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外海に出たホルス達はオルジンと再開し、
オルジンが所属する組織「緑葉の騎士団」の一員として活動するようになった。

活動の主な内容は遺跡の封印の確認と、遺跡荒らしの撃退だった。

貧しい国、荒れている国であるほど、遺跡荒らしの数は多かった。
時には農民や子供の相手をしなければならない時もあった。
当然そんな者達に遺跡の封印が解けるはずもないのだが、
出会ってしまったら放置するわけにもいかなかった。

今日ホルス達が撃退した遺跡荒らしもそんな「貧しいだけの民」だった。

ホルス「………」
ナシュカ「ホルス殿、今の我々に彼らの境遇を変える力はありません。
     あまり思いつめすぎないよう……」


ホルスは悩んでいた。
弱者との戦いを割り切れておらず、
最近は単純に剣を振るうことにすら抵抗を覚えていた。

ホルスが問題を抱えていることを周囲の人間は気付いていた。
死霊軍と戦っていた頃と比べると、明らかに剣の動きが鈍くなっていたからだ。

オルジン(ホルスを騎士団に入れたのは失敗だったかもしれない)

そんなホルス達の元に騎士団から指令が届いた。
最近凄腕の二人組みが遺跡を破壊して回っているらしい。
そこである重要遺跡の警備に当たって欲しいとあった。


指令を受けたホルス達は指定された遺跡へ向かった。
遺跡には既に多くの騎士団員が配置されていた。
ホルス達は遺跡への唯一の進入経路である入り口前の警備を担当することになった。

そんな様子を遺跡荒らしの二人組みが遥か上空から見下ろしていた。

男「かなり警戒されているな。どうする?」
いつもならそんなの関係無いと言葉が返ってくるところだが、今日のヨネアは違った。
ヨネアはある集団を見つめ黙っていた。

男「知り合いがいるのか?それならここは後回しにするか?」

ヨネアは少し考えた後、
ヨネア「いえ、ここは大きな遺跡だから早めに潰しておきたいわ。
    いつもどおり私が中に入るから、あなたは入り口で警備の相手をしてちょうだい。」

そうか、と言葉を返し入り口へ向かおうとする男にヨネアが一言付け加えた。

ヨネア「入り口前を警備している連中は怪我させちゃダメよ」
男「善処しよう」


遺跡荒らしの二人が突撃し、それを騎士団員達が迎え撃った。
しかし騎士団員達は数十分後には壊滅していた。

残ったのはホルス達だけだった。
正確には残されたと言ったほうが正しかった。
ホルス達への攻撃は明らかに手加減されており、
相対する遺跡荒らしの男は防戦するばかりだった。

ホルス達はそんな遺跡荒らしの強さに対し、様々な感情を抱いていた。

ナシュカ(これだけの強さを持つ男が覇も唱えずに遺跡荒らしをやっているとは…
     目的は一体何なのか…)

オルジン(なんという強さだ。どれほどの研鑽を積めばこれほどの強さが手に入るのか。
     死霊との戦いの後、俺は慢心していたのかもしれない)


ホルス達がそんな事を考えている間、
対する男は一人の少年、ホルスを見つめていた。

男(あの少年、防御時の動きは良いが、攻撃に転じた途端に剣が鈍くなるな。
  なにか迷いがあるな…)

そう思った男はホルスに声をかけた。

男「少年、なぜ全力を出さん」

問いかけられたホルスは答えなかった。

男「………。
  少年よ、「不殺の誓い」と「迷い」は全く異なるものだ。
  いつかその迷いに殺されることになるぞ」

ホルスはやはり何も答えなかった。
そんなホルスに対し、男は大きくタメを作るような構えをとった。

男(少し荒療治だが、その迷い俺が消してやろう)

両者の間に緊張が走る。

男「少年よ、この一撃に慈悲は無い。
  少年の全力を持って迎え撃たねば死ぬことになるぞ」


男の言葉を受け、ホルスは少し考えた後にホーリースラッシュの構えをとった。
男は恐らく本気なのだろう、死の恐怖に対する抵抗心がホルスを突き動かしていた。

ホルスが人間に対してこの技を撃つのは初めてだった。
今の自分にこの技が撃てるのだろうか?という疑問が一瞬浮かんだが、
目の前にいる男から放たれる威圧感がそれを吹き飛ばしていた。

ホルスを見守るナシュカ達はかつてのデッドライトとの戦いを思い出していた。
あのときもホルスは今のようにホーリースラッシュの構えをとって敵と対峙していた。

そしてあの時と同じように二人が閃光に包まれた。
唯一違うのは先に動いたのがホルスではなく、対する男のほうだったということだ。


目も眩む閃光のあと、その場に立っていたのはホルスだった。
なぜだか少し驚いているような表情をしている。

対する男は少し離れたところで出血する腕を押さえて立っていた。
傍に魔法使いの女もいる。

男「見事だ少年。今の太刀筋を忘れないことだ」

そう言ったあと、遺跡荒らし達は背を向け立ち去った。

ホルスは立ち去る二人の姿も見ずに、自身の握る剣を見つめていた。

自分はホーリースラッシュを放ったつもりだった。
しかし放たれた技はより鋭く、収束した何か別のものだった。

「剣は自分の心をうつす鏡である」
この言葉をホルスは少し理解したのかもしれない。


エピローグ

遺跡荒らしの二人が次の目的地を目指して空を飛んでいた。

ヨネア「後ろから見てたけど、ひやひやしたわよ。
    あんなことはもうやめてよね」

話しかけられた男はどこか嬉しそうだった。

ヨネア「どうしたの?」

男「あの少年はきっと強くなるぞ。次に会うときが楽しみだ」

ヨネア達はホルス達に変わるきっかけを与えた。
彼らが再び出会うときにどう変わっているのか…。
もしかしたらそれが世界を救う鍵になるのかもしれない。

つづく


  • この「男」ってもしかしてあの人材!? -- 名無しさん (2023-10-30 09:19:00)
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最終更新:2023年10月30日 09:19