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 誰もいない草原にただ一人、俺は立っている。


 静かに吹き抜ける風。

 ゆっくりと流れて行く雲。

 微かに香る草木の匂い。


 そして

 不思議な光を放つ秋の満月を見上げながら……――



 あんたがいなくなったのはちょうどこんな秋の日だった。きれいな満月が窓から顔を覗かせていたっけ・・・。


 病院のあんたがいた個室には毎日毎日キーボードの叩く音が、休まず聞こえていた。
「おいおい・・・無理するなよ兄者……。」
 毎日キーボードを打ち続けるあんたに俺は言った。毎日毎日同じことをな。
 俺はもうすぐ消えちまいそうなあんたの『灯』が心配だったから。

 そしてあんたも俺に同じことを毎日毎日言い返してた。ポンと俺の肩を叩きながら。

「弟者よ。その件に関しては心配ないと思われ。絶対っな」
 ・・・アホが。大丈夫なわけないだろ。
  あんたの病は今の世界の力では直せない病なんだぞ。
 あと残り少ない命だったんだぞ。
 それなのに・・・それなのに……。
 どうして俺や家族の前では何ともないように振舞ってたんだ?

 なぁ・・・俺は知ってたんだぜ。あんたがたった一人で何もかも解決しようとしてことを。たった一人で何もかも抱え込んでいたことを。なんで俺に、家族に話さなかったんだ?


 こんなことを今さら思ってもなんの意味はない。

 そんなこと分かってる。分かってるんだ!!

 でも、少しでもあんたの力になれなかった俺自身がとても憎い。憎いんだ。


 そして、あんたの灯はあっけなく消えた。

 誰も居ない、たった一人の部屋。その中であんたの灯は消えた。


 くそ!! 誰にも頼らずに最後の最後まで一人で抱えやがって――!!

 嗚呼……。

 人の『ココロ』ってどうしてこうもすぐに壊れるんだろうな・・・。
 どうしてこんなにも、すぐに他人を信じてしまうんだろうな・・・。


 ガラス玉のようにもろく

 ヤミに直に染まる人のココロ――


 何んでだろうな・・・俺には全然分からねぇ……。

 全く関係のない事じゃないのに適切な答えが見つからない


 あんたがいなくなる前のあの夜、あんたはとても辛そうだったよな。突然の高熱に苦しんでたよな。

 そのとき微かに嫌な予感はしていたんだ。
 だから俺は「今晩はずっと面倒見てやる」って言ったんだ。
 そうしたらあんたは、「寝れば治る」って言った。

 でもやっぱり俺は心配で、粘っていたわけだ。
 そうしたらあんたとんでもないこと口走りやがった。
「今日はもう遅い・・・から・・・・もう家で・・・寝てろ」
 ってかすんだ声であんたは言った。

 あんた今、自分がどういう状態か分かってたのか?


――分かってるんだよな。自分のことだし。
 俺は結局、あんたに負けて部屋を出ることにした。勿論家になど帰らなかった。あんたの個室の扉の前で居座った。
 あんたの調子が少しでも悪化したら直に駆けつけるつもりだったから。

 でも無意味だった。
 俺はいつの間にか眠ってしまったから。
 どうして・・・どうして傍に居てやんなかったんだろう……


 今頃後悔している俺は何だ?

 未だにあんたのあの言葉を信じている俺は 何だ?


 俺が今、ここに立っていられるのも『地面』が在るから
 俺が今、息を吸うことで生きていられるのは『空気』が在るから
 俺が今、ここに存在しているのは誰かの『支え』が在ったから


 こんなのは当たり前のこと。俺だけでなくこの地球上に生きている人間、皆に言えること・・・。


 でもよ、気づいたのはつい最近なんだぜ――。


 何かがなくなって、始めて何かの存在に気がつく。


 皮肉だな……。



 そして・・・あんたという存在の大切さもあんたが居なくなってから知った。


 見たぜ。あんたからのメッセージ。
 パソコンに刻まれた消えない一生モノの最後のメッセージ。



 「ありがとう」



 人間って言うのはさ、とってもわがままで、ありえない位自分勝手で、何よりも弱いのに威張ってる。

 なのに、中には他人のために自分の命を捧げる香具師がいる。あんたみたいに。

――どうしてだ? 
 どうして他の香具師のために一生を捧げる?

 あんただって一度死に掛けたこの俺に救いの手を差し伸べなければ今この瞬間も生きることができたんだぞ!! 


――分からない。
 その原動力は何だ?

 俺は何のために生きているのか。あんたが居なくなってからよく考えるようになった。

 おそらくそれも分かるときがくる。
――いつかきっと。





 今日俺は二つの目的を果たすためにここに来た。



 一つ。自分の生きていた存在を知るため。





 そして、二つ目は

                あんたの傍に行くこと……――





 目の前には崖。




 天国への道――








 月光に照らされる草原に一つ、持ち主の分からない携帯電話がポツンと淋しく置かれていた。



 プルルル・・・っと携帯電話の着信音が人気のない静かな草原に何かを知らせるように響いていたのを月はずっと見ていた……



新しい書き方になれるための練習用に書いたものです。
練習用だからかストーリーがいたって簡単なものに。
いや、もともと短編は苦手だったんですよ;
俺の書いている小説全体で弟者はいったい何回逝っているのだろう(ぁ
2006年の10月に書いたものです。

何か言いたいことがありましたらドゾ↓
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