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「おい!! そこの女!! 此処から出せ!!」
ヴィラシア団アジトの暗い牢の中。弟者は見張り人にひたすら叫んでいた。がしかし、見張り人のモララー族、さららは弟者を右目は真紅の瞳、左目は淡い緑色の瞳で睨みつけるだけで何も答えようともしなかった。それでも弟者が騒ぎ続けるので最終的には唯一の明かりの蝋燭を投げ脅して黙らせた。牢の中にうまく落ちた蝋燭はカーンと大きな音を立て、さららはたった一言言うだけだった。
「俺は男だ」
真っ暗な部屋の中、さららは自らの能力で小さな火を起こし予備の蝋燭に明かりを灯した。蝋燭の明かりで部屋中がほんのりと若干明るくなる。弟者は自分の前に落ちている蝋燭からさららへと視線を移した。
「おい。一つ聞いてもいいか」
ドカッと座り込んでいる弟者の呼びかけにさららは、ハァと一息つく。
「なんだ」
弟者は自分以外誰もいない牢の中を見回してから重々しく、口を開いた。
「昨日まで此処に居たつーは何処へ行ったのだ?あとふさふさのあの子供も」
弟者が小さく身震いするのを見て、さららは鬱々しく微笑する。そして、上のほうに人差し指を向けてから親指を立て首のところで指を滑らした。さららが示したその行動に弟者は目を見開く。
「上からの命令で、処刑された。もう『用済み』だったから、だとよ」
さららのその言葉に弟者は顔を真っ赤に染めた。
「お、おい!それはどういう意m「まぁまぁそう怒るなって」
すると何処からかコツコツと階段を下る音が聞こえてきた。同時に弟者は口を塞ぎ、牢の奥へと後ずさり、寝たふりをする。そうした方が敵の情報を入手しやすいからだ。ちらりと牢の外を見るとさららともう一人アヒャ族の男が立っていた。そのアヒャ族の男の目は深く澄んだ蒼色の目をしていて、全身は漆黒の体だった。さららが口を開く。
「お、皇無か。もう怪我は大丈夫なのか? ほら・・・この前怪我しただろ・・・?」
皇無と呼ばれたアヒャ族の男はそのままさららを通り越し弟者の居る牢の前へと歩み出る。弟者は慌てて目を瞑った。皇無とさららはしばらく弟者を見つめ、寝むっているかを確認すると皇無が口を開く。
「いいか、こういう敵が居るところではうかつに情報を話さないこと。いいな。さっきみたいに情報を少しでもばらしてみろ。つーやフーと同じ運命をたどらせてやる」
さららはコクンと頷くと皇無と共にこの牢がある部屋から出て行った。弟者は誰もいないことを確認すると小さく舌打ちし、立ち上がる。手には牢の鍵を持って――。



(さららって言ったかな・・・。今度会ったら礼しなきゃ・・・。)
さららが初め弟者に投げた蝋燭には牢の鍵がくっ付いていたのだ。




「うはぁ……。最悪じゃん・・・」
深く薄暗い森の中をとぼとぼと歩いていたのは、ヴィカンテスに向かったあの時のピンク色の少女だった。けれどヴィカンテスに向かったあの時にはあったはずの黒い翼が何故か無かった。あの小鳥とはぐれたらしい。一歩一歩進むたびに木の葉がざわめき、ポキっと音がすると同時に息を飲むような小さな悲鳴が聞こええる。
「やだぁ・・・もぅ・・・」
彼女はもう一時間以上この森をさまよい続けている。そんな彼女がしばらく歩いていると、この薄暗い森の中に微かな光が差し込んだ。彼女はそれを見たとたん喜びのあまりぴょんぴょん飛び跳ねた。
「やったぁー! 出口だぁー!」
自然に足が動き出し微かな光へと走り出す。しばらく走り、光が大きくなりまわりの木々と闇が姿を消したとき彼女は大きな声を上げた。




同時刻。同じく、この森を抜けようとしている真っ白い少女がいた。フーン族の彼女はもともと目が細いながらも寝不足のためかさらに目は細く、目の下には薄っすらと薄く、くまが出来ていた。
先ほどの少女と比べると全然慌てている様子は全く無く、それどころか半分寝ながら歩いている。おそらく、この森の構造は大体分かっているのだろう。そして、やっぱり半分寝ているので歩き方が右へ行ったり左へ行ったりとかなり危なっかしい。
こんな感じでしばらく歩いているとあの少女がかなり大きな声を上げた道へと出た。しかし、彼女はしばらく立ち止まる。 ……しばらく経ってから彼女は再びその道を歩き出した。
がさがさと木々を掻き分け慎重に歩いてゆく……半分寝ながら。一歩一歩、進むごとに薄暗い森に光が広がってゆく。そして、闇と木々が完全に消えたとき目の前には道も何もなかった。
半寝の彼女の視線の先にはピンク色の手が必死に落ちないように耐えていた。白色の少女は屈みこみピンク色の手に話しかける。
「どうも、私、銀露って申します・・・。貴方(手のこと)はここで何しているんですか・・・?」
ふざけているのか、からかっているのかよく分からないが彼女の目にはピンク色の手しか入っていないのは確かだろう。
彼女は首に下げている剣の形が付いているネックレスの先っぽで手を突きだした。




「お~い、アホ兄者いるか~?」
この家中に響くような声の主はエメラルドだった。
「・・なんだエメラルド・・・? それと俺の名前は『アホ兄者』じゃない。兄者だ」
そしてエメラルドの居る部屋のドアからひょっこりと顔を覗かせているのは兄者。兄者は内心エメラルドを恐れている。
「そんなもんどうでもいい。早くこっちに来いよ」
部屋のベッドに座るエメラルドの呼びかけに兄者はおずおずと従う。下手をすると殴られる可能性があるからだ。(当の本人は単なる突っ込みのつもりらしいが・・・)エメラルドは兄者をイスに座ったのを確認すると、口を開いた。
「っで、お前これからどうすんだ?」
それに対し兄者は疑問符を思い浮かべる。
「だから、お前はこれからどうすんだって聞いているんだ。分かるか?」
「いや・・・そんなこと突然聞かれても・・・あてが無いし」
兄者は言葉を詰まらせる。
エメラルドは少し間を置くと再び口を開く。
「よし。何にも行くところとかないんだな。 そんなお前に依頼だ」
兄者は驚きのあまりイスをガタンとならし立ち上がり、うまく回らない舌を何とか動かす。
「ちょ、待てって! 俺はそんなk「弟者と末者を見つけろ。そして皆で無事に帰還しろ。それが依頼の内容だ」
口を半開きにした状態で兄者はエメラルドを見る。



エメラルドは微笑していた。
「俺の足はまだ治療が必要で、千はやっと聴力が回復したんだが幻鬼にどっかに連れてかれた。それと、お前はアホで空気は読めないし、ボケまくりの天然だからお前一人で行かせるのも心底不安なんだが、あいにく三人の中で手が空いている者が居ない。だからって俺たち全員の回復をいつまでも待っているわけにはいかないだろ?」
エメラルドのその言葉に兄者は返答が出来なかった。
確かに兄者は弟者と末者を一刻も早く探しに出かけたかった。でも兄者は何故か千たちに申し訳なさを感じていて探しにいくことが出来なかった。
兄者はつばを飲むと意を決したのか、にやりと笑った。
「……分かった。その依頼この兄者様が引き受けよう!!」
エメラルドは、何か寂しげな笑みを浮かべ兄者に向かって一つ封筒を投げる。それを兄者は奇跡的にキャッチすると封筒を破って・・・
「その中に入っている地図には 親切 にお前の目指す目的地が書いてある」
エメラルドがどうして『親切』を強調したかはよく分からないが、まぁ気にするなと(おい
破った封筒をじっと見つめ、黙り込む兄者にエメラルドは心配して声を掛ける。



兄者の返答に二人とも微笑した。



「すまない。地図が見事、二つになった」




「おい、お前!」
崖の上で二人の女AAが向かい合って話している。ピンク色のAA『R』は白いフーン族の『銀露』にさっきから何かを訴えている。
「もうどうでもいいじゃない。結局落ちなかったんだからぁ」
マターリと呟く銀露にRは何とか怒りを飲み込む。まぁ最終的には助けてもらったので怒ることは出来ないが・・・。
Rは大きなため息をふぅと一回ついてから立ち上がると、うたた寝している銀露を軽く睨む。そして崖をちらりと見て、森の方に歩き出したが、そのときだった。突然足の触れている地面がふにゃふにゃなって行き最終的には泥となって足を動かすことが出来なくなってしまった。
「・・・あんた。名前はRとか言っていたな」
後ろから伝わってくる何かにRはゾクッと身震いする。だからって声を出そうにも出せないし、足は泥に深くはまっているため逃げることも出来ない。
「ここは踏み入り禁止の森だ。なのに、お前が何故ここに居るのか。説明してもらおうか」
Rはただ、こうして立ちすくんでいることしか出来なかった。
「わ、私は・・・ムニエルを探しに来たのよ!」




「いってぇ……なにもエメラルド、殴ることないと思われ・・・」
薄暗い森を愚痴りながら歩いているのは毎度おなじみのの兄者だ。
片手には愛機のPC。そしてもう片手には雑に張られているセロファンで一つの形を保っている地図。
それと、兄者の頭には見事と感心してしまうほどの立派なタンコブが。
「ったく何なんだこの森は・・・。さっきからずっと同じ道歩いているような気がするのだが・・・」
兄者がそう言うのも無理はない。さっきから同じような凹んだ岩。真っ二つに切り裂かれた木を何度も何度も見ていたのだから。
エメラルドから貰った地図には目的地までの道のりが書いてあるには書いてあるのだがその場その場の細かいところは皮肉にも書かれていなかった。よって兄者は自力でこの森から抜け出さないといけないのだ。



兄者は突然足を止めると地面に座り込む。そして愛機のPCを開いた。
「こんなときこそ我がFMVタソの力が発揮されるときだww」
早速スタートボタンを押しPCを立ち上げる。
がしかし、PCは真っ黒のまま・・・。兄者は頭を抱えた。
「っあれ? ・・・おかしいな」
何度も何度も起動ボタンを乱暴に押すが立ち上がる様子は全くない。そして、ボタンを押す音はバンバンと叩く音へと変わっていく・・・。
「だあ!! もう!! イライラする!!」
兄者は持っていたPCを思いっきり地面に投げつける。そして見事、PCは大きな音を立て、粉々に砕けてしまった。



「・・・知るか。こんなもの」
粉々に砕けたPCを背に兄者は再び迷宮の森にへと歩き出した。




「エ~メラルド! 兄者はもう行ったか?」
家の中からひょっこりと出てきたのは火の文字が書かれたペンダントで有名な右耳に包帯を巻いている千と左目と左腕に傷を持っている幻鬼。それに対し緑と青の四枚羽根を背に持つエメラルドは静かに答えた。
「……これでいいんだろ」
それには幻鬼のみが頷いた。
「さぁ俺たちも出発しようぜ。この町はもうお終いだ」
千が言ったその言葉に二人ともコクリと頷く。
三人とも廃墟と化したこの町、ヴィカンテスに背を向け歩き出す。すると、千は突然歩いてきた道へと向きをかえる。
「っと忘れていた」
千は銃を何処からか取り出すと何もない空に向かって一発撃つ。その弾は空にいた何かに当たり、その何かと共に落ちてきた。
「 また カサーリだ」
千の言葉にエメラルドは、ぼそりと呟く。
「どうやらとっくの当に気づかれているようだな。あの計画は・・・」




『黒羽の闇は光羽の光を飲み込み、そして砂時計は崩壊する』
その時は皮肉なことにも一刻一刻と迫ってきている。
一秒一秒『確実』に……――