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「あっちに逃げたぞ!! 追えぇ!!」



昼間なのに薄暗い街中をドタドタと走りながら過ぎ去って行く多くのAAたち・・・。
そして細く真っ暗な路地にはハァハァと息を切らしている少年AAが一人。
「……もう行った・・・かな?」
その黄色い少年は足を止めほっと一息つくとそっと小さな手を合わせ小さな光を作り出す。そして、その光で暗い道を照らし、深く大きなえぐった様な傷を負った右足を片手でそっと押さえながら歩き出す。が負傷した右足からは泉のように血が湧き出続け、足取りはどんどん頼りなくなっていく。くそ・・・・と呟くとある家の塀を背に仕方なく座り込む。そして静かに目を瞑り、負傷した右足に両手を重ねる。
しばらくの沈黙が続いた。少年は苦笑いを浮かべ震える唇を微かに動かす。
「・・はは……やっぱりオレにはまだ使えないんだな・・・回復魔法は・・・」
少年は諦めの色を浮かべた瞳で薄暗い街中と薄暗い空を見上げた。
「いつからこの町はこのような町に変化してしまったのだろう?」とでもその瞳は物語っているようだった。
ふと少年の目には誰のかも分からない向かいの家にかかっている一枚のタオルが目に入る。少年は一回にやりと笑うと右手を少し浮かべ人差し指をチョイっと折り曲げる。それと同時にかかっていたタオルが少年に向かって飛んできた。少年は飛んできたタオルをすばやく掴みさっきほどではないが血を流し続けている右足の傷口より少し上の方にタオルを超能力でギュッとキツク縛る。・・・こうして止血は完了した。 が、もうすでに半分近くの血は体内から流れ出ていて今生きていることが奇跡のようだった。
「くそ・・・どうしても、どうしても兄者に・・・会うんだ。真実を教えるんだ・・・。 ヴィラシア団の目的は全世界を滅亡させること。・・・そして陰で操る黒幕は……であることを・・・」 
その言葉を最後に少年の声は聞こえなくなった。




「銀露~ここ何処だよ~」
銀露に手を引っ張られようやく迷いの森を抜けたRは、目的地のヴィカンテスから全く正反対の場所に位置する町に来ていた。
Rは辺りを見回すとある事に気がつく。
「ていうか、ここ暗くね? 今は昼間・・・の筈」
不安になったRは銀露の顔を覗き込む。銀露の顔はいつも眠そうな顔だったが今回は違った。まるで何か恐ろしいものを見たような、そんな顔をしていた。
「ど、どうしたんだよ銀露・・・」
「……」
銀露は無言のまま空を見つめゆっくりと歩きだした。そんな銀露にRはたじろぎながらも後を追う。
「時の砂時計が狂いだしている・・・」
ぼそりと呟いた銀露の言葉についてRは聞き返した。
「時の砂時計って時間を保ち続けるあれ・・・?」
時の砂時計。それは現世界と異世界の時間を保っている重要な砂時計。その砂時計が狂い出せば時間は捻じ曲がり、実世界と異世界は一つに融合しそして破滅のゴールへと向かう。
狂いだした砂時計は元に戻すことは不可能だ。ではどうするか・・・
「そうよ。ひとまず私の家に来て。話があるの。とっても大切な話が・・・」



「……で話って・・・何よこれ・・・?」
Rに向かって差し出されている銀露の手には湯気を立てている一品の魚料理があった。その料理からは美味しそうな匂いがずっと漂っていた。
銀露はなかなかその料理を受け取ろうとしないRに何度もそれを突き出す。
「何ってムニエルよ。貴方の探していたム・ニ・エ・ル!!」
顔をうつ伏せたRの手は微かに震えていた。それを見て銀露は眠らないよう無理やりニッコリ笑った。



すると次の瞬間――!!
一瞬のうちに銀露の手の上にあったお皿は銀露の手の平から床へと音を立てて落ちていた。
Rは大声で銀露に怒鳴る。
「ふざけんな!! 人の話ぐらい、ちゃんと聞けよ!!」
Rの肩はゆっくりと上下を往復する。Rは一息つき再び口を開こうとしたときだった。銀露の人差し指が口元に運ばれる。それを見てRは思わず口をつぐんだ。
それから銀露は手を開いて動くなとRに合図する。一度屈みんで、ムニエルを手に取ってから、立ち上がり窓際にゆっくりと近づく銀露を見た後Rは粉々に砕けたお皿とぐちゃぐちゃになったムニエルを見つめた。そしてまた視線を銀露にへと戻す。
丸めたムニエルを片手に銀露は勢いよく窓を開いた!



「・・・あれ? ・・・おかしいな・・・確かなんか、ガサって音が聞こえた筈なのに・・・」
銀露は身を窓から乗り出して左右に顔を動かす。顔をしかめると目線を上へと変える。
見上げた空はさっきと変わらず薄暗いまま。
「・・・R。ちょっと来て」
銀露にそう呼ばれRはがちがちの足を無理やり動かす。
そしてRも銀露の隣で窓から身を乗り出す。仮に落ちたとしても一階なのでたいした怪我をする心配もない。たとえ此処が二回だったとしても・・・まあ何とかなるさ。
Rも空を見上げた。銀露と共に不思議な空を見上げた。
しばらくするとRは空を見上げるのをやめた。そして体を引っ込める、目を閉じる。それから顔を下に向けた。
そうなって当然だろう。雲ひとつない青空の筈なのに空は黒い。黒よりもさらに黒かった。決して雨雲のような黒ではなかった。見ていると自分の目が狂ったかのように思えて気持ち悪くなる。
一方の銀露は未だに空を見上げていた。微かに見えたブルーの眼は薄っすらと黒みがかっていた。しばらくすると眼にはピンクが微かに映る。
Rは右手で両目を覆いながら申し訳なさそうに話し出す。
「さっきはすまなかったな・・・。ムニエルっつうのは私のペットの名前・・・ってどうした銀露?」
ズキズキする眼で見た銀露は何故か震えていた。
それが笑いを堪えているための震えだと分かるまでに時間はそんなにかからなかった。
「はっきし言おう。センスなさ杉」
声を上げて笑う銀露に、Rは散らばっているムニエルを手で丸め何度も投げつけた。銀露も、もともと手に持っていたムニエルをRに投げつけようとしたときだった。
「誰だ!!」
目つきを変えた銀露の声がRの耳に届いたのは。




「おっしゃ! 三百七十八匹目。駆除完了」
そう言ったのは千だった。
辺りには灰色の蜘蛛、カサーリたちの残骸が沢山転がっている。
「何でそこで喜ぶのか問い詰めていいか?」
千の首筋をつかみ、笑みを浮かべながら千に話しかけているのはエメラルドだ。エメラルドにまた殴られるかと思うと流石に千もテンションを落とした。
「エメラルド! 後ろだ!!」
一人で戦っている幻鬼の突然の声。その声にエメラルドは素早く反応し後ろを振り向くが二匹のカサーリたちの方が一枚上手だった。素早さの面では・・・。
バン、バンと二回、銃声が響く。
エメラルドにたどり着く寸前にカサーリたちは千の銃が発した弾により力尽き地面に落ちる。
銃を指でぐるぐる回しながら千は言う。
「今更言うのもあれだけどさ、俺だってやっぱやる時はちゃんとやるんだぜ?」
千の言葉を聴いてエメラルドは一瞬黙り込むと自分の剣、緑龍剣をぶんと一回大きく振った。すると雨粒のように大量のカサーリたちが落ちてきた。
「くそ・・・このままだときりがないな……。おい千。いい加減この町抜けようぜ。このままじゃ確実に俺たち死ぬぞ」
エメラルドは千に視線を持って行く。エメラルドの視線に気がついた千は一度だけ大きく頷いた。
それを合図にエメラルドと千は走り出す。
「おい幻鬼! 逃げるぞ!!」
前を通り過ぎる二人を見て幻鬼は一回ッチ、と舌打ちする。それと同時にカサーリたちの動きも止まる。
しばらくの沈黙。千とエメラルドの姿が見えなくなったころ、ようやくカサーリたちはざわめきはじめる。
「お前ら、約束どおり、しばらく飯は禁止にする。何でだかお前たちがよ~く分かっているよな? 俺はちゃんと忠告しましたから」
突然、一匹のカサーリが幻鬼に襲い掛かる。が不思議なことにそのカサーリは幻鬼に触れる寸前に大きな音を立て破裂した。
「まあ落ち着け。飯は禁止にすると言ったが、間食はダメとは言ってないぜ」
幻鬼はカサーリたちの方にへと振り向く。しかしもうすでにカサーリたちの姿はなかった。在ったのは破裂したカサーリの肉片。
「たしかお前らのおやつって何かの肉だったよな」
そう言うと、幻鬼はくすくす笑いだした。が、すぐにその笑いは途切れ、静かな時間が訪れた。
幻鬼は空を見た。あの灰色の空を。




宛ても無く森の中を走り続ける俺の足。既に木の葉や枝のせいで無数の小さな傷が付いている。
そして俺は、泉のようにあふれ出る涙にワケが分からなくなる。
さて、ここ、異次元に来て何回涙を流しただろうか。大切な家族を見失って泣いて・・・まるで本当の馬鹿みたいだ。
俺はまず足を遅め、次に涙を止める・・・そんなこと簡単に出来るわけが無い。出来るのならば既にやっている。
『危ない!!』
突然聞こえた声に俺の足は大きな音を立て何かにぶつかると、ようやく止まってくれた。
うつ伏せに倒れこんだ俺は鈍い痛みがする頭を両手で押さえながら歪む世界になんとかピントを合わせる。そして、一番最初に入ってきたものは生い茂る木々ではなく永遠に続いてそうな砂漠。
不思議に思い体を起こし後ろを向くとそこにはさっきまで俺がさ迷っていた深い森。俺はその光景に目を疑う。
「・・・あれ? ……俺、何で転んだのだ?」
俺はひりひりする目を数回、手の平で擦った。
けれどもその光景は何一つ変わることはなかった。
俺はそのまま体を半回転させて、砂漠を背に寝転んだ。
不思議なことに熱いという感覚はなかった。日光が全てを焼き尽くすほどにじりじりと照り付けているにもかかわらず、一方の砂はひんやりと冷たい。
「・・・」
そういえば気温の方もそんなには高くないと思う。だから今、こうして平気で寝転んでいられる。



『幻』
ふと頭に浮かんできた言葉。
とりあえず俺は目を瞑った。そして俺はそのまま闇の世界へと引きずり込まれた。最後に感じた感覚は地面が存在すること。それだけだった。




しばらくして俺は、目を開き、眼を右左に動かす。一番に視界に入ってきたものは、白い三本の巨大な柱。それと三つの柱の中心部分の上の方からゆっくりと落ちてくる黒い砂。そしてさっきいた場所とは逆に、空全体が黒い雲に覆われ、薄暗く、ほとんど何もない白と黒の世界。
「・・・何処だ、ここ?」
立ち上がると俺は思わず体を震わせた。寒い。さっき俺が居た所よりもはるかに寒い。本能的に手と手をこすり合わせる。まぁ、寒いといっても耐え切れないほどの寒さではないのだが・・・。
とりあえず俺は、さっきからずっと落ちてくる砂の傍によろうと足を進める。不思議なことに砂へ近寄れば近寄るほどだんだん体が温まってくる。
「いってぇ!!」
ガツンと額に何かがぶつかる。じんじんする額を片手でさすりながら、その何かにもう片手を当てながら目を凝らしてみてみる。透明な壁だ。微かな光の反射を辿る。その透明な壁はヒョウタンの様にきれいな曲線を描いている。
上からサアァ・・・と音を立てながら落ち続ける黒い砂。そしてヒョウタンの様にきれいな曲線を描く透明な『壁』。三つの巨大な柱。



いったいこれは何なのだ?




「流石、銀露と言ったところかな? 早々と僕の存在に気がついたし」
その人物を見て銀露とRは即座に硬直した。
その男の顔にはムニエルがべったりと。おかげで男ということしか詳細は分からない。
「・・・な、なんでお前がここに……」
男はRに構わず窓枠に足をかけ家の中に慣れた手つきで軽々と進入する。そして窓枠を支えに体を乗り出す。
Rが男に何かを言おうとしたが、すかさず銀露がRの口を塞ぐ。そして銀露は、何かを必死に引き上げようとしている男を指差す。
そこに男が銀露に助けを求める。
「おい! 銀露! 何か下に引くものをもって来い!!」
「何で!? 理由は! 何のため!」
「・・・いいから早く!!」
銀露がしぶしぶ男の言う通りに動こうとしたときだった。Rが何処からかバスタオルを持ってきた。そしてRは男の後ろに素早くバスタオルを広げた。
「流石だね、R」
「え、どうして名前を・・・」
男は少し体を起こすと、腕を少し揺らし、勢いをつけ、黄色い何かを引き上げた!
「『念力』」
男はそう言うと引き上げた少年をゆっくり、Rが引いたバスタオルに乗せた。
するとRはみけんを手で押さえる。
「き、気のせいか・・・。窓枠がさっき確か……グニャって!!」
少年を慎重に見て、男は得意げに答えた。
「それでもお前、便利屋か? 俺の能力は『超』。頭の人物ファイルに叩き込んでおけ」
銀露のその返答にRは何も言い返すことが出来なくなった。その様子をみて銀露は小さく笑い出した。「怪我人にずっと気がつかなかったお前が言うな」とシーンは呟やいた。  
すかさず銀露がシーンに殴りかかろうとするが、Rが間に割り込んだ。
「おい、シーン。どうなんだ? そいつの様子は・・・」
「・・・正直何ともいえない。ほら、こいつの右足辺りを見てみろ。タオルで縛ってあって、よく分からないかもしれないが、かなりの出血があったに違いない」
後ろで除け者にされた銀露は静かにその黄色い少年の傍に近寄る。少年を見ながら険しい顔をしているRを見て銀露は一回咳き込むと、その理由をRに問う。
銀露の問いに答えようとしないRをシーンは不思議に思う。
「・・・質問ぐらいには答えてやれよ」
「……いや、そういう意味なんじゃなくて・・・こいつ・・・お尋ね人の・・・」
Rが言いかけようとしたときだった。突然少年が一回大きく咳き込む。
その奇跡的な光景に三人は目を疑った。




「どう? 調子は?」
「・・・まあまあ……かな?」
温かいニラ茶をゆっくりすする少年にRは問いかける。
Rの後ろでは銀露とシーンが対話している。二人ともかなり真剣な顔つきだ。よほど重大な話なのだろう。
「ところで、あんた名前は?」
少年は数回咳き込んでからRの問いに答える。
「オレの名前は……末者」
そして末者は申し訳なさそうに視線を落す。しかし、そんな末者をRは優しく見守り続けた。