多少霊感があるせいで、時々霊能者の真似事をさせられる。


今回の依頼主は幽霊の少女だ。
『最後に一目会いたくて』
寂しそうに俯きながら現れた彼女。
真夜中に、人の首絞め時々力をこめながら、幼馴染の少年への思いを延々惚気られたよこん畜生。
彼女にとっとと成仏してもらう為、俺は協力する事にした。
可能な限り自分の力で思いを伝えたいというので出来る事を探した結果、テープに一度録音する方式で、彼女の声が記録できた。

数日後。
俺は幼馴染の少年の前に立った。彼女は俺の後ろで恥らっている。
非常に香ばしい人扱いされたものの、少女と少年しか知らない情報を伝える事で何とか信じてもらうことが出来た。
で、いよいよメインイベントの告白タイム。
まっさらなテープをセットし、録音ボタンを押す。少年は期待と不安の入り混じった表情で俺とレコーダーを交互に見ている。
『あ、あ、あの』
暫くの沈黙の後、彼女が喋りだした。
…って何ですかその『話すことなんて無いけどへっぽこ霊能者に言われて仕方なく』だの『死んだ後でまたアンタと顔合わせなきゃいけないなんて』だの『ただの同級生なだけで変な期待なんてするな』だの以下略は。
人の首絞めながら惚気てたのは嘘ですかそうですか。
俺はまだしゃべくっている彼女に気付かれないようにテープを停止。きょとんとしている少年に声を出さないように手で制し、万一のために持ってきていた練習テープをセット。
割と大音量で再生させた。
そのテープには、練習だからと気負わず自然な感じで気恥ずかしい告白をする少女の声がしっかり録音されていた。
『いやあああぁぁぁーーーっ!!』
悲鳴を上げる少女。耳まで真っ赤になったその姿が急激に薄れていく。どうやら告白成功で成仏できたようだ。
少年にも彼女の思いは伝わったようで真っ赤になって照れている。
一応録音したばかりの罵倒テイストテープも渡して俺はさっさと家路についた。
彼女が素直じゃないのは少年は良くわかっていたようで、後日彼から『どちらのテープも大事にします』と苦笑と感謝の入り混じった手紙が届いた。


無事成仏できた彼女だが、盆で帰ってくるたびに、俺の首を絞めに現れる。
『お節介有難う』という割には割と本気モードに見えるが何故だ。
最終更新:2011年03月06日 09:24