生化学Ⅰ

糖質の構造と性質、役割

  • グルコースの構造や役割は何か。
糖質は生体内においていくつかの重要な働きを担っている。第一に生体セネルギー分子であるATPを生み出す原料となる。第二に細胞と細胞の空隙を埋めて保水性、弾力性のある組織をつくることである。これはおもにグルコースなどの糖が多数結合してできる多糖類、および多糖とタンパク質との複合体であるプロテオグリカンによっている。第三に細胞間の分子認識を担う多様な糖鎖構造をつくることである。数個から数十個の分岐した糖鎖が決行した資質やタンパク質が細胞表面にあり、この糖鎖がいわば細胞のアンテナの役割をもっているとかんがえられる。

  • ヘミアセタール結合によるαグルコースとβグルコースの違い。
グルコースはC6H12O6の化学式をもつアルドースであり、分子内に水酸基とアルデヒド基をもっている。この水酸基とアルデヒド基は、容易に分子内で結合してヘミアセタールとなり、安定な6員環の環状構造をとることができる。環状構造をとった糖分子のヘミアセタール部分の水酸基は、6員環よりも下側に向いている場合と、上側に向いている場合がある。これらの違いをそれぞれα位、β位と呼び分けている。このように、環化反応によって生じる立体配置の異なる異性体をアノマーという。 

  • 六炭糖のヘミケタール結合による生成物は何か。
上記のような環状構造はアルドースだけでなくケトースでも生成する。フルクトースは炭素6個のケトースで、分子内の水酸基とケト基は容易に分子内で結合してヘミケタールとなり、安定な5員環の環状構造をとることができる。この場合にもアノマーが存在する。つまり、ヘミケタール部分の水酸基は、5員環の下側に向いているα-D-フルクトースと、上側を向いているβ-D-フルクトースである。

  • D-グルコースのエナンチオマーとジアステレオマーは何か?
エナンチオマーはL-グルコース
ジアステレオマーはD-ガラクトース

  • 六炭糖のアルドースとケトースの例は何か。
アルドース:グルコース
ケトース:フルクトース

  • 代表的な五炭糖2つと六炭糖2つを述べよ。
六炭糖:グルコース、フルクトース。ガラクトースetc..

  • グルコースとガラクトースを酸化反応で何ができるか。
グルコースを酸化するとD-グルコン酸とD-グルクロン酸が生成され、D-グルコン酸はD-グルコノラクトンと、D-グルクロン酸はD-グルクロノラクトンとそれぞれ水溶液中で平衡状態にある。
ガラクトースを酸化するとD-ガラクトン酸とD-ガラクツロン酸が生成され、D-ガラクトン酸はD-ガラクトノラクトンと、D-ガラクツロン酸は
D-ガラクツロノラクトンと水溶液中で平衡状態にある。

  • 代表的なアミノ糖は何か。
酸の水酸基の一つがアミノ基に置換したものをアミノ糖という。
天然には、D-グルコサミンとD-ガラクトサミンが広く分布している。
さらにD-グルコサミンのアミノ基がアセチル化されるとN-アセチルグルコサミンに、N-アセチルグルコサミンが乳酸と縮合するとN-アセチルムラミン酸になる。

  • グルコサミノグルカンとは。
グリコサミノグリカンとはプロテオグリカンに共有結合しているヘテロ多糖の代表例である。以前はムコ多糖と呼ばれていた。グリコサミノグリカンはコンドロイチン硫酸・デルマタン硫酸・ケラタン硫酸・ヒアルロン酸・ヘパリン・ヘパラン硫酸の6種類で、いずれも酸性の糖を含む二糖の繰り返し単位が繋がった直鎖状の多糖である。
多数のグリコサミノグリカンがコアタンパク質とよばれるタンパク質のアミノ酸側鎖に結合した巨大分子がプロテオグリカンである。

  • グルコースを含む二糖類は何か、その構成と性質は。
グルコースを含む二糖類はマルトース・セロビオース・ラクトースとスクロースである。
マルトースは2分子のグルコースがα1→4結合したものである。一方のグルコース分子のアノマー炭素がα配位していて、他方のグルコース分子の4位の炭素にグリコシド結合している。麦芽糖とも呼ばれ、デンプンがアミラーゼの作用で分解されるときに生じる。
セロビオースは2分子のグルコースが結合したものであるが、左側のグルコース分子のアノマー炭素がβ配位していてβ1→4結合になっている。植物の繊維であるセルロースを加水分解すると得られる。
ラクトースはガラクトースとグルコースがβ1→4結合したものである。乳糖とも呼ばれ、乳汁中に豊富に含まれている。
スクロースはグルコースとフルクトースがα1→2結合している。サトウキビ、サトウダイコンなどから取られる糖でショ糖、一般的には砂糖とも呼ばれている。二つの糖のアノマー炭素どうしが結合しているので、還元性がない。スクロースは希酸で容易に加水分解され、グルコースとフルクトースの等モル混合物になる。これを糖転化と呼ぶ。スクロースの転化はインベルターゼという酵素によっても起こる。フルクトースを含んでいるため、糖転化はスクロ^スよりもやや甘い。

  • アミロースとセルロースの違いとは。
アミロースはグルコースがα1→4結合した直鎖状分子で、グルコース6分子で1回転する右巻きのらせん構造を取っている。
セルロースはグルコース間のグリコシド結合がβ1→4結合している点が異なっている。セルロースはらせん構造をとらず、直鎖状に伸びた分子で、そのセルロース分子間は水素結合で結びつき、多数のセルロース分子が束ねられた線維状構造をとる。βシート構造上のグルコース6分子で1回転する右巻きのたせん構造をとっている。

  • アミノペクチンとは。
アミロペクチンはグルコースのα1→4結合した直鎖状構造に加えて、グルコース約25残基に1回程度α1→6の分岐が加わっているため、分子全体としてらせん構造がとれなくなっている。

脂質の構造と役割

  • 単純脂質の種類とその役割は何か。
脂質は、まず単純脂質と複合脂質に大別される。
単純脂質は中性脂肪やステロールに代表されるように、炭素、水素、酸素からなる脂質である。
脂質の種類として、脂肪酸、中性脂肪、ステロール、ワックス、イソプレノイド等である。
脂肪酸はもっとも基本的な脂質で、炭化水素の末端にカルボキシル基をもっていて、炭素鎖の長さの違う種々の脂肪酸がある。生体の構成脂肪酸としては、炭素数14~22のものが主体である。
生体内ではアシルグリセロールがトリアシルグリセロールとして存在していて、貯蔵性のエネルギー源として代謝上とても重要な意味を持っている。
コレステロールは脂肪酸とは大きく構造が異なっていて、三つの六員環とひとつの五員環がつながったステロイド骨格をしている。コレステロールには、細胞膜の構成成分となるほか、胆汁酸、ビダミンDやステロイドホルモンの前駆体としての役割がある。
(複合脂質は単純脂質の基本構造に、糖、リン酸、硫酸、塩基などが結合した脂質である。)

  • 飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の代表的なものは何か。
飽和脂肪酸は直鎖構造をとり、不飽和脂肪酸は二重結合部分で曲がった構造をとる。
飽和脂肪酸を主成分とする牛脂は常温で固体だが、不飽和脂肪酸を主成分とするオリーブ油は液体である。
飽和脂肪酸:パルチミン酸 不飽和脂肪酸:オレイン酸 等

  • 自然界にある脂肪酸の二重結合の構造はどのようなものか。
炭化水素部分に二重結合を含む脂肪酸は不飽和脂肪酸とよばれ、二重結合が加わることにより、分子の形が「く」の字型に屈曲し、分子の運動性が増し、融点が下がる。(オレイン酸etc)

  • ステロイドの代表的なものの名称と、その構造はどのようなものか。
コレステロールは脂肪酸とは分子構造が大きく異なっていて、三つの六員環と一つの五員環がつながったステロイド骨格をもっている。A環の3位の位置に水酸基があり、この部分だけが親水性を示す。一見、複雑な構造に見えるが、六員環はイス型配置で固定されていて、分子全体としては平面的に伸びた形をしている。コレステロールは動物のもつステロール脂質であるが、酵母などの真菌類ではエルゴステロールが存在する。植物類ではβーシトステロールなど、数種類の構造の類似したステロール脂質が構成成分となっていて、植物ステロールと総称される。コレステロールには、細胞膜の構成成分となるほか、胆汁酸、ビタミンD、ステロイドホルモンの前駆体としての役割がある。

  • 脂肪とリン脂肪の構造の違いはどのようなものか。

アミノ酸とタンパク質の構造と役割

  • アミノ酸の一般式はどのようなものか。
アミノ酸の一般式は不斉炭素である炭素原子(α炭素原子)に、アミノ基、カルボキシル基、水素原子、R基(側鎖)が結合しており、各アミノ酸に固有の性質はこのR基による。

  • BCAAとは何か、その代表的なものの例とは。
BCAAとはBranched Chain Amino Acid:分枝鎖アミノ酸のことである。
側鎖に分枝アルキル鎖をもつアミノ酸。タンパク質中に見いだされるアミノ酸としては、バリン、ロイシン、イソロイシン。
これらは、ヒトにおいて栄養上の必須アミノ酸である。

  • AAAとは何か、その代表的なものの例とは。
AAAとはAromatic Amino Acid:芳香族アミノ酸である。
フェニルアラニン、チロシン、トリプトファンなどの芳香族を含むアミノ酸で、タンパク質中ではβ構造部分に存在することが多い。

  • 含硫アミノ酸の例とは。
硫黄原子をもったアミノ酸の名称で、タウリン・システイン・シスチン・メチオニン・ホモシステインなどがこれに属す。

  • 制限アミノ酸の例とは。
タンパク質合成に必要なアミノ酸は20種類ある。植物と多くの微生物が、ほとんどすべてのアミノ酸を作り出すことができるのに対し、ヒトやほかの動物では、必要なものの約半分しか生合成することができない。したがって生合成できない残りのアミノ酸は食物として供給されなければならない。ヒロが生合成できないアミノ酸を必須アミノ酸という。逆に生合成できるアミノ酸を非必須アミノ酸という。
必須アミノ酸は、アルギニン・イソロイシン・スレオニン・トリプトファン・バリン・ヒスチジン・フェニルアラニン・メチオニン・ロイシン・リシンの10種。

  • タンパク質に組み込まれない装飾アミノ酸とは、その代表例とは。
装飾アミノ酸とは生体内において代謝中間体やポリペプチド鎖が合成された後で形成される生理活性物質として存在するアミノ酸誘導体のことである。たとえば尿素回路において重要な中間体である、オルニチンや、脳の神経伝達物質であるγ-アミノ酪酸(GABA)、甲状腺ホルモンであるチロキシン、副腎ホルモンの中間体である3,4-ジヒドロキシフェニルアラニン(DOPA)などがある。

  • タンパク質に組み込まれるアミノ酸の構造と、その鏡像異性体は。
20種類のアミノサンのうち、グリシンを除いた19種類のα炭素原子は四つの異なる官能基と結合しており、不斉炭素原子あるいはキラル炭素原子とよばれる。たとえば、アラニンはキラル分子で、キラル炭素原子に結合しているアミノ基がお互い鏡像体でD-体、L-体がある。天然型のアミノ酸はすべてL-体である。
興味あることはタンパク質の高次構造形成に重要な役割を果たしている右巻きらせん構造(αヘリックス)形成にはL-アミノ酸のみが関与している、このキラリティーは生理活性と重要な相関性があることが知られている。

  • アミノ酸2つからなる代表的な甘味料は何か。
アミノ酸二つからなる甘味料は人工甘味料アステルパームがある。アシステルパームはアスパラギン酸とフェニルアラニンからなるジペプチドのメチルエステル体である二つの構成アミノ酸がともに天然型のL型の場合のみ甘みを呈し、両アミノ酸または、片方のアミノ酸がD型の場合は苦味を呈する。

  • ペプチド結合とは。

  • タンパク質の形状による分類の代表例とは。
タンパク質はその形状により、球状タンパク質と繊維状タンパク質に分類されている。
球状タンパク質は一般に親水性で、多様な生物活性を有しほとんどすべての酵素などが含まれる。また、免疫グロブリン(防御タンパク質)や、ヘモグロビンやアルブミン(輸送タンパク質)などが代表的である。
反対に線維状タンパク質は水に不溶で、結合組織、骨、軟骨、皮膚などに存在する細胞外マトリックスの成分であるコラーゲン(構造タンパク質)、皮膚、毛髪、爪に存在するケラチン、血管や皮膚の伸縮自在な動きに重要な役割を示すエラスチン(構造タンパク質)などがある。

  • タンパク質の生理機能による分類とその説明。
名 称 特 徴 代表的タンパク質
酵素タンパク質 生体成分の合成・分解に携わる生化学反応における生体触媒として働く リボヌクレアーゼ、アルコール脱水素酵素、ヘキソキナーゼ
貯蔵タンパク質 生体機能維持に不可欠な栄養素などの貯蔵体 カゼイン、フェリチン、ミオグロビン
調節タンパク質 代謝調節、細胞増殖調節などに関与する インスリン、EGF、ペプチドホルモン
構造タンパク質 細胞骨格形成に重要な役割を果たしている コラーゲン、ケラチン
防御タンパク質 免疫反応など生体防御に関与している 免疫グロブリン、フィブリノーゲン、トロンビン
輸送タンパク質 血液中の酸素運搬、脂質運搬、イオン・分子の膜輸送などに関与している ヘモグロビン、リポタンパク質、トランスフェリン
運動タンパク質 細胞分裂・遊走運動など細胞の運動に関与している アクチン、チューブリン

  1. 酵素タンパク質:生命維持に必要なエネルギー産生や、生体成分の合成・分解に携わる生体化学反応において、生体触媒としてその反応を制御しているタンパク質である。
  2. 貯蔵タンパク質:生体機能維持に不可欠な栄養素などの貯蔵たいとしての貯蔵タンパク質で、哺乳動物の乳に存在するカゼインは有機窒素の貯蔵源、鉄の貯蔵源として肝臓、脾臓、骨髄や筋肉中にあるフェリチン、酵素貯蔵体と知られるミオグロビンなどがある。
  3. 調節タンパク質:ペプチドホルモンや増殖因子が標的細胞に発現しているそれぞれに特異的な受容体に結合することにより、その細胞機能を変化させたり種々の転写調節に携わるタンパク質などが含まれる。
  4. 構造タンパク質:細胞骨格形成に重要な役割をはたしているコラーゲンやケラチンなどがある。コラーゲンは結合組織、骨、軟骨、皮膚などに存在する細胞外マトリックスの成分で、形状は線維状で、代表的イノミさんであるヒドロキシプロリンを多く含む。ヒドロキシプロリンはポリペプチド合成完成後、ビタミンC存在かプロリンが翻訳後に酸化的な修飾を受けて生成する。ビタミンCが不足すると未熟なコラーゲンしか生合成できないので血管壁が脆くなる壊血病になる。
  5. 防御タンパク質:血液凝固を防ぐフィブリノーゲンやトロンビン、免疫反応に関与する免疫グロブリンなど生体防御に携わるタンパク質が含まれる。
  6. 輸送(運搬)タンパク質:肺から各組織に酸素を運搬するヘモグロビンや、肝臓や小腸から他の組織に脂質を運搬するLDLとHDLと呼ばれるリポタンパク質、鉄を運搬するトランスフェリンがある。
  7. 運動タンパク質:細胞分裂や細胞の遊走運動など細胞運動に関与するアクチン、チューブリンがある。

  • タンパク質の高次構造とは?
アミノ酸配列を表している一次構造、ポリペプチド鎖が折りたたまれるにつれて、隣接したアミノ酸のペプチド結合による局所的な構造である二次構造、ポリペプチド鎖がとる三次元的な立体構造である三次構造、および複数のポリペプチド鎖(またはサブユニット)からなる四次構造に分けられている。

  • タンパク質の一次構造の決定法にはどのようなものがあるか。
タンパク質のアミノ酸配列の決定法には、N-末端からのアミノ酸配列の決定法(エドマン分解法など)、C-末端からのアミノ酸配列の決定法がある(ヒドラジン分解法など)。現在では自動化されたプロテイン・シークエンサーを用いて微量のタンパク質のアミノ酸配列を容易かつ短時間で決定することができる。
エドマン分解法は、タンパク質にゲニルイソチオシアネートを反応させると、N-末端アミノ酸のアミノ基と反応しフェニルチオカルバミル誘導体が生成される。この誘導体を酸処理(トリフルオロ酢酸)すると、フェニルチオヒダントイン誘導体を遊離し、高速w期待クロマトグラフィー(HPLC)や、さらには自動化されたプロテインシークエンサーなどを用いて同定する。これを繰り返してタンパク質のアミノ酸配列を決定することができる。

  • タンパク質の二次構造はどのようなものか。それを安定化させているものは。
タンパク質は厚生しているアミノ酸配列の違いにより、それぞれ異なる固有の立体構造を持っている。アミノ酸側鎖はこの立体構造を決めるのに重要な役割を果たしている。立体構造を構成する原子間の水素結合によりタンパク質の二次構造の規則的な繰り返しを保っている。水素結合は、1本のペプチド鎖のカルボニル酸素と他の鎖の水素原子を結合させる。二次構造にはおもなものにα-ヘリックスとβ構造がある。
αーヘリックスは一回転あたり3.6アミノ酸残基が存在し、ペプチド結合のカルボニル酸素原子は4残基離れたペプチド結合のアミド水素と水素結合して構造を安定化させている。らせんは右巻きでアミノ酸側鎖(R基)はヘリックスの外側に突き出ている。球状タンパク質の表面に存在する多くのα-ヘリックスは疎水性部分を内部に、親水性部分を外側に向けて存在する。プロリン(環状構造が回転を妨げるため)、グルタミン酸やアスパラギン酸(側鎖が電荷をもつアミノ酸)や、かさばったR基をもつトリプトファンなどはα-ヘリックス構造をとりにくい。
β構造にはβストランドと呼ばれるほぼ完全にポリペプチド鎖が伸びた構造と、複数のβストランドがシート状になった波状攻撃がある。隣り合うペプチド鎖が同方向の場合を平行βシート、逆方向の場合を逆平行βシートとよんでいる。いずれの場合も、隣接するポリペプチド鎖骨格のN-H基とカルボニル基とのあいだで形成される水素結合によって安定化されている。
これらの来ず王のほかに、繰り返しのないランダムコイルとよばれる構造が存在し、α‐ヘリックスやβ構造間をつなぐループやターンを構成している。

  • タンパク質の三次構造はどのようなものか。それを安定化させているものは。
三次構造とは、球状タンパク質が生物活性のある構造に折りたたまれるときにとる特徴的なコンホメーションをさしている。三次構造特徴として、次の三つがある。一次構造では互いに離れているアミノ酸残基が近接するように、ポリペプチド鎖が折りたたまれる構造である。ポリペプチド鎖が折りたたまれることにより、タンパク質はコンパクトになり、この結果水分子が大きい球状タンパク質(アミノ酸残基で200以上)では、しばしばドメインと呼ばれる特有の機能(たとえば鉄や小さな分子の結合)を有した構造的に独立したセグメントからなる。
このような三次構造の安定化には、水素結合、疎水結合、イオン結合などの非共有結合性の相互作用と、ジスルフィド結合などの共有結合性の相互作用が寄与している。

  • タンパク質の四次構造はどのようなものか。それを安定化させているものは。
比較的大きな分子量をもつタンパク質は、サブユニットとよばれるいくつかのポリペプチド鎖から構成されている。これらのサブユニットが寄り集まった立体的な配置を四次構造と呼んでいる。2つ集まったものをダイマー、4つ集まったものをテトラマーよよび、一般的に複数個のことが多い。また異なるタンパク質が2つ集まったものをヘテロダイマー、同じもの2つの場合にはホモダイマーという。

  • 四次構造をもつタンパク質の例は。

  • 分子シャペロンとは、その役割は何か。
分子シャペロンは熱ショックタンパク質とよばれ、熱ショックをはじめ種々のストレスがかかったとき一時的に急激に合成誘導されるタンパク質である。これらの機能は、細胞タンパク質を変性・凝集から防御・修復する役目を担っている。しかし、ストレスタンパク質は非ストレス時においても構造的に存在し、細胞タンパク質の生合成、折りたたみ、機能する場への輸送、タンパク質の活性制御、タンパク質の分解などの過程に必須の因子として働いていることが明らかになってきている。
折りたたみの初期にタンパク質に結合して安定化させる代表的分子シャペロンの一つにhsp70ファミリーがあり、折りたたまれていないタンパク質の疎水性部分に結合し、それらのタンパク質の凝集を防ぐとともに、ATP加水分解を伴ってタンパク質の折りたたみや膜透過を促進する中心的役割を演じている。

酵素について

  • 酵素触媒と化学触媒の違いはなにか。
生命維持のために生体内で行われる代謝は様々な化学反応から成り立っている。これらの反応は、基本的に試験管内で行われる化学反応と同じであるが、生体内で行われる化学反応は発熱を伴う急激な反応ではない。これは酵素が生体内触媒としてこれらの化学反応を穏やかにかつ効率的に進行させるための役割を担っているからである。

  • 酵素の命名法はどのようになっているか。
酵素の名称は、国際生化学・分子生物学連合によって定められている。酵素は触媒する反応の種類に基づいて6群に分類されており、酵素番号と系統名と呼ばれる2つの部分からなる名称によって特定される。
Ⅰ:酸化還元酵素(オキシドレグクターゼ)
生体内物資tるの酸化還元を触媒する酵素。
酸化還元の様式、性質、水素電子の供与体や受容体の種類などにより、脱水素酵素(デヒドロゲナーゼ)、還元酵素(レダクターゼ)、酸化酵素(オキシダーゼ)、酸素添加酵素(オキシゲナーゼ)、水酸化酵素(ヒドロキシラーゼ)、過酸化酵素(ペルオキシダーゼ)に分類される。

Ⅱ:転移酵素(トランスフェラーゼ)
水以外の一つの化合物に、他の化合物(受容体)に、ほかの化合物(供与体)の官能基を転移させる酵素を総称する。転移する基によってC1基(メチル基、ホルミル基、カルボキシル基、カルバモイル基など)を転移するもの、アルデヒド基またはケトン基を転移するもの、アシル基を転移するもの、グリコシル基を転移するもの、メチル基以外のアルキル基、アリール基を転移するもの、アミノ基などの窒素を含む基を転移するもの、リンを含む基を転移するもの、硫黄を含む基を転移するものなどに細分される。受容体が水の場合は加水分解反応なのでⅢ群となる。

Ⅲ:加水分解酵素(ヒドロラーゼ)
反応形式がA-B+水→A-OH+B-Hで表わされる加水分解反応を触媒する酵素を総称する。逆反応である脱水縮合は反応条件によって行われることもあるが、ほかの経路によって行われる場合が多い。消化酵素の多くはこれに属する。

Ⅳ:除去付加酵素(リアーゼ)
物質から加水分解や酸化によらずC-C結合、C-O結合、C-N結合などを脱離させて、二重結合を形成する反応を触媒する酵素である。反応は可逆的で。逆反応では二重結合への付加反応となる。これに分類されるシンターゼは、日本語訳では合成酵素であるが6群に分類されるシンテターゼとはATPの開裂と共役するか否かで異なるので注意を要する。

Ⅴ:異性化酵素(イソメラーゼ)
異性体間の変換を触媒する酵素を総称する。異性化反応の種類により、光学異性体を触媒するもの(ラセマーゼ、エピメラーゼ)、シス-トランス光学異性体間の変換を触媒するもの(シス-トランスイソメラーゼ)、分子内酸化還元とみなされる反応を触媒するもの(糖イソメラーゼ、トートイソメラーゼ、Δ-イソメラーゼ)、分子内基転位を触媒するもの(ムターゼ)、閉環反応を触媒するもの(シクロイソメラーゼ)に細分される。

Ⅵ:合成酵素(リガーゼ)
ATPなどのリン酸結合の開裂に共役して、二つの分子を結合させる反応を触媒する酵素を総称する。リガーゼについて、1984年の命名法ではシンテターゼあるいはシンターゼとよぶことを推奨している。

  • なぜ酵素反応の特異性を示すか。
活性部位は酵素全体の領域からみると比較的狭い領域であり、いくつかのアミノ酸残基で構成される立体的な構造である。活性部位の構造の詳細は、多くの酵素についてX線結晶解析を行うことにより構造上の共通点があることがわかってきた。基本的に活性部位は酵素分子表面に存在するくぼみまたは割れ目である。これらの部位は疎水性を形成しており、基質と結合しやすい構造になっている。
活性部位には、酵素によってそれぞれ基質の構造と特異的に結合する構造を持つ部分がある。これによって酵素は、それに特異的な基質とのみ結合することができる仕組みになっている。これを酵素の基質特異性という。

  • 酵素の反応速度について、その特徴は何か。

  • 酵素反応の飽和曲線について。

  • Lineweaver-Burkのプロットとはどのようなものか。
ミカエリス・メンテンの式を変形して、KmやVmaxを作図上で求められるようにしたもの。
1/ν=Km/Vmax・1/[S]+1/Vmax
1/νを縦軸に、1/[S]を横軸にとると直線式が得られ、その1/[S]軸との切片が、-1/Kmであり、1/ν軸との切片が1/Vmaxである。

  • Km値とVmaxの求め方の実際は。
上記Lineweaver-Burkのプロットのように、反応速度νの逆数をy軸とし基質濃度[S]の逆数をx軸として傾きをKm/Vmaxとしたとき、y=ax+bのような一次関数となる。基質濃度を無限大に想定したとき、1/νは1/Vmaxに近似する。また、x切片を想定すると-1/Kmとなり、これらの値からKmおよびVmaxを正確に計算することができる。

  • 酵素にはどのような種類があるか。

  • 酵素反応の阻害(1)不可逆的阻害の特徴は何か。
阻害剤が酵素に永続的に結合することで、反応が阻害される場合をいう。阻害剤は酵素タンパク質のアミノ酸残基に共有結合などで結びつき、活性部位をふさいでしまうので、基質が結合できない状態となる。阻害剤の構造と阻害効果の関係を解析することにより、酵素の活性部位の構造などを知る重要な手がかりを得ることができる。
遊離のチオール基を活性部位にもつ酵素であるグリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼは、ヨード酢酸などのアルキル化剤によりアルキル化されて活性を失う。また抗生物質であるペニシリンは、細菌の細胞壁の架橋構造をつくるグリコペプチドトランスペプチダーゼの活性部位に存在するセリン残基に共有結合を形成することにより、この酵素活性を阻害する。

  • 酵素反応の阻害(2)可逆的阻害の特徴は何か。
酵素の活性中心に阻害剤が可逆的に結合して反応を阻害する場合をいう。これには三つのタイプがある。
第一は拮抗(競合)阻害で、阻害剤が基質と構造的な類似性を持つ場合が多く、阻害剤と基質が酵素との結合に競合する。阻害剤は遊離酵素[E]のみに結合する。阻害剤量を一定にした場合に、阻害の程度は基質との量的比率によって決まり、基質濃度を高くすればES complexの形成する確率がたかくなるので、阻害はおこりにくくなり、ついには阻害剤が存在しないときの酵素反応速度に回復する。つまり競合阻害剤は酵素の最大反応速度には影響を与えないが、基質との親和性を小さくする。
第二に、非拮抗(非競合)阻害である。阻害剤は遊離酵素とES complexno療法に可逆的に結合して阻害作用を示す。基質濃度の上昇に伴い反応速度は上昇するが、阻害剤の存在しないときの反応速度までは回復しない。基質が一つの場合ではほとんど起こらないが、基質が二つ以上の酵素反応では広く認められる。この場合、阻害剤と結合していない酵素分子が全く影響を受けないので、基質との親和性には影響を受けない結果となる。
第三は、不拮抗(不競合)阻害である。阻害剤はES complexのみに可逆的に結合して阻害作用を示す。阻害剤は活性中心以外の部位に結合し、活性中心が変化することによって反応がおさえられる、この場合、最大反応速度および親和性ともに小さくなる。すなわち、Lineweaver-Burkのプロットでの傾きのKm/Vmaxは変化せず、阻害剤のない時と同じように平行になる。

  • アロステリック酵素とは何か。その特徴を例を用いて説明できるか。
普通の酵素では酵素反応を10%から75%に上げるときには、基質濃度を27倍くらいまで高めなければならない。アロステリック酵素ではたったの2~3倍の増減で、抑制、活性化ができる。
例えば、酵素濃度とヘモグロビンの関係で、末梢で酸素濃度が低いとき、ヘモグロビンの働きを放棄して酸素を放ち、末梢組織に酸素を送る。逆に肺ではたった2.3倍多くなっただけで酸素を結合する。

  • アイソザイムとは何か。
同一個体中にあり、化学的に異なるタンパク質で構成されているが、同じ化学反応を触媒する酵素同士をアイソザイム(イソ酵素)と呼ぶ。たとえばNADH+Hの存在下でピルビン酸を乳糖に可逆的に変化する酵素である乳糖デヒドロゲナーゼは4つののタンパク質サブユニットにより構成される四量体である。これらのサブユニットは、ことなる遺伝子に由来する心臓型(H型)と骨格筋型(M型)の2種類のサブユニットにより構成されるので、それらの組み合わせによりM4、H1M3、H2M2、H3M1、H4の5種類のアイソザイムが存在する。
組織により各サブユニットの生成量が異なるため、アイソザイムの存在量が異なり、心臓ではH4型が、骨格筋ではM4型がそれぞれ大部分を占める。各々の酵素は、基質に対する反応性、阻害剤に対する反応性がそれぞれ異なるため、それぞれが分布する組織に応じた反応を行っていると考えられている。このような組織分布の特異性を利用して、疾病時の炎症などによる組織細胞の壊死のために血清中に漏出したLDHのアイソザイムパターンを電気泳動法で分析することにより、それらの組織の疾病の判断に応用することがある。

  • ホロ酵素とアポ酵素および補欠分子族の関係は。
[ホロ酵素=アポ酵素+補欠分子族]
ほとんどの酵素は活性発現にある種の低分子の補欠分子族が必要である。補欠分子族には、金属イオン、ヘム、補酵素などがある。補酵素はビタミン(B群)である。

  • 補酵素について。
比較的低分子の有機化合物で、酵素と可逆的に結合して、その反応に不可欠な働きをするものを補酵素という。ビタミン類はこれら補酵素の構造の主要部分を構成する。




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最終更新:2007年07月11日 05:21
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