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. 時はレオーム軍によるフェリル統一よりも前。まだレオーム軍の保護下とならない頃のホアタの地にて。人々は山野を埋め尽くす飢えたゴブリンの群れに怯え、逃げ惑うばかりであった。 「ヒャッハー!皆殺しだァー!」 「ご、ゴブリンだ!逃げろー!」 丘の上に数十の影があった。彼女たちは義賊。彼女たちのリーダーはナオーンという。 ナオーンが手を振り下ろし、合図をすると、義賊たちは丘を駆け下り、眼下のゴブリンの群れに襲い掛かった。 完全に虚を衝いた形となった。敵の一群に斬り込んだかと思えば縦横無尽に軌道を変えて、速度と技で相手を翻弄する。浅く斬り込んでは離脱し、予想もつかぬ位置に現れる。周りからゴブリンたちが集まってくるが、対応する隙を与えない。バターをナイフで抉るようにナオーンの義賊団はゴブリンの命を狩りとっていった。 「ふう。全員いる? 今回もどうにかなったわね」 ナオーンの戦術の冴えは目を見張るものであった。あれだけの大立ち回りをして彼女の一団からは死者どころか傷らしい傷を負った者も出ない。しかし、彼女の表情は勝れない。いくら腕が立つといえど自分たちは所詮盗賊だ。ゴブリンたちを殲滅するのに成功しはしたが、時間がかかりすぎた。その間に多くの民が死んだ。ルーニックからフェリルへ渡ったレオームの軍勢のようにはいかない。今や彼の軍勢はその名が聞こえるのみでゴブリンたちは一目散に逃げ出すほどである。やはり、このままでは・・・・・・。ナオーンにも理念があった。今は亡きフェリルの代官は自城の防衛のみに専念し、ホアタや辺境の山村への救援はほとんど行わなかった。自分たちのような国家権力とは関係のない勢力は必要である。民を助け、義を成すために。 レオームがホアタおよびフェリル全土を制圧するとナオーンもまたレオームの軍門に降った。軍師ドルスの耳目、手足としてその技を発揮するナオーン。その活躍に報いられ、ナオーンは多くの褒賞を得るが彼女はそれを喜べなかった。 (レオームが大陸を平定すれば確かにゴブリンやならず者たちが民を苦しめることは少なくなる。でも、あの人たちは古い時代の考えしか持たない。民は権力者の所有物だとか、民をその程度にしか考えてない。彼らが本当に民を虐げないと言い切れるの?) そんな彼女の疑念や不満をよそに、時代は大きな転機を迎える。冥王出現、レオーム軍崩壊、フェリル党再興・・・・・・。 世界がどう変わろうと彼女のやることは同じである。ただ義を成す。民を守る。ホアタの地にてナオーンは再びゴブリンの脅威に晒される人々を救い続けた。 今回の敵はゴブリンのみではなかった。南下してきたファルシス騎士団の残党も敵だ。彼らは祖国・ブレアの民に対しては騎士道精神を貫いてきたようであった。しかし、自分たちが窮している今、他所の国の民であるフェリル人に狼藉を働くことに何のためらいもないようだった。生き残りとはいえ、百戦錬磨の騎士たちは強い。ナオーンの仲間も何人もがその槍によって命を落とした。 「それに引き替え、ゴブリンとの戦は楽なものね」 ある日、いつものようにゴブリンたちを駆逐した後、ナオーンの口からそんな言葉が零れた。 「増長もそこまでだ。人間」 周囲に四属性の精霊たちが大量に出現しナオーンたちを取り囲んだ。今回の戦いでナオーンは少なからず油断していた。ゴブリンたちを深追いしてフェリル東の山中まで追い立ててきたのがあだとなった。 背に冷たいものを感じた。精霊たちの奥にいるゴブリンの魔術師たち、さらにその奥に控える年老いたゴブリンのことは聞いたことがあった。フェリルの大賢人・アスターゼ。あの魔王召喚の基礎理論を構築したという地上最高の召喚魔法使い。彼の者の放つ邪気がその場のゴブリンたちにも乗り移っているかのようであった。 ――ここは死地だ。 ナオーンは死を覚悟した。この場からより多くの仲間を逃がすためには、自分が突貫してアスターゼを斬りつけるより他ない。彼女の仲間たちもその気持ちを汲んでか、じり・・・・・・と次の動作のために動き始める。 ナオーンは疾駆する。フェニックスの喉笛を掻き切り、ベヒーモスを飛び越え、ジンの下を潜り抜けて前へ進む。ナオーンの仲間たちもアシッドクラウドを使いつつ、散開し、脱出のために動き始める。しかし、斬ってもかわしても召喚獣の群れは減るどころか増え続けており、目指すアスターゼは離れていくかのようであった。このままでは――。 弱気になるナオーンの元へ散開して逃げる筈の仲間たちが集まってきた。 「なんで戻ってきたの!?」 「リーダー。一人だけで格好つけないで」「逃げようにも逃げられないかんじだし」 「ナオーンがいなかったらあたしたち行くところないしね」「仕方ないからこの命やるよ」 これには勇気付けられた。今思えば自分だけ死んで、みんな生きてというのは身勝手だったかもしれない。ならば、全員生き延びるために。 そんな淡い希望を打ち砕く者が現れた。女盗賊の一人が地を貫いて現れた巨腕に掴まれ、命を落とした。断末魔の声もなく、虫けらの様に。小柄な彼女たちから見てもゴブリンとは小さな生き物だったが、今、目の前にいるそれはゴブリンの大きさ、ゴブリンの恐ろしさではなかった。フェリルの竜王・ルルニーガ。もう出し惜しみをしている場合ではない。ナオーンは考えるより先に動く。その速度ゆえ彼女の姿が10・20・いやそれ以上の数見える奥義。竜王は片手でその連撃を受け止める。何十ものナイフが突き刺さるが、腕を一振りしたのみでそれらはカラァンと無情な音をたてて岩肌に転がる。 「それで終わりか?」 「くっ・・・!」 万策尽きた。竜王がナオーンの細い首を掴み、持ち上げる。彼女の瞳から戦意が喪失した。 その時だ。飛来した矢がアスターゼ隊の魔術師たちを射抜いた。矢のうちの何本かはアスターゼへの直撃コースであったが、大賢人はこれを風の魔法で受け流した。 「行くぞ!ナオーンたちを死なせるな!」 救援に駆けつけたのはフェリル国を名乗る組織の者たちだった。率いているのはテステヌとマクセン。さらにはフェリル出身の名だたる英雄や流浪の神官までいる。 「「ナオーンを放せ!」」 速くかつ正確な射撃で竜王の腕を狙うはヘオトン。その者捉えることあたわずと言われる疾風の狩人なり。さらに、名うての傭兵イーサリーが二刀にて斬りかかる。竜王はナオーンを人質にしたりなどしない。さりとて、その二者を相手をして一歩も引かない。ナオーンを地に放し、片腕のみでイーサリーを圧倒する。その膂力、技量、尋常ならず。一合打ち合えばイーサリーの全身は悲鳴をあげ、二合目にて彼の二刀は粉々に砕かれる。イーサリーの手から血がにじみ出る。予備の刀剣に持ち替える、力量の差は歴然なれど尚もその闘志衰えず。 「立て!」 虚ろな瞳でその打ち合いを見上げていたナオーンに声がかかる。 イーサリーは確実に追い詰められていた。ヘオトンも、他の敵の相手をせねばならずイーサリーを援護できない。 (立たなきゃ。守らなきゃ) ナオーンが動き出す。接近戦用のやや大身のダガーナイフを両手に持ち、イーサリーと竜王の間に割り込む。打ち下ろされた竜王の豪腕を受け止めんとする。止められるわけはない。そのまま腹に一撃を喰らう。 「か・・・はっ・・・・・・」 視界が暗転する。義に生きたとはいえ、盗賊にすぎない自分にしてはマシな最期かもしれにない。彼女は自嘲じみた笑いを浮かべつつ、目を閉じた。 それが彼女の最期ではなかった。次に目覚めたとき、ナオーンはマクセンの腕の中であった。後で聞いたことであるが、あの救出戦の最中にファルシス騎士団がフェリル党の領内に攻め入り、それの対応のためにアスターゼ・ルルニーガらは退いていったらしい。不幸中の幸いか。それにしても、ゴブリンの底力とはこれほどのものか。いや、あるいはゴブリンという種族そのものが・・・・・・。考えたくはないことであった。これから嫌というほど戦うだろう相手が想像を超えて強くなっているなどと。いつになく弱気な彼女の表情を察してか、マクセンが口を開く。 「あんたは自分を盗賊に過ぎないと思ってるようだが、ホアタの人間はそうは思わない。あんたに助けられた人間は数知れない。あんたは間違いなくホアタの英雄だ。死なすわけにゃあいかん。・・・・・・に、してもあんた軽いなァ。それのよく見りゃあきれいな顔だ。どうだい、今度一杯。うげっ!」 この男はいつも一言多い。よほどいいところに入ったのか、ナオーンの拳でマクセンは情けない声を上げた。そんな彼のお調子者なところが今の彼女にとっては安らぎであった。それに、この狩人の腕は思ったよりもたくましく頼れるものに思えた。 「守られるのも、悪くない・・・・・・か」 そんなことを小声で呟き、ナオーンは目を閉じた。今は眠ろう。 それからナオーンはテステヌ、マクセンの作った国を見た。その国では民は君主の所有物などではなく、民も国の主も支えあって生きていた。 この鬼哭に際し、人間はつまらないわだかまりを捨て、ひとつになれたのかもしれない。 マクセンはナオーンにこれからの国のあり方を説いた。ナオーンもそれの賛同し、フェリル国の一員となった。 後にテステヌが死ぬとマクセンはその意志を継いだ。ナオーンは軍で最も大きな権限を与えられ、大フェリルと戦う。 その結果は芳しくなかったが、彼女の失策をマクセンが責めることはなく、ナオーンもよくフェリル国とその戦略を支えた。 後にフェリル連合が組まれると軍の総司令にはホーニングが就いた。左遷に近い扱いをされるも、ナオーンは 「戦術屋のやり方に戻れる」 と上機嫌であった。 支えあう人々の明日に光あれ。彼らの戦いは続く。 ---- - イイハナシダナー -- 名無しさん (2011-02-28 13:40:52) #comment(size=60,vsize=3) ----
. 時はレオーム軍によるフェリル統一よりも前。まだレオーム軍の保護下とならない頃のホアタの地にて。人々は山野を埋め尽くす飢えたゴブリンの群れに怯え、逃げ惑うばかりであった。 「ヒャッハー!皆殺しだァー!」 「ご、ゴブリンだ!逃げろー!」 丘の上に数十の影があった。彼女たちは義賊。彼女たちのリーダーはナオーンという。 ナオーンが手を振り下ろし、合図をすると、義賊たちは丘を駆け下り、眼下のゴブリンの群れに襲い掛かった。 完全に虚を衝いた形となった。敵の一群に斬り込んだかと思えば縦横無尽に軌道を変えて、速度と技で相手を翻弄する。浅く斬り込んでは離脱し、予想もつかぬ位置に現れる。周りからゴブリンたちが集まってくるが、対応する隙を与えない。バターをナイフで抉るようにナオーンの義賊団はゴブリンの命を狩りとっていった。 「ふう。全員いる? 今回もどうにかなったわね」 ナオーンの戦術の冴えは目を見張るものであった。あれだけの大立ち回りをして彼女の一団からは死者どころか傷らしい傷を負った者も出ない。しかし、彼女の表情は勝れない。いくら腕が立つといえど自分たちは所詮盗賊だ。ゴブリンたちを殲滅するのに成功しはしたが、時間がかかりすぎた。その間に多くの民が死んだ。ルーニックからフェリルへ渡ったレオームの軍勢のようにはいかない。今や彼の軍勢はその名が聞こえるのみでゴブリンたちは一目散に逃げ出すほどである。やはり、このままでは・・・・・・。ナオーンにも理念があった。今は亡きフェリルの代官は自城の防衛のみに専念し、ホアタや辺境の山村への救援はほとんど行わなかった。自分たちのような国家権力とは関係のない勢力は必要である。民を助け、義を成すために。 レオームがホアタおよびフェリル全土を制圧するとナオーンもまたレオームの軍門に降った。軍師ドルスの耳目、手足としてその技を発揮するナオーン。その活躍に報いられ、ナオーンは多くの褒賞を得るが彼女はそれを喜べなかった。 (レオームが大陸を平定すれば確かにゴブリンやならず者たちが民を苦しめることは少なくなる。でも、あの人たちは古い時代の考えしか持たない。民は権力者の所有物だとか、民をその程度にしか考えてない。彼らが本当に民を虐げないと言い切れるの?) そんな彼女の疑念や不満をよそに、時代は大きな転機を迎える。冥王出現、レオーム軍崩壊、フェリル党再興・・・・・・。 世界がどう変わろうと彼女のやることは同じである。ただ義を成す。民を守る。ホアタの地にてナオーンは再びゴブリンの脅威に晒される人々を救い続けた。 今回の敵はゴブリンのみではなかった。南下してきたファルシス騎士団の残党も敵だ。彼らは祖国・ブレアの民に対しては騎士道精神を貫いてきたようであった。しかし、自分たちが窮している今、他所の国の民であるフェリル人に狼藉を働くことに何のためらいもないようだった。生き残りとはいえ、百戦錬磨の騎士たちは強い。ナオーンの仲間も何人もがその槍によって命を落とした。 「それに引き替え、ゴブリンとの戦は楽なものね」 ある日、いつものようにゴブリンたちを駆逐した後、ナオーンの口からそんな言葉が零れた。 「増長もそこまでだ。人間」 周囲に四属性の精霊たちが大量に出現しナオーンたちを取り囲んだ。今回の戦いでナオーンは少なからず油断していた。ゴブリンたちを深追いしてフェリル東の山中まで追い立ててきたのがあだとなった。 背に冷たいものを感じた。精霊たちの奥にいるゴブリンの魔術師たち、さらにその奥に控える年老いたゴブリンのことは聞いたことがあった。フェリルの大賢人・アスターゼ。あの魔王召喚の基礎理論を構築したという地上最高の召喚魔法使い。彼の者の放つ邪気がその場のゴブリンたちにも乗り移っているかのようであった。 ――ここは死地だ。 ナオーンは死を覚悟した。この場からより多くの仲間を逃がすためには、自分が突貫してアスターゼを斬りつけるより他ない。彼女の仲間たちもその気持ちを汲んでか、じり・・・・・・と次の動作のために動き始める。 ナオーンは疾駆する。フェニックスの喉笛を掻き切り、ベヒーモスを飛び越え、ジンの下を潜り抜けて前へ進む。ナオーンの仲間たちもアシッドクラウドを使いつつ、散開し、脱出のために動き始める。しかし、斬ってもかわしても召喚獣の群れは減るどころか増え続けており、目指すアスターゼは離れていくかのようであった。このままでは――。 弱気になるナオーンの元へ散開して逃げる筈の仲間たちが集まってきた。 「なんで戻ってきたの!?」 「リーダー。一人だけで格好つけないで」「逃げようにも逃げられないかんじだし」 「ナオーンがいなかったらあたしたち行くところないしね」「仕方ないからこの命やるよ」 これには勇気付けられた。今思えば自分だけ死んで、みんな生きてというのは身勝手だったかもしれない。ならば、全員生き延びるために。 そんな淡い希望を打ち砕く者が現れた。女盗賊の一人が地を貫いて現れた巨腕に掴まれ、命を落とした。断末魔の声もなく、虫けらの様に。小柄な彼女たちから見てもゴブリンとは小さな生き物だったが、今、目の前にいるそれはゴブリンの大きさ、ゴブリンの恐ろしさではなかった。フェリルの竜王・ルルニーガ。もう出し惜しみをしている場合ではない。ナオーンは考えるより先に動く。その速度ゆえ彼女の姿が10・20・いやそれ以上の数見える奥義。竜王は片手でその連撃を受け止める。何十ものナイフが突き刺さるが、腕を一振りしたのみでそれらはカラァンと無情な音をたてて岩肌に転がる。 「それで終わりか?」 「くっ・・・!」 万策尽きた。竜王がナオーンの細い首を掴み、持ち上げる。彼女の瞳から戦意が喪失した。 その時だ。飛来した矢がアスターゼ隊の魔術師たちを射抜いた。矢のうちの何本かはアスターゼへの直撃コースであったが、大賢人はこれを風の魔法で受け流した。 「行くぞ!ナオーンたちを死なせるな!」 救援に駆けつけたのはフェリル国を名乗る組織の者たちだった。率いているのはテステヌとマクセン。さらにはフェリル出身の名だたる英雄や流浪の神官までいる。 「「ナオーンを放せ!」」 速くかつ正確な射撃で竜王の腕を狙うはヘオトン。その者捉えることあたわずと言われる疾風の狩人なり。さらに、名うての傭兵イーサリーが二刀にて斬りかかる。竜王はナオーンを人質にしたりなどしない。さりとて、その二者を相手をして一歩も引かない。ナオーンを地に放し、片腕のみでイーサリーを圧倒する。その膂力、技量、尋常ならず。一合打ち合えばイーサリーの全身は悲鳴をあげ、二合目にて彼の二刀は粉々に砕かれる。イーサリーの手から血がにじみ出る。予備の刀剣に持ち替える、力量の差は歴然なれど尚もその闘志衰えず。 「立て!」 虚ろな瞳でその打ち合いを見上げていたナオーンに声がかかる。 イーサリーは確実に追い詰められていた。ヘオトンも、他の敵の相手をせねばならずイーサリーを援護できない。 (立たなきゃ。守らなきゃ) ナオーンが動き出す。接近戦用のやや大身のダガーナイフを両手に持ち、イーサリーと竜王の間に割り込む。打ち下ろされた竜王の豪腕を受け止めんとする。止められるわけはない。そのまま腹に一撃を喰らう。 「か・・・はっ・・・・・・」 視界が暗転する。義に生きたとはいえ、盗賊にすぎない自分にしてはマシな最期かもしれにない。彼女は自嘲じみた笑いを浮かべつつ、目を閉じた。 それが彼女の最期ではなかった。次に目覚めたとき、ナオーンはマクセンの腕の中であった。後で聞いたことであるが、あの救出戦の最中にファルシス騎士団がフェリル党の領内に攻め入り、それの対応のためにアスターゼ・ルルニーガらは退いていったらしい。不幸中の幸いか。それにしても、ゴブリンの底力とはこれほどのものか。いや、あるいはゴブリンという種族そのものが・・・・・・。考えたくはないことであった。これから嫌というほど戦うだろう相手が想像を超えて強くなっているなどと。いつになく弱気な彼女の表情を察してか、マクセンが口を開く。 「あんたは自分を盗賊に過ぎないと思ってるようだが、ホアタの人間はそうは思わない。あんたに助けられた人間は数知れない。あんたは間違いなくホアタの英雄だ。死なすわけにゃあいかん。・・・・・・に、してもあんた軽いなァ。それのよく見りゃあきれいな顔だ。どうだい、今度一杯。うげっ!」 この男はいつも一言多い。よほどいいところに入ったのか、ナオーンの拳でマクセンは情けない声を上げた。そんな彼のお調子者なところが今の彼女にとっては安らぎであった。それに、この狩人の腕は思ったよりもたくましく頼れるものに思えた。 「守られるのも、悪くない・・・・・・か」 そんなことを小声で呟き、ナオーンは目を閉じた。今は眠ろう。 それからナオーンはテステヌ、マクセンの作った国を見た。その国では民は君主の所有物などではなく、民も国の主も支えあって生きていた。 この鬼哭に際し、人間はつまらないわだかまりを捨て、ひとつになれたのかもしれない。 マクセンはナオーンにこれからの国のあり方を説いた。ナオーンもそれの賛同し、フェリル国の一員となった。 後にテステヌが死ぬとマクセンはその意志を継いだ。ナオーンは軍で最も大きな権限を与えられ、大フェリルと戦う。 その結果は芳しくなかったが、彼女の失策をマクセンが責めることはなく、ナオーンもよくフェリル国とその戦略を支えた。 後にフェリル連合が組まれると軍の総司令にはホーニングが就いた。左遷に近い扱いをされるも、ナオーンは 「戦術屋のやり方に戻れる」 と上機嫌であった。 支えあう人々の明日に光あれ。彼らの戦いは続く。 ---- - イイハナシダナー -- 名無しさん (2011-02-28 13:40:52) - フェリル連合系のストーリーね -- 名無しさん (2023-11-21 11:27:43) #comment(size=60,vsize=3) ----

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