生化学Ⅰ(2)

糖の代謝について(異化作用の抑制から同化作用へ)

  • 解糖系はどのような代謝か。その意義と特徴は。
解糖系は酸素を使用するような参加が起こらなくても、嫌気的条件下で進行が可能である。
好気性細胞において解糖系では酸素消費による糖質の完全な分解経路の最初の段階に相当する。すなわち、炭素6つのグルコースが2分子の3炭素酸のピルビン酸まで嫌気的に分解される。さらにピルビン酸は、ミトコンドリアに運ばれて好気的にクエン酸回路で分解されて、二酸化炭素(CO2)と水に酸化される。
細胞にATP保有量が少なければ、グルコースがまず解糖系により分解されATPを得ようとするが、それだけでなく、解糖系はほかの経路のためのエネルギーと代謝中間体の両方を産生する中心的な役割を果たしている。
エネルギー産生がすぐに必要でない場合にはグルコースは肝臓と筋肉にグリコーゲンとして貯蔵される。一部は腎臓と脳細胞にも貯蔵される。

  • クエン酸回路はどのような代謝か。その意義と特徴は。
解糖系の最終産物であるピルビン酸は、酸素が十分に存在する場合にはミトコンドリアに入ってマトリックスの複合酵素によって酸化的脱炭酸反応を受け、アセチルCoAとなる。ついでアセチルCoAはクエン酸回路において代謝される。クエン酸回路はほとんどの細胞において炭素化合物を酸化する全行程のほぼ3分の2を担う。おもな最終生産物はCO2とNADHのかたちで蓄えられる高エネルギー電子で、CO2は廃棄物といて排出される。エネルギー産生においてはミトコンドリアに存在する電子伝達系と共役しており、グルコース1モルを解糖系、クエン酸回路、電子伝達系という一連の経路で完全に酸化すると、最大32モルのATPを生じることになる。
タンパク質由来のアミノ酸や脂質由来の脂肪酸およびグリセロールの代謝物も、最終的にはアセチルCoAになり、この回路で代謝される。クエン酸回路はこれら栄養源の共通の酸化の場であると同時に、種々の生体内成分の生合成経路に原料を供給する役割をもっている。たとえばクエン酸回路ではアミノ酸の骨格となる有機酸が合成される。2-オキソグルタル酸はグルタミン酸に、オキサロ酢酸はアスパラギン酸の生成に使われる。

  • 電子伝達系(酸化的リン酸化)はどのような代謝か。その役割は何か。
電子伝達系はミトコンドリア内膜に存在し、呼吸鎖とも呼ばれる。酸化的リン酸化に関与する5種類のタンパク質複合体が、ミトコンドリア内膜から得られている。そのうち複合体Ⅰ(NADH-補酵素Qオキシドレダクターゼ)、複合体Ⅱ(コハク酸-補酵素Qオキシドレダクターゼ)、複合体Ⅲ(補酵素-QシトクロムCオキシドレダクターゼ)および複合体Ⅳ(シトクロムcオキシダーゼ)は電子伝達系を構成している。ⅤはATPシンターゼであり、ATP合成に直接かかわる。

  • グリセロリン酸シャトルとは何か。その意義は。盛んな臓器は。
脳や筋肉にはグリセロリン酸シャトルが存在する。このシャトルでは細胞質に存在するグリセロール3-リン酸デヒドロゲナーゼ(補酵素:NADH)が細胞質のNADHを用いて、ジヒドロキシアセトンリン酸を還元してグリセロール3-リン酸を生成する。グリセロール3-リン酸は、ミトコンドリア内膜のグリセロール3-リン酸デヒドロゲナーゼ(補酵素:FAD)によってジヒドロキシアセトンリン酸に再酸化される。その際にFADがFADH2によって還元される。
この反応によって結果的に細胞質1モルのNADHは、ミトコンドリア内1モルのFADH2に置き換えられたことになる。したがって、このシャトルを経由した場合には細胞質で生成した2モルのNADHから3モルのATPができるので、1モルのグルコースからは総計30モルのATPが生成される。

  • リンゴ酸アスパラギン酸シャトルとは何か、その意義は。盛んな臓器は。
肝臓、腎臓や心臓にはリンゴ酸-アスパラギン酸シャトルが存在する。このシャトルでは、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ(補酵素:NADH)が細胞質のNADHを用いて、オキサロ酢酸をリンゴ酸に還元する。リンゴ酸はミトコンドリア内膜のオキソグルタル酸との交換輸送体を通ってミトコンドリアのマトリックスに入る。マトリックスではリンゴ酸デヒドロゲナーゼ(補酵素:NADH)により、リンゴ酸はオキサロ酢酸に再酸化される。その際にミトコンドリアのNAD+がNADHに還元される。オキサロ酢酸はミトコンドリア内膜を通過できないので、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼによるアミノ基転移反応によってアスパラギン酸に変えられる。そののちグルタミン酸との交換輸送体によりミトコンドリア内膜を通過して、細胞質でオキサロ酢酸に変化し再びグルタミン酸との交換輸送体によりミトコンドリア内膜を通過して、細胞質でオキサロ酢酸に変化し再びシャトルに使用される。
したがってこのシャトルでは細胞質のNADHとして還元力がミトコンドリアのマトリックスにそのまま移行したことになり、細胞質で生成された2モルのNADHから5モルのATPができるので、1モルのグルコースから総計32モルのATPが生成されることになる。

  • 基質レベルのリン酸化とは何か、具体的な例は。
解糖系の7番目の反応。1,3-ビスホスホグリセリン酸はC1に高いポテンシャルをもつので、ホスホグリセリン酸キナーゼの反応によってC1位のリン酸基をADPに転移してATPを形成し、1,3ビスホスホグリセリン酸は3-ホスホグリセリン酸になる。この段階で、解糖系の経過中に1分子のグルコースから2分子のトルオースリン酸が生じるので、1モルのグルコースあたり2モルのATPが生じる。
この反応が基質レベルのリン酸化である。細胞内のATP合成の大部分は、ミトコンドリア中で酸素を消費しながらできるので、酸素を用いないでATPが生じる基質レベルのリン酸化は嫌気的条件下でのエネルギー獲得(ATP合成)として重要である。
基質レベルのリン酸化は10番目の反応でも起きる。ピルビン酸キナーゼの触媒する解糖系最後の反応では、もう一つの「基質レベルのリン酸化」行われ、ホスホエノールピルビン酸の高エネルギーリン酸基がADPに移され、ATPを生じる。1分子のグルコースについて2分子のホスホエノールピルビン酸が生じるので、この段階では2分子のATPと2分子のピルビン酸ができる。この反応は自由エネルギーが熱として失われる発エルゴン反応で、非平衡反応であり、生理的に不可逆的であるにも関わらず、酵素名はピルビン酸を基質名とする左向きの反応名として命名されている。

  • グルコースからのATP合成の総数は。

  • 解糖系成分の細胞内レベルはどのようになっているか。その意味は。

  • 解糖系とクエン酸回路の調節(どの部位で、どのように、調節しているか)
解糖系の調節はおもにホスホフルクトキナーゼの活性によって行われている。グルコースをCO2とH2Oに完全に酸化できる細胞では、酸素の存在下よりも非存在下において、グルコースを速く消費するということを発見した。このことは、酸素がグルコース消費を阻害しており、酸素による何らかの解糖系の阻害を意味している。この現象をパスツール効果という。
その後、細胞内の代謝中間体を測定すると、酸素存在下でフルクトース1,6-ビスリン酸以降のすべての中間体の濃度が減少し、その一方でそれ以前のすべての中間体が高濃度に蓄積していることが明らかにあり、ホスホフルクトキナーゼを通過する代謝流量が酸素で特異的に大きく減少し、この酵素によって解糖系の制御が行われている。
解糖反応の大部分は可逆的であるが、それらのうち、ヘキソキナーゼ・ホスホフルクトキナーゼ・ピルビン酸キナーゼの3種の酵素の反応は、顕著に発エルゴン反応であるので、生理的には不可逆的である。解糖系はこれらの酵素によってアロステリックな制御を受けておりアロステリックな因子のより、スイッチが入ったり切れたりする。

  • ペントースリン酸経路とその意義(その合目的性は?)
解糖系によるグルコースの代謝は、両性代謝経路といえる。これは解糖系が異化作用と同化作用の両面をもっている経路というものである。もし、細胞エネルギー(ATPとして)保有量が少なければグルコースは速やかに解糖系によってピルビン酸まで分解され、さらにクエン酸回路によって効率よくATP合成が行われる。エネルギー合成がすぐに必要でない場合、すなわち、細胞内が必要量のATPで満たされているときにはATPそのものがホスホフルクトキナーゼを阻害し、そこで蓄積したフルクトース6-リン酸は、グルコース6-リン酸にもどされ(可逆反応)、それがペントースリン酸経路に使われたり、肝臓や筋肉では、グリコーゲン合成に使用される。
ペントースリン酸経路は、グルコース6-リン酸から出発し、いろいろな代謝をしたのち、フルクトース6-リン酸となり、グルコース6-リン酸に戻る。
この経路の主な役割はNADPHの産生とリボース5-リン酸の生成である。
グルコース6-リン酸+2NADP+ →リボース5-リン酸+CO2+2NADPH+2H+
NADPHは還元的な生合成反応で使われるピリジンヌクレオチド補酵素としてはたらく、脂肪酸やステロイドの合成のためのエネルギーは、NADHよりももっぱらNADPHが使用される。ペントースリン酸経路はこれら合成する乳腺、肝臓、副腎、脂肪組織などで活発である。逆に筋肉や脳などのほかの組織ではペントースリン酸経路はグルコース消費全体のほんの一部を占めるにすぎない。
ペントースリン酸に関係するすべての酵素は解糖系と同じように細胞質に存在する。脂肪細胞合成の全過程や、コレステロール合成過程のNADPHを必要とする代謝も細胞質に存在し、ここに生じたNADPHの還元力が使われる。

  • ウロン酸経路とその意義は?(その合目的性は?)
グルコース6-リン酸は解糖系に使用されるが、ATPというエネルギーが満たされていれば、グルコース6-リン酸はホスホグルコムターゼによって、グルコース1-リン酸になる。グルコース1-リン酸はさらにUTP(ウリジントリリン酸)からUDP(ウリジンジリン酸)を結合させるUDPグルコースピロホスホリラーゼによって、UDPグルコースとなり、ウロン酸経路や肝臓や筋肉ではグリコーゲン合成に使用される。
UDPグルコースはさらにUDPグルコースデヒドロゲナーゼによって、UDPグルクロン酸となる。UDPグルクロン酸は、UDPグルクロン酸転移酵素によって、ある種の脂溶性薬物をグルクロン酸抱合することで水溶性化し、体外へ排出しやすくしている。そのほかにビリルビン(関節ビリルビン)をグルクロン酸抱合し、抱合型ビリルビン(直接ビリルビン)に変え、胆汁排泄している。ウロン酸経路は一種の解毒機構といえる。
UDPグルクロン酸はアスコルビン酸合成にも使用されるが、この代謝経路は霊長類やモルモットにはない。したがってアスコルビン酸は、ヒトにとってビタミンである。

  • グリコーゲンの合成とその調節(どこで起こっている反応か?)
グリコーゲンの合成と分解では別々の酵素が必要であり、おもに肝臓と筋肉のみで行われている。一部では腎臓を脳細胞でも行われている。
脊椎動物では食物として取り込んだグルコースの約2/3は、グリコーゲンに変わるといわれている。筋肉中のグリコーゲンは、食事と食事のあいだの筋肉運動にもっぱら使用され、肝臓中のグリコーゲンは食間の血中のグルコース維持のために使用される。
筋肉では全重量の0.7%程度がグリコーゲンであり、体重約60kgの人では、全身筋肉量が約30kgなので、210gの貯蔵量である。肝臓では4.0%程度がグリコーゲンであり、肝臓重量を約1.5kgだとすると60g程度の貯蔵量である。したがって1分子のグルコースが4kcalをつくりだぜるとすると、貯蔵エネルギーは約1000kcal程度であり、12~18時間絶食すると全身のグリコーゲンは枯渇する。血中では、厳密にグルコース濃度で3~10mM(54~180mg/dL)にコントロールされており、2.5mM以下になると脳への取り込みが影響を受け、危険な状態になる。逆に10mM以上になると、腎臓から尿中に排泄される。血糖値の基準値は6mM以下(110mg/dL)であり、空腹時血糖値で7mM以上(126mM/dL)では糖尿病と診断される。
ウロン酸経路でも示したが、グルコース6-リン酸はホスホグルコムターゼによってグルコース1-リン酸となり、さらにUDPグルコースがグリコーゲン合成に使用される。UDPグルコースはグリコーゲン合成酵素によってグルコースの1,4グリコシド結合を形成し、直鎖のグリコーゲンができる。この反応開始には、前から存在するグリコーゲン分子、あるいは比較的分子量の小さい"グリコーゲン・プライマー"が必要である。
グルコース残基のグリコーゲン・プリマーへの付加反応は分子外側の非還元末端で起こる。グリコーゲン分子は、順次1,4結合の鎖の延長として延びていく。細胞内のcAMP濃度はグリコーゲン合成を阻害し、グリコーゲン分解を促進する。ホルモンのエピネフリン(筋肉)とグルカゴン(肝臓)によってアデニル・シクラーゼが活性化されることによってcAMP濃度が上昇する。
この鎖の長さが6~10個まで伸びると、グリコーゲン分枝酵素によって1,4鎖の一部分を隣り合う鎖に1,6結合として転移させ、その結果グリコーゲン分子に枝分かれを生じさせる。

  • グリコーゲンの分解はどのようなプロセスで進むか。
グリコーゲンの分解と合成は、インスリン、グルカゴンおよびエピネフリンが関係する複雑な機構によって制御されいている。
空腹時や、戦うなどの緊急状況時では、エピネフリンやグルカゴンが分泌され、グリコーゲンを分解して燃料として供給する。エピネフリンやグルカゴンは同時に脂肪細胞をも刺激し、ホルモン活性リパーゼを活性化し、蓄積脂肪を分解して燃料として供給している。筋肉細胞ではエピネフリンによって刺激され、グリコーゲンを分解し、主に筋肉の収縮燃料に使用される。
これに対し、肝臓細胞ではグルカゴンによって刺激され、グリコーゲンを分解し、そのほとんどがグルコースに変えて肝細胞を出て、ほかの組織、特に脳細胞や赤血球細胞で使用される。これらの組織はグルコースからしかエネルギーを得られないからである。
グリコーゲンの分解はホスホリラーゼの作用で開始される。この酵素はグリコーゲンのα1,4-結合を特異的に加リン酸分解し、グルコース1-リン酸を生じる。この酵素は活性型をホスホリラーゼa、不活性型をホスホリラーゼbといい、細胞内のcAMPによって活性型に変えられる。[分解の制御の図は教科書P88]調節はカスケード様式になっており、最初の調節シグナルの強さが一連の酵素活性を通じて何倍にも増幅される。
エピネフリンが筋肉細胞の受容体に結合したり、グルカゴンが肝細胞の受容体に結合したりすると、細胞膜に存在するアデニルシクラーゼが活性化し、ATPをcAMPにの合成を亢進する。ホルモン受容体によるアデニルシクラーゼの活性化はGタンパク質を介して行われる。cAMPは、不活性型プロテインキナーゼAを活性型に変える。次いでATPのエネルギーを介してホスホリラーゼbキナーゼをリン酸化することによって活性型に変える。ホスホリラーゼbキナーゼは不活性型のグリコーゲンホスホリラーゼbを、これもATPを介してリン酸化し活性型のホスホリラーゼaに変える。ホスホリラーゼaはグリコーゲンを末端から加リン酸分解し、グルコース1-リン酸にする。貯蔵グリコーゲンは多数α1,6-結合して枝分かれして存在する、直鎖の部分が適当に加リン酸分解で除かれると、分枝鎖の部分が転移酵素によって直鎖の部分に転移し、α1,4-結合の直鎖になる。これもさらにホスホリラーゼaの作用を受け、最終的に残ったα1,6-結合も脱分枝酵素で分枝が除かれると、さらにホスホリラーゼで分解される。
こうしてできた大量のグルコース1-リン酸は、肝臓でも筋肉でも可逆的酵素であるホスホグルコムターゼによって、グルコース6-リン酸に変えられる。肝臓にはグルコース6-ホスファターゼという酵素が存在し(筋肉にはない)、グルコース6-リン酸をグルコースに変え、さらに血液中に放出する。一方、筋肉ではこの酵素がないので、グルコースの他の細胞への供給は行われず、もっぱら解糖系、クエン酸回路を通してATPを合成し、筋肉運動に使用される。

脂質の代謝について

  • 脂肪の消化・吸収はどのように行われるか。
哺乳動物にとって食事中の大部分の脂質はトリアシルグリセロールである。それに少量のリン脂質とコレステロールが含まれる。
脂質の消化は小腸上部からはじまる。十二指腸にはファーター乳頭部とよばれる部分があり、総胆管と膵管が開口している。そこから肝臓でつくられた胆汁酸(タウロコール酸やグリココール酸など)を含む胆汁と、膵臓でつくられた膵リパーゼを含む膵液が分泌される。そこでは、懸濁した脂肪滴が、界面活性作用を有する胆汁酸に包み込まれ、小腸の空腸に送られる。この状態で初めて膵リパーゼの酵素活性が発現できる。トリアシルグリセロールは膵リパーゼでC1とC3位の脂肪酸が加水分解され、それぞれの脂肪酸と2モノアシルグリセロールが生ずる。
食事に由来する脂肪酸は、主として長鎖脂肪酸(C16~C18)である。消化されて生じた脂肪酸と2-モノアシルグリセロールは、胆汁酸ミセルの形のまま小腸の回腸壁にある絨毛細胞から吸収される。取りこまれたミセルは破壊され、脂肪酸と2-モノアシルグリセロールおよび胆汁酸が遊離する。胆汁酸は腸肝循環で再利用される。脂肪酸は絨毛細胞内でアシルCoAとなり、これが2-モノアシルグリセロールなどと結合して、再びトリアシルグリセロールになる、ここで合成されたトリアシルグリセロールと食事中に含まれていたものとが同じかどうかはわからない。さらに合成経路の詳細も不明である、おそらく肝臓などで行われるトリアシルグリセロール合成経路と似ているだろうと思われる。
食事中のコレステロールは、大部分は遊離型であり、一部は脂肪酸とのエステル型である。コレステロールエステルはトリアシルグリセロールと同じように、膵コレステロールエステラーゼの作用で空腸で加水分解され、遊離コレステロールと脂肪酸となり、これも胆汁酸ミセルのまま小腸絨毛細胞で吸収される。絨毛細胞でアシルCoAと結合して再びコレステロールエステルになる。
小腸で吸収され、再合成されたトリアシルグリセロール、コレステロールエステル(一部遊離コレステロール)は、水に不溶のため特定タンパク質に包み込まれた形で身体中に運ばれる。この特定のタンパク質をアポリポタンパク質といい、それと脂肪が結合した形をリポタンパク質という。肝臓で合成された脂質成分も血中を介して運ばれる時はリポタンパクの形をとる。
血液中のリポタンパク質は大きく分けて5種類になる。大きい方から①カイロミクロン、②VLDL(超低密度リポタンパク質)、③LDL(低密度リポタンパク質)、④HDL(高密度リポタンパク質)、⑤遊離脂肪酸ーアルブミン複合体である。

  • 脂肪酸のミトコンドリアへの輸送はどのようになっているか。
細胞内に取り込まれた脂肪酸は、ミトコンドリアでの分解経路に入る前に、細胞質で活性化される。活性化は脂肪酸に補酵素Aを付加する反応である。アシルCoA合成酵素の触媒でATPのエネルギーを用いて行われる。反応が完結すると、アシルCoAとAMPおよびピロアシルCoA形成のために使用されるのと同じである。
生じたアシルCoAがそのままミトコンドリア内膜を通過することはできない。特に長鎖脂肪酸のアシルCoAはカルニチンと結合して初めて内膜を通過しうる。カルニチンアシルトランスフェラーゼⅠの酵素反応で、アシルCoAはアシルカルニチンとなる。アシルカルニチンはミトコンドリア内膜に存在するトランスロカーゼの働きで内膜を通過してミトコンドリアのマトリックスに運ばれる。これは一方を汲み入れて、他方を汲み出すポンプになっている。汲み出すもう一方のものは、遊離のカルニチンである。マトリックスに存在するカルニチンアシルトランスフェラーゼⅡの作用で再びアシルCoAに戻される。

  • 脂肪酸のβ酸化反応とはどのような過程で行われるか。
脂肪酸が活性化されたアシルCoA がβ酸化系の反応を受ける最初の段階で社、アシルCoAデヒドロゲナーゼが触媒する。アシル基のαとβ炭素のあいだに二重結合を形成させ。エイノルCoAができる。この二重結合が形成されると、アシルCoAからの電子がアシルCoAデヒドロゲナーゼのFAD補欠分子へ移動し、還元型のFADH2を形成する。このFADH2はミトコンドリア内膜の電子伝達系で酸化されるとき、1.5分子のATPを生ずる。
エノシルCoAはつぎにエノイルCoAヒドラターゼにより水分子が付加され、βーヒドロキシアシルCoAになる。これは次にβ-ヒドロキシアシルCoAデヒドロゲナーゼで、アシル基のα位とβ位のあいだで脱水反応が起こり、β-ケトアシルCoAになる。この反応には補酵素NAD+が関与しており、還元されてNADH++H+になる。このNAD++H+も電子伝達系で酸化され、結果的に2.5分子のATPを生ずる。最後にβ-ケトアシルCoAは、CoA求核性スルフヒドリル基がチオラーゼが触媒するα炭素とβ炭素の開裂反応によって1分子のアセチルCoAと、炭素が2個だけ少なくなったアシルCoAになる。 


  • 脂肪酸合成のためのアセチルCoAの供給はどのように行われるか。

  • マロニルCoAの合成はどこで、どのように行われるか。

  • 脂肪酸の合成経路はどこで、どのように行われるか。

  • ジアシルグリセロール合成はどこで、どのように行われるか。

  • トリアシルグリセロールとリン脂質(ホスファチジルコリン)の合成とその調節機構は?

  • コレステロールの合成経路(アセチルCoAはどのように供給されるか

  • コレステロールの合成とその調節機構は?

  • 血清リポタンパク質VLDLとは?何故トリアシルグリセロールが多くなるか。

  • 膵リパーゼ、リポタンパク質リパーゼ、ホルモン感受性リパーゼの意義は?

  • LDLとHDLの生成と意義は?

  • 脂肪酸代謝における不飽和化反応と鎖長伸長反応はどのように行われるか。

  • 多価不飽和脂肪酸の遊離と代謝(アラキドン酸代謝とプロスタグランジン生成)

  • ホルモン感受性リパーゼの働きは?

  • ケトン体とは?空腹時になぜ体内に蓄積するのか。その利点と欠点は?

  • HMG-CoAの合成部位による最終生成物の相違は?

窒素化合物の代謝1(核塩基の合成について)

  • PRPPの生成とその原料の供給は?

  • プリン塩基の元素の由来は?

  • プリン塩基の合成経路の特徴は?

  • プリン塩基全体の合成調節はどのようになっているか?

  • IMPからAMP、GMPへの返還反応とその調節。

  • カルバモイルリン酸合成酵素の特徴は?(生成部位と最終産生物の相違)

  • ピリミジン塩基の合成経路

  • ピリミジン塩基の合成調節(UMP,CMP,TMPの合成調節)

窒素化合物の代謝2(その他の化合物の合成)

  • ポルフィリン環とは何か?(合成経路とその調節)

  • ヘムタンパク質の3~4個の具体例とその物性における特徴はなにか?

窒素化合物の代謝3(アミノ酸の代謝)

  • 必須アミノ酸と非必須アミノ酸の種類(生物学的に必須にした理由は)

  • グルタミン酸、グルタミンの合成経路

  • アラニン、アスパラギン酸の合成経路とALT(GPT)とAST(GOT)の意義は?

  • セリン、グリシン、プロリンの合成経路は?

  • ヒスチジン、トリプトファン、チロシン、グルタミン酸からの活性アミンの合成

  • 活性アミンの生理作用は?

  • フェニルケトン症とは?(フェニルケトン尿症)

  • 飢餓時におけるタンパク質およびアミノ酸のエネルギー利用は?

  • ケトン体生成アミノ酸とグルコース生成アミノ酸について?

  • 植物のグリオキシル酸サイクルの意義と動物細胞の相違は?

  • 尿素回路(オルニチン回路)とはどのような代謝か?

オルガネラの生理

  • 各細胞顆粒の生理的意義

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2007年07月14日 18:50
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。