柏木七生作品「ハダカの万葉」と藤本ひとみ作品の類似エピソード
ケータイサイト「ハダカの万葉」P19
「和司さん……!」
横たわる和司さんを見て、さらに心臓がはね上がる。
「和司さん、大丈夫ですか!?」
私は横たわったままの和司さんの側にひざまずき、仰向けにして自分の膝に頭を乗せた。
それから頭を揺らさないように、そっと肩に手を置き顔を覗き込む。
(中略)
「ちょっと飲みすぎた……」
和司さんは苦しそうにつぶやいて、また目を伏せる。
(中略)
「イヤだ……側にいて……」
少し甘えたような口調で、ドキッとすると同時に、なんだか拍子抜けしてしまう。
こっちは死ぬほど心配したっていうのに……。
藤本ひとみ作品 コバルト文庫マリナシリーズ「愛からはじまるサスペンス」P77-78より
そのドアを開けた。
とたん、じゅうたんの上に、うつぶせに倒れている彼女が見えた。
うわっ、発作だ!
あたしは一気に青ざめて、彼女にかけ寄り、抱き起こした。
が、その瞬間、ぷーん、と、鼻をつくアルコール臭。
(中略)
酔っぱらっている。
しかも、ぐでんぐでん。
あたしは、かきいだいていた薫を膝の上から放り出すようにして立ち上がった。
し、心配させといて!
いったいどれだけ飲んだんだろうと思って見れば、ガラステーブルの上に、空になったダルマが一本は立ち、もう一本は寝転んでいる。
- 部屋に入ったら倒れている→膝上に抱き起こす→飲み過ぎかよ! っていう流れが同じ。
ケータイサイト「ハダカの万葉」P20-22
立ち上がろうとした私の動きを制するように、和司さんはしなやかな両腕を私の腰に回した。
「イヤだ……側にいて……」
(中略)
瞬間、和司さんは私にしがみつくように抱きついてきて……。
グラスはそのまま転がり、シーツを濡らした。
「かっ、和司さん!?」
「寒い」
「寒いんなら、熱いシャワーでも浴びてください!」
私はすっかり気が動転して、彼の腕の中から逃れようと身体に力を入れる。
「一人でいると、怖くて寒くて凍えそうなんだ」
ささやくような小さな声で、和司さんはますます私を抱く腕に力を込めた。
(中略)
「和司さん、元気を出して。和司さんが何を思い悩んでいるのか私にはわからないけど、和司さんなら、こんな風にお酒に逃げなくても立ち向かえると思う」
私の言葉に、和司さんは弾かれたように顔をあげた。
そこには、普段の冴え冴えとした彼はいなかった。
深い、海の底のような暗い瞳で、私をじっと下から見上げている和司さんは、まるで小さな子供のようだった。
藤本ひとみ作品 コバルト文庫マリナシリーズ「愛と哀しみのフーガ」上巻P212-213より
瞬間、カークは腕を伸ばしてあたしの肩をつかみ、直後にあたしは彼の厚い胸の中に、息もできないほどに抱きしめられてしまったのだった。
わっ、なにすんのっ!
「じっとして、マリナ。お願いだから、少しでいいから、こうしていて。オレ、寒いんだ。寒くて、たまらない……」
寒けりゃ毛布を持ってきてあげるわよっ!
あたしを暖房機代わりにすんじゃないっ!!
もがいてあたしはやっと視線だけを動かし、そして見た、カークが今にも泣きそうな顔で、ぎゅっと目をつぶっているのを。
その時、あたしはわかった気がした、カークは心が寒いんだ。
悲しくてたまらない小さな子が、おかあさんに飛びついて、その温かさの中で安心しようとするように、カークはこうして自分を癒そうとしているんだ。
(中略)
「カーク、元気をだして(後略)」
- 「寒い」と抱きついて来て誤解→よく見たら何か傷ついてるの?→励ます。の流れ。
ケータイサイト「ハダカの万葉Ⅱ」P51
『着物は用意できる?』とシャルルに聞かれたマハがメイドさんに相談し、
「和司様のお母様がお着物が好きで、たくさんつくっていらっしゃいましたから」
「万葉様に着ていただけたら前の奥様もきっとお喜びになります」 と、前妻の着物を着せてもらうことが明かされる。
藤本ひとみ作品 コバルト文庫新花織シリーズ「一度だけセレナーデ」P125~129より
「君も、きちんとドレスアップしてくるんだぜ」(P125)と美馬に言われて、 えっドレスなんてないわよ、と焦る花純に美馬がドレスを用意してくれて、
「母が、好きだった服だ」
「こういう明るい色のドレスがお好きで、何枚も並べてごらんになっては、楽しんでいらっしゃいました」 と、前妻のドレスを着せてもらうことが明かされる。(P128-129)
最終更新:2009年10月07日 01:47