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花月、その内に在るモノ――

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匿名ユーザー

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可能性として低かろうと、土曜の朝から、「その場」に張り付く。
他にやる事もないし、考えることもない。
このところ食事を取ってなかったことに気が付く。
家族計画ってゲームの準と同じで、食にあまり関心がないため、
他の事に気を取られると、あっさり食事を抜いてしまう癖がある。
それに加え筋トレもしてないせいか、気持ちばかり腕が細くなった気がする。

ある種のトランス状態にでも、入っていたのかもしれない。
寝てない、食べてない、春も知らず。

そうして三大欲求を無意識的に断っていたことにより、そうした覚醒状態にでも突入したのかもしれない。
だから暇が暇でない。廃ビル7階での10時間が、あっという間に過ぎる。
俺が時間を加速でもさせたのかもしれない。正直、そんな精神状態だった。

そして、5月26日土曜23時
花月の姉、そして、俺の元恋人の命日も、残り1時間。
足音が、聞こえた。花月が暗がりの部屋にいざ踏み入らんとした時、
窓のふちに座っていた俺の影に気づいたのだろう。そこで停止した。
すぐにでも踵を翻し逃げなかったのは、その影が俺だってことをすぐさま認識したからだったのだろう。

俺「ずっと待ってた

花月は言一つ唱えず、先の動作を再始動させる形で、殺風景でひび割れた部屋の中に歩を進める。
俺も窓の際から降りて、その場で待ち構える。
街灯の僅かな光で、ようやく互いが互いの表情を確認出来る位置までに、対峙する。

いや、対峙というのは、少々語弊があるのかもしれない。
俺という招ざかれる客が、自分の死地にいたというのに、
その想定外に対する感情の変化が、彼女からは一切読み取れなかった。
そしてようやく、花月が口を開く。

花月「疑問は色々とあるが、最早、興味もない」
俺「へぇ……」
花月「……私たちが会うのは、これで何度目か知っているか?」
俺「いや、わからん。いちいち数えてないし」
花月「4度目だ。ちょうど、死を意味する回数だな

特に自嘲もせず、淡々とそんな台詞を口にする。

俺「……ま、そんなことより、姉への手土産ってことでどう? 疑問とやら、聞いてみないか?」
花月「貴方の、きっとキナ臭い裏工作話を聞いて、私の姉が喜ぶとでも思うか」
俺「意外だね」
花月「……話は、終わりか」

ここでやっと、俺のことを睨んでくれる。

俺「姉貴に、色々土産話とかする気だったのか」
花月「早く去れ。自殺幇助に問われる
俺「佳奈恵に対する工作だとか、全体的な急ぎ様を見て、できれば命日である今日死にたいことは、確信を持ってた」
花月「……」
俺「ってことで、今日は朝からずっとここにいた。どうせ墓参り行くんだろうから午前中は来ないだろう、とは思ってたけど、他にすることもなかったし」
花月「……」
俺「……花月さんの両親の実情と、家が武家なんたらってことで広いんであれば、夜中に抜け出すことは容易だとも思ってた」
花月が「ああ」と軽く相槌を打つ。

花月「例えば今、私が家にいるかいないか、帰ってきたかどうか、それも両親に報告しなければわかるはずもない……そんな屋敷だ
俺「で、最後に死に場所か。これは迷った、ああ大いに迷ったさ。迷っちゃったさ」
花月「……」
俺「けど、ある時点で、その場所についても確信が持てた」
花月「……」
俺「なんかずいぶんと大人しく俺の話を聞いてくれてるけど、死なないの?
花月「続けろ」
俺「……花月さんは、人に迷惑をかけることを、死に至るほど恐れてる

少し精神的に疲れてきたので、再び窓椅子に座る。
俺「それも、死んだ後の迷惑のことだ。普段はそういった態度ばっかで周りがしらけたり、先生の胸倉つかんで問題児に頭悩まさせたり、そんなことは意にも介してないはず。
なのに……なぜだか、死後の他人の心境だけは、病的なまでに気を使う。自分がそうだったから、その一点に関しては、病的なまでに気を使う
花月「……」
俺「姉貴がなくなった病院は、病院の人に迷惑がかかる。自室で自決は、家族とか屋敷の人に迷惑がかかる……誰にも迷惑がかからない。
この、昔姉貴とよく遊んだっていう、このビルのこの部屋しかないって確信した。結局今もこのビルがなんなのかは知らんけど、廃ビルになってたことは知ってたし、ここが強いかな、って」
花月「それだけで……か?」
俺「……花月さんの死に癖も、考慮に入れさせて頂きました」
花月「……」
俺「そもそも、自殺そのものが駄目だと考えたはず。中学生の自殺なんて、それこそ最近のマスコミは喰いつく。
だから、日常的に無茶しておけば、たとえこのビルで落下したとしても、『そういう子だった』だとか『普段からあんなことばっかしてたから……
だとか、すんなり理由が付く。それに、こんな奇怪なビルに立ち入る理由にもなるしね、普段から奇怪な行動ばかりしてればさ」
花月「……」
俺「よくよく考えれば、『迷惑』をひどく嫌ってる人間が、自動車に轢かれるだとか、授業中に酸欠で云々だとか、
そんな計算も何もない死に方、するわけがないんだよね。全部、自分の身体能力を分析した上での、計算され尽くした『無茶』だったんでしょ?」

花月「貴様は……何者なんだ……?
俺「んな漫画みたいな聞き方されても、抽象的で、何答えていいやら……」
花月「どうしてこうまで、私達姉妹に固執するのか、ということだ」
俺「さっき俺たちが会うのは4回目言ってたけど、5回目だ」
花月「……どういうことだ?」
俺「花月さんの姉……○○とは、昔付き合ってた」
花月「……」

表情に、特に変化はない。

俺「まあこれだけじゃ、ここまで花月さんに固執する理由にはならんわな」
花月「それを聞いている」
俺「質問に質問で返す形になるけど、姉貴に、土産話とかするつもりだったの?」
花月「それがどうした?」
俺「質問の質問に質問で返さないでほしいな
花月「そうするつもりだったと言っている、それがどうしたのだと聞いている」
俺「例えばどんな話を? 俺に一つでもいいから聞かせてみせてよ」
花月「……貴方に話すことなどない」
俺「俺に? 姉貴にもないはずだ。たかが一つや二つの笑い話すら

ここから若干、ブラックモードに。

俺の雰囲気の変化を察知したのか、花月も歩を踏みなおす。
武道の心得がなくとも、臨戦態勢なんだな、となんとなくわかる。

花月「……そこを退け」
俺「気づいてんでしょ? 自分がこの6年間、友達も作らずいかに惨めに暮らしてきたか
花月「退け、と言っている」
俺「そうして、友達との日常会話もないから、語彙も全体的に文語寄りになってしまう。把捉なんて使ったって、ほとんどの人は漢字すら浮かんでこないと思うよ
花月「……」
俺「徹底的に人との交わりを避けてきて、拒んで、孤独になって……それもこれも全てはお姉ちゃんに会う為の努力してきたんだよ、って伝えたとき……あいつがどんな顔をするってんだ
花月「黙れ」
俺「そんな事に、花月さんは意識的か無意識的かどちらにせよ、気付いていた。だから、佳奈恵と交流したりもした。臆病なほど中途半端に
花月「……」
俺「もう一度だけ聞くけど、死んで……その後、どうするんだ?

静寂が流れる。
もう一度回答を促そうとした時、花月が口を開く。

花月「……その事には、気付いていた。意識的に、だ気付いたが、気付いたのが、遅すぎた。その時にはもう、私の中の、世俗的な交友能力は完全に消え去っていた」
俺「……」
花月「……貴方の、言うとおりだ。この6年間、霞隠れのような余生を送ってきた。姉の生前まで親しかった友人とも、完膚無きに、二度と私という存在を省みないぐらいに、縁を切った
俺「それを……佳奈恵にもやった、ってことか」
花月「貴方についての、吐き気を催すような醜悪な罵倒を、してきた。平手の打たれたのでな、打ち返した」
俺「……」
花月「壊した後だ。二度と戻るまい。姉のいない地獄や、何も残らない無になることも、とうに覚悟は出来ている」

俺に接近してくる。
花月「和泉と、姉については、任せたい
俺「任せる?」
花月「……本当は時間をかけて仲を消滅させたかったが、命日が近かった。それでも万に一つの可能性ではあるが、もし和泉が私の死に悲しむような素振りを見せていたら、慰めてやってくれ」
俺「しかしまあ、数回しか会ってないのに、よくもまあそこまで俺のことを……初めて会ったときの、尾行で判断したとか?
花月「そうだ」
俺「……姉のほうは?」
花月「今、生きているということは、貴方は生きる道を選んだ。姉への思い出話を作る道を選んだ、という解釈をさせてもらった」
俺「……その通りです」
花月「さっき、貴方が言ったことはすべて正論この上ない。しかし、私はもう戻れない。戻れないような状況に、した
俺「……」
花月「……去れ」
俺「もう戻れない、ね。その辺もうちょっとだけ聞かせてくれれば、去るんだけど」
花月「和泉のことに決まっている。わかっていて聞いているのか?」
俺「佳奈恵ってね、結構ああ見えて心広いほうなんだよ? 融通利かないイメージあるかもしんないけど」
花月「無理だと言っている」
俺「……なら仮に、関係の修復が可能だとしようか。戻りたい?」
花月「今の事情を、悲劇がましく全て話せとでも言うのか」
俺「質問に質問で返さないでほしいな
花月「……」
俺「条件を考慮した回答じゃなくて、あるがままの本心を聞きたいんだ。元の、微妙ながらも友と呼び合える交友関係に戻りたいのか、それともこのまま死を選ぶのか
花月「……」
俺「二者択一、それ以外は聞きたくない


















                             今の今まで
死に向かう直前の、極限の平穏状態だったからか、喜怒哀楽どころか表情一つ動かさなかった花月さんが……













花月「……こんな……こんな……!」

俺「……」

花月「……こ、こんな、姉に顔も合わせられない

ような結末の為に……私の人生は……」


涙に咽(ムセ)びだした。
そんな花月を、ほとんど無意識的に抱きしめる

花月「戻りたいに決まっている……戻りたいに……」
佳奈恵「そう」
花月「……」

花月さんが、俺に抱きついたまま、佳奈恵のほうを振り返る。
佳奈恵「……」
花月「どうして……和泉が……」
佳奈恵「……正直、かなり眠いわ」
俺「だろうね、お疲れ」
花月「聞いて……いたのか」
佳奈恵「貴方の泣き顔って新鮮ね。なかなか楽しいわよ?」
俺「佳奈恵、微妙なSは控えて」
佳奈恵「まあ、事情も本音もわかったから、もう帰るわね」
俺「……」
佳奈恵「どうしたの?」
俺「いや、全体的に淡白だな思って」
佳奈恵「相手が不安定だと、逆に自分は落ち着く性格なのよ」
俺「ああ、だから俺の前ではいつもあんなに劣情を……」
佳奈恵「黙りなさいザザ猫
俺「……ザザ猫ってなんっすか」
花月「……」
佳奈恵「まあ、もうさっさと帰りたいし、一言だけ言わせてもらえば……」
花月「……」
佳奈恵「あの程度の暴言で、私の貴方に対する友情から逃れられると思ったら、とんだお笑い種(グサ)ってことね
花月「だま……れ……」
佳奈恵「一緒の高校行くんでしょ? しばらく腐れ縁は続きそうね」

こちらに近づき、
花月によしよししながら、俺にナチュラルにキス
顔を離す

俺「帰るの?」
佳奈恵「ええ、用事あるし」
俺「一人で大丈夫かな? 気をつけて」
佳奈恵「……{今日だけは浮気)、許してあげるわ

そう言い残し、佳奈恵が去る。
俺「……ま、佳奈恵もああ言ってるんで」
花月「ここまで……」
俺「ん?」
花月「ここまで……読み切っていたのか……?」
俺「言っちゃ悪いけど、花月さんの行動はかなり読み易いから
花月「……単純、か?」
俺「かなり深い所まで考えてるけど、逆に言えば、その深いところまで辿りつけば、行動は丸分かり、ってことかな?」
花月「……」
俺「もう、死ねないね」
花月「……命日も、過ぎた」
俺「まあ、とりあえずなんか食べない?」
花月「……食べる、とは?」
俺「俺、ここんとこ固形物一切口にしてないから、なんか急におなかが……花月さんも、どうせ今日まだ夕飯食べてないんでしょ?」
花月「……」



コンビニでパンやらおにぎりやら買って、食べながら帰路につく。
このときに、一緒に墓参り行かないかと誘う。
場所聞いて俺だけ行ってもよかったんだけど、何せ佳奈恵から浮気公認宣言出たので……

しばらくして、今まで俺が意図的に避けていた道に入る。
花月の御屋敷がある通りに

俺「じゃ、この辺で……家の人に見つかるかもわからんし」
花月「ああ」
俺「……」
花月「色々と、助かった」
俺「俺もいるからさ」
花月「……」
俺「元恋人の妹だからどうこうじゃなくて、花月さん自身を、愛しく思ってるから
花月「……本来なら、私はすでに、この世にいなかったはずなんだがな
俺「……だね」
花月「……御休み」
俺「あい、また明日、つか今日。お休み」

「質問に質問で返すな」って言葉が、ここまで便利だとは思わなかった(´・ω・)


之にて一件落着 つーかお嬢、居たの?  いやはや、よかったよかった …最後の一文でガクっとなりそうになりますが

藍色一色、姿晦ましていた4日間はずっとこの色しか視えませんでした…
本スレでぷよがリアルタイムで現れた時は本当にホッとしましたよー
その後からは「空色」が視えてきました 穢れの無い、清い色―――そんな未来が視えた気が…

そして色だけでなく映像まで視えてたり 「快晴の空の下、皆が輪になり心から笑っている」…そんな幸せな絵です
皆とはぷよ、ガールズ、そしてスレの住人さんたちでした―――

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