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**&color(blue){沼地の巫女} コリカ沼の南、パーサの森との境界線付近。 沼地一体に広がるリザードマン棲息地の再奥部に位置した この地で、平穏な日々を過ごす一団が居た。 同種族でありながら完全な男社会の穹廬奴(ゲルド)とは 対照的に、大半が女性で構成された組織。 彼女らは、『巫女』と呼ばれていた。 どの種族にも共通する点だが、元来、女性は男性と比べて 力・耐久力共に大幅に劣る。 それゆえ、大半の女性は非戦闘員として一生を終える。 リザードマンの場合、性差による役割分担は、人間よりも 徹底していた。 男性は戦場へ、女性は家または故郷を守る。そんな関係。 もちろん、女性の地位が貶められていた訳ではない。 むしろ、誰が相手でも物怖じせず、物事を冷静に受け止め 判断出来る女性などは、男性以上に尊敬されていた。 それら有能な女性が、『巫女』と呼ばれる一団である。 彼女らは、祭事を司るだけでなく、部族間の諍いを鎮める 仲介役や血気盛んな兵士同士のトラブルを扱う役割なども 担っていたが・・・ ――多忙ながらも平和な日々に、変化が生じつつあった。 部下 「巫女殿、やはり報告通りでした。複数の者がエルフらしき  剣士の姿を見かけたとの事。」 チョルチョ 「・・・解った。早急に穹廬奴(ゲルド)に報せを。  偵察目的だろうが、奴らは魔法に長けているとも聞く。  我らは無闇に手を出さぬ方が良かろう。」 チョルチョ (・・・口惜しいが、な。) 部下 「あと、スーフェン殿より再度要請が入っております。」 チョルチョ 「・・・またか。何度頼まれようと返事は変わらぬ。  検体まがいの目的で部下を差し出すなど、正気の沙汰とは  思えん。二度と来るなと伝えておけ」 部下 「・・・承知しました」 チョルチョ (奴のしている事は、所詮人間の猿真似。  魔法の才に縁遠い我々には不向きだと、何故解らぬ?) チョルチョ (精霊の加護が我々に与える恩恵、知らぬ訳ではあるまい。  あの御方の活躍も、精霊の働きあってこそ。) チョルチョ (――精霊魔法こそ、穹廬奴(ゲルド)に相応しいのだ。) ――数日後―― 側近の巫女 「チョルチョ様、どうかお鎮まりを・・・!」 チョルチョ 「離せ!  このまま虚仮にされて黙っていられるか!」 側近の巫女 「相手は軍の重鎮です!  たとえチョルチョ様でも、直談判に赴くなど・・・!」 チョルチョ 「なら、黙って指を咥えていろとでも言うのか!?」 チョルチョ 「奴は、我々の――  いや、穹廬奴(ゲルド)の尊厳を踏み躙ったんだぞ!!」 声を張り上げて言い争う彼女らの足元には、一通の手紙が 打ち捨てられていた。 “――の何たるかも知らぬ小娘に用はない。  精々、土門(トメン)殿の腰巾着として夜の相手に励むが  良かろう” チョルチョ 「私一人ならば我慢もしよう。  だが・・・あの御方に対する暴言、絶対に許せぬ!」 側近の巫女 「なりません、チョルチョ様!」 側近の巫女 「・・・貴方の祖父様とジェイク様の関係、あの輩が知らぬ  筈はありません。  これはきっと、貴方を陥れようとしての事。」 側近の巫女 「ご存知の通り、私達はこの地一帯の精霊を崇める立場。  ですが、前線で命を張る兵士らの一部からは快く思われて  いないのも事実です。」 側近の巫女 「あの輩・・・スーフェン殿も同じでしょう。  戦場以外での働きを認めない、極端な男尊女卑の考え方。  魔法の才に恵まれてはいても、頭は古いまま。」 側近の巫女 「・・・ですが、彼も穹廬奴(ゲルド)の一員なのです。」 チョルチョ 「違う。  一部の兵士と奴を一緒にするな。」 チョルチョ 「確かに、穹廬奴(ゲルド)は武功第一。  我々のような非戦闘員は、戦時には役立たず扱いされても  致し方なかろう。」 チョルチョ 「だが・・・奴は、全てを否定している。  己の策を絶対とし、己の技量を過信し、己以外の尊厳を  徹底的に蔑ろにするような輩は――」 チョルチョ 「――穹廬奴(ゲルド)の、敵だ。」 側近の巫女 「・・・だとしても、兵士ですらない私達には、口をはさむ  権利などありません。   精々、将に近しい者を通して諫言する程度しか・・・」 チョルチョ 「いや、それは止めておこう。  大事な部下に余計な心労を増やさせるわけにはいかん。」 側近の巫女 「・・・畏れ入ります。」 チョルチョ 「・・・お主の助言、確かに承った。  下がってよいぞ。」 側近の巫女 「ははっ。」 チョルチョ 「・・・・・・」 チョルチョ 「兵士ですらない私達、か・・・」 チョルチョ 「ただの小娘と思って甘く見ない方が良いぞ、スーフェン。」 ---- - 誰この人…… -- 名無しさん (2011-03-20 12:00:21) #comment(size=60,vsize=3) ----
**&color(blue){沼地の巫女} コリカ沼の南、パーサの森との境界線付近。 沼地一体に広がるリザードマン棲息地の再奥部に位置した この地で、平穏な日々を過ごす一団が居た。 同種族でありながら完全な男社会の穹廬奴(ゲルド)とは 対照的に、大半が女性で構成された組織。 彼女らは、『巫女』と呼ばれていた。 どの種族にも共通する点だが、元来、女性は男性と比べて 力・耐久力共に大幅に劣る。 それゆえ、大半の女性は非戦闘員として一生を終える。 リザードマンの場合、性差による役割分担は、人間よりも 徹底していた。 男性は戦場へ、女性は家または故郷を守る。そんな関係。 もちろん、女性の地位が貶められていた訳ではない。 むしろ、誰が相手でも物怖じせず、物事を冷静に受け止め 判断出来る女性などは、男性以上に尊敬されていた。 それら有能な女性が、『巫女』と呼ばれる一団である。 彼女らは、祭事を司るだけでなく、部族間の諍いを鎮める 仲介役や血気盛んな兵士同士のトラブルを扱う役割なども 担っていたが・・・ ――多忙ながらも平和な日々に、変化が生じつつあった。 部下 「巫女殿、やはり報告通りでした。複数の者がエルフらしき  剣士の姿を見かけたとの事。」 チョルチョ 「・・・解った。早急に穹廬奴(ゲルド)に報せを。  偵察目的だろうが、奴らは魔法に長けているとも聞く。  我らは無闇に手を出さぬ方が良かろう。」 チョルチョ (・・・口惜しいが、な。) 部下 「あと、スーフェン殿より再度要請が入っております。」 チョルチョ 「・・・またか。何度頼まれようと返事は変わらぬ。  検体まがいの目的で部下を差し出すなど、正気の沙汰とは  思えん。二度と来るなと伝えておけ」 部下 「・・・承知しました」 チョルチョ (奴のしている事は、所詮人間の猿真似。  魔法の才に縁遠い我々には不向きだと、何故解らぬ?) チョルチョ (精霊の加護が我々に与える恩恵、知らぬ訳ではあるまい。  あの御方の活躍も、精霊の働きあってこそ。) チョルチョ (――精霊魔法こそ、穹廬奴(ゲルド)に相応しいのだ。) ――数日後―― 側近の巫女 「チョルチョ様、どうかお鎮まりを・・・!」 チョルチョ 「離せ!  このまま虚仮にされて黙っていられるか!」 側近の巫女 「相手は軍の重鎮です!  たとえチョルチョ様でも、直談判に赴くなど・・・!」 チョルチョ 「なら、黙って指を咥えていろとでも言うのか!?」 チョルチョ 「奴は、我々の――  いや、穹廬奴(ゲルド)の尊厳を踏み躙ったんだぞ!!」 声を張り上げて言い争う彼女らの足元には、一通の手紙が 打ち捨てられていた。 “――の何たるかも知らぬ小娘に用はない。  精々、土門(トメン)殿の腰巾着として夜の相手に励むが  良かろう” チョルチョ 「私一人ならば我慢もしよう。  だが・・・あの御方に対する暴言、絶対に許せぬ!」 側近の巫女 「なりません、チョルチョ様!」 側近の巫女 「・・・貴方の祖父様とジェイク様の関係、あの輩が知らぬ  筈はありません。  これはきっと、貴方を陥れようとしての事。」 側近の巫女 「ご存知の通り、私達はこの地一帯の精霊を崇める立場。  ですが、前線で命を張る兵士らの一部からは快く思われて  いないのも事実です。」 側近の巫女 「あの輩・・・スーフェン殿も同じでしょう。  戦場以外での働きを認めない、極端な男尊女卑の考え方。  魔法の才に恵まれてはいても、頭は古いまま。」 側近の巫女 「・・・ですが、彼も穹廬奴(ゲルド)の一員なのです。」 チョルチョ 「違う。  一部の兵士と奴を一緒にするな。」 チョルチョ 「確かに、穹廬奴(ゲルド)は武功第一。  我々のような非戦闘員は、戦時には役立たず扱いされても  致し方なかろう。」 チョルチョ 「だが・・・奴は、全てを否定している。  己の策を絶対とし、己の技量を過信し、己以外の尊厳を  徹底的に蔑ろにするような輩は――」 チョルチョ 「――穹廬奴(ゲルド)の、敵だ。」 側近の巫女 「・・・だとしても、兵士ですらない私達には、口をはさむ  権利などありません。   精々、将に近しい者を通して諫言する程度しか・・・」 チョルチョ 「いや、それは止めておこう。  大事な部下に余計な心労を増やさせるわけにはいかん。」 側近の巫女 「・・・畏れ入ります。」 チョルチョ 「・・・お主の助言、確かに承った。  下がってよいぞ。」 側近の巫女 「ははっ。」 チョルチョ 「・・・・・・」 チョルチョ 「兵士ですらない私達、か・・・」 チョルチョ 「ただの小娘と思って甘く見ない方が良いぞ、スーフェン。」 ---- - 誰この人…… -- 名無しさん (2011-03-20 12:00:21) - アナザーのチョルチョとはまた違った解釈 -- 名無しさん (2023-12-12 18:14:03) #comment(size=60,vsize=3) ----

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