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エンディングまで、泣くんじゃない

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匿名ユーザー

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エンディングまで、泣くんじゃない ◆NIKUcB1AGw



私は、何をしている……。

ぼやけた視界には化け物と化した3DSと、それを相手に戦い続ける星のカービィの姿が見える。
大切な仲間が、今もまだ戦い続けている。
ならば、私が休んでいていいわけがない。
命令を拒もうとする体に活を入れ、ゆっくりと体を起こす。
そして荷物の中から、ファイアフラワーを取り出す。
残されたパワーアップアイテムはこれだけ。
次に大ダメージを与えられれば、もう後はない。
これが、最後の勝負だ。


◆ ◆ ◆


結論からいえば、星のカービィは著しく劣勢に追い込まれていた。
ビーストと化した3DSは、攻撃力も防御力も大きく上昇していた。
星のカービィも最善を尽くしているのだが、それでも受けるダメージは彼女の方が多くなってしまう。
すでに残っていた回復アイテムも使い切ってしまった。
まさに、絶体絶命。
だがそれでもなお、星のカービィに諦めの色は微塵も見られなかった。

「しぶといですねえ。いいかげん諦めたらどうですか?」
「諦めるわけがないじゃない。もう、クリアがそこまで見えてるんだから。
 私の中にいるキュートなヒーローは、こんなところで諦めたりしない。
 クリアまでは、眠らない!」
「生意気なことをぉ! だったら今すぐ、永遠におねんねさせてあげますよぉぉぉぉ!!」

絶叫をあげながら、3DSは星のカービィに突撃する。
だがその勢いに、突如ブレーキがかかる。

「グッ! またどくどくのダメージが……」
「こんな風に、ちょくちょく隙を見せてくれるしね!」

失速した3DSに、プラズマ弾が叩き込まれる。
それは確実にダメージを与えはするが、決定打にはならない。

「こんな小技でちくちく攻めたところで……無駄なんですよぉぉぉぉぉ!!」

お返しとばかりに、3DSがビームを放つ。
それは星のカービィのプラズマ弾とは明らかに威力が違う、巨大な光の束だった。
星のカービィはラミアスの剣を盾にして、それを受け止めようとする。
だが、剣ではなく彼女の握力の方が耐えられなかった。
剣が星のカービィの手を離れ、吹き飛ばされる。
盾を失った星のカービィ本人も、当然ながら無事ではいられない。

「きゃあああ!!」

悲鳴と共に、星のカービィの体が吹き飛ぶ。
床に叩きつけられた彼女の肉体は、各所がビームの熱で痛々しく焼けただれていた。

「とどめぇぇぇぇ!!」

うずくまる星のカービィに向け、3DSは今一度ビームを放とうとする。
だがその瞬間、彼の背中を衝撃が襲った。

「そういえば、もう一人残ってましたねえ……。
 まったくどいつもこいつも、諦めが悪い……!」

3DSが振り返った先には、マリオワールドがいた。
衝撃の正体は、彼が放ったファイアボールである。

「今さらそんな豆鉄砲……痛くもかゆくもないんですよぉぉぉぉ!!」

標的をマリオワールドに変え、3DSがビームを放つ。
だがマリオワールドは軽やかにジャンプし、それを回避する。

「虫けらが、無駄な抵抗をぉ!」

今度は小さなエネルギー弾を連射し、マリオワールドを捉えようとする3DS。
だがそれも、マリオワールドは全て回避していく。
そして3DSの脇をすり抜け、星のカービィの前に到達した。

「立てるか、星のカービィ」
「立つくらいならできるけど……。まともに戦うのは、もう無理そうね。
 私のことは、もう見捨てなさい」
「バカなことを言うな! ここまで一緒に戦ってきた仲間を、今さら見捨てられるか!」
「一緒に戦ってきた仲間だからじゃない! 私をかばいながらじゃ、あいつには勝てない。
 私たちの……死んでいった仲間の想いに応えるためには、あなたには何が何でも生き残ってもらわなきゃいけないのよ。
 だから、私を踏み台にしなさい。ヨッシージャンプのように!」

ここでその例えはどうなんだと思ったマリオワールドだったが、星のカービィがあまりに真剣な表情だったため口には出せなかった。

「さて、そろそろお話は終わりましたか?」
「ええ、おかげさまで。理性が吹っ飛んでそうなのに、こういうときは律儀に待ってくれるのね」
「イベント中はおとなしくしているのが、ボスのたしなみですからねえ。
 ただ、もう終わったようなんでまたこっちからいきますよ!」

3DSが、再びエネルギー弾を連射する。
とっさにそれを回避するマリオワールド。
だが星のカービィの方はそれをかわせず、立て続けにくらってしまう。

「星のカービィ!」

たまらず絶叫するマリオワールドに、星のカービィは自分の荷物を投げ渡す。
そして、一言呟いた。

「今まで、ありがとう」

直後、3DSは自ら星のカービィの眼前に迫っていた。

「さっきの意趣返しです! 今度は僕があなたの首をはねてあげますよぉぉぉぉぉ!!」
「ええ、あなたならそうすると信じてたわ」
「は……?」

死を目前にしながら、不敵な笑みを浮かべる星のカービィの態度に疑問を抱く3DS。
彼はすぐに気づいた。星のカービィの豊満なバストが、さらに膨らんでいることに。

「何せ歩くのも大変な状態だからね。そっちが来てくれる可能性に賭けるしかなかったのよ」

星のカービィが回収した能力。その中には、「スーパーボンバーマン」のものもあった。

「貴様ぁぁぁぁぁぁ!!」

急いで上空へ逃れようとする3DSだが、間に合わない。
次の瞬間、爆風が二人を包んだ。


【星のカービィ 死亡】



「おのれ……こしゃくな真似を……!」

爆風が消えたとき、そこには3DSの姿だけがあった。
当然、無傷ではない。体の各所が焼け焦げ、ひび割れている。

「だが、やつも死んだ! 後はお前だけだ、マリオワールド!」

3DSの視線の先には、沈痛な面持ちのマリオワールドが立っていた。

「お前さえくたばれば、このクソゲーもゲームオーバーだ!
 その後でまた僕は、新しいゲームを始めてやる!
 今度こそ、僕の理想のエンディングにたどり着けるゲームを!」
「そんなことが……できると思っているのか?」

マリオワールドが、地を蹴る。今までのどんな場面よりも速く走り、燃える拳を3DSに叩き込む。
3DSと、仲間を一人も守れなかった自分への怒りを込めて。

「せめて貴様を葬り、この悲劇が二度と繰り返されないようにする!
 それが今の私にできる、ただ一つのことだ!」

マリオワールドが、次々と拳を3DSの体に突き立てる。
3DSは反撃のきっかけをつかめず、サンドバッグ状態である。

(いける! このまま……)

そのまま勝負を決めにいこうとするマリオワールド。
だがその時、彼の拳のスピードが急激に低下した。

(パワーダウン……? いや、元に戻ったのか!?)

そう、これまでのマリオワールドは「ファイトいっぱつ」の効果を受けていた。
その効果が、たった今切れたのである。
プラスがゼロになっただけであり、決してマイナスになったわけではない。
だがそこには、動揺が生まれる。
そして3DSは、その動揺を見逃さなかった。

「隙ありぃぃぃぃぃ!!」

3DSの翼が、マリオワールドの右腕をしたたかに打ち付ける。
その威力は、腕の骨を折るには充分だった。

「ぐおっ……!」
「まだまだぁっ!!」

苦悶の声をあげるマリオワールドに、3DSは容赦なく追撃を浴びせる。
蓄積するダメージは、あっという間にマリオワールドをチビマリオに戻してしまった。

「もはや回復アイテムもパワーアップアイテムもないお前に、勝ち目はなぁい!
 だけど、すぐには殺さない!
 他の連中の分の恨みも込めて、ギリギリまでいたぶってやる!」

もはや狂気しか感じられない声色で、3DSがわめき散らす。
彼がすでに勝敗は決したと主張するのも、無理はない。
大きくダメージを受けているのは、お互い様。
だが現在の戦闘力では、マリオワールドは3DSに遠く及ばない。
マリオワールドにとって、現状は絶望的という他ない。

(諦めたくなどない……。
 だがこの状況を打破する方法が思いつかない……!
 どうすればいいのだ……!)

その時、星のカービィの荷物から一つの支給品がこぼれ出た。

(これは……!)

マリオワールドは、そのアイテムに見覚えがあった。
それもそのはず、自分に由来するアイテムなのだから。
誰も使いどころがわからず、最後の最後まで放置された支給品。
その名は、「Pスイッチ」。
このアイテムは、一定時間コインとブロックを逆転させるという効果を持つ。
そして一部のステージでは、隠し扉や隠しコインが出現することもある。
つまり押すことで何か起こるかもしれないが、何も起こらないかもしれないのである。

(実質的に博打……。いや、博打にすらなっていないか……。
 押したところで、状況が何も好転しない可能性も高い。
 だが……押さない理由もない!)

マリオワールドは、力強く床に転がったスイッチを踏みつける。
異変は、その瞬間に起きた。

「な、なんだ!?」

突然の事態に、3DSは狼狽をあらわにする。
彼を驚かせたのは、突如としてこの場に発生した音だった。
それは、人の声だった。

改めて確認しておこう。
彼らが戦っていたのは、カービィシリーズ出典であるデデデ大王との決戦リングだ。
周囲に観客席が設置されてはいるが、そこに座るものは誰もいない。そのはずだった。
だが今、その観客席は埋め尽くされていた。
無数のマリオが、カービィが、リンクが、そこにいる。
任天堂キャラだけではない。
ロックマンが、原人くんが、ゴエモンが、ワギャンが、リュウが、ウルトラマンが。
このバトルロワイアルに関わったものも、そうでないものも。
多種多様なゲームキャラが、そこにいた。

「がんばれ! がんばれー!」
「エンディングまでもうちょっとだぞ!」
「ここでガメオベラはあかんでー!」
「勝ってくれー!」

四方八方から、応援の声がマリオワールドに降り注ぐ。

「なんだこれは。無意味な奇跡だ……」

大歓声の中で、3DSはつまらなそうに呟いた。

「応援を受けただけで、この状況がひっくり返せるとでも?
 そんな精神論でどうにかできるほど、世の中甘くは……」
「そうでもなさそうだぞ」

その瞬間、マリオワールドの拳が振るわれる。
その拳は3DSの顔面を捉え、仮面を粉々に砕いた。

(バカな!? こいつは今、チビマリオなんだぞ!
 こんな力があるはずが……!)

困惑のあまり動きが止まる3DSに向かって、マリオワールドは告げる。

「精神論だけの話じゃない……。彼らは我々ゲームを遊んでくれた、プレイヤーたちの思いの結晶だ。
 彼らのボスに勝ちたい、エンディングが見たいという思いが、データとして私に流れ込んできている。
それが……物理的に私を強化している!」

今度は、回し蹴りが3DSを捉える。
アーマーの破片をまき散らしながら、3DSが派手に吹き飛ぶ。

「調子に乗るなぁぁぁぁぁ!! 勝つべきは、僕なんだぁぁぁぁぁ!!」

絶叫しながら体勢を立て直し、3DSがマリオワールドに向かって突進する。
だが凄まじいスピードで迫る3DSを、マリオワールドは易々と回避する。
そのまま彼は、大きく跳躍した。
高く、高く、高く。

「バカが! そんな高く飛んだら、隙だらけだ!」

空中のマリオワールドを迎撃しようとする3DS。だがその時、彼の体に異変が起きた。

(体が……動かない!? どくどくのスリップダメージじゃない!
 まるで体のコントロールを乗っ取られたような……)
「ざまあないな、3DS。ラスボスがヒーローの力なんて取り込むから、食あたりを起こしたんだよ」

突如として、3DSの体から彼以外の声が発せられる。
より厳密に言えば、それは腰の辺りに装備されたベルトから発せられていた。

「まさか……ガイアセイバーズ……!?」
「何もしないうちに死んじまった俺だけどよ、せめてこれくらいはやらせてもらうぜ。
 ヒーロー戦記だけにいいかっこさせられるかよ!」
「貴様ぁぁぁぁ!!」

喉がはち切れんばかりに叫び、3DSは体を動かそうとする。
だが、ガイアセイバーズの制御下に置かれた肉体は彼の命令を受け付けない。
そうこうしているうちに、落下に転じたマリオワールドが3DSに迫る。
そして、重力によって十分すぎるほど加速したマリオワールドの足が、3DSを踏砕いた。

「あぎゃああああ!!」

おぞましい悲鳴が、3DSの口から放たれる。
マリオワールドの一撃で、彼の体は各所が砕け散っていた。
もはや、生きているのが不思議なほどである。

「ここは僕の世界だ……。絶対に僕は負けない……!」

それでもなお、3DSは戦いを続行しようとする。
その姿を見たマリオワールドは、あるものを手にした。

「そうか、ならばこれで終わりにしよう」

マリオワールドが手にしたのは、星のカービィが持っていた斧だった。

「そんなもので……何を……」

3DSの質問には答えず、マリオワールドはリングを降りる。
そして、斧でリングを斬りつけた。

「マリオ」が「ラスボス戦」で「斧」を振るう。
それは「スーパーマリオブラザーズ」の再現だ。
スーパーマリオブラザーズが「スーパーマリオコレクション」の収録タイトルとしてSFCに移植されている以上、その行動はこの空間でも同じ意味を持つ。
すなわち、ラスボスは落下してゲームから退場する。

「え……?」

突如リングが崩壊を始めたことに、3DSは理解が追いつかなかった。
床も突き抜け、彼の体はどんどんと落下していく。
必死で飛ぼうとする3DSだったが、すでにそんな力は彼に残されてはいなかった。

「バカな……こんなバカなぁぁぁぁぁ!!」

絶叫と共に、3DSは底の見えない闇の中に消えていった。


【ニンテンドー3DS 死亡】



「終わったな……」

3DSがいなくなったバトルフィールドで、マリオワールドは独りごちる。
彼に力をくれた観客たちは、すでに姿を消している。スイッチの効果が切れたということなのだろう。
今、彼はこの場に一人だけだ。

(この世界は、3DSによって作られたもの……。
 彼が消滅した今、おそらくは崩壊していくことになるだろう。
 そうなれば、私は……。
 まあどのみち、私たちはこの戦いのためだけに生み出された存在なのだ。
 生き残ったところで、どうしようもないな)

自嘲的な笑みを浮かべ、床に寝転がるマリオワールド。
その時、彼の脳内に声が響いた。

『おいおい、勝者がそんな顔するなよ。盛り上がらないだろ?』
「なんだ! 誰だ!」
『俺だよ、ワリ……じゃなくて、サテラビューだよ。
 今まで放送流してたやつ』
「ああ、ワリオの森やっていたやつか。お前もまだ生きていたんだな」
『まあな。でも、俺はあくまで裏方だ。
 3DSが敗れた今、お前に敵対する理由はない』
「では、なぜ私に話しかけてきた」
『言っただろ? このままじゃ盛り上がらないからだよ。
 ラスボスを倒した主人公がしょぼくれたままエンディングじゃ、プレイヤーががっかりするだろ。
 お前には、勝者の義務を果たしてもらいたいんだよ』

サテラビューがそう言い終わるのとほぼ同時に、マリオワールドの耳に足音が響く。
やがて、宝箱を持った青年が姿を現した。

「君は……?」
「僕はGamePad。Wii Uの片割れです。
 あなたに、これを届けに来ました」

GamePadが、宝箱を開ける。
中に入っていたのは、シンプルなデザインの笛だった。
名前もそのままの「笛」。
「スーパーマリオブラザーズ3」に登場した、ワープアイテムである。

「マリオコレクションの因子から取り出したのか……」
「その通りです。それを使えば、安全にこの世界から脱出できます。
 もっとも、脱出した先がどんな世界かまではわかりませんが……」
「なるほどな……」

マリオワールドは笛を手に取り、まじまじと見つめる。

「これは、一つしかないのか? 君やサテラビューはどうする」
『俺はいいんだよ。直接お前らを手にかけたわけじゃないが、それでも主催の一派だからな。
 責任を取って、この世界と運命を共にするさ』
「僕も、助かるつもりはありません。
 相棒が死んだのに、僕だけ生き延びてもしょうがないですから」
「しかし……」
「急いでください。すでに世界の崩壊は始まっています」

GamePadの言うとおり、周囲のあちこちでノイズが走り始めている。
もうこの世界は、長くないだろう。

「わかった。せめて君たちのことは、俺がしっかりと憶えておこう」
「ええ、それだけで充分です」
「それでは……さよならだ」

意を決して、マリオワールドは笛を吹く。
その音色に導かれ、どこからともなく竜巻が出現する。
竜巻はマリオワールドを巻き込むと、そのまま去って行った。
世界の外へと。


あけまして!

            おめでとりー!


竜巻の轟音の中で、マリオワールドは妙に陽気な声を聞いた気がした。


◆ ◆ ◆


気が付くと、私は1本のゲームカセットになっていた。
いや、戻ったと言うべきだろうか。
今の私はとある民家の押し入れで、忘れられたままただ時を過ごしていた。
こうしていると、あの戦いは何かの拍子に私が見ていた夢なのではないかという気もしてくる。
だが、それならそれでいいではないかとも思っている。
ゲームソフトに意識が宿り、夢を見る。何とも愉快な与太話ではないか。
その時、押し入れが久方ぶりに開かれた。
伸びてきた手が押し入れの中を雑に漁り、やがて私をつかむ。

「お父さん、これやってみていい?」

どうやら、また冒険に出かける機会が来たようだ……。




Thank you for playing

GAME CLEAR!


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