出ると噂の交差点。バイト帰りに通りかかった俺、交通量の激しい交差点の真ん中で足止められ中。
足止めしているのはまだ10代半ばの少女霊。流れ出る血が足元で血溜まりを作っている。
『痛いの』
そうつぶやいて、血まみれの手を伸ばしてくる少女霊。テンパっている俺は、状況を打破しようと彼女の手を取り、
「い、痛いの痛いのトンで行けー!」
痛いと主張しているのであろう部分を適当に見当つけて撫で撫でしながら古風なおまじないをやっていた。
状況が飲み込めなかったのだろう、撫でられた手と俺の顔を交互に見ていた彼女。
次の瞬間には思いっきり手を引っ込められた。それから前より暗い雰囲気で、ただし微妙に距離を取られつつ言葉を続ける。
『…寒いの』
「そりゃ12月に袖なしワンピじゃ寒いよね」
俺はいそいそと上着を脱ぐと彼女の肩にかけてやる。
「ホッカイロもあるよ。いる?」
ぶんぶんと首を横に振る少女。更に一歩分距離が開く。
ちらちら上目遣いにこちらを見つつ、言うかどうか迷っていたようだったが。
『…その……ひ…独りは寂しいの、だから一緒にい』
「いいよどこ行く?カラオケ?ゲーセン?ショッピング?」
『っ…その、どこかに行きたいとかじゃなくて一緒に…いや、
べ、別に一緒に居たいとか言ってるわけじゃなくてそのあの、も、もういいわよばかっ!!』
最後は怒鳴って彼女は消えた。独り残された俺はクラクションを鳴らされまくっていた。

その二日後。
『今日は、その、こないだ借りたままの上着を返しに来ただけだから』
バイトが終わって店を出た俺が見たのは、両手で上着を抱きしめて待っていた彼女。因みに血まみれではない。
『それでね、その、あの、そういえば、…あ、頭がちょっと痛いかなって』
ちょっと俯き加減に、上着に顔を埋めるようにして見上げる彼女。
「えーっと、痛いの痛いの飛んでいけー」
頭を撫で撫でしてやる。さらさらの髪の感触。
はにかんだ笑顔を浮かべた彼女は見られていると気が付くと抱きしめたままの上着に更に顔を埋めるように俯いた。
『その……ひ、独りは寂しいの』
彼女がそっと伸ばしてきた小さな掌を俺は優しく握り以下略
最終更新:2011年03月06日 09:37