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カルラ「いい?貴方の名前は、今日から〈ピヨン〉です。」
???「ピー…ヨォ?」
カルラ「ピ・ヨ・ン、よ。」
???「…ピョーン!」
カルラ「惜しいっ!落ち着いて、ゆっくり言ってみましょ?ピ・ヨ・ン。」
???「ピ…ヨ・ン?」
カルラ「そう、ピヨン。」
ピヨン「ピヨン!」
カルラ「えぇ、貴方の名前よ。宜しくね。」
ピヨン「ピヨン!ヨーシクンネ!」
カルラ「はい、よ・ろ・し・く・ね?」
ピヨン「ピヨン。ヨロシクネ?」
カルラ「はい、よく出来ました!」

……
………

カルラ「ほら、ピヨン見てごらん?今、私のお腹の中に、赤ちゃんがいるの。」
ピヨン「ボクピヨン、ヨロシクネ?」
カルラ「えぇ、生まれてきたら…お兄さんとして面倒を見てあげて頂戴ね?」
ピヨン「ボクピヨン!ヨロシクネ!」
カルラ「ふふふ…」


……
………

村人1「どうするんだい、これから。」
村人2「どうするったって…カルラさんの子供を捨てる訳にもいかねぇだろ。」
村人1「つっても子供を預かれる様な余裕がある家なんて無いだろ…。」
村人3「食べ物とかミルクは皆で少しずつ提供しあえばなんとかなるかもしんないがなぁ…」
ピヨン「………。ボク…ピヨン。」
村人2「あん?どうしたよピヨン…」
ピヨン「ボク、ピヨン!ヨロシクネ!」
村人1「いや、名乗りあげられても俺達にはわからねぇよ…」
ピヨン「ボク、ピヨン!ヨロシクネ!…ボク、ピヨン!ヨロシクネ!!」
村人3「…ひょっとして、自分が育てるって言ってるんじゃねぇの?」
村人2「んな馬鹿な…うぉ!」
ピヨン「ボクピヨン!!ヨロシクネ!!!」


……
………

少女カルラ「えぐ…う、ぐ…うぇぇぇ…」
ピヨン「ボクピヨン…ヨロシクネ?」
少女カルラ「今日…街で皆が……えっぐ…私は親無しだーって…」
ピヨン「………。ボクピヨン。ヨロシクネ…」


……
………

???「ここがアンタの家?随分と大きな家なのだわさ!」
小カルラ「えっと…死んじゃったお母さんの家なんですぅ…」
ピヨン「ボクピヨン、ヨロシクネ?」
小カルラ「あ、ピヨン。この子は今日私を助けてくれたんですぅ!」
???「集団でよってたかって女の子を虐めるなんて性悪は遠くまですっ飛ばしたのだわさ!」
ピヨン「ボクピヨン!?ヨロシクネ!?」
???「そんな力一杯自己紹介しなくてももうさっき聞いたのだわさ。」
小カルラ「ピヨンはそれしか喋れないんですぅ…。カルラは内容わかりますけど…」
???「あ、そーなの。悪い事言ったのだわさ。私はポートニック!風の申し子なのだわさ!」
ピヨン「ボクピヨン、ヨロシクネ。」
小カルラ「〈御丁寧にどうも。私はグリーンの護人…いえ、護雪ダルマをしておりますピヨンと申します。
この度は虐められていたカルラを助けて頂き有難うございました。〉…って言ってるですぅ。」
ポトニ「あれだけの単語にそんな意味が!?…なんか興味が湧いて来たのだわ…
…よし、決めたのだわさ!私がカルラが虐められないように守ったげるからここに住まわせてほしいのだわさ!」
小カルラ「えぇ!?」
ピヨン「ボクピヨン、ヨロシクネ。」
ポトニ「カルラ、なんて言ってるのだわさ。」
小カルラ「え?えと〈こちらこそ有り難い申し出です。
仕事中はカルラの側に居られないので誰か居て下さると助かります。〉…てちょと待つですぅ!」
ポトニ「何なのだわさ。私と一緒じゃ嫌?」
小カルラ「え?嫌じゃ無いですけど…」
ポトニ「じゃあ問題無いのだわさ!虐めっ子はトルネードでポイなのだわさ!」
ピヨン「…ボクピヨン!ヨロシクネ!!」
ポトニ「あれ?ピヨン何処に行くのだわさ?」
小カルラ「…吹っ飛んだ子を助けに行ったみたいですぅ…」…
……
………


……
………
ポトニ「ピヨン!しっかりするだわさ!」
カルラ「身体が所々欠けているですぅ!イエティの大群を一人で撃退するなんて無茶ですよぉ!」
ポトニ「昔と違って今は村のテイマーも協力してくれるのだわさ!
ピヨンはもっと皆を頼るのだわさ!」
カルラ「と、とりあえず身体を治さないと…!怪我の治療しなきゃ、お湯を沸かすですか!?」
ポトニ「落ち着くのだわさカルラ!お湯はピヨンには致命傷なのだわさ!」

……
………

グリーン墓地の奥、国と雪林の境にひっそりと立つ墓の前にピヨンは居た。
普段は国の周りに現れるイエティを追い払う為にパトロールをしているピヨンだが、
パトロールを村人に代わってもらった時などは、この場所に訪れる事ある。
ピヨン「………。」
死後も国の境にて悪しき者から愛する国を護りたい。そんな英雄の願いによって建たれた小さな墓。
ピヨンは大事に育てた花を墓前に供え、ただじっと立つ。
ピヨンは一年の内、今日の様にカルラの誕生日から三日後だけは、欠かさず花を持ってこの場を訪れていた。

今、大陸はトライド王の死とムクガイヤのクーデターを経て一触即発の状態にある。
既にガルガンダのドワーフ達は武装兵力を着々と準備して居るし、砂漠の部族にも怪しい動きが見られる。
遅かれ早かれこの国も戦禍に巻き込まれる事になるだろう。その時先陣に立つのは英雄の娘である、カルラだ。
しかしカルラは戦場に立つには優し過ぎる。そうそう攻勢に出る事は無い。
ならばせめてこの国が平和であり続けられる様に身を張って守らねばならない。
ピヨンは小さな決意を冷たい身体に秘め、彼を呼ぶ声のする町へと帰っていった。


  • あったかい話だ -- 名無しさん (2023-11-30 12:07:11)
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最終更新:2023年11月30日 12:07