昔々、水神様の供物として命を落とした彼女。
以来、彼女が祀られる社から外に出る時は必ず雨が降るそうだ。
「僕は雨好きですよ」
『雨も降り続けば災厄。私は表に出ぬほうがいいのだ』
今日も小さな社の前で退屈そうな顔をしている彼女。
「でも、いつも必ず貴女が降らせるってわけじゃないんでしょ?
 だったらそんなに気にしなくてもいいんじゃないですか?」
『愚か者。第一なぜ私が社の外へ出ねばならぬ?』
「僕とデートとか」
『…は?…な、なななぜ貴様とででででーとなどせねばならぬっ!?』
「デザートの美味しいお店とか可愛いアクセサリの店とかリサーチ済みですよ」
『いや人の話を聞け!だ、第一、わた、私は雨に濡れるのは好きではなく』
「じゃあ相合傘しましょう♪」
『相…!!い、いいいやあのその』
「嫌ですか?」
『え、いや、いやあの、嫌、いやじゃなくというか何と言うか』
「じゃあ決まりですね」
『う…その…し、仕方ない、信者の声にこたえるのも神の努めであるしな!
 下界の娯楽に付き合ってやろう!』
「あははは、ありがとうございまーす!」
そして今日も僕は彼女と相合傘です。
最終更新:2011年07月01日 19:22