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**&color(blue){温泉回} 「いい温泉日和だ」  まだ若干の肌寒さが残る春先の陽気と、背後から差し迫る殺気を受けながら、ルーゼル様、ドラスティーナ、そして私パルスザンの三人はお湯につかっていた。  そしてその私らに殺気立った目線を向けるのはリューネの竜騎士セレン、アルティナ、スヴェステェンの三人である。もうひとり、精霊術師のガルダーム殿も入っていたが、そちらの方はあまりこちらには気を止めていない様子だった。  交戦中の二大勢力の首脳同士が偶然とは言え同じ湯に浸かる。状況はかなり緊迫していたがお湯の方はなかなかの名湯で連日の疲れの方が抜け出るような心地がする、これもまた人間観察のノートに書いておこうと関係のないことを考えていると、ドラスティーナがいつものように余計な軽口を叩く。 「ちょっとぬるいのだわ」  悪かった状況がさらに悪化し、緊迫した雰囲気になる。竜騎士どもの目線がさらに険しくなる。  思えばそうだ、リューネ騎士団の陣営を偵察した帰りにドラスティーナがリグナム火山にある天然秘湯に入りたいのだわなどと言い出した。私は反対し、ルーゼル様は好きにしろと丸投げする。もといドラスティーナ一人を地上に降り立たせるわけにはいかず全員で入ってみればこともあろうにリューネの首脳部と鉢合わせだ。  いったい誰のせいだと思っているのだと言ってやりたかったがそれはお湯の中で言うにとどめておくことにする。 「まぁまぁ、そう言いなされますな」  そういって近寄ってきた男を私は知っている、その名をガルダーム、リューネの術師だとか。術師殿は手に酒を持っていた。一緒に飲もうということだろうか。 「が、ガルダーム殿……気をつけられた方が」  そう言って声を荒らげている若い竜騎士は確かスヴェステェンだ。 「そうですよ、食べられても知りませんからね」  胸から下にタオルを巻いて入浴している若い女竜騎士――――総長のアルティナも心配そうに私とガルダームを交互に見ていた。その目を見てこの若い総長は冗談ではなく本気で私がガルダーム殿を食べないか心配しているらしいことに気が付く。 「痛み入ります」  別に誤解を解く気はないが私はガルダームの手から盃を受け取り感謝の気持ちを述べ、いただきますと言ってからそれを飲み干す。 「せっかく参ったのです、どうぞゆっくり羽をのばしていってください」 「そうさせてもらうのだわ」  そういってドラスティーナが慣用句だとも知らず、文字通り羽をんんー、などと言いながら腕と一緒にのばしていた。やめてくれ、こっちが恥ずかしい。セレンなどは、顔は見えないが明らかに笑いをこらえてるじゃないか。「くっ、くっ」などと言って肩が震えている。  それにいま気がついたのだが、セレン殿やアルティナ殿はタオルで身を隠しているのに対し、ドラスティーナは恥も外聞もなく素っ裸になって風呂に入っている。見ろ!スヴェステェン殿が、こちらの様子を警戒したいのに直視出来なくて困ってるじゃないか!逆にセレン殿やアルティナ殿はドラスティーナの胸を凝視している。さんざん凝視したあと、二人で何かこそこそと話していたが、しまいにはほぼ同じタイミングで肩を落としていた。あまり深くは探らないほうがよさそうだ。  だが、このガルダームという男、話してみるとなかなか気さくな男であった。 「まさかリューネ騎士団の方とお会いすることになるとは思いもしませんでした」 「まぁ、そのことはお湯に流しましょう」 「むぷっ」  このジョークにドラスティーナが吹き出した。構わず続ける。 「我々を召喚した男が王都で権力を振るっているようですね。何か聞き及んでおりますか?」 「あぁ、ルートガルトの「婿が嫌」とかいう」 「ムクガイヤです」  これにドラスティーナが温泉の水面をバンバン叩いて爆笑していた。お湯があたりに飛び散り、セレン殿やアルティナ殿は冷めた目線をガルダームに向けている。ひょっとしていつものことなのだろうか。 「私が知っていることで魔王軍の軍師殿が知らないことがあるとは思えませんが」 「まぁそれもそうなのですが」 「それともルートガルトの戦況がおぼつかないと言えば、我々よりもルートガルトとの先頭に力を入れてくださいますかな?」  濃い湯気の中からガルダーム殿が語りかけてくる。賢そうな目だ。これより先強敵になるのは間違いないだろう。  私が湯気の中で物思いにふけるのを邪魔するようにルーゼル様がお湯から上がる。ルーゼル様もタオルなど巻いている訳もなくアルティナ殿やセレン殿が耳を赤くして横を向いた。 「上がる」 「た、タオルくらい付けておいてくださいよ。魔王軍の方々は全く……」 「ん」  さして申し訳なさそうにするわけでもなくルーゼルが後ろを向く、そのあとをドラスティーナがついていき今度はスヴェステェン殿が横を向く番であった。 「シャルロットも残念だわね、パルスザンとお風呂に入れなくて」  この言葉には返事をせず私も風呂を上がった。 「なかなかいい風呂だ、また来よう」 「賛成なのだわ」 「……」  ルーゼル様のその言葉の意味を尋ねたりはしない。当然今度は我が領地とした時に入りに来るということだろう。  そのときは……、シャルロットも連れてこよう。私はそう思った。  ~おまけ~ 「わ、私はいかないぞ!」 「オーティ、別にそんな恥ずかしがらなくても」 「い、いや、恥ずかしいとかじゃないんだ。断じて恥ずかしいというわけじゃ」 「じゃ、なんだと言うんだい」 「いや、色々とワケがあるというか……、いや、恥ずかしくないというわけではないんだ。相手がスヴェステェンだけなら全然構わないのだがっ!」 「おまえは何を言っているんだ」 ---- - 2000年代のインターネッツを感じる -- 名無しさん (2020-04-30 20:22:48) - おもしろーい -- 名無しさん (2020-06-11 20:59:37) #comment(size=60,vsize=3) ----
**&color(blue){温泉回} 「いい温泉日和だ」  まだ若干の肌寒さが残る春先の陽気と、背後から差し迫る殺気を受けながら、ルーゼル様、ドラスティーナ、そして私パルスザンの三人はお湯につかっていた。  そしてその私らに殺気立った目線を向けるのはリューネの竜騎士セレン、アルティナ、スヴェステェンの三人である。もうひとり、精霊術師のガルダーム殿も入っていたが、そちらの方はあまりこちらには気を止めていない様子だった。  交戦中の二大勢力の首脳同士が偶然とは言え同じ湯に浸かる。状況はかなり緊迫していたがお湯の方はなかなかの名湯で連日の疲れの方が抜け出るような心地がする、これもまた人間観察のノートに書いておこうと関係のないことを考えていると、ドラスティーナがいつものように余計な軽口を叩く。 「ちょっとぬるいのだわ」  悪かった状況がさらに悪化し、緊迫した雰囲気になる。竜騎士どもの目線がさらに険しくなる。  思えばそうだ、リューネ騎士団の陣営を偵察した帰りにドラスティーナがリグナム火山にある天然秘湯に入りたいのだわなどと言い出した。私は反対し、ルーゼル様は好きにしろと丸投げする。もといドラスティーナ一人を地上に降り立たせるわけにはいかず全員で入ってみればこともあろうにリューネの首脳部と鉢合わせだ。  いったい誰のせいだと思っているのだと言ってやりたかったがそれはお湯の中で言うにとどめておくことにする。 「まぁまぁ、そう言いなされますな」  そういって近寄ってきた男を私は知っている、その名をガルダーム、リューネの術師だとか。術師殿は手に酒を持っていた。一緒に飲もうということだろうか。 「が、ガルダーム殿……気をつけられた方が」  そう言って声を荒らげている若い竜騎士は確かスヴェステェンだ。 「そうですよ、食べられても知りませんからね」  胸から下にタオルを巻いて入浴している若い女竜騎士――――総長のアルティナも心配そうに私とガルダームを交互に見ていた。その目を見てこの若い総長は冗談ではなく本気で私がガルダーム殿を食べないか心配しているらしいことに気が付く。 「痛み入ります」  別に誤解を解く気はないが私はガルダームの手から盃を受け取り感謝の気持ちを述べ、いただきますと言ってからそれを飲み干す。 「せっかく参ったのです、どうぞゆっくり羽をのばしていってください」 「そうさせてもらうのだわ」  そういってドラスティーナが慣用句だとも知らず、文字通り羽をんんー、などと言いながら腕と一緒にのばしていた。やめてくれ、こっちが恥ずかしい。セレンなどは、顔は見えないが明らかに笑いをこらえてるじゃないか。「くっ、くっ」などと言って肩が震えている。  それにいま気がついたのだが、セレン殿やアルティナ殿はタオルで身を隠しているのに対し、ドラスティーナは恥も外聞もなく素っ裸になって風呂に入っている。見ろ!スヴェステェン殿が、こちらの様子を警戒したいのに直視出来なくて困ってるじゃないか!逆にセレン殿やアルティナ殿はドラスティーナの胸を凝視している。さんざん凝視したあと、二人で何かこそこそと話していたが、しまいにはほぼ同じタイミングで肩を落としていた。あまり深くは探らないほうがよさそうだ。  だが、このガルダームという男、話してみるとなかなか気さくな男であった。 「まさかリューネ騎士団の方とお会いすることになるとは思いもしませんでした」 「まぁ、そのことはお湯に流しましょう」 「むぷっ」  このジョークにドラスティーナが吹き出した。構わず続ける。 「我々を召喚した男が王都で権力を振るっているようですね。何か聞き及んでおりますか?」 「あぁ、ルートガルトの「婿が嫌」とかいう」 「ムクガイヤです」  これにドラスティーナが温泉の水面をバンバン叩いて爆笑していた。お湯があたりに飛び散り、セレン殿やアルティナ殿は冷めた目線をガルダームに向けている。ひょっとしていつものことなのだろうか。 「私が知っていることで魔王軍の軍師殿が知らないことがあるとは思えませんが」 「まぁそれもそうなのですが」 「それともルートガルトの戦況がおぼつかないと言えば、我々よりもルートガルトとの先頭に力を入れてくださいますかな?」  濃い湯気の中からガルダーム殿が語りかけてくる。賢そうな目だ。これより先強敵になるのは間違いないだろう。  私が湯気の中で物思いにふけるのを邪魔するようにルーゼル様がお湯から上がる。ルーゼル様もタオルなど巻いている訳もなくアルティナ殿やセレン殿が耳を赤くして横を向いた。 「上がる」 「た、タオルくらい付けておいてくださいよ。魔王軍の方々は全く……」 「ん」  さして申し訳なさそうにするわけでもなくルーゼルが後ろを向く、そのあとをドラスティーナがついていき今度はスヴェステェン殿が横を向く番であった。 「シャルロットも残念だわね、パルスザンとお風呂に入れなくて」  この言葉には返事をせず私も風呂を上がった。 「なかなかいい風呂だ、また来よう」 「賛成なのだわ」 「……」  ルーゼル様のその言葉の意味を尋ねたりはしない。当然今度は我が領地とした時に入りに来るということだろう。  そのときは……、シャルロットも連れてこよう。私はそう思った。  ~おまけ~ 「わ、私はいかないぞ!」 「オーティ、別にそんな恥ずかしがらなくても」 「い、いや、恥ずかしいとかじゃないんだ。断じて恥ずかしいというわけじゃ」 「じゃ、なんだと言うんだい」 「いや、色々とワケがあるというか……、いや、恥ずかしくないというわけではないんだ。相手がスヴェステェンだけなら全然構わないのだがっ!」 「おまえは何を言っているんだ」 ---- - 2000年代のインターネッツを感じる -- 名無しさん (2020-04-30 20:22:48) - おもしろーい -- 名無しさん (2020-06-11 20:59:37) - たまに読みたくなる -- 名無しさん (2022-01-15 01:25:32) #comment(size=60,vsize=3) ----

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