「わ、別れて下さい」
「………そう」
「あなたの事が嫌いに成った訳じゃあ無いのよ…でも」
「分かってるよ食器やコーヒーカップが空中に浮いたり、後この間包丁が飛んできたりとか……」
「ご、ごめんなさい! 私オカルトに弱くって… 本当にごめんなさい!」
これで何人目だろう…今日彼女に別れを告げられた。
「お兄ちゃん…」
「麻美か……」
僕の頭上でふわふわ浮いている小学校低学年の黒髪おかっぱ頭の可愛い女の子は妹の麻美…普通の人間では妹の姿を見ることは出来ない
「………」
僕はニッコリ笑って麻美の頭を撫でる
妹は僕の実母が七年前に生活苦を理由に捨てた
その後母は再婚して今の人並みの暮らしが有るが麻美は孤児院で寂しく過ごし三年前に交通事故で亡くなっていたのだ、母は酷く後悔していたが……
「ちょ、ちょっと! 何時まで頭を撫でてるのよ!」
「いや……」
「何! ニヤニヤして…ふられて頭がおかしくなったの!」
僕は麻美を見捨てる事は出来ない…と言うよりか今僕の中では何よりも麻美の事が優先事項なのだ
「それよりも久しぶりに海でも見に行くか?」
「はあ~~お兄ちゃんがそんなんだから悪い女に引っ掛かるか心配でわたしも成仏出来ないのよ! 良い、お兄ちゃんはわたしが認めた女以外付き合っちゃ駄目だからね!」
「分かった、分かった… 早く行こう」
「しょ、しょうがないわね…わたしもヒマじゃないけど、仕方ないから可哀想なお兄ちゃんにつきあってあげる」
今は妹の笑顔を見れればそれで良い
その小さな手を僕はギュッと握りしめた
ふと横にいる妹のその頬が赤く染まってる様に見えたのは僕の気のせいだろうか……
最終更新:2011年03月06日 10:17