海辺の盈月 [ミア いのり]

ミアさんが入室しました
ミア : (夜。観光客も寝静まった暗がりの海――
ミア : (ざばっと、桟橋に登る人影がひとつ。
ミア : ……、これで全て。収穫なし、と…(ダイバー装備一式。マスクやら外し
ミア : (人手が足りない。とは辻褄の合わない言い訳だなと思った。
ミア : (どうやら上層部…というか上司筋にあたる者の”粋”な計らいのつもりらしい
ミア : (ともあれ調査任務には違いない。人相手の調査が得意とはいえ
ミア : (それ以外の調査だろうとこなす。寧ろ煩わしさを感じない分、楽なくらいだ
ミア : (ただ、一人こうして漂っていると、否応にも……
ミア : ……、(溜息をつき、浜辺に戻って行く
いのりさんが入室しました
ミア : (意外というか、夜でも海の家、ESは営業している。
ミア : (どちらかというと、涼しい潮風に揺られながら酒を楽しむバーのように様変わりするようだが。
いのり : (夜。さざ波の音だけが響く閑散としたテラスの1席に、人の姿がある
いのり : (袖を丁寧に捲った白シャツに、下はグレーのスラックス…所謂スーツの下。
いのり : (とても夏向けの装備とは言い難い。室内の装いのままふらっと外に出てきた、そんな風貌
ミア : 、ぇ、っ (思わず砂浜で立ち止まってしまう
ミア : (あの、影は、 どうして
ミア : 、、……。(少し難しい表情をして、怪しまれぬよう歩みを再開する
いのり : …(砂を踏む音に、ふと浜辺に視線を向ける
いのり : ……、ん
ミア : (超小型のタンクやジャケット、ヒレなどを持ち、マスクだけ顔に当てながら歩む、微妙に不審者
ミア : (オレンジの髪はまとめて結んでいる
ミア : …(そのままテラスを横切り、併設のシャワー場へ
いのり : …………(掛ける言葉が見付からず 動かず黙ったまま
いのり : ……(……いや、流石に。 流石にこんな会い方するか?
いのり : (ミアの姿が見えぬ間、テーブルに視線を落としてぐるぐる考え込む
ミア : (シャワールームにて――
いのり : (何のことは無い、只の偶然だ。…偶然の邂逅に、そこそこに驚いた自分を捻出すればいい。
ミア : (無視――してしまった……!
ミア : (いや、どうして、何故、偶然にしてもそんな。
ミア : (いつもセントラルでカプチーノ飲んでるくせに!など内心八つ当たりしつつ
ミア : (一瞬、言葉を失ってしまった。なんて事の無い挨拶一つで済んだ筈なのに。
いのり : (…あの時、星に願いを掛けてから、EBに行く事を避けていた。
いのり : (結局自分達はあの喫茶で頼りなくつながっているに過ぎない。だからそれを断てばと――そう思って――なのに――
いのり : (………なのに。 こんな会い方するか!??
ミア : (あら、御機嫌よう、奇遇ですね、何をしに? ――そう話しかければ良いだけ。
ミア : (――――偶然でなかったら、どうしよう。
ミア : ――。(ノズルを回し、冷水を被る
ミア : ……(冷静だ。冷静になろう。
ミア : (そもそも行き先を知る由もない。それに、こんな、強引な話。彼も好まない筈
ミア : ……いのり、さん(冷水で搔き消しながら、ぽつりと
ミア : (どうして欲しいか、いっそ言ってくれれば……
ミア : …、(首を振る。そんな都合のいい話は無い。
ミア : (偶然。偶然として対応すれば良いだけのこと
ミア : (万が一偶然でなかったとしても、気付いてはいけない。
いのり : (……いっそ今の内に去れば、…否、出来ない。失礼とかそういう以前に、自分はそれを望んでいない。
いのり : (……落ち着け。現状に冷静になれば大丈夫だ。…演り通せる筈だ。
ミア : (……いっそ、このまま去れば… いや、それはできない。
ミア : (誰も、望んでない。きっと。
ミア : ……(静かに栓を閉じる音がする
ミア : ――――(少しして、砂を踏む細音
いのり : ………(静かな足音にゆっくりと振り向く
ミア : (白いブラウスに淡いグレーピンクのプリーツ。
ミア : (ややオフショルなのが夏らしいが、いつもの。それでいてレアな普段着
いのり : やあ。こんばんは。(柔く笑って、いつも通りすぎるほどいつもの挨拶
ミア : …こん、ばんは。 奇遇ですね、いのり様(麦わら帽とバックを持ったまま
いのり : あぁ、奇遇なんてものじゃないよね。オクターンの海に何か用事でも?
ミア : …ええ、調べ物です。 仕事絡みの。
いのり : なるほど。相変わらず大変だね。(小さく肩竦めて
いのり : まあ、君が夏のリゾートを満喫してたらそれはそれで吃驚するけど(あはは、と
ミア : ……ええ。そうですね。 雑踏も眩い陽射しも、得意ではありませんね。
いのり : あはは、だよね。 …
ミア : ……いのり様は? 一仕事終えた、といったところでしょうか?
いのり : そうそう。あそこでお式があってさ(指差すは浜辺沿いの高級リゾートホテル
いのり : 一段落したから、少し風に当たりに来たとこだよ。
いのり : …… うん、まあ、だからちょっと驚いてるかな。
ミア : ………、そう…でしたか。(視線送りつつ
いのり : …うん。(グラスの氷がカラン、と鳴る そういや何か頼んだっけか
ミア : それは……お疲れ様でした。
ミア : ここは夜は静かですから…一息いれるには丁度良いですね。
いのり : ありがとう。 あはは、そうだねぇ。昼間は大層賑わうって話だけど。
ミア : そのようです。明日は昼間から出向くので、少々気が滅入りますね…
ミア : ……。(僅かに深い呼吸をして
いのり : そっか。それは…気を付けて。
ミア : ええ。ご心配、ありがとうございます(瞑目して返事
ミア : もう少し、休まれていきますか? よろしければ、お飲み物のおかわりでも。
いのり : ん、そうしようかな。同じのお願いできるかい?(空いたグラスをミアに差し出す 甘めのピーチジンジャーカクテル
ミア : はい。承りました(手荷物を椅子に置き、グラスを受け取る
いのり : 、……(それを見て)……。
ミア : (カウンターの方へ
ミア : (店員と2、3言交わして戻ってくる 両手にはグラス
いのり : …(戻ってくるミアを見て
いのり : …すごく普通に頼んじゃったけど、もしかして店員じゃなかった?
ミア : ええ。意外でした?(いのりの前にグラスを置き
いのり : …というか、すっかり勘違いしてしまったよ。ごめんね?
ミア : 何を仰います。仔細ありませんよ(会釈し、相席へ
いのり : …。それじゃ、互いに一仕事お疲れ様って事で(グラスを持って、乾杯を促す
ミア : …ええ。 お疲れ様です(チン、と静かに鳴らして
ミア : (一口付けて 一呼吸し) 最近は、特に忙しかったようで?
いのり : (同じく一口煽って)…あぁ、そう言われると、最近セントラルには行けてなかったね。
ミア : まぁ、かなり騒ぎに奔走しましたから、かえって良かったのかも知れませんが…
いのり : 最近はずっと何かしら起こってたしね。こっちの方でも色々あったよ。
いのり : 特に「槍」の方は認識阻害の影響が変に出て……いやまあ、こういう話はいいか。
ミア : そうでしたか…いのり様はご無事のようですが、身内の方々は?
いのり : あぁ、ご心配無く。皆無事だよ。 ……ミアさんは?(少し迷ったような間の後、訊ねる
いのり : …どうせまた厄介な事に首突っ込んでたんだと思うけど。
ミア : どうせと言われると心外ですね(瞑目し
ミア : 悶着は何度かありましたが、ご覧の通り五体満足です(ミディアム近くまで短くなった髪も、アップで纏めているのでかなり気付き辛い
いのり : …どうせはどうせでしょう。(む)…まあ、無事でいるなら良いんだけど。
ミア : ええ、お陰様で。(グラス傾けながら
いのり : うん。(…否、良い、とは思ってない。他人の踏み入る領分じゃないというだけだ
いのり : …(それを口にする事は、きっと――)
ミア : ……どうかしましたか?
いのり : …(……きっと、無)どうして君はそういう仕事をしてるの?
ミア : 、どうして、ですか(目を丸くして
いのり : ……、(口にした瞬間、拙った、という表情
いのり : …楽しくてやるような事じゃないしね。やらなきゃいけない、って感じでも無さそうだ(それでも続ける
ミア : ……
いのり : 何より危険が伴う。 …そういう生き方をする人は、きっとこの世界に少なくないけれど…、
いのり : 君がどういう意識でそうしてるのかは、 …知りたい。かな。
ミア : (空のグラスを置いて
ミア : 考えたことも……ありませんでした。
ミア : ええ、そうでしょう、いのり様。私の生まれも育ちもご存知の筈です。
いのり : …。だけどもう、君を縛るものは無い筈だよ。オッドは死んだんだ。
ミア : それ以外の選択肢が私には見えなかったから、今こうしているのです。
いのり : …そっか。(それはそんなに、想像外の話でもない
ミア : ええ、確かに。 オッド=アルジールは死にました。私も幼少よりは力も、財も立場も手に入れました。
ミア : …考えたこともない…というのは、嘘です。半分だけ。
いのり : …(無いのに。何故聞いたのか。わざわざ。こんな分かりきったこと。
いのり : (そこには言外の意図がある。それを伝えたくないのに、干渉しようとしている。
ミア : ……店員に本格的に鞍替え、あるいは万屋、または商社の経理という選択肢もあるでしょう。
いのり : …(全部自覚済みだ。馬鹿なんじゃないのか、ボクは
いのり : …うん。(自嘲に唇を噛みながら、ミアの話の続きを聞く姿勢
ミア : ですが、そう生きるには私はあまりにも……いのり様?
いのり : ……いや。 あまりにも……何?
ミア : …こちらの世界で生き過ぎただけです。
ミア : 私が手を引いても、それを良しとしない者はいるでしょう。
ミア : 良い意味でも、悪い意味でも。
いのり : ……。君が苦しまないのなら。…もしくは、
いのり : 苦しんでも、君がそうしたいと想って生きているのなら、止めないよ。…でも。(…あぁ、
いのり : (「どうしたい」なんて、聞いてはいけないんだろうな。)…(二の句が継げず
ミア : ……
いのり : ………… っ(片手で顔覆って、
いのり : 君の事、(ミアをきっと見つめる 半ば自棄のような
いのり : …心配してる人間がいるって事は、覚えておいて。
ミア : …、、
いのり : (―――……吐きそうだ。 ていうか死にそうだ。
いのり : (たったこれだけの本音を口にするのに、如何してこんな気分になるんだ。
ミア : ………いのり様。
いのり : 、……何。
ミア : 少し歩きませんか? その、夜風でも浴びに。
いのり : 、(思いがけぬ提案に
いのり : …あぁ、それもいいね。(手を額に当てる …少々酔いが入ってるのかもしれない
ミア : ええ。ではそのように(会計を済ませ、外へ
いのり : …(逃げられたのか、逃げさせてくれたのか。…解らないが、助かったのは確かだ。
いのり : (…それ以上の澱を、気付かれているし、気付いてもいる。今更だ。何もかも、今更の事だ。
いのり : (ミアに続いて歩き、外へ
ミア : (付近の堤防沿いを歩く二つの影。ひとつを追い歩むような。
ミア : (先行する影から口を開く
ミア : …力も、それなりの地位も手に入れました。
ミア : ですが、最も欲していたものは相変わらず……
ミア : それが、未だにこの生き方に区切りを付けられない、本当の理由かもしれません。
いのり : ……。最も、欲していたもの。
ミア : …ええ。
ミア : 存外、子供染みたものです(歩を進めながら
いのり : それは……、(言いかけて、留まり
ミア : ……。 ですが、心配をかけていたのは、少々驚きました。
ミア : 意外と云うと、失礼かも知れませんが……
いのり : ……。 ほらまあ、ボクだって人間だからね?
ミア : …そうですね。そうでした。(振り向き、僅かに緩んだ口元だけが見える
いのり : …他人に情を抱く事もあるし、他人の生き様をそのまま受け入れられるほど大人でもないよ。
ミア : ……。(再び目線を戻して歩む
いのり : …クピドらしく、はないけどね。それは(その背を眺めて
いのり : …(歩調を早めミアに追い付き、隣に並び
いのり : (ミアに片手を差し出す
ミア : 、……
いのり : (――「それは……、」――「✕✕にも与えられるもの?」
いのり : (………なんて。言えるわけない。言えるわけないだろ。
ミア : いの、り、様……?(意外過ぎる行動に白黒して
いのり : ……(――だから、少しお返ししてやるだけだ。あの前夜祭の時みたいに。
いのり : …(黙ったまま、何も答えない。差し伸べた片手が語るのみ
ミア : ……、
ミア : (恐る恐る、途中で怖気付いて強張って、また少し進んで
ミア : …、…。(指先数本が、いのりの手のひらに触れる
いのり : (触れた指先から滑らせるように、ミアの手を取り、優しく握る
いのり : (前夜祭の仕返し。…とはいえ突然踊り出したりすることは無く、普通に手を繋いで、並んで
ミア : 、(握られた瞬間ピクりとするが、そのまま任せるように
いのり : (ミアを見つめて、ふっと柔らかく微笑んで
いのり : (無言のまま、ゆるい歩幅で、ゆっくりと浜辺を歩き始める
ミア : …、(少し困ったような、戸惑うような表情をして
ミア : (付かず離れず……それが理想ではなかったのですか。
ミア : (そんなことは、言い出せない。言い出したくない。
ミア : (今はもう少しだけ、手に伝わる熱に触れていようと思ったから
ミア : …… 、 (何か言おうとして、止めて
いのり : …(戸惑っているのがわかる。きっと振り回している事だろう。
いのり : (…それだって半分は君の所為だ。一人分空いた距離でいたいなら、どうしてそんな風に、追いたくなるような事を言うんだ
いのり : (ぎゅ、と繋いだ手を少し強く握って
いのり : (宵闇の中、浜辺沿いに二人分の足跡を付けていく
ミア : …!(そういう事には弱い。自分でも赤面を感じて隠すように俯く
ミア : …、………。(でも、黙って、連れ添うように
いのりさんが退室しました
ミアさんが退室しました