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もうひとつの最終決戦編 - (2020/09/13 (日) 17:12:34) のソース

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セレン達と合流したホルス達は順調に魔物を撃破していった。
皇帝の周知活動の助けもあってか、ホルス達の活躍は徐々に世間に知られていき、
最近は同行を志願する者まで現れはじめていた。

ルーネン「私達、ずいぶん有名人になりましたね」
そうね、と相槌を打ちながらセレンが新聞を開いた。
セレン「わ、すごい。この前倒した魔物のことがもう新聞に載ってる」
ニーナナス「やけに細かいところまで正確に書かれているわね」

新聞社の情報掲載の早さと正確さは異常であった。
それもそのはず、フォルサームが新聞社に情報をリークしているからだ。

有名になったことでホルス達は様々な人から援助を得られるようになった。
多くの人々から寄せられる感謝と期待は、今やホルス達の支えの一つになっていた。 


一方その頃――
暗い闇の中、魔物達が集まっていた。
その魔物達の中にはキオスドールの姿もあった。

我々がこのように集められるのは極めて異例―、
少なくともキオスドールは初めての経験だった。
重い雰囲気の中、重鎮らしき魔物が口を開いた。

「我々は人間を甘く見すぎていたようだ」

途端に魔物達からざわめきが起こった。
ざわめきは次第に大きくなり、遂には口論に発展した。

「静かに」
その魔物がそう言うと騒ぎはぴたりとやんだ。

「我々はこれまで、身を隠して静かに人間達の魂を集めてきた。
あるものは自然に紛れ、またあるものは人間社会そのものに紛れ込んでだ」 


「しかし最近、人間達の手によって同胞達が倒されている。
それも明らかに力の強いものだけが狙われてだ。
既に我々のことが人間達に知られていることは明白であろう。」

「我々の存在がどうして人間達の知るところになったかは問題ではない。
問題なのはやつらの強さだ。このままでは各個撃破され続けるだけだろう」

「しかし幸いなことに我らが主の復活はもはや時間の問題である。
人間達に我らのことが知られている以上、もはや隠れる必要もあるまい」

その言葉を聞いた魔物達から歓声、というよりが雄たけびに近い叫び声あがった。

「皆に伝えよ。我々はこれより人間どもに戦争を仕掛けると―」 


数日後、ある村で事件が起こった。
突然村に巨大な魔物が現れ、暴れはじめたのだ。

これを聞いたホルス達は討伐に向かった。
その途中、ナシュカは今回の魔物の行動に疑問を覚えていた。

ナシュカ(これまで隠れていた魔物が、何故こんな目立つ行動を…?)

現地に到着したホルス達は魔物に攻撃を仕掛けたが、
魔物のほうは大した反撃もせず、後退するばかりだった。

ナシュカ(やはり妙だ。魔物が逃げ込んだこの地形…まさかこれは)

ナシュカ「これはおそらく罠です!一度退きましょう!」
気づいた時には既に手遅れだった。
ナシュカが警告を発したのとほぼ同時に、轟音と共に複数の魔物が現れた。

ナシュカ(単騎でも手ごわい相手が複数…!しかも完全に囲まれている!)

魔物達の攻撃が一斉にはじまった。
ホルス達は懸命に耐えていたが、このままでは全滅することは明らかだった。

ナシュカ「これは無理です!どこか一点を突破して逃げましょう!」

ナシュカの提案に呼応し、ホルス達は突撃陣形を組んだ。
火力の高いホルスとヨネアを先頭にして近くの魔物に突撃した。 


―――魔物達の囲みを突破し、命からがら逃げ延びたホルス達は街で休息をとっていた。
見渡せばみんな満身創痍だった。死者が出なかったのが奇跡に思えた。

これをきっかけに各地で魔物達が暴れ始めた。
しかもその魔物達は一箇所に集まろうとしていた。

ホルス達を襲った魔物達はそのまま進軍を開始し、
道中にあった街や村を飲み込んでいった。

傷を癒したホルス達は駆けつけた帝国軍と合流し、すぐさま反撃に転じた。

ホルス達と帝国軍はしばらく魔物達を押しとどめていたが、
次第に数を増やす魔物達相手に苦戦するようになっていった。
戦線が徐々に後退しはじめ、兵士達の顔色に疲労が見えはじめていた。

ナシュカ(これ以上敵の数が増えれば、戦線を維持することすら難しくなる…) 


遂に戦線の維持が限界を迎えようとした時、ある軍勢が魔物達を両側面から挟撃した。
その軍勢は周辺国の混成軍だった。

皇帝「よくぞ我が檄に応えてくれた!」
彼らが馳せ参じたのは皇帝の檄文だけが理由では無かった。
どの国もホルス達に魔物の脅威から救ってもらった恩があり、
彼らはそれに報いようとしていた。

戦線は持ち直し、さらに拡大した。
その様相はまるで世界大戦と呼べるようなものになっていた。

これをきっかけに世界に変化が起き始めていた。
遠き地から援軍や義勇軍が駆けつけてくるようになった。
「この世界を守らなくては」という意識が世界に広がりはじめていた。 


この変化は遠いある大陸にも及んでいた。

そして今、その大陸から多くの船が出港しようとしていた。
乗っているのは一般人ではなかった。
ある者は剣を持ち、またある者は馬と槍を携えていた。
魔道士の姿も見える。

彼らはかつての戦友なのだろうか、談笑しているように見える。
しかし彼らの目つきはみな鋭く、戦いに赴く戦士の目をしていた。 


人類と魔物の戦いは拮抗していた。
魔物の数は少ないがいずれもが一騎当千、いや万に足る力を備えていた。
対する人類側は戦力の不利を数と連携で補っていた。

両陣営ともこの均衡を崩すきっかけを待っている状況だった。
そして遂にその日が訪れる。

前線を支えていたホルス達に突如ある部隊が合流した。
ホルス達の後方から様々な魔法や矢が乱れ飛び、魔物の軍勢を押し返した。

ホルス達が振り返ると、そこには懐かしい顔ぶれが揃っていた。

キュラサイト「再び剣を手にあなた方と共に戦えることを神に感謝します。」
マクセン「やっぱり椅子に座っているよりも、こうしているほうが性に合うな」
ルオンナル「セレン、あなただけにいい格好はさせないわよ」
チルク「久しぶりだねエンドラム」
ホーニング「騎士として再び君達と共に戦おう」
砂漠の民やドワーフ、エルフ達の姿も見える。 


ホルス達が感慨にひたっていると、一人の神官がホルス達の前に出た。

ホルス「イオナ…」

イオナはホルスの前まで来ると、一本の剣を差し出した。

ホルス「ラグラントゥー…」

ほんの少し考えた後、ホルスは神剣を手に取った。
かつてその強大な力に畏怖し手放した剣だが、
今はこの剣を使うべき時なのだろう。

神剣を受け取ったホルスは魔物のほうに向き直り、
ホーリースラッシュを放った。 


両陣営とも何が起きたのかを把握するのに時間がかかった。
ホルスが技を放った方向は何も無くなっていた。
まるで元からそこには何も無かったかのように、文字通り「消滅」していた。

事態を把握した両陣営は沸き立った。
魔物側は明らかに動揺と混乱が見られ、
人類側のほうは士気が一気に頂点に達した。

「勇者様に遅れるな!皆も武功を立てよ!」

誰かが言ったその一言が引き金となり人類は魔物に突撃した。 


そこから人類は魔物達を圧倒した。
魔物達を追い詰めるまでそう時間はかからなかった。
魔物達は海を背に退路をふさがれる形となった。

ヨネア「あの時とはまるで逆の状況ね…」

そして最後の突撃命令が下された。
人類は追い詰めた魔物達を次々に討ち取っていった。

そして遂に最後に残った魔物、キオスドールの胸をミシディシの剣が貫いた。

ミシディシ(これで終わりだ)

ミシディシが剣を引き抜き、キオスドールはその場に崩れ落ちた。
誰もが勝利を確信したそのとき、キオスドールは笑いはじめた。

キオスドール「うふふふ…。さあクォード、最後の仕事よ」

そう言うとキオスドールは傍に倒れていた悪魔、
「クォード」の胸を貫き、その心臓を取り出した。

キオスドール「残念でした…。これで我が主は復活する…。
       どのみちあなた達人類に未来など無いのよ…」 


その直後、大規模な地震が発生した。
海が荒れ狂い、大地に亀裂が走った。

見る見るうちに海が割れ、その中から形容し難い何かが姿を現した。

ヨネア「これは…あの怪物!しかもずっと大きい!
    これがあいつらの親だというの!?」

巨大な怪物はゆっくりとこちらに近づいてきていた。

しかし対する人間達がその胸に抱いていた感情は絶望では無かった。
これが最後、この怪物はここで倒す、という覚悟が皆の胸に宿っていた。

「勇者様、号令を」

言われたホルスはゆっくりと神剣を真上に掲げた。
かつてのムクガイヤとの決戦のときのように。

ホルス「全軍突撃!」 


***&color(gray){エピローグ}
ある一室でナシュカとフォルサームがペンを走らせていた。
ナシュカとフォルサームはホルス達の活躍を本に残そうとしていた。

あの怪物との戦いのあと一年が経過しようとしていた。

あれから色んなことがあった。
かつての仲間達は皆それぞれの道を歩んでいた。

エンドラム、ニーナナス、ルーネンはエルカ、チルクと共に
魔法剣についての研究を行っているようだ。今度論文を出すとか言っていた。
奇妙なメンバーに見えるが、それなりに上手くやっているようだ。

オルジンは今も騎士団で活動しているらしい。
時々手紙が送られてくる。

ドラスティーナは相変わらずだが、行動範囲が以前より広がった。
世界を飛び回って遊んでいるようだ。最近皇帝と喧嘩をしたとかいう噂を聞く。
シャルロットの苦労はまだまだ続きそうである。

セレンはリュッセルに戻り、自らの務めを果たしている。
ミシディシはリュッセルに戻るのを最初拒んでいたが、セレンの強引な説得により連れ戻された。 


良いことばかりでは無かった。事件もあった。
ヨネアの予言どおり、封印されていた古代兵器が突如暴れはじめたことがあった。

しかしヨネアによって多くの古代兵器が破壊されていたのもあり、
この事件は騎士団によって速やかに鎮圧された。
首謀者は古代兵器の力を利用して世界に覇を唱えようとする一人の魔道士だった。

結局この事件は怪物とは何の関係も無かったのだが、
ヨネアの活躍によって古代兵器と怪物を同時に相手にするという
最悪のシナリオは回避することができた。

ヨネアは怪物との戦いの直後から行方がわからなくなった。
未来に帰ったのだろうか?それとも…

今回の戦いの中心人物となったホルスは騎士団を抜けラザム神殿に戻っていた。
最近連絡をとっていない。今は何をしているのだろうか。 


同時刻某所――
ホルスはイオナと共にローニトークの墓の前で祈りを捧げていた。

思えば自分の本当の戦いはあの時はじまったのかもしれない。
ローニトークが自分を庇って命を落としたあの時から。

あれから色んなことがあった。
様々な人との出会いや出来事が自分を強くしてくれた。

もし君ともう一度会えたら、君は以前のように微笑みかけてくれるだろうか?

答えの出ない自問自答を繰り返したあと、ホルスは花を供えその場を立ち去った。


―――こうして一つの物語は終わりを迎えた。
ホルス達の戦いは終焉を迎えたのだ。

この平和がいつまで続くかは誰にもわからない。
しかし今はこの幸せを皆で享受し、謳歌しよう。

***&color(gray){完}
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- 登場人物が突飛過ぎるような気が・・・。 &br()おそらく作者の好きな人材の詰め合わせだよね? &br()でも、細部に愛を感じるから俺は良いと思うよ。  -- 名無しさん  (2011-11-29 02:01:03)
- ↑読んでくれてありがとうございます。 &br()超遅レスですが、援軍として駆けつけた人材は主要人物と関わりの深いもの、 &br()または過去のお話で共闘した人材を使っています。  -- 作者  (2012-04-26 06:34:01)
- ↑ &br()なるほど、作者さん自身の過去作と関連づけているんですね  -- 名無しさん  (2020-09-13 17:12:34)
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