LASではない第壱話

ミサトマンションの食卓にて。

なにやら重たいような、そうでもないような空気が漂う中で、いそいそとお茶を煎れているシンジ。
腕を組み、その様子を無言で眺めるアスカは何だか面白く無さそうな顔つきだ。

「シンジ、アタシは暇じゃないのよ?手短にして欲しいわね。」
「あ、ごめん……とりあえず、お茶。」
「ん。」
アスカは貫禄たっぷりに受け取り、ずずっと音を立ててお茶をすする。

そして、話の口火を切ったのはアスカから。
「で、相談って何?」
「あのさ……綾波をデートに誘おうと思うんだけど……」
「はぁ!?」
「いや、あのさ。だから、綾波を……」
「言い直さなくても良いわよ。聞こえてる。」
「そう、それでさ……」
「で?あのファーストとデートしたいからって何で私に相談するわけ?
 二人して何処でも好きなところに行ってくりゃいいじゃないのよ。」
「いや、アハハ……なんていうかさ……」

(注)一応、これはLRSです。


アスカはしかめっ面をしながらどうしようかと考えている様子。
しかし興味が引かれるところもあったのか、ここは話を聞いてやることにしたらしい。

「ま、いいわ。相談に乗るから言ってみなさいよ。しかし……
 へぇー?あんたみたいな冴えない男もとうとうヤル気になった訳ね。へぇー?」
「い、いや、へぇーへぇー言われても困るけどさ。」
「で、何よ。」
「あの、どうやって誘ったらいいのかと思って……」
「は!?」
「いや、だから、どうやって誘」
「ちょっと、アタシがそんなとこから教えてやらなきゃいけない訳?それぐらい自分で考えなさいよ!」
「いや、だからさ。女の子ってどこに連れて行くと喜んでくれるのかな、とか思ってさ。」

アスカの言いようも酷いが、それでも笑って相談を続けようとするシンジの様子も情けない限りである。
とにかく、それほどまでに思い悩んでいる、ということかも知れないが。

「あのさ、シンジ。女の子、女の子っていっても、全ての女を十把一絡げに考えてるんじゃないでしょーね。
 まさかアタシとあの人形女と趣味趣向が同じなわけないでしょ?」
「に、人形女って……そう言わないでよ、アスカ。綾波もあれで女の子らしいところもあるんだから。」
「どうだか……」
もう付き合いきれないと思ったのだろうか、アスカはグイッとお茶を飲み干し、立ち上がる。



「食事にでも誘えば?本人と話し合えばいいじゃない。」

そしてガラガラピシャンと自分の部屋に帰ってしまう。
そんなアスカを、シンジは障子越しに礼を言う。

「アスカ、ありがと。そうか、取りあえず食事に誘ってみるよ。」

(三日後)

「アスカぁ!行ってきたよ。」
「……どこに?主語が抜けてる。もう一回。」
「い、いや、その、綾波とデートして来たんだってば。」
「ほぉー?あの子、OKしたんだ。あんな司令のロボット女が。」
「ひ、酷いなアスカ。何もそんなふうに……」
「で、何してんのよ。話がしたいなら、お茶ぐらい煎れたらどう?」
「あ、ごめん……」

かちゃかちゃ……こぽこぽこぽ……

どうにもシンジのプライドの無さが気になるところだが、それはさておき。

「で?あの子と何処に行って何してきたのよ。」
「あ、ああ、それはもちろんアスカに教えて貰ったとおりに食事を……」

「は?それだけ?」
「い、いや、それだけって言っても、綾波が誘いに乗ってくれただけでも凄いじゃないか。」
「ふん。で?どこで何を食べてきたのよ。」
「ああ、あそこ。NERVの8階の……」

ブッ!! 

「ど、どうしたのアスカ。お茶なんか吹き出して。」
「お茶も吹くわよ!それって、いつも通りにエヴァの試験の合間にご飯食べに行っただけじゃないのよ!」
「ちょっと、そんなに怒らないでよアスカ。」
「ウルサイ!ほら、さっさと拭きなさいよ!」
「じ、自分が吹き出しておいて……」

文句が言いたいならハッキリ言えばいいのに、
言われるがままにテーブルと自分の顔を拭くシンジも大概である。

「くだらない。それでデートしたとか言い出すなんて、この馬鹿は……」
「そ、そう言わないでよアスカ。それで、また相談なんだけど。」
「……」
「いや、あの……アスカ?」
「なによ!」
「あのさ……次はどこに行けばいいのかな、と思ってさ。」


「……」
「……あの、アスカ?」
「あんた……馬鹿?」

ヒクヒクと顔を引きつらせているアスカ。もう激怒寸前の様子である。

「だからぁ!食事しながら本人と相談してこいって言ったじゃないのよ!」
「い、いや、いくら話しかけてもさ。
 『……そう?』
 『わからない』
 『なら、そうすれば?』
 しか喋らなくってさ。」
「あんた、そんな女の何が良くてデートなんかに誘ってるのよ。」
「いや、そんなこと言われても……あ、アスカ?何処に行くのさ。」
急に席を立つアスカ。
もう呆れられちゃったのかな、とシンジは溜息をつくが、すぐにアスカは帰ってきた。

「ほら、この雑誌みて映画にでも連れてけば?」
がらがらっ!ぴしゃんっ!

「……アスカ。ありがと。僕、頑張るよ。」

(注)一応、これはLRSです。
最終更新:2007年12月02日 00:15
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