バラバラバラバラバラバラ……
ヘリのプロペラ音が鳴り響く中、一人の少年がようやく目覚めて朝食をしたためている。
『今朝未明、第三新東京市周辺に突如あらわれた巨大生命体「使徒」は……』
そんなテレビのニュースを見ながらポカンとしている少年、碇シンジ。
巨大生命体?何それ、そんなものがどこから来たの?と。
いや、そんな言葉自体は彼の脳裏に浮かばなかったかも知れない。
この昔の怪獣映画のような映像が正規のニュース番組で流されていること自体、
とても信じられることではない。
ましてや、ついさっき目を覚ましてトースト片手の寝ぼけた彼の頭では。
しかし、
(なんだろう?ヘリの音がやけにうるさいな……)
……バラ!バラ!バラ!バラ!バラ!バラ!バラ!バラ!バラ!
(ち、近い!?)
ドンドンッ!ドンドンッ!
……ドガシャーンッ!!
「うわぁぁぁぁぁっ!!」
シンジが叫び声を上げた時には、彼はすっかり取り囲まれて既にねじ伏せられていた。
「目標、確保しましたッ!」
そう報告したのは、物々しい完全武装で身を固めた自衛隊員の代表の一人。
それに応えたのはなんと一人の女性の声。
「手荒なマネな止めてと言ったでしょう!」
カツ、カツ、カツ……という足音が聞こえてくる。
うつぶせにされたシンジの目にかろうじて飛び込んできたもの。それは紛れもなく女物のハイヒール。
「まあ、いいわ。連行して」
「ハッ!!」
そして無理矢理に担ぎ上げられ、家の外へと連れ出される。
「ちょっと待って!あの、これはいったい……」
抗議しようとするシンジ。
その彼の保護者らしいものが現れ、隊員達に問いつめようとするが一切取り合わない。
これが法治国家のやることなのか、という有様でこの強制連行はあっという間に完遂された。
ヘリに乗せられ、自衛隊員の間に挟まれ、今だパジャマ姿の碇シンジ。
何が何だか訳が判らない。テレビ番組のドッキリ?そうであれば良いのだが。
何故?何故?何故?を連呼する頭を抱えたシンジの目の前に、再び先程のハイヒールの主が登場する。
それなりに美形。そしてスタイルも良い。
しかし彼女の厳しい表情が、そんなよこしまな考えを抱かせる隙を与えてはくれなかった。
「碇シンジ君ね。私は特務機関NERVの戦術作戦部作戦局第一課、作戦部長葛城ミサト」
「あ……NERV?父さんの……」
「そうよ。それじゃ、これを着て」
「え?あの、ちょっと!」
自衛隊員の横暴はまだ続く。
着ていたパジャマを下着ごと一気にナイフで切り裂かれ、シンジはあっという間に全裸にされてしまった。
どこで練習したのか、というほど見事な手際だ。
「早くこれを着せて。本部、そちらの状況はどう?」
そう言いながら一着のボディースーツを隊員達に手渡すミサト。
もはやシンジと対話するつもりはないらしく、
彼が抗議したり逆らったり、あるいは迷ったりする暇を何が何でも与えるつもりは無いようだ。
ミサトはもはやシンジの相手すらしようとせず、通信モニタに向かっている。
その彼女に対して、そちらも厳しい表情の通信相手が答える。
『日向です。零号機はかろうじて使徒シャムシエルと応戦中です、が……』
「彼女の体調はどうなの?」
『傷口が開いて出血が酷いようです。このままでは』
「もう少しよ。サードチルドレンを連れて帰るから、もう少し持ちこたえさせて」
『ですが、あの……』
「何?」
『東京湾沖合から、新たな使徒が現れたんです。使徒サキエルが間もなく上陸する模様……』
「何ですって!?」
最終更新:2007年06月25日 20:56