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佳奈恵&花月ルート 其の九

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匿名ユーザー

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だれでも歓迎! 編集

*

いつもの俗称JUSCO二号店のフードコートで、花月を待つ俺。
時間は11時半で、ちょうどお昼時。

花月「待たせたな」
俺「待ってたよ」
花月「で、貴様はすでに昼を食べているのか」
俺「何時なるかわからんかったし、花月も何か買ってくれば」
花月「ああ」

と返事をして、花月が俺と同じうどん屋に買いに行く。
花月「で、何の用だ」
俺「明日のこと、話したいな思って」
花月「ああ、何処に行くつもりなのだ?」
俺「何処がいいとかある?」
花月「ふむ、それが特にないのだ」
俺「だよね……渋谷とか原宿とか行ったことは?」
花月「そもそも、墓参りの時以外に、都内に行くことがない」
俺「佳奈恵からいっぱい雑誌貰ったんでしょ? どっか行ってみたい店とかなかった?」
花月「ない、というよりか、どこに行けばいいかわからない」
俺「……なる、じゃあ適当に都内散策でいいっすか」
花月「ああ、それでいい」
俺「あと、ちょっともう一人連れて来たい子がいるんだけど」
花月「なんだ、親戚か?」
俺「春香って子なんだけど、実はかくかくしかじかで……」
花月「……現実で、かくかくしかじかの使用は無謀だ」
で、きちんと事情を説明する。

花月「……大体、事情は飲み込めた。構わないが、もう約束済みなのか?」
俺「まだだけど、多分明日暇だと思うよ。これまで毎週土曜は俺が大学行くのに付いてきてたし」
花月「確認は、いつするつもりなのだ?」
俺「小学校終わったら、ここ来るように言ってあるから」
花月「……遠いぞ?」
俺「途中まで、迎えに行くつもりです」
花月「だが、小学校の放課時間はまだまだだぞ。それまでずっとここにいるのか」
俺「で、これを持ってきた訳ですよ」

持参した、ポケットミニ将棋を取り出す。

花月「……ほう」
俺「ま、いきなりぶっつけ本番もアレだから、打ってみようじゃないの」
花月「いいだろう。筆舌に尽くしがたい力量差を思い知れ」
対局終了。

花月「……なるほど、な」
俺「俺が、今、戦いに挑んだ意味がわかったか……?」
花月「ああ……うなづける、さすがだな」

花月がペシーンとプラスチック製の将棋板をひっくり返し、

花月「……貴様の弱さは、一ヶ月そこらでどうにかなる問題ではないぞ。いや、実に」
俺「そこで命令だ、勝負を二ヶ月先に延ばせ」
花月「惨敗した貴様が……どうしてそこまで偉そうなのだ……」
俺「大体6月は、大学の試験とかで忙しくなるから、将棋練習してる暇なんてないんっすよ」
花月「『一ヶ月』は、本来貴様が先に言い出したことだろうが」
俺「アイスも、7月より8月におごってもらったほうがいいんじゃないの? ん?」
花月「ふむ……それもそうだが……何か、策謀にハメられかけている気がしてならないのだが」
俺「1ヶ月後に対局を挑んだ所で、俺の実力は飛車角落ちの花月にすら及んでいないだろう……懸命な判断をしたほうが、いいんじゃないのか?」
花月「……貴様が、何故そこまで強気な態度でいるのかが理解出来ないのだが」
俺「俺だって、自分がここまでヒドいと思ってなかったんだもん、花月の意地悪!」
花月「……殴りたい」
俺「短気は損気ですよ」
花月「……詰まるところ、勝負を一ヶ月先に延ばした時の、私の利点はなんだ?」
俺「何がいい」
花月「ふむ……」
俺「出来れば、アイスを一週間から二週間とかより、もっと別なことのほうがいいかな」
花月「そうだな……ならば」
俺「……ならば?」
花月「まるごとバナナ、まるごとイチゴ、まるごとチョコバナナを各3個ずつだ」
俺「……なんか、俺のほうがくすぐりだけじゃ、釣り合わなくなって来てる気がするんですけど」
花月「期間延長が貴様の利点だ。文句はあるまい」
俺「いいですよ、その代わりそっちが負けた時は……地獄を覚悟していなさい」
花月「まあ、せいぜいあがいてみるといい」

ちゅるりと最後の一本を花月が食べ終わる。

花月「……そもそも、対局時間が食事の時間より短い時点で、狂気的だと思わないのか」
俺「はい、ホントすみません」
食後に花月にアイスを食べさせて、ふみモードにさせる。

俺「ところでさ、昨日佳奈恵と佐藤さんたちと焼肉行って来たんだ」
花月「そうか……」
俺「朝ランニングしてて、いつもクラスの男の子に話しかけられたりするんだって?」
花月「星野のことか、たまに見かけるが」
俺「何話したりしてるの?」
花月「他愛もない挨拶だけだ」
俺「もうちょっと、色々話してるとは聞いたけど」
花月「いつも星野が話しかけてくるのは、私が走り終わった直後だからな。息切れして、会話どころではない」
俺「そっか」
花月「佐藤が来たのなら、雪の字もいたのか」
俺「あれ、あの二人仲良いの?」
花月「仲良いかどうかは知らないが、いつも一緒にいる」
俺「いやいや、いつも一緒にいるんなら、仲良いってことでしょ?」
花月「詳しいことは佳奈恵に聞け。私はそう深いことは知らない」
俺「ふーん……」
花月「……」
俺「眠いの?」
花月「……寝ても、構わないか?」
俺「どうぞどうぞ」
花月「なら、こっち側に来い」
俺「え?」
花月「私の隣に来いと言っている」
俺「あ、わかった……」

で、向かいの席から、花月の隣に移動。

花月「すまない、あまりこういうとこで、一人で無用心に寝るのは神経使うのだ……」
俺「はいよ、時間来たら起こすよ」
花月「……」

俺が隣に来るとすぐに、眠りに入る。
花月が寝てる傍らで、さっきのポケット将棋を取り出して、
詰め将棋を一人でやり始める。
俺「……ん」

俺も眠りに入ってたらしく、起き上がる。
時間は3時。まだ春香からメールは来てなかった。

俺「……」
花月「ふみ……」

寝言でも「ふみ」と言いながら、顔をこっち向けて寝てる花月。

俺「……」

そのほっぺにグサリと人差し指をさす。

花月「っ!?」
俺「はよ」
花月「……随分と、乱暴な起こし方だな……」
俺「なに、こうしてほしかった?」

ぷに、と軽く頬を押す。

花月「……」
俺「どんな気分?」
花月「……まどろむ」
俺「まだ眠いんかい」
花月「貴様の携帯が鳴ってるぞ」
俺「あ」

見ると、春香からメール。
「もう着きましたから。どこにいます?」
俺は再び、花月の向かいに移動。

花月「む、どうしてそっちに戻るのだ」
俺「甘えんぼなんですよ、例の小学生は」
春香「おに~さ~ん」

シュタッと春香登場。

俺「ワンピか、いいねぇ」
春香「けどなんか、たまにブラ見えたりするんですよ。位置関係がよくわからないです」
花月「……」
春香「あ、こんにちは、おばさん」
花月「……こ、こんにちは」
俺「春香、中学生に『おばさん』はないでしょ、いくらなんでも」
春香「じゃあ、お姉さんで」
花月「ふむ……別に、気にしていない」
俺「この子、ちょっと難しい言葉使うけど、気にしないでね」
春香「はい、わかりましたお兄さん」
花月「……確かに、随分と甘えて来るのだな、貴様に」
俺「甘えんぼさんだからね、こないだなんて、度が過ぎて俺の太ももに自分の-」
春香「ああああああ! ダメです言っちゃダメです!」
俺「大丈夫、言ったとしても何一つ理解出来ないから、この子は」
花月「……ヒドく、馬鹿にされている気がするのだが……」
春香「……じー」
花月「口で言うな、口で」
春香「この人が、お兄さんの恋人さんなんですか?」
俺「ちゃいますよ、ただの知り合いです」
春香「……浮気です、家政婦です、お兄さん。ベタ~」
俺「こらこら、あまりひっつく-」

ヒュッ!と、花月が俺の首筋寸前に、プラスチック製の将棋板を。

花月「……こちら側にあった、片しておけ」
俺「……花月もベタベタしたかったり?」
花月「馬鹿な事を言ってる暇があれば、すぐに受け取れ」
俺「はいはい」
春香「ところで、お兄さんどうして今日は私を?」
俺「ああ、明日なんだけど、遊び行く?」
春香「ごめんなさい、明日は無理なんです……」
俺「あれま、そうなんだ……いつも大学付いてくるから、土曜は完全フリーなんだと思ってた」
春香「ええっとですねえ、魅秋ちゃんが、明日ちょっと連れて行きたいとこがある、って」
俺「魅秋が? 一緒に行きたい、じゃなくて、連れて行きたい?」
春香「なんか県外に引っ越すらしいんですよ、魅秋ちゃん。それでなんか、最後に一緒に行きたいとこがある、って」
俺「へえ、引っ越しちゃうのか……」
花月「つまり……」
春香「あ、ハルカっていいますよ」
花月「春香は、明日来れないということか」
春香「そうなりますねえ……お兄さんと遊び行きたかったんですけどねぇ……」
俺「くすぐられたかったり?」
春香「いや~、ここは人いますしね~……っ」

あまり強くなく、耐えれる程度に弱く春香をくすぐる。

俺「こんぐらいなら?」
春香「はっ、だっ、大丈夫……です」
花月「……何を……やっているのだ……?」
俺「この子は花月と逆で、くすぐられるのが大好きという極めて異例な変態でしてね……」
春香「へっ、変態と言った方が変態なんですよっ!あはは……」

ふと気が付くと、花月がうつむいている。
しかも両手で耳を塞いでいる。

俺「どうしたの?」
花月「……人が、くすぐったりくすぐられたりを見るだけでも、鳥肌が立ってくる……!」
俺「……へぇ」

春香へのくすぐりパワーアップ。

春香「にゃっ!? ははっ、はははははは!」
花月「怖気が……!」
俺「……なんだこの二人は」
春香「はぁ、はぁ……」

春香は、悶えながら俺の腕をぎゅっと掴んでる。

花月「……理解しがたい、色気だな」
俺「世の中には、色んな人がいるってことですよ」
花月「ふむ……」
春香「……ホントごめんなさいです、明日行けなくて」
俺「気にしてないから、魅秋ちゃんと、たぶん最後の日を、すごしてきなさい」
春香「……はい」
花月「……」


中見出し

俺「もしもし」
佳奈恵「……大好き」
俺「おおっと、何さいきなり?」
佳奈恵「言ってみたかっただけよ」
俺「今日はどうだった? 疲れた?」
佳奈恵「さっきまで、ずっと女子にいじられてばっかで大変だったわよ」
俺「……詳しく聞きたいけど、やめとこうか」
佳奈恵「けど、楽しいわ、ホントに」
俺「もっかい『大好き』って言って……あ、『愛してる』のほうでいいや」
佳奈恵「……言えるわけないじゃない、恥ずかしい」
俺「さっき言ったじゃん」
佳奈恵「『愛してる』。はい、これでいいのかしら? まったく……」
俺「消灯だよね、今まわりに誰もいないの?」
佳奈恵「平気よ、完全安全地帯にいるから」
俺「先生とか、部屋に確認に来ないんだ?」
佳奈恵「もう終わったわ」
俺「そかそか」
佳奈恵「……」
俺「……あー」
佳奈恵「そっちも言いなさいよ」
俺「え?」
佳奈恵「私にさっき言わせたこと」
俺「……愛してます」
佳奈恵「……可愛いわね」
俺「うるせいやい」
佳奈恵「ふふ、おやすみなさい」
俺「あい、おやすみ」

馬鹿っぷるでごめん(´・ω・)



中見出し

友達C「そういえば先生、彼女いるんですか?」
俺「え、いないけど……」
友達B「別れてからどれくらいなんです?」
俺「あぁ、そろそろ一年なるかなぁ……」
佳奈恵「……」
佐藤さん「この子どうです? 佳奈恵」
俺「和泉さんは彼氏いないんだよね?」
佳奈恵「え、ええ、そうよ……」
俺「恋愛なんてクソ喰らえ、彼氏なんて存在吐き気がする」
佳奈恵「……」
俺「どうかしました?」
佳奈恵「とっ、当然じゃない……」
俺「仮に彼氏が出来たとしても、一緒にいるだけで怖気が走り、すぐにでも別れたくなる」

この辺から佳奈恵の足蹴りがひどくなってきたので、止めておく。
(雪の子来た後の話)

俺「そういやさっきまで、一通りの恋愛話で盛り上がってたんだけど、雪の子は?」
雪の子「私……ですか? いませんよ、そんな……」
俺「……雪月花って、容姿端麗、文武両道のわりには、誰も恋人いないんだね」
佐藤さん「佳奈恵はどうだかね~」
佳奈恵「ほっといて」
雪の子「あの、たまに告白されたりはするのですが……何か、怖い方ばかりで……」
俺「怖いって?」
佐藤さん「ああ、結構スポーツやってる男の子に人気なんですよ、この子」
俺「へえ、でも、断っちゃうんだ」
雪の子「はい……好きな人はいるんですけど、どうしても告白できなくて……」
佐藤さん「告っちゃえ告っちゃえ、雪なら佳奈恵と違って平気だから」
佳奈恵「意味不明ないじめ方、やめてくれないかしら」
なぜだか、俺の側に、佐藤さんがやってくる。

俺「あれ、どうかしたの?」
佐藤さん「これ、さっきまで私が使ってた箸なんで」
佳奈恵「……?」
佐藤さん「アーンって食べさせて下さい、アーンって」
佳奈恵「げほっ!」

佳奈恵がサイダー飲んでむせる。

友達A「佳奈恵、いつも最高のタイミングで何かやってくれるよね」
佳奈恵「……みっともないからやめなさい、タン猫」
佐藤さん「え~、佳奈恵って別に、先生のことなんか不快で不愉快で大嫌いなんでしょ?」
佳奈恵「……そ、そうよ」
佐藤さん「じゃ~いいじゃな~い、変態さんは口出さないでくださーい」
俺「……じゃあ、何がいい?」
佐藤さん「そのウインナーで♪」

ちなみにウインナーは、注文したのではなく、自宅で
焼肉の時は欠かせないと言って、佐藤さんが持ってきてたもの。

友達A「ちょっ、佐藤エロいって」
佐藤さん「何が?」

しらばく沈黙の後、友達みんな大爆笑(佳奈恵はひきつった笑い)
ウインナーを、箸でつまむ。シャウエッセンぽくって、結構大きい。

俺「裏側焦げてるよ」
佐藤さん「ちょっとすぐに入れないで、口元にどうぞ」
俺「こう?」

近づけると、とりあえずフーフーする佐藤さん。
で、パクリと食べさせる。

友達C「わーえろいって」
雪の子「(無言で興味津々に見える)」
佳奈恵「(ヒジつきながら、不機嫌そうににんじん食べてる)」
佐藤さん「佳奈恵~、ごめんね、佳奈恵の先生占領しちゃって」
佳奈恵「別に……勝手にやってなさいよ」
佐藤さん「佳奈恵もあーんして食べさせてもらえば?」
佳奈恵「嫌よ」
佐藤さん「こっちに来ないとアレやるよ?」
佳奈恵「……まったく」

しぶしぶ、佳奈恵がこっちに来る。

俺「アレって何? 佐藤さん」
佐藤さん「企業秘密です」
佳奈恵「で、何、どうするのよ?」

友達BだかCだかが、カメラを取り出す。

俺「あ、写真撮るんだ」
佐藤さん「寄りかかってもいいですか?」
俺「どうぞどうぞ」

佐藤さんがぴと、と近づいて、密着してくる。

俺「じゃあ、いいですよ~」
佐藤さん「佳奈恵~、もっと近づきな、って!」
佳奈恵「え、ちょっ!?」

佐藤さんが後ろから佳奈恵をグイッとひっぱる
で、俺の膝のあたりに倒れこむ佳奈恵
友達B「はいっ! おいしいねえ~佳奈恵」
佳奈恵「ちょっ、こんな体勢で……!」

佐藤さんが押さえ込んでるので、佳奈恵が俺の中から脱出出来ないでいる。

俺「まあ、今日ぐらい甘えれば? 和泉さん」
佳奈恵「うううるさいわよ、ザザ猫にアーンって食べさせて……!」
俺「やったことなかったっけ?」
佳奈恵「ポッキーならあるけど……それは……」
友達B「じゃあ撮るよ、はい、チーズ」


中見出し

地元駅のホームに、花月到着。

俺「はよ~」
花月「待たせた」

ちょうど電車が来たので、乗り込む。
土曜なので、車内は適度に混んでた。

俺「というか、もしかしてデートとか、初めて?」
花月「今日は、断じて逢引の類ではない。ただ共に墓参りに行くだけだ」
俺「……ああ、そうだよね、今日は墓参り行くだけだもんね」
花月「ふむ……」
花月姉兼俺元恋人の墓参りを済ます。
なんか水入れるタルっぽいアレを片付け、

俺「じゃ、せっかくだし、この後どっか行かない?」

ホントはワンクッション「じゃあ帰ろうか」と入れたかったんだけど、
花月の性格上意地になる気がしたので、控える。

花月「どこかとは……どこだ?」
俺「都内行こう、都内」
花月「ここも都内だ」
俺「ここは、都内だけど都会じゃない」
花月「どこがいい」
俺「どこがいいとかある?」
花月「……ふむ……」
俺「……」
花月「……上野でいい」
俺「上野? 遊ぶようなとこは何もないよ?」
花月「だから、いいのだ」

ということで、上野に。
上野到着。

俺「上野はあまり来たことないなぁ……」
花月「私は初めてだ」
俺「初めてなのに……どうしてここに?」
花月「不忍池に、前々から行ってみたかった」
俺「あぁ……俺前に友達に『行かない?』って聞いたら、『ただの水見てどうすんの』って言われたあの不忍池か」
花月「風情に欠けるな、その友は」
俺「ま、行きたいんなら行ってみようか」
花月「ふむ」

途中の売店で氷のアイス買って、不忍池に向かう。

俺「……で、そこ行って何したいとかあるの?」
花月「まったりしたい」
俺「……まあ、金はかからないからいいよね」
不忍池到着。
適当なとこに、二人で腰掛ける。

俺「しかしまあ、天気は結構晴れてるね、今日」
花月「ふみ……まどろむ」
俺「……つくづく思うんだけど」
花月「なんだ?」
俺「『ふみ』って言うぐらいなら、『ふみゅ』のほうが良くない? いや、俺も何を基準に比べてるか自分でもわかってないけど」
花月「後者の、そんな媚びたような吐き声、私には無理だ」
俺「……そですか」

ICEBOXから一粒取り出し、

俺「ほれ、アーン」
花月「自分で食べろ、馬鹿か」
俺「冷たい」

そっぽも向かないので、自分でそのまま食べる。

俺「そういや、ボートとか全然いないね」
花月「ボート? ボートに乗れるのか?」
俺「休みかね、今日。天候悪くなるとかで」
花月「ふむ……」
調べてみると、まだボートの営業自体始まっていなかっただけでした。

俺「10時半からだってさ」
花月「……」
俺「乗る?」
花月「仕方ない、甚だ気は乗らないが……」
俺「じゃあ、そんな言い方ならいいや」
花月「一緒に乗りますああいちいち真綿で首を絞めないと気が済まないのか貴様は!」
俺「どもども」

時間まで待って、手漕ぎのボートに二人で乗り込む。
こんなに高いとは知らなかったけど。
スイスイ~と適当にボートを漕ぐ。

俺「あはは楽しいね花月アハハハハ~」
花月「自重しろ、貴様……」
俺「ねーねー、星田君のことだけど」
花月「星野のことか?」
俺「付き合っちゃえば?」
花月「……何をどうしたら、そういう結論になる」
俺「かなりの確率で、向こうは花月のこと好きだと思うよ」
花月「朝の走った後の挨拶など……ただの、社交辞令だ」
俺「花月はどうなの? 星野君のこと」
花月「……一時期、貴様に対して抱いていたような感情は、今のところはない。ただ……」
俺「……」
花月「……変な奴だとは感じる。私が相槌を打っただけで、笑ってくるのだ」
俺「にやにや、と?」
花月「穢れのない、爽快な笑みだ」
俺「訳すと『ふみ~星野君可愛いふみ~』ってこと?」
花月「蓮(ハス)の餌にされたいか」
俺「……どうやってよ」
花月「……万が一、だ」
俺「なになに?」
花月「万が一、星野に、かつて貴様に抱いていたような感情を、抱いたとしよう」
俺「素直に『恋したら』って言えばいいじゃないの」
花月「貴様に恋をしたことなんぞ、一度もない」
俺「まあいいや、続けて。抱いたとしたら?」
花月「……何がどうなるというのだ」
俺「……」
花月「私と貴様がこうして、奇跡的に交友を深めているのは、私の事情を把捉してるからだ……自殺の日も、言ったはずだ」
俺「……」
花月「被害者がましく、今までの事情を話すことなぞ出来やしない。そしてそれなしに、今から私が、クラスの者からの理解を得るなぞ……不可能だ」
俺「佳奈恵は、それでも見破っていた」
花月「アレは、頭の作りが一線を駕(ガ)している」
俺「あまり、他人を低く見ないほうが良いよ。それこそ、足元をすくわれる原因になる」
花月「む……」
俺「別に説教するわけじゃなくて、ようはそんな深刻に考えんでも、なんとかなるよ、ってこと」
花月「まあ、考えてはみる……がな」
上野終了。都内でも回ってみますか、ということで、この時点で
一日630円(多分)で回れる切符を購入。池袋に向かう。

池袋の駅に戻る。時間は……確か昼過ぎ。
で、次はどこ行こうかという話に。
俺「どこ行く?」
花月「秋葉原だ」
俺「……Que(何)?」

思わずスペイン語で聞き返す。

花月「秋葉原と言った。文京区の」
俺「俺も秋葉原が何区かは知らないけど、少なくとも文京区でないことはわかる」
花月「駄目か?」
俺「いいけど……なぜに?」
花月「どんなに混沌とした地獄の辺境か、一目見ておきたいと思ってな」
俺「今は湿気凄いと思うよ。湿度高いし、雨降った後だし、横幅広い人多そうだし」
花月「構わない、向かうぞ」
俺「あい、了解」
電車の中で、

俺「……ちなみに、どうして秋葉原を、地獄呼ばわり?」
花月「佳奈恵が、そう言っていた。一度でいいから、行ってみるといい、と」
俺「佳奈恵、行ったことあったんだ、秋葉原……」
花月「紛争地帯と称していた」
俺「そして、秋葉原で何があったんだろ、佳奈恵は」
駅の中に金曜食べたとこと同じうどん屋があったので、そこで昼食。
そして、改札を出る。

花月「……」
俺「しかし、相変わらず人多いね。改札口もあまり大きくないし」
花月「……ふむ、佳奈恵が言っていたことも、なんとなくは理解した」
俺「どういう風に?」
花月「アイツは、男だけの世界に、免疫がないようだ」
俺「自分は違う……と?」
花月「武道といい囲碁・将棋の遊戯といい……あまり、女はいなかったな、それこそ、姉ぐらいだけだった」
俺「そかそか」
花月「しかし私とて、この街中を歩く勇気はない」
俺「……なんでよ」
花月「……ぷよぷよとした男で、溢れ返っている図も、圧巻だな」
俺「それはたまたまだと思うけど」
花月「まあ、もう秋葉原は結構だ早く帰るぞ戻るぞほら早くしろ」
俺「ああ、やっぱ駄目なんだ、花月も」

で、俺の意向で、新宿に向かうことに。
新宿では、花月にゴディバ食べさせたげたり、
ランジェリーショップ見てくれば?と言って、花月をからかったり、
服見たり、帽子見たり、サングラス見たり、ペット見たり、色々……

そんなこんなで、午後も6時に差し掛かる。
適当なとこに腰掛ける。
二人で飲み物飲んで、まったりと。

俺「……ふぅ」
花月「疲れたな」
俺「疲れた?」
花月「今日も朝走ったからな、時間的にも追われていた」
俺「……そうまでして、アイス食べたいかね」
花月「今の私の、生きる糧だ」
俺「……それで」

ここで、携帯が鳴る。

俺「あ、ごめん」
花月「構わない」
俺「って、佳奈恵からだし」
花月「む」
俺「あい、もしもし」
佳奈恵『ふふっ、私、風呂上がりよ?』
俺「だから?」
佳奈恵『……予想はしてたけど』
???『冷たいっすよ兄さん!』
俺「あれ、佐藤さん?」
佐藤さん『いーやっ!電話越しでわかってもらえるなんて!耳元で何ささやいて欲しいですか?』
俺「『愛してるハキューンズキューンバキューン』って」
佐藤さん『あ・い・し・て・る・ぜ! ハキュズキュバキュズキュ~ン♪』
佳奈恵『エミ、窓から落とすわよ?』
佐藤さん『はきゃ~ん♪』
俺「ごめん、うざい」
佐藤さん『そっちがやれって言いましたでしょーが!』
佳奈恵『今は? あの子と一緒?』
俺「そだよ……ほれ」

花月を引き寄せる。

花月「な、何をする!?」

顔が超接近中。だけどお構いなく、

佳奈恵『え、どうしたの?』
俺「花月も共に会話に参加すべく、止むを得ず密着中でございます。少佐殿」
佳奈恵『……帰ったら、悶え殺してあげるわ』
佐藤さん『格好だけじゃなくて言動もエロいよ、佳奈恵』
俺「で、なんか目的あって電話してきたの?」
佳奈恵『……別に、貴方の声が聞きたかったとか、そういうことじゃないわよ』
佐藤さん『佳奈恵、ぜんぜん本心を隠せてないよ、佳奈恵』
佳奈恵『いつまでひっついてきてんのアンタは! 離れなさいザザ……』
佐藤さん『ほれほれほ~ぉれ~ぇ』
佳奈恵『ちょっ、だっ!……で、電話越しに、花月……ん、もっ!』
佐藤さん『すぐ火照ちゃうんだから佳奈恵、胸もみもみしただけで』
俺「……」
佐藤さん『やほ』
俺「……佳奈恵は?」
佐藤さん『悶え殺しました、花月軍曹と話したいのですが、醤油殿』
俺「人を調味料にするな……はい」

花月に通話口を向ける。音量は高めにしてあったので、会話は聞こえた。

花月「……なんだ」
佐藤さん『そういや、アンタとこうやって話すの、初めて?』
花月「だとしたら、なんだ」
佐藤さん『あー……ホントに残念だよね、旅行来れなくて』
花月「佐藤が、気にすることじゃない」
佐藤さん『お土産は買って帰るから、期待しててね』
花月「……」
佐藤さん『っていうか、教えて教えて、何がいいか、とか』
花月「……何も、ない」
佐藤さん『いや~、勝負に勝ちたいんっすよ、かげっちゃん』
花月「……勝負?」
佐藤さん『みんな何がいいか何がいいかって考えてんだよ? アンタへのおみやげ』
花月「……担任が、何か言ったのか」
佐藤さん『私が個人的に話はしたけど、みんな買う買う言ってたのは、自発的だと思うよ』
花月「……」
佐藤さん『もう……馬っ鹿じゃないのアンタ、死ぬほど楽しいよ? 旅行。それを……』

佐藤さんが、なんとなく泣き声になってる。

佐藤さん『なんか、色々事情あんのは佳奈恵から聞いたし、それでも、馬鹿って言っていいかい?』
花月「……すまない」
佐藤さん『謝んなくていいって……とにかく、卒業旅行覚えてやがれ、こんにゃろ』
花月「……」

花月が通話を切る。
電話が終わったので、花月から離れる。

俺「……」
花月「…………」
俺「……佐藤さん、いい子だね」
花月「嘘に、決まっている」
俺「何が?」
花月「本当だとしても、ただの流れだ、雰囲気だ、私に対して、土産を、クラスの者が買って来るなど……」
俺「本当に疎まれてるんなら、話題にすら出ないよ、花月のことなんて、みんな黙殺する」
花月「……そうだな」

花月、うつむいて、声もなく、静かに涙を流す。
花月「ここで何をしている、何故貴様と一緒にいる。私は……」
俺「京都にいるべきだったんだよ、積立金なんて、どうとでもなったはずだ」
花月「馬鹿か」
俺「……誰が?」
花月「……言う、なっ……!」

特に抱き寄せたりせずに、泣き止むまで、花月の隣で待つ。
今までの記憶でも蘇ったのか、結局花月は一時間ほど、泣き止まなかった。
地元に戻る。
どこかで食べようと言ったが、花月がまたコンビニがいいと言ったので、そこで夕食を購入。

俺「今日は、どうだった?」
花月「……色々あった」
俺「あれま、随分と簡単な言葉に落ち着きましたね」
花月「単純な言葉も、想像の余地があって、なかなか面白い」
俺「……そか」
花月「……ああ、楽しかった、楽しかったぞ」
俺「光栄です、花月」
花月「ところで今日も、佳奈恵の浮気公認許可が降りている……のか?」
俺「そですけど」
花月「抱け」
俺「……随分と、男らしい言い方で」

で、まあ軽く、ぎゅ~っと抱きしめる。
昼やったみたいに、首さわさわしたり。

花月「ふみぃ……」
俺「語尾伸ばした」
花月「これは……禁じ手の類だ……」


中見出し

池袋歩いてると、ポツポツと……

花月「む……」
俺「ありゃ、降って来たね」

そしてすぐに、本降りに。
折り畳み傘をさす。その中に二人で入る。

花月「急だな」
俺「しかも風もあるし……この折り畳み、二人で入るにゃちと小さいね……」

このとき駅に戻る途中だったので、そのまま駅に向かう。
駅に到着。
互いに、ひどく濡れてた。
人が行きかう駅の構内地下で、ひとまず足を止めることに。
傘の水を払う。

俺「大丈夫だった?」
花月「髪は結構ぬれたが……まあ、構わない」
俺「ああ、腕も濡れてるじゃん」
花月「服で……」

服で拭こうとする花月を、静止する。

俺「待って、ミニタオルあるから、それで拭きなよ」
花月「ああ、すまない」

花月にタオルを渡し、腕を拭いたりする。

花月「助かった」

と花月がタオルを返すが、まだ首とか髪とか濡れてることに、気づく
俺「ああ、まだ髪とか濡れてるじゃん」

と言いつつ、花月の後ろから、髪とか拭く。

花月「いや、自分で出来る」
俺「いいよもう、やり始めちゃったし」
花月「……」

で、首をあまり強くないように、優しく拭くと。

花月「っ(ビクッ)」
俺「……」
俺「ごめん、くすぐったかった?」
花月「こそばゆいというか、ゾクリとしたぞ」
俺「ま、ちょっと我慢しててね」

と言い、再び拭き始める。

花月「あっ、ちょっと待て、これは、無理だ……!」
俺「くすぐったがりなんだから、も~う」
花月「いっ、一度ツボに入ると、も、もう……!」

クネクネしながら悶える花月。

俺「ほら、あごあげて」
花月「わっ、わかっ……」

どう考えても濡れてないだろうけど、喉のあたりを拭く。
するとかつてないぐらいに、ビクリと反応する花月。
花月「っ、くすっ、くすぐっ!みへへ……」
俺「敏感すぎますよ花月、それで美容院の時とか大丈夫だったの?」
花月「あはっ、ひっ、ふみぃ……」

暴れだしたので手を引こうとしたのだが、
花月があごで俺の手をはさんで、抜けない。
で、その中で抜こうと俺がうごめくものだから、またくすぐったくて
花月が一層暴れる。

俺「ほら、手はなしてって」
花月「っ……」

ようやく、俺の手が開放される。
なので、花月の背中をツーってなぞり上げる。
花月「は……あっ……!?」

そして、その場にへたり込んでしまう花月。

俺「大丈夫?」
花月「だいっ……じょうぶなわけ……」

肩にぽんと手を触れただけで、またブルッと震える花月。

俺「くすぐり弱いっていうか、物凄い敏感なんだね」
花月「はぁ……はぁ……ばかが、ばか……」

いつまでもへたり込んでてもみっともないので、花月を起こす。
目がかなり潤んでいて、顔は紅潮していた。

花月「だから……擽りは、やめろといった……壊れ、そうだ……」
俺「あい、これからは多分、自重します」
花月「ふみ……」


中見出し

昨日は、買ってきたおみやげ食べに来ない?ってことで、和泉邸に。
ちなみに、修学旅行の振り替え休日なので、中学校はお休みでした。
和泉邸に着いて、部屋に入ると、見知ってる顔と見知らぬ顔合わせて、
五人ほど。

佐藤さん「やほいっす」
俺「やほっす」

知ってる顔は、佳奈恵と佐藤さんの二人。
あとは、見知らぬ方々三人。
友達D「こんにちは~」
俺「あ、どうも初めまして」
佳奈恵「久しぶりね」
俺「和泉さん、お久しぶり、修学旅行は楽しかった?」
佳奈恵「ええ、楽しかったわよ。怪我以外は」

と言い、右腕にガーゼ貼ってあることに気づく。

俺「あれ、どうしたの?」
佳奈恵「派手に転んだのよ、石階段で。膝もよ」
俺「あらま、ホントだ。痛かった?」
佳奈恵「子供みたいな質問しないで下さい、先生」
俺「はいはい、了解しました」
佐藤さん「……」

友達E「どれ食べてもいいですよ~」

部屋の中は、おみやげで溢れてた。

俺「……買いすぎじゃね?」
友達E「あはは、ちょっと体重心配ですよね、あはははは~」
俺「じゃ、わらび餅でも頂きます」

と言いつつ、適当に食べ始める。

佐藤さん「あっ、そうだ……はい!」

佐藤さんが、俺にお土産を。

俺「ありがと、開けていい?」
佐藤さん「帰ってからにして下さい♪」
俺「え、なぜによ」
佳奈恵「いいから、帰ってからにしなさい」
俺「……まあ、わかったけど……なんか綿っぽい? 金属でも入ってるの?」
佐藤さん「まぁまぁ、帰ってからのお楽しみお楽しみですよ」
佳奈恵「それで、これ……」
俺「……え?」
俺が、冗談で「買ってきて」と言った、宮脇賣扇庵(ミヤワキバイセンアン)の高そうな扇子を、佳奈恵が取り出す。

俺「うわぁ……マジで買ってきてくれたんだ」
佳奈恵「ええ、ちょっとルート的には無茶したけれど、買ってきたわ」
俺「……いくらしたの?」
佳奈恵「聞かないほうがいいわよ。まあ、おみやげというより、ボーナスとして受け取って下さるかしら?」
俺「はあ……そうしときます」
友達F「和泉さん、でも私たちと住む世界が違う」
佳奈恵「ふふ、ぼそぼそつぶやかれたって、聞こえはしないわよ?」
友達F「どうでもいいかも」
で、あとは適当な京都話で盛り上がり……
知恩院がどうだったとか金比羅宮がどうだったとか。
寺の名前自体あんまわかんなかったので、この辺は上の空で話してた。
とりあえず佳奈恵は、清水寺の階段で転んだらしい。

ここで、友達Dと友達Eが帰宅。俺含めて四人に
時間的には午後二時ぐらい

佐藤さん「ねーねー、今日部活ないの?」
友達F「ある。けど、休むつもり」
俺「ねーねー、和泉さんは、部活は?」
佳奈恵「あら先生、それは皮肉かしら? それともある種の挑戦状かしら?」
友達F「楽しそうだね、二人」
俺「楽しいですよ、佳奈恵いじりは」
友達F「通ですね」
俺「いやー、よく言われる」
友達F「飽きないことを祈ります。飽きられない努力を、佳奈恵」
佳奈恵「さっきから微妙に挑発的ね、貴方」
友達F「そうかもしれない」
佳奈恵「……なんかその、淡々っぷりが……」
その後色々乱闘交じりの雑談して、時間もだいぶ過ぎる。
4時ぐらいになって、友達Fがいきなりすくりと立ち上がり、

友達F「もう帰る」
佐藤さん「ありゃまま、なんか用事?」
友達F「(フルフル)」
俺「どしたの?」
友達F「眠いから、帰って寝させてもらいます」
佐藤さん「ここで寝てけば? ふかふかベッドがそこに……」
友達F「やめとく」
佐藤さん「そか、んじゃ、またね」

で、友達F、帰宅。
見送って、自室に三人が戻った直後、佳奈恵が飛びついてくる。
そのままベッドに押し倒される俺。
ちなみに、部屋の中に佐藤さんも余裕でいます。
佐藤さん「まだ、夕方ですよ~おふたりさ~ん」
俺「ああもう、どうしたの?」
佳奈恵「……だって……だってぇ……」

泣きじゃくってた。

俺「よしよし、何かあったの?」
佳奈恵「わかんないわよぉ……ああもう、何か、もう……」
佐藤さん「翻訳すると、『貴方に会えなくて泣くほど寂しかったのよバカ!体が恋しかったのよ、バカ!』ですね」
俺「後半はいらん」
佳奈恵「あぁもう! なんなの私、なんで泣いてるのっ……!」

このあたりから、若干笑い声も混じってくる。
佐藤さん「寝言とか凄かったんですから、この人」
俺「なんて言ってたの?」
佳奈恵「言わないで、言っ……」
佐藤さん「……あー、言おうとしたら、なんか自分まで恥ずかしくなってきたんで、やめときます」
俺「いやいやいや、気になるでしょそこで止めたら」
佐藤さん「……先生の名前を何度がつぶやいた後に」
俺「あとに……?」
佐藤さん「……いや~、やっぱ無理っすよこれ、自主規制ですよ」
俺「……まあ、聞かないでおくよ」
とりあえず押し倒された状態から復帰して、ベッドの上で、佳奈恵を後ろから抱きしめる形で座る。

佳奈恵「あーっ、久しぶりに抱きしめられてるわね……」
俺「急にテンション下がったね」
佐藤さん「そういえば、花月さんとは上手くやってました?」
俺「ああ、まあ大体は。あの電話の後、しばらく泣いてて大変だったけど」
佐藤さん「ああー、ごめんなさいね、私がなんか変なことなっちゃってて……」
俺「後ろから抱きしめてくれたら許してあげる」
佳奈恵「……ほっぺたつねっていいかしら?」
佐藤さん「醤油さん、胸が弱点ですよ、佳奈恵」
俺「俺に対して、胸には電磁フィールドが張られてるから、接触は不可能なんですよ。佐藤隊長」
佐藤さん「で、なに、後ろから抱きつけって?」
俺「いや、浮気はいけないからやっぱりいいや」
佳奈恵「そうよ、マタタビ猫風情が、私の恋人に触れる権利でもお有りだと思ってのかしらなの?」
俺「語尾がおかしいよ、佳奈恵」
佳奈恵そんなやり取りをしていると……佐藤さんが……いない……!

で、背後からむぎゅ~~~~~っぅと、佐藤さんが抱きついてくる。

佐藤さん「はーい佳奈恵はーいっ!」
佳奈恵「……言う言葉もないわ」
俺「佐藤さん、胸あたってるんだけど」
佐藤さん「きゃ~せんせいのえっちぃ~!」
俺「ノリノリですね」
佐藤さん「うん、夏までには絶対作りますよ、恋人!」
俺「好きな人はいんの?」
佐藤さん「先生じゃ駄目ですかね、うへ~」
佳奈恵「……」
佐藤さん「なんでもないです、うん、そうです」

佐藤さんが、す~っとはなれてく。

佐藤さん「あーと、基本的に同年代か年下がいいんですよね、私」
俺「あぁ、面倒みたい感じだ?」
佐藤さん「そですそです、姉御的な感じで!」
俺「ま、夏までに頑張ってね」
佐藤さん「はい♪」

で、佐藤さんが、近くにいる佳奈恵に聞こえないほどの僅かな声量で、俺の耳元にささやく。

佐藤さん「かっこ、激しく動かさないで、かっことじ」
俺「……」


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