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一秒一秒が過ぎるたびに俺の心臓は高鳴って行った。
いつの間にか、鼓動と砂の落ちる速度は同じだった。
「そこにいるアナタは……ダレ?」
「・・・え?」
突然聞こえた声に唖然とする俺を、その声の主の少女は柱の裏からこっそりと見ている。否、ちらりと身体を覗かせていると言った方がいいだろうか。
「どうして、ここにいるの?」
少女の問いに俺は勿論答えることが出来なく――まあ対話は苦手だったし・・・。
「じゃあ逆に聞こう。どうしてこんな殺風景で、全く人気がないところにお前は居るのだ?」
俺はゆっくりと少女の元へと歩む。
俺の問いに少女はクスリと笑うと、こう言った。
「ワタシ、ウゴけないのよ。ここから。……アタラしいヒトバシラがクるまで」
少女は目に灰色の帯を巻いているのにも関わらず、俺が目の前に来たことを足音で確認すると顔を上げた。
少女の足には何か根っこらしきものが何重にも巻きついていた。
「人柱? どういうことだ?」
無駄に震える体を押さえつけ俺はさらに少女に問う。しかし少女は笑うだけで何も答えてはくれなかった。
「・・・相当意地悪な子供だな」
俺は頬を膨らませて座り込む。自分で言うのもあれだが、この行動からもして、しかしたら精神的にはまだまだ子供なのかも知ない。
「あら? ワタシ、アナタよりナンゼンネンもイきてるわよ」
少女のその言葉に俺は耳を疑った。とてもその姿からして何千年も生きたとは思えない。
「・・・ワタシのナマエはしぃよ。タシかアナタは・・・アニジャよね?」
俺は反射的に数歩後ずさり、パソコンから『雷層刃』に変化させようとする。
「何故に俺の名前を知っている!?」
皮肉なことに、この場にパソコンがないことに今更気づくことになった。
そんな俺に少女は真っ赤な手を差し伸べる。
「シっていてトウゼンよ。だってアナタは・・・なのだから」
少女の真っ赤な手はどんどん赤みを増してゆく。
それと共に目の前が歪んできた。まるで俺の血が抜き取られていっているような、そんな感じだった。
おかげで大事な部分を聞き逃すことが出来た。けれど、
少女は最後に大きく笑うと、親切にもう一度言ってくれた。
「ワタシのスナドケイは……をヒツヨウとしているわ」
その瞬間、強制終了されたかのように何も見えなくなった。
身体が地面に倒れたのも分かった。立とうにも立てない。
俺は諦め半分にゆっくりとまぶたを下した。



勝手に言葉が次々と浮かんでくる。



どこかにある砂時計
その砂時計は
時を司る



その砂時計は大事な時間の柱
黒羽の闇が白羽の光を
飲み込んだとき
この世界は
破滅へのカウントダウン
それをスタートさせる



砂時計の動力は
たった一つの
大きな命の力
その命は
砂時計と一体化する
永遠に



次なる人柱が
誕生するまで



色がない夢の世界
白い翼の悪魔は
新しい人柱



そして新しい
時の力……



そこで言葉は途絶えた。



「兄者!!」
聞き覚えのある声に、おもわず俺は瞑っていた目をあける。
そこは黄土色の砂が広がった砂漠・・・。色がある!



ようやく俺は目に前の人物に視線を向けた。そいつを見た瞬間、俺はおもわず声を漏らす。
「お、弟者!? 弟者なのか・・・?」
弟者は無言のまま地面に寝そべっていた俺を座らせる。そして、意味深げに笑みを見せた。
けれど、俺は――
「・・・っつ!! いきなり何だよ! 兄者!」
気づけば弟者の左頬はさっきよりも微かに赤みをましていた。右手のひらがじんじんする。
弟者は耳を垂らして小さく呟いた。
「……折角あえたのだから何も、叩くことないと思われ・・・」
自分でもワケが分からなくなってくる。
弟者もきっと、突然俺に打たれて混乱しているに違いない。
ふと、気がつくと口は勝手に動いていたし、弟者に抱きついていた。
「馬鹿弟者! ずっと心配していたんだぞ!! ずっと、お前が居なくなったあの日から・・・ずっと」
それを最後に、ようやく口が止まった。けれど今度は涙が泉のようにあふれてくる。
それと同時に、ずっと心の奥でもやもやしていたものが綺麗に消えていくのが分かった。



そんな俺に弟者はごめん、と呟いてくれたし、俺が泣き止むまで弟者は背中を優しくなでてもくれた。
俺は弟者から体を離す。目が微かにひりひりと痛んだ。
「こんなときに悪いが兄者。パソコンはどうしたんですか、と」
俺は視線をそらした。正直に言おうか、それとも嘘をつこうか迷っていたからだ。けれど、結局は正直に言うことにした。
弟者は何とも言ってこなかった。でも、少し焦っているようにも見えた。多分、俺の見間違いだと思うが・・・。
「……どうした? 弟者」
弟者は無言のまま立ち上がった。聴こえなかったのだろうか?
念のため俺はもう一度弟者に問いかけた。
が、レスが来たのはしばらく経ってからだった。



「・・・なんでもない」
それだけ言うと弟者は森の方を睨みつけた。



「時に弟者よ」
「なんだ」
弟者の即レスに一度だけ体が震えた。
「この町に行きたいのだが」
俺はゆっくり立ち上がり弟者の前に、千たちから貰った地図を突きつける。
弟者はしばらくしてから頷いた。
「・・・分かった。でもどうしてここに行くのだ?」
この地図に書いてある行き先は,行方知らずの弟者の情報を入手するためのヒントだ。
でも、きっとそれだけではないと俺の第六感が告げる。
「この世界を調べるためだ」
弟者は苦笑いらしき笑みを浮かべた。




「すっかり変わりましたモナね・・・。レモナさん」
「そうね、モナー。でもまだ、ほんの序の口なのよね」
すっかり廃虚と化したヴィカンテスを見上げている。
そう大きくもないこの町からは、未だに煙が昇っていた。
「ボスの計画を、レモナさんは知っているモナ? 」
突然レモナは向きを変え、がれきの下に咲いている一輪の花を見つめる。
「ねぇ、見て。タンポポよ」
無理やりな話題転換にモナーは顔をしかめる。けれどその顔は、すぐに和らいだ。
タンポポの花びら一枚一枚が、葉の一枚一枚が何よりも輝いて見えたからだ。



「汚れてないモナね」
確かにタンポポは町と比らべればとても綺麗だと言えよう。
「・・・どういう意味?」
しかし、その言葉を発したモナーでさえその意味は分からなかった。
「さぁ、なんでしょうモナ?」
悟られないようにモナーはわざとらしく首をかしげた。
そんなモナーにレモナは満面の笑みを浮かべる。
それと同時にグシャ、と音が足元から聞こえてきた。モナーは無意識のうちに視線をそこに移す。



タンポポは無様にも踏み潰されていた。
「やっぱり。すると思っていましたモナ」
レモナは両肩を少し上げ、先ほどとは違う笑みを浮かべる。
「当たり前でしょう。この町はもう終わったのよ。命なんて、生命なんて存在してはいけないの」
レモナと逆にモナーはがっくりと肩を落とす。
モナーは自分の眼が自然に『生命』を探していたのには、気づかなかった。



突然レモナはどこからかパソコンを取り出す。
「どうしましたモナ?」
モナーは後ろから、おそるおそるパソコンの画面を覗く。
「また誰か死んだのよ」
楽しげに言うレモナに、モナーは体を震わせる。



パソコンの画面に映し出されていたのは『死人リスト』。名のとおり異世界で死んだAAのリストだ。今現在から一時間前に死んだAAのみ青で表示される。それ以前のAAは黒で表示される。



「うわ・・・。青字のカサーリばっかしモナ・・・」
「本当ね。いったい何があったのかしら・・・」
モナーの言うとおり、青字で表示されているほとんどがカサーリだった。
しかし、その中に三人だけ。
「ちょ、レモナさん! これ見てモナ!」
モナーが思わず指差した名前。レモナも初めて視界に入れて顔色を変える。
「う、うそでしょう・・・。こんなことありえないわ・・・」
レモナはキーを叩き、画面を変える。
「生命探査機ですか?」
「そうよ・・・」
レモナたちは、死人リストに載っていた一人の名前を探し始める。



しかし、見つけることはできなかった。
それもそうだ。載っていないのだから。
「レモナさん・・・。きっとこれ、壊れているんですモナ」
「そんなことないわ! この前修理に出したばっかりですもの・・・」
今レモナが使っているパソコンは以前、ウイルスに感染したことがある。
しかし、すぐに修理に出し先日、手元に帰ってきたばかりなのだ。
「そ、そうでしたモナね・・・」
モナーの目は絶望の色を見せる。
しかし、その目はすぐに輝きを取り戻した。
「それじゃあ、この町がいけないんだモナ!」
「はい?」
町の中心を指差し、威風堂々と胸を張るモナーに、レモナは疑問符を浮かべる。
「つまり、こういうことですモナ・・・」
「わかったわ、わかったからそのポーズで説明しようとしないでくれるかしら?」
どれだけ自信があるのだろうか、モナーは今の体勢を維持している。



「ち、違いますモナ! 身体が、身体が!」
否定しながらもモナーは体勢を崩さない。
「それじゃあ何よ? 身体が動かないとでも言うの?」
モナーが必死にうなずくので、レモナはパソコンをたたみ、立ち上がる。
そして、モナーの前に移動し、指を動かす。
「動くじゃないのよ」
「動いて当たり前よ。貴方にはかけていないもの」



その場に一時の緊張が走る。
「誰?」
レモナは冷や汗を垂らしながら言う。
モナーもそいつを問い詰めようとするが呼吸をするのがやっととなっていた。
「うん? 私はね・・・」
そいつは一歩一歩、大きくレモナたちに歩み寄る。
そして、サバイバルナイフを取り出すと、レモナに突きつけた。
「白夜って名前よ」
白夜はくすり、と笑う。
「ところで、貴方たちはこの街を壊した人たちの関係者?」
レモナは頷かなかった。
身の危険を感じたからであろう。
「どうして貴方に関係あるの?」
「べっつにぃ」
そういうと白夜は指を鳴らし、モナーを束縛していたものを解いた。そして突きつけていたサバイバルナイフも下ろす。モナーはぜえぜえと息を切らしながら、その場に座り込んでいた。



「悪い事は言わない、早く二人でここから出て行ったほうがいいわ」
笑いながら言う白夜にレモナは顔を歪めた。どうやら釣られてしまったらしい。
モナーは慌ててレモナを引き止めようとするが振り払われてしまった。
「それって喧嘩売ってるのよね」
完全に血が上ってしまったレモナにモナーはため息を吐いた。そして、武器にされないうちに逃げ出そうとするが、白夜の笑いを含んだ声に足を止めた。タイムアップ。白夜のその声が街に響いた。不気味な彼女の紅い目は静かに遠くを睨んでいる。
「な・・・タイムアップってどういうことモナ・・・」
「タイムアップはタイムアップ。時間切れってことよ」
言い終えてから白夜はまた指を鳴らした。小さな音のはずなのに、その音は街中に響いているようだった。



しばらく続いたのは沈黙。しかし、それを打ち砕いたのはがれきが崩れる音だった。
そして、その音はどんどん大きさを増し――レモナたちがいる方向に近づいてきている。
「な、なにがどうなってるのよ!」
「レモナさん! 早く逃げ――」
モナーの声は真後ろから飛び出した巨大な何かによって消えてしまった。
その巨大な何かは満足げに舌をちろちろさせている。それもそうだ、久しぶりに獲物に食らいつけたのだから。
「サンクス・・・お前のお陰で友達の仇がうてたよ・・・」
白夜はその巨大な生物――大蛇に近づくとさっきとは違う満面の笑みを浮かべた。