冷蔵庫を開ける音にぼんやりと目が覚める
まだ暗いが誰か起きて来たらしい
冷蔵庫の光が差し込むなか、電気代がもったいないなと思いながら目を閉じる

ふと、自分が一人暮らしだと思い出す
ゾッとして飛び起きると同時に目覚まし時計がなる。・・・朝のようだ
夢だったのかと思い冷蔵庫を開けるとハムとベーコンのパックが空になっている
 ・・・・体に悪そうだ



その日から夕飯にもう1人前用意し、寝る前に冷蔵庫に入れておくようにしている。

最近は好みも分かってきた。肉類(特にハンバーグ)を入れておくとキレイに食べられている
後、プリンとか甘い物も好みらしく3個入りパックを買ったら一晩で全部食われてた
健康(?)バランスを考えて野菜サラダも毎回入れているが食べられた事が無い。

「サラダもキチンと食べる事!」と張り紙を冷蔵庫に張って寝たら、朝自分の額に張られてた
おかげで朝食は毎回残りのサラダだ。自分が健康になってきた



2月14日バレンタインデー
同僚からの義理チョコを冷蔵庫に入れ、料理を作る。・・・今更だが食べているのはどんな人(幽霊?)かな?と思う
 ・・・食べ物の好みからいって子供なのかな・・・・中年男性の幽霊なら嫌だなw
くだらない事を考えつつ、作った料理を冷蔵庫に入れて布団に潜る。

朝、目が覚めると冷蔵庫が開きっぱなしになっている
覗いてみると床に女の子が寝ている。手には昨日もらった義理チョコ・・・ブランデーが入ってたようだ
起こさないように毛布を掛けて、朝食を冷蔵庫に入れてから仕事に出る。

今日の夕飯は何にしようかな?




仕事が終わり家に帰ると毛布は畳んであり、朝食に使った皿が洗ってあった。
その日の夕食を作り終わり、テーブルに運ぶと今朝の少女が座っていた。・・・・何故かそっぽ向いているが

2人分の夕食をテーブルに置くと、少女はこっちを向き黙々と食べ始めた。
こうして見ると美人というよりは可愛いが当てはまる顔立ち(中年男性じゃなくて良かった)で
おいしい?と聞くと「別に普通。」と返ってきた。

 ・・・・訂正、やっぱり可愛くない



「・・・・・・」誰かの声に目を覚ますと外に居た。不思議とこれは『夢』なんだなと認識している。
声に導かれるように近所を歩くと、とある家に着く。・・・有名な家だ
近所でも悪い意味で評判の家で、頻繁に怒鳴り声が響いているという。

声は家の裏から聞こえてくる
庭を越えると物置が見えてくる
声は物置から聞こえる
 ・・・・・・嫌な予感がする
物置の中に入るとそこには・・・・・・・・・

「助けて」


ハッキリと目が覚めた。時間はまだ夜中だが、服を着替えて家を飛び出す。
問題の家に着き、柵を乗り越える。・・・不法侵入なんて気にして居られなかった

裏庭に回り、物置に到着する。『夢』のような声はもう聞こえない
取っ手には鎖が何重にも巻かれており、凍える寒さのなか鎖を外し扉を開けると


___________そこに”彼女”は居た。



それから数週間が過ぎ、その間色々あった。
結局、警察沙汰になり長期間の育児放棄・虐待で彼女の両親は捕まった。さらに自分もみっちり取り調べを受けた。

大事になってしまった為、今の仕事は辞める事にした。同僚は辞める事無いと言ってたが、まぁいい機会だったと思う。
幸い貯金は余裕が有るので、仕事はゆっくり探そう。ついでにホワイトデーのお返しはちょっぴり豪華にしてやろう

チャイムの音にハッとする。・・・もうこんな時間かと鍋の火を止めてから玄関へ向かい扉を開ける。

「あ、あの、こんにちわ、これからお世話になります」目の前の女の子は緊張しているのか俯いてる。何故か顔も赤い。
なんだか似合わないなと思いつつ、おかえりと答えた。
 ・
 ・
 ・
 ・
 ・
「不思議ですよねーー。」
「なにが?」

「いや、色々ですよ!長期間物置に閉じ込められていたハズの子が意外と健康だったり、一家と面識の無い男が助けたり、挙句に彼女の引き取り手になったんですよ!」
「まぁ、そんな事もあるんじゃないか?そういえばあの子から聞いたんだろ?なんであの男と暮らす気になったのか」

「・・・料理がおいしかったから。らしいです。」
最終更新:2011年03月06日 10:25