS「YIP! YIP! YIP! YIP!」 P.14 PANEL4 コヨーテ「おうおう、これでも喰らっとれ」 軽々と3匹の頭部を撃ち抜くコヨーテ。HSは断末魔の笑い声をあげる。 HS「WAAA-HAHAHAHAHA!!!」 P.15 PANEL1 コヨーテ「イカレとるのう。心底イカレとる。こいつぁ──」 銃弾を入れ替えるコヨーテを呼ぶ声。 声「異教徒め! 不信心者め! 殺人者めが!」 ※原作ではコヨーテの銃は中折れ式リボルバーだが、この装填シーンを見る限り中折れ式である様子はない。 P.15 PANEL2 コヨーテを糾弾する声はカルトメンバーのものだった。 信者「神が愛されたしもべを殺すとは! 全能なるウルメイダの怒りを買ったぞ! 彼は容赦なく不信心者を裁くだろう!」 ※カルトメンバーは原作のスタイルをさらに拡大解釈して、ド派手な装飾入りのジャンプスーツに中年太りの体、リーゼントの髪形とまるでエルヴィス・プレスリー(往年のスター歌手)くずれといった姿。エルヴィスが「(ロックンロールの)ゴッド」と呼ばれることと関係するのだろうか。 P.15 PANEL3〜4 コヨーテ「ええ度胸じゃ。そこを動くなよ」 信者「神の怒りを受けるがいい。イナゴが地を食い尽くすように、業火は触れたもの全てを焼き尽くすぞ! 聞け、汝よ。神がエブス人とモアブ人に語ったごとく──」 コヨーテ「やかましいんじゃ!」 容赦なく銃把で信者の顔を殴りつけるコヨーテ。 信者「GAK!」 ※信者の言葉にあるエブス人(びと)とモアブ人(びと)はともに旧約聖書からの引用。途中でコヨーテが遮っているので言葉の意図は不明だが、おそらくたわごとだろう。 P.15 PANEL5 血まみれで顔中を腫らした信者に向かって、 コヨーテ「話ァ聞いちゃるわい。素直に吐きゃあ放しちゃるけん。代わりにフザけた事言いよればその歯ァ全部飲み込ますけェのう。ウルメイダの野郎はどこじゃ?」 P.15 PANEL6 コヨーテ達の背後に巨大な影が覆い被さる。 信者「HAH HAH! すぐに会えるとも!」 P.16 PANEL1 家々を崩しながら立ち上がる巨大な人影。それはHSの笑い声をあげる。 HS「HO HO HO HO...」 ※ゴジラのように遠景で見えるHSの威容は周囲の家々のサイズからして、原作よりもオーバースケール気味。 P.16 PANEL2 コヨーテ「サングレ・デ・クリスト!」 ※スペイン語で「神の血にかけて」。 P.16 PANEL3 一つ目の巨大なHSが立ちはだかる。 HS「HOOO HO HO HO HOOOO!」 ※原作のジャイアントスマイル。 P.16 PANEL4 HSの瞳から光線が発射される。 ※もちろん原作のジャイアントスマイルにこのような能力はない。レーザースマイルとの混合だろう。 P.17 PANEL1 光線は避けたコヨーテの背後のトラックを破壊する。 コヨーテ「AIEEE!」 P.17 PANEL2〜5 立て続けに光線を発射するHS。コヨーテは避けながら距離を計り、凄まじい勢いで跳躍する。 コヨーテ「RRRRR...」 ※原作のデッドリージャンピングを意識した画面効果。 P.18 PANEL1 コヨーテは空中でHSの目に触れんばかりに銃を据え、一撃を見舞う。 HS「HA!」 P.19 PANEL1〜3 瞳と口から血しぶきをあげて倒れるHSの頭を踏み台に、軽々と着地するコヨーテ。 HS「HAAAH HAH HAH HAH HAH HAH!」 ※コヨーテが着地した場所には「アメリカ合衆国郵便公社 - U.S.メール」の看板。アメリカではおなじみの意匠である。 P.19 PANEL4 くずおれたHSの血しぶきがコヨーテに飛び散る。 コヨーテ「AY!」 P.19 PANEL5 不快そうに血を拭いながら、 コヨーテ「もうウンザリじゃ」 P.20 PANEL1 コヨーテは郵便局に入っていく。 コヨーテ「これで終いよ」 P.20 PANEL2 唐突な来訪に困惑する受付の女性。 受付「?」 ※原作ではドラッグストアの店員。コミック版では郵便局とドラッグストアの役割を前者に集約している。 P.20 PANEL3 コヨーテ「50フィートのゾンビの爆発も宗教かぶれも飽き飽きなんじゃ。骨の髄までな。ウルメイダがどこに居るか、アンタは知っとるじゃろうの?」 受付「落ち着いて、余所者さん」 P.20 PANEL4 受付「よくココが分かったね。ウルメイダのことでしょ? 関わりたくないわ。あんな今時アフロなんて…。薄気味悪い笑顔の連中ばっかりココに引っ越してきてさ」 P.20 PANEL5 コヨーテ「シェリフをお探しなら儂がそいつよ、チカ」 ※チカ=スペイン語で「お嬢さん」 P.21 PANEL1 セクシーにしなをつくる受付嬢。 受付「それ本当?」 P.21 PANEL2〜3 コヨーテ「おうよ」 受付「ウルメイダは運がよかったんじゃないかな。解せないけど…。私もウルメイダもココで生まれ育ったわ。アイツはドラッグも盗みもやりたい放題」 P.21 PANEL4 コヨーテは唐突な話に面食らっている様子。 受付「あくまで一介のチンピラがファーストライフなんてモノを牛耳ることができたかよ。何か裏にあるんじゃないかってね…。とにかく、彼はアナタを待ってる。メインストリートを真っ直ぐ、古いコンクリ造りの燃料庫に向かって。ファーストライフのビルはその向こうにあるわ。彼からそうことづかってるの」 P.22 PANEL5 コヨーテ「ああ…そいつはどうも」 何か釈然としない様子ながら去って行くコヨーテ。 P.22 PANEL6 一人不気味に笑う受付嬢。 受付「HEE HEE!」 P.23 PANEL1 メインストリートの左右の家々には狂信者達が立ちあるいは座り込み、コヨーテの姿を不敵にうかがっている。 コヨーテ「誰にガン付けとる、おどれら?」 P.23 PANEL2 突如コヨーテの前に現れるイワザル。 コヨーテ「イワザル!」 P.23 PANEL3 コヨーテ「何の用よ、イワザル?」 イワザル「御主人様。ヤバイです。同盟がマジでマジでヤバイです。足がガクガク震えますわ。あの壁の向こうのファーストライフのビルは、見た目通りではありません」 P.23 PANEL4 イワザル「ウルメイダはあそこで八雲とヘヴンズスマイルの手掛かりを手に待っています。ですがお気を付けください御主人様。ウルメイダはマジでヤバイ奴です!」 P.23 PANEL5 イワザル「我はハーマンの名の下に…」 中空へ消えて行くイワザル。 P.24 PANEL1 コヨーテはドライバーで鍵を開けながらひとりごちる。 コヨーテ「あのパッと消えよるんは一生慣れんじゃろうの…。気味の悪い…」 P.24 PANEL2 巨大な扉の鍵が開いた。 ※コヨーテの特殊能力ピッキングの効果範囲は、コミック版では南京錠に限らない模様。細部まで見えないがダイヤル式の錠前か? P.24 PANEL3 重い扉を開くコヨーテ。 コヨーテ「ファーストライフとご対面じゃ」 P.24 PANEL4〜5 天をつき頂上が霞んで見えないほど巨大なファーストライフのビル。 コヨーテは出入口に向かう。 P.25 PANEL1 コヨーテ「こりゃ何ね?」 足元に舞う砂ぼこり。奇妙なきしみの音が聞こえてくる。 P.25 PANEL2 みるみるうちに倒れていくビルの壁。裏から見たその姿はガラス窓と梁の集合体、一枚板である。 P.25 PANEL3〜4 激しい土ぼこりを立てて自壊するビル。 コヨーテ「ファーストライフが紛い物じゃと?」 ※原作ではファーストライフのビルは巨大な一枚の書き割りとして描かれていたが、コミック版ではディテールが追加されていわば「床が無いがらんどうのビル」といった様子になっている(コミックの描線で原作通りに描くとさすがにシュールすぎる絵になってしまうので無理からぬところではあろう)。 訳者解説 第4話、ファーストライフビル崩壊というシーンで物語は唐突に終わる。続編を意識した終わり方なのは明らかだが、つきものの次号予告が一切無い事から発行より以前にすでに休刊が決定していただろう事は想像に難くない。 休刊に至るあらを探せば、まずコミックの文法に落とし込む過程で原作の「パンク」な面までがそぎ落とされてしまったきらいはある。また個性豊かな7人の多層人格を使いこなせなかった点(第1話〜4話まででまだkiller7のうち3人しか登場していない!)などはおおいに責められるべきであろう。エル・ダゾのアートもまだまだ発展途上の良くも悪くも粗削りなもので、原作のビジュアルが持つソリッドな魅力を伝えられたかといえば疑問である(おそらくカバーアーティストのサンフォード・グリーンが描くのが理想であったろう)。 しかしながら、複雑な原作のストーリーを咀嚼した上でコミックの限られたページ数にまとめ上げるアーヴィッド・ネルソンの手腕は称賛に足るものだったろう。たとえばストーリー前半では、黒幕が日本人(昇風会)かとミスリードさせた上で、原作「天使」の章にあったクン=ランとの邂逅のシークエンスを順序を変えて配置することで、ページ数を節約しつつ「事態を背後で操っていたクン=ラン」という原作通りの構図に引き戻すという無駄のないストーリー構成になっている。 コミック版の物語は史上初のHSの登場以後、文字通りノンストップで次々と原作の展開を消化していっていたが、この先「邂逅」の章、「分身」、そして「笑顔」とコミックで残り8回(予定)がどのように料理される筈だったのか興味は尽きない。この終わり方ではTPB(単行本)化も望みは薄く、ファンにとっては惜しまれる休刊だったと言っていいだろう。 著者紹介 脚本 Writer / アーヴィッド・ネルソン Arvid Nelson デビュー作の大人向け作品『REX MUNDI』シリーズ (DARK HORSE COMICS) で注目を浴び、DCコミックスの『JSA』やマーヴル・コミックスの『X-MEN』特別号など大手を中心に活躍。本作『killer7』はキャリア中では異色の独立系レーベルでの仕事となった。代表作『REX MUNDI』は2002年の連載開始以来、たびたび映画化の噂も立つ人気ぶりである。 作画 Artist / エル・ダゾ El (Ty) Dazo フィリピン出身。'68年生。『THE TRIST』(KINETIC UNDERGROUND) でデビュー。本作『killer7』は2作目となる。デビュー以来関わった作品が次々打ち切りの憂き目にあうも、同年『STAR WARS: KNIGHTS OF THE OLD REPUBLIC』(DARK HORSE COMICS) シリーズに起用されメジャー作家の仲間入りを果たす。現在はペンネームをBong Dazoに変えて活躍中。ギターとフィギュア作りをこよなく愛し、特にフィギュア造形師としての腕前には定評がある。 表紙 Cover Artist / サンフォード・グリーン Sanford Greene '72年生。カートゥーン・アニメの影響を受けたシンプルで力強い描線と大胆な構図、反面細部まで気を配った丁寧なアートワークで知られる。コミックアーティストとしては比較的寡作で、主にカバーアートやトレーディング・カードなど、イラストレーションを中心に活動。『killer7』は本人もお気に入りの仕事らしく、2008年現在もなお本人の公式サイトの中心を飾っている。