フェリル党によるフェリル統一イベント <大フェリル建国>


<フェリル党がフェリル島を統一しました!>
○イベント効果
  • 軍資金:+3000
  • ルルニーガ、アスターゼの加入
  • 全人材のレベルが1アップ

バルバッタ「ヒャッハー!」
ツヌモ「ヒャッハー!」
ケニタル「ヒャッハー!」
 フェリル城では盛大な宴が行われていた。
 フェリル島の統一。
『野蛮で粗暴な種族』、ゴブリンがついに人間に勝利したのである。
 千人は優に収まるだろうフェリル城の大広間には壁一面に酒樽が並べられ、数多のゴブリンたちが踊り、騒ぎ、歌い、陽気な喧騒が満ち溢れていた。
チルク「バルバッタ!飲み過ぎないでくれよ!」
 広間の一段高い壇上で大杯を煽るバルバッタにチルクが大声を上げる。
バルバッタ「なーに言ってんだァ!!これが飲まずに、いられるかァー!お前も飲め飲め飲め!」
チルク「うわぁー!」
 チルクは一抱えもある盃で酒を頭から浴びせられ、目を回しそうになる。
バルバッタ「ヒャッハー!まったくおまえらはサイッコーだぜ!」
ツヌモ「ヒャッハー!アニキもサイコーだぜ!」
ケニタル「ヒャッハー!マジヤベエぜ!」
 かれこれ宴は三時間以上も同じテンションで続いている。チルクはさすがに頭がどうにかなりそうになっていた。
 ホアタを陥落させ、レオーム家を島から追い出したこと。何よりも自分たちを蔑み、虫のように扱ってきた人間たちへの勝利は心から喜ばしいことだ。しかしチルクの中には拭い切れない不安があった。
 東のナース水軍、北のファルシス騎士団、レオーム家が支配権を失った今、フェリル島を虎視眈々と狙う人間たちがいる。これまで以上に過酷な、犠牲を強いる戦いが控えているだろう。そう思うたび、この何の憂いもない宴に不吉な影が降りるような気がしてならない。
ケニタル「なんだなんだチルク!シケた顔をしやがって!酒が不味くなるだろうが!」
ツヌモ「頭のよろしいチルク君はいつだってお悩みばかりさ!」
バルバッタ「ツヌモ!ケニタル!つまらねえこと言ってねえでコレでも飲んでな!ホアタの代官の野郎が持ってた奴だ!」
ケニタル「ヒャッハー!」
ツヌモ「ケニタル!テメェオレにも飲ませろ!」
 バルバッタが放り投げた酒瓶をつかもうと二人は壇上から飛び降り、ゴブリンたちの輪の中に消えていった。
バルバッタ「どうしたってんだ。チルク」
チルク「バルバッタ……。いや、何でもない。辛気くさい顔ですまないな」
 チルクは笑顔を繕う。バルバッタの喜びに水を差したくはなかった。
バルバッタ「言いてぇことはわかってる。まだ何も終わってねえ、ってことだろ」
 チルクははっと息を飲んだ。バルバッタの眼差しは、先ほどの酔態が嘘のように静かな色をしていた。
バルバッタ「わかってるさ。何も終わってねぇ。島は取った、それでどうする。それまでいた人間たちをどうする。外から群がってくる連中とどう戦う。オレはたいていバカだがな、それぐらいは考えるぜ」
チルク「バルバッタ……。」
バルバッタ「だがよ。わかんねぇことは悩んだって始まらねえ。結局は気合、気合だぜ。これまでもこれからもな」
 バルバッタはそう言ってニヤリと口角を歪めると、置いていた盃にワインを溢れるほど注いだ。

 その瞬間、ふっと喧騒が鳴り止んだ。チルクの、広間中のゴブリンの視線が、入り口に立つ二人のゴブリンに注がれていた。
チルク「竜王、それに、老師」
 燃え盛る火炎のような巨躯の雄、竜王ルルニーガは、遠巻きに自分を見つめるゴブリンを一瞥すると、深青の粗衣をまとった老賢者アスターゼとともに、ゆっくりと正面の演壇に歩きはじめた。その一歩ごとに人ごみが自ずと割れていく。
ツヌモ「おいクソジジイ!テメェら役立たずが今更どの面下げて来やがった!」
 ツヌモとケニタルが彼らの前に立ちはだかる。
ルルニーガ「……。」
 だが竜王が睨みつけるとビクッと尻尾を立たせ、ツヌモが後ずさった。
ケニタル「おうおう何だジジイ、イッチョマエにガンくれやがって!お年寄りには道を譲りましょう、ってか?!ぶっ飛ばされてぇかこの野郎!」
 震え上がりながら、なおもケニタルは道を譲らない。二人の存在感に凍りついていた周囲のゴブリンたちも次第にざわざわと小声を上げ始める。
バルバッタ「オメェら!」
 ガァンとバルバッタが盃を叩きつけて叫んだ。ざわめきが再び止まった。
バルバッタ「客人じゃねえか。歓迎しろや」
 バルバッタは壇の階段を降り始める。不意にそれをアスターゼが手で制した。全ての視線が二人に注がれる。

アスターゼ「バルバッタ。いや、洞主。儂は君を、いや」
 アスターゼとルルニーガが膝をついた。場にいる全員が固唾を呑んだ。あの伝説の英雄、フェリルの大賢人が、フェリルの竜王が、バルバッタの前に膝をつき、頭を垂れているのだ。
アスターゼ「ゴブリンを見過っておった。すまなかった。儂は、そしてルルニーガも、それを謝りに来た。」
チルク「老師……。」

 バルバッタの笑い声が広間に響き渡った。
バルバッタ「なんだなんだ水クセエじゃねえか、ジイさんよ!さすがはチルクの師匠だ!竜王のオッサンも、らしくねえ!」
バルバッタ「何だかわからねえが、とにかくよ、謝る必要なんかねえぜ!そんなことよりよ、ジイさんたちがいれば百人力だ!キリキリ手伝ってもらうぜ!俺達の戦いはよォ、まだまだ終わっちゃいねえんだ!」
 バルバッタが階段を駆け下り、ルルニーガとアスターゼの肩を掴み、強引に肩を組む。
バルバッタ「フェリル島なんて小せぇ小せぇ!オレたちの戦いはこれからだぜ!人間どもはホアタのクソ代官だけじゃねえ!王都の、砂漠の、海の、世界中の連中に、オレたちの力を見せつけてやる!世界中でゴブリンがツラ上げて生きていけるようにしてやるんだ!そうだな、チルク!」
チルク「えっ ああ!そ、そうだね!」
 言葉にならない感動に身動きが取れずにいたチルクは、いきなり水を向けられうろたえながら微笑んだ。
バルバッタ「竜王!ジイさん!アンタらがいれば百人力だ!チクショウ、今日はサイコーだぜ!そうだろテメェら!ヒャッハー!」

 オオオオオオオ!!!

 バルバッタの雄叫びにどよめいていたゴブリンたちも拳を突き上げて叫ぶ。月すらも割りそうな叫び声が、フェリル島の夜空に打ち上げらる。

ルルニーガ「やれやれ。変わったものだな、ゴブリンも。」
アスターゼ「若いというのはそういうことじゃよ。竜王。」
ルルニーガ「フン。」
 喧騒に揉まれながら、ゴブリンの英雄たちは苦笑いを浮かべた。
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最終更新:2023年09月26日 00:48