「ひさしぶり」
『・・・・・』
「怒ってる、よね。ゴメン、なかなか会いに来れなくて」
『仕方ないわ。あんたはいつのまにか大人になって、遠くの街で就職もしちゃってるんだもんね』
「毎日忙しいけど、君のこと忘れた日はないよ。本当に」
『アタシはあんたの顔忘れかけてたわよ』
「君が携帯持ってたらいいのにな。そしたらいつでもメールや電話出来るのに」
『あんたとするような話なんか無いわ』
「・・・そろそろ行かなきゃ」
『・・・この際だから言っとく。いつまでも、アタシがここにいるなんて思わないで。
アタシはホントはどこにだって行ける。ただ、ここの景色が好きだから、ここにいるだけ。
飽きたらさっさと別の所に移動しちゃうんだから』
「・・・その、さ」
『・・・忙しいんでしょ、早く行きなさいよ』
「また、来るよ。絶対に」
『・・・待ってるなんて約束しないわ』

去っていくあいつの後姿を見つめながら。
幽霊でよかったって思った。涙を見られなくてすむから。
幽霊なんか辞めたいって思った。言葉を、思いを、伝えられないから。
最終更新:2011年11月03日 20:39