地方で不動産屋やってる俺。
この時期は転居入居仲介で色々大変。

今日やってきたのは大学生になったばかりの青年。一人暮らし希望。
幾つか良物件を紹介してみたのだが、矢張りネックは家賃。
「もう少し安いの無いですか?この際問題物件でもいいです」
「そうですねぇ…」
難物件も色々ある。立地、大家や他住人との関係、建物自体の問題。同意の無い同居人の問題も。
「幽霊?」
「はい。以前に死亡事案があったわけではないのですが何故か居ついているようでして。
おかげで半年続いた方は居られません」
「そんなもの居るわけ無いじゃないですか。他に問題ないなら僕ここにします」
怖いもの知らずの世代はこれだから…。
しかし他の条件だけ見れば確かに破格。
物件の同伴確認も行ったのだが結果依頼人はすっかり乗り気、契約と相成った。
そして約一ヵ月後。
「すいません、引っ越します」
結局彼も真っ青な顔をして駆け込んできた。

「また資産価値が下がったよ」
『知らないわそんな事』
青年の代理で引越しの手続きの為に部屋を訪れた俺の前に、勝手に住みついた幽霊が現れた。
「困ったな。何でこの部屋にこだわるの?」
『五月蝿いわね、あなたには関係ないでしょ』
住民にはおどろおどろしい様子で出て行けと迫るらしいが俺に対しては普通の対応。
しかし我侭と言うかつんけんして話に応じてくれない。
『…ちょこちょこ会うにはこうするしかないんだもん…』
「何か言った?」
『っ!!べ・つ・に!』
最終更新:2011年03月06日 09:59