微生物学

微生物学に関するページです。



100問プリント:記述

現在の生物分類における指標について

細胞からなる生物は真核生物・真正細菌・古細菌の3つのドメインに分類される。真核生物のうち、単細胞またはそれに準ずる下等なものを下等真核生物という。その中で藻類・原虫・菌類の3群を区別する。菌類はさらに真菌と変形菌に分けられ、細胞壁を持っている。原虫と菌類は多核体であり、菌類と藻類は光合成能を持つことで区別される。

真核生物と原核生物の細胞構造の違いについて

真核生物は二重の核膜で囲まれた核を持ち、その中にゲノムDNAを収納している生物(ヒト・酵母)
原核生物は核膜を持たず、DNAが詰まって不規則な形をした核様体を形成する(大腸菌)

常在細菌とヒトとのかかわり

ヒトは産道を通る時から各種の微生物による汚染が始まり、以後一生の間皮膚や粘膜の表面には微生物の集団が定着している。これらの微生物は他の病原菌の侵入・定着の妨害や免疫系の活性化など宿主に有利に作用している事も少なくないが、宿主の抵抗力の低下、化学療法剤の使用による常在菌の間のバランス変化、常在部位以外の場所への侵入が原因で病気を起こす場合もある。

グラム陽性菌と陰性菌の細胞壁の構造の違い

細胞壁はグラム陽性菌・陰性菌を問わず、ペプチドグリカンにより構成されていて、グラム陽性菌はペプチドグリカンのほかにタイコ酸・多糖体・タンパクなどが存在し、形態学的には均質な比較的厚い壁として認められる。グラム陰性菌は細胞質膜の外側にペプチドグリカンより成る薄い膜が存在し、さらにその外側にもう一層の脂質二重層よりなる膜が存在する。

細菌の内毒素と外毒素の相違点

外毒素はタンパク質で、菌体から分泌されるかまたは溶菌によって遊離する毒素(易熱性)。
内毒素はグラム陰性菌細胞壁外膜のリポ多糖に含まれるリピドAで、生体に対して微量で発熱原生を示す。

細菌およびウイルスの増殖曲線

細菌の増殖曲線は遅滞期・指数増殖期・静止期・衰退期からなり、必要条件が整い次第増殖を始め、生菌数がある一定のところまでいくと時間に比例して死んでいく菌が増える。しかし、ウイルスの増殖曲線は最初にウイルス粒子がいったん解体するため、ウイルスの数は減る。そして、感染性のウイルス粒子が検出されない時期(エクリプス)に、DNA・RNAなどの構成成分が別々に合成され、再びウイルス粒子に組み立てられ、ウイルス粒子の数が増える。

独立栄養細菌と従属栄養細菌

独立栄養細菌は炭素原として二酸化炭素を利用できる(他の生物に依存しない)。
従属栄養細菌は炭素原として有機物に依存する菌で、有機物を比較的低濃度で含む培地を用いて長時間、低温で培養した時、培地に集落を形成するすべての菌をいう。

好気性細菌、通性嫌気性細菌、嫌気性細菌

好気性細菌とはNO3-が十分得られない通常の条件化では生育が酸素依存性である菌。
通性嫌気性細菌とはO2の有無に関係なく生育可能な菌。これには2種類あり、一方はO2の有無に応じてATP生成の方式が変わる通性菌で、もう一方はO2の有無に関わらず発酵のみを行う菌。
嫌気性菌とはO2により障害を受けるため、O2存在下では死滅するか少なくとも増殖ができないきんである。

細菌独自のATP生産系について

微生物は、様々な環境下でも育成を可能とするために動物にはないエネルギー生産系を獲得している。
嫌気呼吸、発酵、等がその例である。
発酵とは酸化的リン酸化に依存せずにATPを持続的に産生するシステムである。
嫌気的条件の下、大腸菌にグルコースを与えると混合有機酸発酵によりATPを生成する。グルコースは細胞膜を通過する際にホスホエノールピルビン酸からリン酸基を受け取ってグルコール6-リン酸となり、Embden-Meyerhof経路でピルビン酸となる過程でATP産生とNAD+の還元が起こる。NADHの酸化は高等動物の解糖と同様ピルビン酸の代謝と共役して行われるが、乳酸生成以外に種々の反応が関与し、最終産物はエタノールと数種の有機酸となる。
さらに最終産物の一つである乳酸が細胞外に排出されることにより細胞膜をへだててH+の濃度勾配および電位差が生じ、この電気化学的ポテンシャルを利用して膜に存在するH+-ATPaseがADP+Pi→ATPの反応によりATPを産生する。
嫌気呼吸とは嫌気的条件下で、終末電子受容体としてO2の代わりにNO3-またはフマル酸が存在すると、それぞれ特異的な電子伝達成分を誘導合成して、硝酸呼吸またはフマル酸呼吸を行い、酸化的リン酸化によるATP合成を行う。


プラスミドの構造と種類および機能

プラスミドとは細菌のゲノムで、染色体より小さいDNAである。これは、その菌の分裂増殖に必須の遺伝子を含まないので、仮に脱落しても菌の生死に直接影響しない。
プラスミドは染色体同様、環状2重鎖の構造をなしているものが多いが、中には線状のものもある。そのサイズは様々で、このプラスミド上にも様々な遺伝子が存在し、中には重要な性質を菌に与えるものもある。以下の二つ。
Ⅰ.化学療法剤に対して耐性を与える遺伝子 ←Rプラスミド(その遺伝子を分子内に持つ)
Ⅱ.下痢性大腸菌の腸管毒、ブドウ球菌の表皮剥奪毒素などを作る、病原性に関与する遺伝子。

バクテリオファージと細菌遺伝情報の伝播との関わり

ファージが菌に感染し、増殖する際、ウイルスDNAの代わりに誤って菌のDNAをもったファージや、DNAの一部が菌のDNAに置き換わったものが作られ、次に別の菌にこのようなファージが感染すると形質導入が起こる。
ファージの中には最初から特定の菌に形質を与える遺伝子を持っているものもあり、このようなファージによる菌の形質の獲得をファージ変換という。

ウイルスの増殖機構について

細胞表面にあるレセプターと結合し(吸着)、細胞内へ侵入。タンパクの殻から核酸が外に出て(脱穀)、核酸からmRNAが転写され、さらにmRNAからウイルスタンパクが翻訳される。一般に、ウイルス核酸(親)に基づいて初期タンパクが作られ、それによりウイルス核酸(親)が複製され、多数のウイルス核酸(子)を生ずる。このウイルス核酸(子)から後期タンパクが作られ、複製されたウイルス核酸(子)とともに集合してヌクレオカプシドを形成する。この後、ウイルスによっては細胞膜(エンベロープとなる)を被って成熟し細胞外へ排出される。
ウイルスの増殖において、ウイルス粒子はいったん解体して、それぞれの構成成分が別々に合成され、それらが再びウイルス粒子に組み立てられる。この増殖様式は、ウイルスの増殖過程で感染性ウイルス粒子が検出されない時期(エクリプス)として現れる。

垂直感染(伝播)と水平感染(伝播)

垂直感染とは母(または妊婦)から子(または胎児)へ、出産前後に縦に伝わって行く場合である。
水平感染とはヒトからヒト、動物からヒトなど、直接または間接に横に広がって行く場合をいう。

日和見感染症とその病原体

癌や白血病・免疫不全・糖尿病などの基礎疾患をもつ患者・未熟児・新生児・高齢者・免疫抑制療法中の患者など、抵抗力が減弱した易感染性宿主においては、正常な宿主に対しては病原性を示さない微生物(弱毒菌)による感染が容易に成立し(微生物の病原性>宿主の抵抗力)、このような感染を日和見感染(発症した場合、日和見感染症)と呼び、そのような病原体を日和見病原体と呼ぶ。
  ※日和見病原体の代表的なもの(下)
 ◇緑膿菌、セラチア、大腸菌などのグラム陽性菌
 ◆種々の嫌気性菌
 ◇カンジダ、クリプトコッカス、ニューモシスチスなどの真菌
 ◆サイトメガロウイルス、単純ヘルペスウイルスなどのウイルス
 ◇トキソプラズマなどの原虫

菌交代現象(症)と抗菌剤との関わり

多数の抗生物質が広く、大量に用いられた結果、感受性菌は一掃され、耐性菌や抗生物質が無効な菌がそれにとって代わって増殖し、その菌による新たな感染が成立する(耐性菌感染、菌交代症)

滅菌と消毒の違い

滅菌とは、ある系(物体)の中に存在するあらゆる微生物を完全に殺す、または取り除くことを意味
する。細菌と真菌に限らず、ウイルス。原生動物を含めたあらゆる微生物が対象である。
消毒とは、病原微生物による危険性が事実上無視できる程度にまで微生物を殺す事を意味しており、滅菌ほど完全ではない。

微生物の対数死滅則について

無菌とは微生物が存在しないという絶対的な概念を持つのに対し、滅菌はほぼ全ての微生物を殺滅するが、あくまで確率的なものであって絶対的な概念を持っていない。そのため、確率を対数グラフ化し、無菌が保証される値を定め、滅菌操作で微生物が残存する確率が1/1000000以下となって初めて無菌が保証される。この一連の決まりを微生物の対数死滅則という。

高圧蒸気滅菌、乾熱滅菌、火炎滅菌の手法

高圧蒸気滅菌はオートクレープとよばれる一種の圧力釜を用いる方法で、ガスまたは電熱で加熱しながら釜の内部の空気を完全に追い出したあと水蒸気で満たして2気圧に保つと温度は121℃となり、15分~20分間で芽胞もほぼ完全に殺され滅菌が達成される。熱に弱い物質を含んだ培地などに対しては1.7気圧(116℃)、10分という条件を用いることもある。

乾熱滅菌はガスまたは電気を熱源とする乾熱滅菌器とよばれる一種のオーブンの中で、160℃1時間ないし180℃30分程度加熱すれば芽胞も死滅する。紙で包装するとうすい狐色になるのが目安。

火炎滅菌はガスバーナーの炎の中で赤熱して滅菌する。白金耳や白金線などに適用。

各種消毒剤の作用機構、使用対象と使用法

アルコール:タンパク質を変性させることで殺菌効果を表す。皮膚の消毒に用いられる。通常EtOHは70~80%の濃度で使用。結核菌やシュードモナス属、バークホルデリア属を含む一般細菌や真菌に有効であるが、芽胞には効かない。エンベロープをもつウイルスには有効であるが、もたないウイルスには一様ではない。

陽性石鹸:細胞膜の破壊とタンパク質の変性。皮膚や創傷の場合0.05~0.2%、粘膜の場合0.005~0.05%、器具の消毒には0.02~0.1%、手指の場合、少量の原液でもみ洗いしたのち、水洗してもよい。多くの無芽胞細菌および真菌に有効であるが、結核菌や芽胞には無効。シュードモナス属やバークホルデリア属の中には抵抗性のものが多い。エンベロープをもつウイルスには有効であるが、もたないウイルスには無効。

両面界面活性剤:アルキルジアミノエチルグリシル塩酸塩0.3~1%で用いる。結核菌に有効でシュードモナス属には抵抗性のものがある。その他の点は陽性石鹸とほぼ同様と考えてよい。

クロルヘキシジン:膜の障害とタンパク質の変性。刺激性・毒性はともに弱く、皮膚・創傷・器具の消毒に使える。グルコン酸クロルヘキシジンの濃度で、皮膚・器具には0.05~0.5%、創傷には0.05%程度。各種微生物に対する有効性は陽性石鹸とほぼ同様で、シュードモナス属やバークホルデリア属による院内感染に注意が必要な点も同じである。

フェノール:タンパク質の変性作用。排泄物の消毒に3~5%液を等量加えて数時間放置。刺激性・毒性が強いので皮膚には使われない。結核菌、シュードモナス属、バークホルデリア属を含めた無芽胞細菌と真菌、それにエンベロープをもつウイルスに有効であるが、芽胞とエンベロープをもたないウイルスには無効。

ヨウ素剤:酸化作用とタンパク質のヨウ素化。ヨードチンキはヨウ素60gとヨウ化カリ40gを70%エタノールに溶かして1000mlとしたものであるが、皮膚への刺激が強く、繰り返し用いると表皮剥離を起こすので、普通は等量の70%エタノールを加えた希ヨードチンキが使われる。粘膜に対してはグリセロールを加えて刺激性を緩和したザイフェルト液が用いられる。有効範囲はアルコール類・フェノール類とほぼ同程度=無芽胞細菌・真菌・エンベロープをもつウイルスに有効、エンベロープをもたないウイルスへの効果は一定せず、芽胞には弱い殺菌力を示すが、事実上は無効。

有機塩素剤:水溶液中で徐々に次亜塩素酸HOCl・次亜塩素酸イオンOCl-を放出し、刺激性が弱く、手指の消毒への応用が可能。通常は次亜塩素酸・次亜塩素酸イオンは殺菌力が強く、水の消毒に用いられるが、刺激が強いので皮膚などへの直接の応用は普通行われない。

重金属剤:水銀化合物で今も使用されているのはマーキュロクロムとチメロサールで、皮膚や粘膜、
特に創傷の消毒に前者は2%、後者は1%水溶液を用いる。後者はワクチンなど生物学的
製剤の保存料として0.01%の濃度で用いられる事もある。

アルデヒド類:核酸やタンパク質の官能基と反応し、アルキル化や架橋を起こす。ホルムアルデヒドは燻蒸剤として病室の消毒に用いられてきた。目張りをしたうえでホルムアルデヒドガスを発生させ少なくとも24時間は放置する。グルタラールは医療器具の消毒に使われ長時間(例:10時間)つけておけば大体滅菌が可能。

以上のほかに、3%過酸化水素水が傷の消毒やうがい(5倍に希釈)に、0.02%~0.5%過マンガン酸カリウム液が尿道洗浄にそれぞれ用いられる。いずれも酸化剤で、前者の殺菌力はかなり強い。

病院内感染(院内感染)の特徴と、院内感染が発生する背景および予防対策について

院内感染とは病院内において起こるすべての感染をさす。その起こり方として外因感染(ヒトからヒト、あるいは物品を介しての外からの感染)と内因感染(常在微生物による感染)がある。特に病院内は病人が集まる場所なので菌も多い上、易感染者が多いので日和見感染症も起こしやすい(14項を参照のこと)。
その対策としては感染防止マニュアルの作成、病院スタッフの教育、消毒や滅菌の管理、感染が起こった時の感染減や感染経路の究明とその対策の立案、特に易感染者に対する対策、汚染物の管理
抗生物質の使用方針などの立案など。

ペプチドグリカンの構造と機能およびβ-ラクタム剤の作用点

グラム陰性菌もグラム陽性菌もN-アセチルムラミン酸と、N-アセチルグルコサミンが交互に結合することにより多糖体直鎖を形成し、MurNAcに結合したペプチドを用いて他の多糖体直鎖と架橋構造を造ることによってペプチドグリカンを形成する。グラム陰性菌は側鎖のペプチドで直接架橋している。またグラム陽性菌の細胞壁にはペプチドグリカンの他にタイコ酸を主要成分として含んでいる。
β-ラクタム剤はこの架橋形成を阻害するため、病原体が細胞壁を形成できず、増殖できない。β-ラクタム剤は架橋形成の際に必要なD-Ala-D-Alaと構造が類似しているため、これをトランスペプチターゼが細胞に結合させてしまい架橋反応中間体を不活性化して阻害している。

細菌の内毒素(リポ多糖)の構造と各構成部分の機能、および代表的生物活性

内毒素とはグラム陰性菌の外膜であるリポ多糖(LPS)であり、細胞の内膜からリピドA、コア多糖、O特異多糖鎖(O抗原)の三部から構成されている。毒性の本体はリピドAであり、O抗原は菌表面の抗原性を決定している。
代表的生物活性にはシュワルツマン反応がある。シュワルツマン反応とは、エンドトキシン(内毒素)を皮内または静脈内に投与し、24時間後に再度エンドトキシンを静脈内に投与して誘発させたときに、最初の皮内投与部位または全身臓器に出血・壊死を生じる反応である。他の生物活性として、エンドトキシンショック発熱原生、致死毒性、アジュバンド作用、IFN・IL-1の産生誘導等がある。

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最終更新:2007年02月28日 04:14
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