猫耳少女と召使いの物語エロパロ保管庫@WIKI

太陽と月と星16

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太陽と月と星がある 第十六話

 



 ある雨の晩、
 バケツをひっくり返したような、という表現がぴったりの豪雨を窓からぼんやりと眺めていると、全身ずぶ濡れになった御主人様(トカゲ男)が帰宅しました。
 タオルを持って玄関へ急ぐと、御主人様の肌に張り付いた服の中で蠢くものがひとつ。
 思わず御主人様の顔と蠢いている部分を交互に見ていると、鱗フェイスが非常に気まずそうな表情を浮かべているという事がわかりました。
 沈黙に耐え切れず、私は御主人様にタオルを渡し、代わりにぐっしょりと濡れた鞄を受け取ります。
 …うわ、なんか物凄い勢いで蠢いていますけど……。
「なんか、文句あるか」
低く威嚇するような声の御主人様。
「ありませんが…取り合えず、着替えられた方が宜しいかと」
 ……あ、なんか今、御主人様の懐からすごい形容し難い鳴き声がしました。
 
「ずるーいっ!!がっくん前だめだって言ったのに!」
「雨に濡れて震えていたんだから仕方ないだろうが!」
 二人が言い争う声がして、チェルがキッチンに駆け込んできました。
 手に抱えているのは…一つ目のトトロもどき……。
 色や細部が違いますが、春先にチェルが拾ってきたのとだいたい…同じような形態です。
「キヨカー!みて!がっくんずるいよね!!」
 幼女に力いっぱい抱き締められたトトロもどきが奇妙な声を発しています。
 喜んでいるのか苦しんでいるのか、微妙な所です。
 少し遅れて、御主人様が姿を現しました。
 美形なのにヘビっぽい何を考えているのかわからない胡乱な眼差しでチェルと怪生物と私を見つめます。
「雨に濡れて震えていたんですか」
 一瞬、御主人様の眉間に皺が寄りました。
 見れば、怪生物の毛皮がしっとりと濡れ、抱き締めるチェルの服もじんわりと湿っていくのが判ります。
「とりあえず、ちゃんと拭いてあげて下さいね」
 近くにあった手拭を渡すと、御主人様はじっとこちらを見て恐る恐るといった様子で受け取りました。
「怒ってないのか」
 何を言われたのか判らず首を傾げると、御主人様は……驚いた事にひどく後ろめたそうな表情です。
 ……雨が降るわけです。
  
 
 今日の晩御飯は、白い御飯にキノコのお味噌汁、いわし(らしきもの)の一夜干し、カボチャの煮つけ、お浸しと大変和食的です。
 ぎこちない手付きで箸を握り、微妙な表情でいわしをつつくサフ。
 半熟卵を御飯にかけて口の周りを黄色く染めるチェル。
 無表情で漬物をつつく御主人様…猫舌だから仕方ありません。
 ジャックさんは、献立を聞くと用事を思い出したそうなので今夜は不在です。
「ところで、とりあえずパンの耳を与えてみたんですが何でも食べますね、この子」
 試しに菜っ葉のきれっぱしも与えたら、食べたし。
 雑食なのか食欲旺盛なのかわかりませんが、飼うのが楽なのは間違いないようです。
 つついたら、高級タオルのような手触りでした。
 さらさわふわふわです。
 正直、嫌いではありません。
 触っていたら、御主人様に食事を催促されたのであまり触れませんでしたが……。
「ねぇじゃあ、この魚やっちゃだめ?これ骨多くて食べにくいよ」
 サフが脱力しきった声で降参したので、私はお皿ごと受け取り、身をほぐし白身を箸でつまみました。
「はい、あーん」
 残りをお皿ごと返し、ついでに魚を手付かずのまま放置している御主人様の方を見ました。
 一応、お箸ちゃんと使えるみたいなんですけどね。
「やりましょうか?」
「ん」
 魚の骨がいやで食べないなんて、人生を損しているとしか思えません。
 チェルのように頭から食べるくらいの気概は見せて欲しいものです。
 つらつらとそんなことを思いながら骨を外し、お皿を返すと何故か睨まれました。
「何か」
「差別か」
 意味がわからないのでお皿と御主人様を見比べ、ふと思いついて白身を箸で摘み
「あー……!」
 ばっくりと
 テーブルの下でうろついてた筈の怪生物が突然飛び上がり、なんとお魚どころか手まで食べられました。
 一瞬驚いたものの、しつけされていないであろう生物の前で御飯を見せびらかすのは問題があります。
 こちらのミスです。
 私は冷静に口から手を引き剥がし手を洗ってから、食事を続けようとしたのですが、何故か御主人様の機嫌が非常に悪くなっていました。
 ……謎です。

 
 お皿を洗っている私の足元をピョコピョコと跳び回る怪生物。
 どうやら魚の骨が気に入ったらしく、奇妙な鳴き声を上げています。
 そして、驚いた事に一通りお洗い終え手を拭く私に低音を発しながら体を摺り寄せてきました。
 異形に腰を引きつつ、なんとなく頭部の辺りを撫でると、目を閉じて一層体を寄せてきました。
 もふもふさらさわふわふわです。
 もう一度言います。
 もふもふのさらさらのふわふわです。
 本当に中に皮と肉があるんだろうかと疑うほどに柔らかな感触に驚愕しつつ、とりあえず撫でます。
 もしかしてトリートメントでもしているのだろうかと思うほどに柔らかで羨ましくなるくらい艶めいた体毛です。
 もふもふです。
 サフもモフモフですが、こちらの方が数段柔らかく、ふわふわなジャックさんより数倍トリートメントが効いています。
 さらさらでふわふわです……。
 もふもふ………
 
 
「おい」
 耳元で囁かれ、我に帰る私。
「いつまでやってるんだ」
 膝の上で寝そべっていた怪生物が突然声をかけてきた御主人様に驚いたのか、ジタバタと暴れます。
 まるで何かに怯えているようです。
 逃げないように抱き締めたのですが、一瞬大人しくなったかと思うと突然体を震わせ柔らかな体を捻って飛び出してしまいました。
 何故か開いていた窓から……雨のやんだ夜の闇の中へ。
「もふもふが……」
 愕然として呟く私に御主人様は咳払いをして、私の背を叩きました。
「別に、アレくらいどうって事はないだろう」
 全然どうって事あります。ありまくりです。
「自分で拾ってきたのに……見捨てるなんて……」
 私の言葉に眼をそらす御主人様。
 膝どうとか販促が難だとか意味不明の言葉を呟き、何故か尻尾を足に絡めてきました。
 そして何故か私の首に顔を押し付けてきます。
 ……どうして背中を触る必要があるんでしょうか。
「もふもふが……震えてたのに…」
「安心しろ、雨がやんだから、家に帰っただけだ」
 ……そういう問題ではありません。
 
「もふもふ気持ちよかったのに……」
 
 床に爪を立て、開いた窓を見つめて呟く私に御主人様が噛み付きそうな勢いで口を開きました。
 
 
「鱗で我慢しろ!」
 
 御主人様、無茶過ぎます。
 

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