エルフィスとエルラム


エルフィスは霧と障壁を司る者として、来るべき日のために他のエルフとは
隔離されて育った。エルフィスはケンタウロスによって森のはずれで育てられた。
幼少の頃、同族の友達のいないエルフィスは森の動物たちと遊んで過ごした。
だが、ある時一番のなかよしだったうさぎが死んでしまったことにエルフィスはショックを受けた。
エルフィスの涙に呼応するかのように、森に嵐が訪れ、河は氾濫し岩場は崩れた。
多くの生き物たちがこれに呑まれて死んだ。
ケンタウロス「エルフィス。これを見なさい。」
エルフィス「そ、そんな……。どうして、こんな。」
ケンタウロス「これはおまえがやったことです。特別な力を持つおまえが悲しみに身を任せて
       無意識のうちに魔力を開放した結果、厄災を呼んだのです。」
エルフィス「ちがう…わたしじゃない、わたしじゃないの……!」
頭を抱えるようにして長耳を押さえて、事実を否定するようにして涙ながらに首を振ると
再び豪雨が地を打ち付けた。
???「なら、私のせいにすればいい、の。」
エルフィス「!?」
???「私は障壁。あなたの半身、なの。そうなの、これからはエルラムとでも名乗ることにする、なの。」
エルフィス「……あ、ああ……。」
エルラム「それじゃあね、なの。哀れなお姉様。」
エルフィス「ど、どこへ行くつもり?」
エルラム「あなたが今まで押し殺してきた感情が私、なの。まずは、手始めにあなたをこんなところに
     飼い殺しにしたパーサの奴らを焼き殺す、の。」
これが自分の半身。これが自分のうちに潜む闇であったというのか?
恐怖と後悔、嫌悪に似た感情に戦慄するエルフィスをよそに、エルラムは火の鳥に乗って
西の空へと飛び去っていった。その先にはパーサの都がある。

それからどれほどかの月日が流れ、二人はパーサの地で対峙した。

エルラム「誰かと思えば、あの時の私の残りカス、なの。」
エルフィス「……。」
エルラム「どうした、の?必死に私を追ってきたようなのに、いざ前にしてみると声もでない、なの?」
無言のまま、エルフィスは光の使徒たちを召喚する。
エルラム「ふ、ふふふふ、私を殺すために光魔法ばっかりがんばって勉強したよう、なの。
     今までたくさんの虫ケラどもを殺してきたけど、どれも取るに足らないものだった、の。
     あなたは私を楽しませてくれる、の?お姉さま。」
playBGM(unicorn)
魔窟と化したパーサに悲しいほどに清らかな閃光が走る。10、20、使徒と共に放つ閃光の
弾雨は木々を砕き、死霊を引き裂き、だが、それでも闇の娘には届かない。
今度はこちらの番とばかりに闇の娘が呪詛を呟きはじめる。地の底から湧き出る100を超える
亡者の群れが使徒と森の民らに襲い掛かる。普段ならば光の娘は森の民をかばうように動くはずだ。
だが、それらを一瞥もせず、闇の娘の方へと駆け出す。
エルフィス「……!」
魔力をこめた渾身の一矢を放つ。闇の娘の配下も敵陣をも引き裂き、光の矢は一筋の道を作る。
風の精を呼び出し、それらに道を固めさせつつ、自身も突風によって前方へと跳躍する。
エルラム「はい、ご苦労さん、なの。」
闇の娘は光の娘の健闘を祝すように少し口元を緩めると、手をかざす。
地面が盛り上がり、喰人花が現れる。
エルフィス「…ああっ!」
蔓によって四肢の自由を奪われる光の娘。その様を見て満足そうに笑う闇の娘は拘束されたままの
光の娘をわざわざ自身の目前へと運ばせ、よく似た二つの顔を付き合わせる。
エルラム「結局、こうやって全ての努力が水の泡になって、哀れなお姉様は私の
     意のままなってしまう、なの。んむっ。」
エルフィス「んんっ!?」
口付けによって何かが交わされた。一振りの剣が闇の娘に向かって振り下ろされる。
エルラム「おっと、なの。」
セレン「エルフィス、大丈夫ですか!」
そのまま、竜騎士は心ここにあらずな細い体を抱いたまま青の剣で帰り道を作った。
この戦いの後、光の娘と闇の娘は互いの陣から姿を消した。


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最終更新:2011年03月23日 13:50