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Tarot No.XX

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Tarot No.XX ◆yMsVbZ1/Ak


天使だった者は見つめる。
青いゴーグルを填めた目の前の人間を殺す。
手に持ったハンマーを力強く握りなおし、男へと襲い掛かるその姿はまるで機械のようで。

破壊の王と噂された者は見つめる。
創造を邪魔する者を破壊する。
返り血を浴び、人の持つ輝きを持たぬ天使を斬り伏せるために。

すべては己の目的のために。
滅亡をもたらす破壊の天使はハンマーを叩きつけた。
創造をもたらす人々の王は剣を振るった。

一歩も引かない両者の武器を伝って互いの意思がぶつかり合う。

止められない神と天使の衝突。それこそまさに――――










「AHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHH!!!!!!」










「なん……っだ?!」
ドアを開けた途端に飛び込んできたのは耳をぶち壊すような歌。
もはや歌というより声、声というより叫び、叫びというより「すごく不快な音」に近かった。

「殺し合いの場でこんだけ目立つとか……叫んでるヤツはアホか?!」
耳をふさぎ、タムラを押しのけるように前に出るアクセル。
まだ声を聞いても立っていられるアクセルとは違い耳を押さえたまま動きが固まってしまっているタムラ。


(やっべ……耳もってかれたかな?)
彼は探検家だったが、致命的なコトが一つだけあった。

――病弱。

優れた探険家である彼のたった一つの弱点。当本人も自覚するほどの体の弱さだった。

タンスの角に指をぶつけて小指骨折。
くしゃみをした反動でぎっくり腰。
ドアを閉めるときに指を挟んで骨折。
首の寝違えを直そうと思って無理に曲げて即刻病院行き。
何かの下に潜り込んで物を探していて、ふと頭を上げてしまって頭蓋骨にヒビが行った事もあった。

まあ、そんな病弱な彼が探検家というのも中々矛盾した世の中である。
とまあ予想外の音程と音量が突然耳に入ってきた所で、彼が真っ先に心配したのは自身の鼓膜である。
自身が耳をふさぎ続けているコトが、鼓膜の無事の証明となっていた。
もし瞬時に破れていたなら耳をふさぐという行為すらしなかっただろう。

「……おい、タムラ。大丈夫か?」
明らかに様子がおかしいタムラに話しかけるアクセル。
「ん……ああ、大丈夫だ。問題ないよ」
アクセルのほうへと向き直り、ガッツポーズで応答をするタムラ。
この時アクセルにはタムラの顔がものすごく青白く写っていたのだが、タムラは気がついていなかった。
「それより、早く行こう。あんな大きな音だったらどこまで響いてるか分からない。
 声を聞く限り女の子だし、早く助けに行ってあげないと!」
タムラのその言葉にすばやく頷くアクセル。
それぞれがそれぞれを守る簡易的な布陣を組みながら、音源へと二人は向かった。




リリの顔には若干の焦りの表情があった。
白いぶよぶよから荷物だけを剥ぎ取って、一刻も早くその場を立ち去ろうとした。
そこで彼女の視界に映ったのは二人組みの男性の姿だった。
自分の背後にはやる夫の死体、そして響き渡った自分の全力のシャウト。
自分の声が凶器になることを知っている人間だとすると、疑われるのは明らか。
そうでなかったとしても、響き渡った声の場所から死体を見捨てて逃げ出す者にいい印象を持つことはないだろう。
リリは全力で思考をめぐらせる。どうすれば怪しまれずに男性二人組に接触できるのかと。

彼女はその場に佇むことにした。
白いぶよぶよの心臓と思われる部分に果物ナイフを突き刺し、その傍に力なく座り込んで瞬時に涙を流し始める。
そのまま、男性二人を待ち続けた。



「何があった?! 大丈夫かい?!」
涙を流し、座り込んでいる少女に語りかけるタムラ。
少女のあたりを一瞥し、一人というべきか一匹のナイフの刺さった死体を確認してから少女へと語りかける。
「落ち着いて、僕の目を見て、ゆっくり深呼吸をするんだ」
少女は涙を流し続ける虚ろな目でタムラを見据えながら深呼吸をする。
口は開くが声が出ない。酸素を失った魚のようにパクパクとしているだけだ。
「アクセル、周りを頼む。怪しい奴がいたらとりあえず銃を突きつけてみてくれ」
タムラは散弾銃をアクセルへと渡し、周囲の警備を依頼する。
飛び出したときのようにアクセルは再び無言で頷く。
「いいかい? 落ち着いて話を聞いてくれ。
 ゆっくりでいい、自分の中で分かる分だけ何があったのか教えてくれ」
少女の瞳をまっすぐに見つめ、語りかけるタムラ。
深呼吸を繰り返し、口を開閉するだけだった少女からついに声がこぼれる。
「あ……くま」
「え?」
タムラは少女の微かな言葉へと耳を傾ける。
小刻みに震える少女の口から、流れるように言葉があふれ出す。
「悪魔が……白いぶよぶよの悪魔が……気が動転しちゃって……」
「ということはさっきの声は君の……?」
タムラの問いかけにゆっくりと頷く少女。
もう一度白いぶよぶよを見ると、心臓と思われる場所に一本のナイフが刺さっていた。
タムラの頭の中で一連の出来事が繋がる。
おそらくこの白いぶよぶよに立ち向かうためにナイフで応戦したところ、運悪くぶよぶよの胸に刺さってしまった。
不慮の事故、少女は正当防衛である。タムラの頭の中ではそういう物語が出来上がっていた。
「とにかく、ここは危ない。僕達がさっきまで居た祠があるんだ、そこまで詳しい話を聞くよ。
 変な人がいつ来るかも分からない。さあ、早く行こう。」
少女の手を引き、一刻も早くその場を立ち去ろうとするタムラ。

「ちょっと待ってくれタムラ、ショットガン貸してくれないか」
そのタムラを呼び止めたのはアクセルだった。
多少の疑問を抱きながらタムラはショットガンをアクセルへと渡した。
「何を……?」
「首輪をいただく」 
タムラが反応する前にアクセルは白いぶよぶよの頭と思われる部分をショットガンで吹き飛ばした。
血の様な何かが飛び散る光景を見せまいと少女の目を覆うことがタムラに出来る精一杯のことだった。
「……さ、行くぞ」
首輪を拾い上げ、ショットガンをタムラに返し歩き始めるアクセル。
タムラは何も言わない、言えない。
アクセルがしたことはこれから自分が生きていくうえで必要なことだとわかっているから。
汚れ役を背負い込んでくれたアクセルを責める事など、出来るはずもない。

三人は歩き出す。
それぞれの間に……会話は無い。
重苦しい空気が漂う中、一人だけだけ心の中で笑っていた。



リリの目的通り、一切怪しまれずにタムラ達と接触できたのだ。
それどころか首輪の研究をしている人間に出会うことまで出来た。
生き残るにしてもこの首輪は邪魔な存在である、優勝を狙う彼女でも首輪をはずすことは少し考えていた。
自分の首輪を外す事が出来れば、圧倒的に他の参加者より優位に立つことが出来る。
首輪を外してもらい、技術を持ったものを殺し、禁止エリアでゲームの終焉を待つ。
こみ上げてくる笑みを表情に出すことはなく。ただ、ただ自身の心の中で笑い続けた。



――――持っていたのは一枚の透明の仮面だった。



「アクセル、そこで待っててくれ」
祠の入り口にたどり着いた所でタムラがアクセルたちを止める。
「……ドアが開いてる、誰かが中にいるみたいだ。
 もし僕の叫びが聞こえたら、一目散にどこかへ逃げてくれ」
アクセルたちを入り口に留め、タムラは一気にドアを蹴り開けて中へと入った。
「動かないでくれ!」
銃口は紫の長髪の女性のほうへと向いていた。
突きつけられた女性はというと突然の事態に対処しきれず、手に持っていた本を投げてしまった。
更に体のバランスを崩してしまい、寄りかかった本棚が反動で倒れてしまった。
結果、女性は一人で勝手に本棚に押しつぶされてしまったのだ。
「あー、えっと。あたしは敵対するつもりは無いよ。
 ……というかこれじゃあ無理かな」
タムラが一瞬のうちに起きた出来事を飲み込むのに時間がかかったのは、言うまでも無い。
気持ちを整理し、アクセルたちを祠へと入れた。
そして三人がかりで本棚を持ち上げ、女性を救出することに成功した。

しばらくしてからそれぞれの支給品を並べた卓を囲みそれぞれ自己紹介を行うことにした。
そして、この場に集まるまでの経緯を軽く説明しあうことにしたのだ。

タムラ達の話には当然嘘は無かった。彼等が嘘をついても何のメリットは無いからだ。
彼等の目的はまず「首輪を解除すること」だからだった。
ブラフをかけたところで自分達が不利になるだけ。

しかし、残りの二人は違う。

リリはまず、自身がアイドルを目指していることのみを喋った。
全員が自分の世界と違う人間だと認識した彼女は自身の能力を全てひた隠しにすることにした。
下手に「戦える」ことをアピールすれば前線に立たされてしまうかもしれない。
無駄に体力を消費することだけは避けたい。今はか弱い少女を演じておくのが正解だろう。
私は貧弱です、だから皆さん守ってください、最後に私が優勝するために。
彼女の紹介はそう言わんばかりのモノだった。

ルーナ……否、ワームは少し迷っていた。
ここに来る前に自分の番号と名前が記された名簿というものがある事に気がついた。
名簿自体は表紙に「注:初回の放送まで閲覧する権限がありません」という書き込みがしてあり、一見何の変哲も無い本は確かにどれだけ力を入れても開くことは無かった。
もう一つ目に留まったのは名簿の表紙に書かれている名前だった。
そこには以前擬態していた人間の名である「赤根沢玲子」の文字が記されていた。
今擬態しているのは赤根沢玲子の姿ではないし、日本人とはかけ離れた外見で「赤根沢玲子」を名乗るのも不自然かもしれない。
しかし、ここで「ルーナ」を名乗れば後の放送の時に圧倒的に不利になるのは目に見えている。
あらぬ疑いをかけられない為にも偽名を名乗っておきたいところだが、いざ名簿が開いたときに「名簿に無い名前」がを名乗るのも不自然である。
故に、彼女は仕方なく「赤根沢玲子」を名乗ることにした。

「あたしは玲子、赤根沢玲子よ。よろしくね♪」

その場にいる全員には疑われることは無かった。
しかしその名前を脳裏に刻み付けているある少女がいることなど、彼女は知らない。

本当と嘘と嘘。白と黒と黒。
それぞれが混じり、ぶつかり合う。それぞれがそれぞれを信じるしかない。
どれが嘘でどれが本当なのかは彼等に知る由もないのだから。

「ん……でまあ今テーブルの上にこれだけの支給品があるんだけど」
テーブルの上に並べられている様々な武器防具を眺めつつ、タムラは全員へと提案する。
「……それぞれが其々の使えるものを取ろうと思う、今から一個ずつ指差していくからほしい人は手をあげてくれ」
そうして銃器、本、戦車兵器に至るまで、全ての支給品の分配を行った。
以外にもハズレは無く、それぞれが何かしら使えるものだった。
そして何よりも大きいのはアクセルが以前修理に使っていたキットが手に入ったということだ。

「……さて道具の整理がついたことだし、俺は早速こいつの研究を始めるぜ。
 玲子、アンタの魔術の知識も多少なり居るかも知れない。手伝ってくれるか?」
「勿論♪ 私の知識が役に立つならそれでいいと思うよ~ん」
そそくさとメカニックキットを広げ、白いぶよぶよから奪った首輪を卓の上に載せて研究を始めようとするアクセル。
「……そっか、じゃあ僕は邪魔になりそうだしこの地図のお宝を探しに行って見るよ」
「罠かもしれないぞ?」
「……じっとしてても仕方がないしね。
 罠があるって言うならくぐってこそ一流の探検家、だろ?」
アクセルはタムラを心配するような目で見ていたが、タムラ本人は自信にあふれた笑みを浮かべていた。
その自信にアクセルは賭けることにしたのだ。
「リリ、君はどうするんだい?」
タムラがリリへと問いかける。
別のことを考えていたのか呼びかけられたリリははっとした表情を浮かべ、一人考え込んだ。
「……万が一って事がある、アイツが俺達の首輪を爆発させるかも知れねーしな。
 襲われたときも俺たちは自分の身を守るので精一杯かもしれないし、なによりここだと逃げ場が無い。
 ちょっと危険だけど、タムラについていくほうが俺は安全だと思うぜ?」
アクセルはタムラについていくことを薦める。何が待っているか分からない。
ここで襲われて逃げ場を失うよりは、ある程度逃げ場のある外の方がある意味安全だ。
ましてや戦闘力が無いのならばなおさらのこと。強者に襲われて祠が半壊、何てこともあるのだ。
アクセルに薦められて持たされた濃縮メチルがあるとはいえ、彼女以外の三人は彼女を戦力としてみていなかった。
リリとしては首輪の情報も得るためにここに残っておきたかったのだが、「あらかた調べたら後で追いつく」というアクセルの言葉に折れてしまった。

まずはタムラを利用し、危機から守ってもらった上で弱ったところを殺す。
自分には絶対的な演技力がある。「狂人に襲われてそれから守るようにタムラが斬られた」等、幾らでも理由が立てられる。
残って足手まとい扱いされるよりは、ここはおとなしくタムラについていったほうが良いだろう。

「じゃあ、俺は行って来るよ。いい結果を期待してるよ」
タムラはリリを引きつれ、祠を後にする。
地図に記された紅い字の場所を目指し、黙々とタムラは歩き続ける。



――――ここまでうまく行くなんてね。



タムラが見ていないところでにやりと笑うリリ。あまりにも上手く行き過ぎて笑みを我慢できなかった。
後に首輪に関する情報が得られると分かった上、当分の身の安全を確保することが出来たのだ。
彼女にとってこれ以上の吉報は無いだろう。
さらに濃縮メチルという手軽に扱える武器も手に入れた。弱っている人間ならコレで一発だろう。
目立たなくて良い、ただひっそりと人を殺し生き残り続ける。
全力を使うのは最後の最後で良いのだから。今は非力な少女の演技を続ければいい……。

「危ない!!」

そんな考えが、タムラの一声と一発の銃声によって途切れる。





天使が超速でハンマーを振るう。
ハンマーによって抉られた地面が宙を舞い、神へと襲い掛かる。
飛び散った地面を目潰しに利用し、即座にハンマーの軌道を変える。

神は動じない。飛び散ってきた地面には目もくれず、天使を一点に見据えていた。
槌の軌道を読みきり、変化した軌道へと落ち着いて対応する。

神が超速で聖剣を振るう。
空気すらも裂けんばかりのその一撃が天使へと襲い掛かる。
しかし、武術を極し者を名乗る天使もその一撃を受けることは無い。

冷静にハンマーの面を利用し、剣の勢いを殺していく。
そして受けた力をそのまま使い、大きく体を捻って回転力へと変えて襲い掛かる。

神はまたその攻撃に反応してハンマーの攻撃を華麗にいなしていた。

力と力のぶつかり合い。先に倒れた方が負けだという事は初撃からお互いが理解していた。
お互いがお互いに渾身の一撃を叩き込もうとするが、両者共にそれに反応するため一向に決まらない。

そんな対等なぶつかり合いが続き、気がつけば数時間経っていた。
両者に疲れの色は見えない。武神と武神はただお互いを睨み合っていた。
共通の思考は唯一つ。「相手の脳天に一撃を叩き込む」事だけ。

破壊神には天使が、天使には破壊神が。
それぞれの視界にはただそれだけしか写りこんでいなかった。
全意識を集中し、全神経をそこへと向けていた。



だから、破壊神は気がつかなかった。

「危ない!!」

その一声が耳に入り込んでくるまで。

そして、一発の銃声が耳に入ってくるまで。

背後に、一匹の獣人が迫っていたことなんて。




山羊さんの作戦は完璧だった。
戦闘に夢中になっている二人の撃ちの片方へ、自身の刃での背後からの奇襲。
そしてもう一人が驚いたところで支給品の閃光手榴弾を炸裂させ、自分はサングラスでその場を凌ぐ。
あわよくばもう一人も暗殺する、そんな算段だった。
完璧だった。失敗するはずがないと思っていた。



たった一つの誤算、タムラさえ居なければの話だが。

奇襲を仕掛けた時点でタムラの存在に気がついたのだが、時既に遅し。
タムラは即座に銃口を山羊さんへとロックオンし、引き金を引いていたのだ。
男に刃で襲い掛かる前に、散弾銃の弾丸が自分の頭頂部をごっそりと持っていくほうが早かった。

故郷の妹や兄、愛する幼馴染の顔すら思い浮かべることなく。
彼の意識は途切れたのだ。



場所さえ分かっていれば壁の向こうの幽霊を正確に打ち抜くことが出来たタムラにとってそれは当然の反応だった。
いつ幽霊が出てくるか分からないあの地で、彼は何かに反応して銃をぶっ放す技術を手に入れていた。
そうでもしないとあの洞窟は攻略できないほど、過酷なものだった。

結果として襲撃者山羊を打ち抜くことに成功したタムラだが。直で反動を受けてしまい渋い表情を浮かべる。
山羊の頭を打ち抜くまでの手順を簡易なもので済ませたため、タムラには銃の反動を凌ぐ手段が無かった。
若干痛みが走る右手を押さえようと左手を伸ばした瞬間。



大地が、叫んだ。



破壊神の一瞬の気の緩みを見抜いた天使が槌を地面へと勢い良く叩きつける。
大地が揺れ動き、その場に立つ全員が足元を掬われる。
山羊に意識が行ってしまっていた破壊神も思わず体がよろめく。
叩きつけた衝撃を利用し、天使が天空へと舞い上がる。
天空の支配者たる天使は、破壊神へ鉄槌を脳天めがけて叩きつけたのだ。

破壊神は避けられないことを悟り、その体を大きく右へ逸らしたのだ。
まるで「左腕などくれてやる」といわんばかりに鉄槌へとその身を捧げた。
左肩の感覚が無くなると同時に背中に強烈な痛みが走った。

破壊神を襲ったのは天使の鉄槌だけではなかった。
背後から鉄の馬に跨った男が彼の背後を目掛けて突っ込んできたのだ。
鉄の馬が破壊神に接触したのを目撃してから男は颯爽と馬から飛び降りた。

鉄の馬が破壊神と天使を巻き込みながら地へと降り立ったのと同時に男も馬から舞い降りた。
そして、ゆっくりと剣を引き抜きタムラたちへと突きつけたのだ。
「お前達に恨みは無いが、死んでくれ……?!」

馬から舞い降りた男がタムラ達から目を逸らす。
鉄の馬が鎮座しているすぐ傍には頭から血を流している天使が。
場所から少し離れた場所には左腕を力なくぶら下げた破壊神が立っていたからだ。



四者が四者、それぞれを睨み合う。



全てが終わるまでタムラが山羊を打ち抜いてから十秒と経たたなかった。
天使は空を駆け、男はバイクで人を二人轢き倒し、破壊神はその状況から起き上がってきた。
状況を理解するのに時間がかかるが、今のタムラにそんな時間は無い。

自分にあるのはショットガン一本とスズメバチの巣。
その武装で何が起こっているのか今一わかっていない彼女を守り抜かなければならない。
せめて誰が味方で誰が敵なのかがわかればいいのだが……。
その時ふと、デイパックの中にある核爆弾の存在を思い出す。

「できたら使いたくないんだけど……な!」

奥歯で何かを噛み締めながらタムラは呟く。

探検家は判断しなければいけない。

闇の加護を受けた戦士は敵なのか?
青服の破壊神は敵なのか?
今は無き羽を血に染めた天使は敵なのか?



そして、もう一つ彼は気がつかなければいけない。



一人、既に敵がいると言うことに。




【山羊さん@うみねこのなく頃に 死亡】


【D-4とC-4境 山岳地  一日目 夕方】
【ナイン(主人公・女)@ドラゴンクエストⅨ】
【状態】疲労(中)、重傷、職業:バトルマスター
【装備】メガトンハンマー@ドラゴンクエストⅨ、鉄の鎧@ドラゴンクエストⅢ、うろこの盾@ドラゴンクエストⅢ
【道具】支給品一式×2、不明支給品0~1
【思考】
基本:皆殺し
1:場に居る全員を殺す。

【ロラン(ローレシア王子)@ドラゴンクエストⅡ 悪霊の神々】
[状態]:疲労(中)、重傷、左肩使用不能。
[装備]:エクスカリバー@ファイナルファンタジーⅤ
[道具]:基本支給品、不明支給品×0~2
[思考]
基本:ノアの破壊。創造する人間を邪魔する人も破壊する。
1:ナイン、闇の戦士、タムラたちへの対処
[参戦時期]:本編終了後、ローレシア王から王位を譲られています。

【■■■(闇の四戦士の一人)@FF3】
[参戦時期]:封印中、光の戦士を待っている頃
[状態]:クリスタルメイルを除く衣服に損傷、疲労中、魔力消費小
[装備]:クリスタルメイル@FF5、バスタードソード@DQ3
[道具]:支給品一式×3、ミスリルナイフ@FF3、エリクサー×2@FFT
[思考]
基本:いち早く帰還
1:この場にいる全員の駆逐
2:全参加者の殺害
3:サイクロン号で会場中を徘徊して、標的を探し出す。
[備考]
※ジョブは魔剣士。
※名前は忘れてしまっています。

【リ=リリ(セレスティア:アイドル:♀)@剣と魔法と学園モノ。2】
[状態]:良好 音痴
[装備]:メガホン@現実、濃縮メチル@METAL MAX RETURNS、リボン@FINAL FANTASY III
[参戦時期]:不明
[道具]:支給品一式×2
[思考]
基本:優勝して生還する。表立って殺し合いに参加しない。
1:タムラをとりあえず利用する。
2:事の行く末を見守る
[備考]
※自分の歌の下手さに気付いていません。
※D-5エリアに下手糞な歌が響き渡った可能性があります。

【タムラ(主人公)@スペランカー】
[状態]:やべ……肩イったかも
[装備]:モスバーグ M500@現実、髑髏の稽古着@真・女神転生if...
[道具]:支給品一式、スズメバチの巣の袋(未開封)@現実、核爆弾@魔界塔士Sa・Ga
     宝の地図(D-2砂場に印、裏面にZ-G-N-A-と書かれている。)、動きが素早くなる薬@スペランカー
[思考]
基本:全力で生き残る、でも後悔だけはしたくない。
1:現状打破。核爆弾も辞さないかも……?
2:お宝を探しつつリリの護衛。
3:出来るだけ怪我したくない
[備考]
※参戦時期はED後



※閃光手榴弾、サングラス、不明支給品0~1が山羊さんのデイパックに入ったままです。
※新サイクロン号(一号)@仮面ライダーが地面に転がっていますが、起こせば使えます



「クッソがァアアアアアアアアアア!!」

祠の内部に響き渡る叫び。それは紛れも無くアクセルのものだった。
「ど、どうしたの?!」
「作りを全部見抜いた……大体のことは把握できた。そして分かったんだよ、外し方がな」
首輪の外し方が分かった。普通ならばそこで喜ぶはずだ。
しかし、アクセルの表情からは怒りが消えない。

「……段階を追って説明するぞ。まず最初のところでノアの野郎はなんていった?
 首輪を「爆発」させるって言ったな?」
アクセルは玲子に最初の会場で起こった出来事を思い出させるように促す。
「人体の首を吹き飛ばすには相当量の火薬が必要だ。
 しかもそれを爆発させるための信管や発火装置のこともあって、首を吹き飛ばすにはこの首輪の半分以上が火薬と信管で埋まる。
 第一だ、仮に酸素の無い空間に行くとか爆発なんて屁じゃないヤツがいたらフツーの火薬死ぬわけが無いだろ?
 ここにいるかどうかはしらねーけど、バルデスのヤローならぜってーに死なねーな。
 爆薬ならこっち側で幾らでも対処できるんだよ。用は中の爆薬さえ炸裂しなきゃいいんだからな。
 ……さて、そこでだ。あの首をぶっ飛ばされたヤツの首がどうなっていたかを覚えてるか?」

アクセルは「手袋」をつけた手で首輪を持ったまま玲子へと解説を続ける。

「爆薬で起こった爆発により首を吹き飛ばされるって言うんなら断面なんて物は存在しない。
 首はむしりとられたような形にならなきゃいけねーんだ、平面な首の断面が出来上がることなんてまずありえない。
 でも、あの首を吹っ飛ばされた死体の首は「断面が平面」だったんだよ。つまりだ……分かるだろ?」

そこでアクセルは卓上へと首輪を置く、玲子にテーブルから離れるように指示し。
自身もテーブルから距離をとりメカニックキット内の一本のヤスリを首輪へと投げつけた。
カツン、と軽い音が鳴ったあと。首輪からは「爆炎」が巻き起こったのだ。

「……スーツの男をバラバラにした光線を覚えてるだろ? どうもアレの超小型版の装置が首輪に詰まってやがる。
 俺たちが爆発だと思ってたのはその光線から放たれた爆炎であって爆発じゃなかったんだよ。
 光線にスッパリと首を切られたから、アイツの首の断面は平面だったんだ。
 爆薬と違ってこいつは何度でも動作する。最初の一回をやり過ごしても何回でも爆発するんだよ。
 本来こんなに小型化される武器じゃない、戦車に積み込むモンをアイツは首輪サイズに縮めたんだ。
 ……どういう技術かは知らないがな、機械の技術が上を行きまくってるなんて考えたくも無いぜ」

技術者らしく吐き捨て、一息ついた後に解説を続ける。

「しかもコイツは温度センサーと衝撃センサーがどうも全体に反応する位置にあるみたいだ。
 衝撃センサーは間違いなく首輪を外そうとする力に反応するのは間違いない。
 厄介なのは温度センサーだ、おそらく嵌められた人間の体温でも察知してるんだろ。
 コイツの認識する温度が極端に変化した場合にノアに死亡通知が行き届くんだろう。
 そして、本題はこいつが一度死亡通知を送った後だ。
 何かしらの手段で氷付けになって温度を誤魔化し、死んだと思わせてから元に戻るという手段を使えば解除できると思うだろう?
 ……一度死亡通知を送った後は必要以上の力が掛かるだけで兵器が作動しやがる。さっきのヤスリが証明だぜ。
 死体から奪ったから死亡通知は間違いなく行き届いてる。それが何よりの証拠だ。
 念のため細心の注意を払いながら首輪の持ち運びをやっといてよかったぜ。外力に敏感に反応するなら温度の違いも敏感に反応するはずだ。
 素手で握れば体温が伝わった瞬間にドカンだ、下手にいじるだけで兵器が作動しやがる」

もう一度力を込めて壁を殴りつける。拳からは若干血が滲み出していた。

「中身を調べようにも中をあけるには力を加えなきゃいけねー。
 外から察知できる分から察知しただけだから兵器が詰まっている以外のことは確定じゃねえ。
 だが、オレが立てた首輪の中身があってるとすれば……首輪の解除方法が決まってくる」

玲子の耳元に近寄り、アクセルはそっと呟く。

「なんとかしなきゃいけねーのは兵器だ。でもどこに埋まってるかなんざ見当もつかない。
 適当に引っ張った場所に兵器がありゃ万歳だがそれより先にセンサーが反応して首輪が飛ぶのがはええぜ。
 横に引っ張ったとしても兵器が生きてりゃ首は飛ぶわけだからな。
 方法はたった一つ、衝撃センサーが反応する前に首輪を引きちぎり、兵器をぶっ潰す。
 兵器の場所がわからねーうちはこれしかねえな。兵器の場所を探る手段があれば……話は変わるがな。
 ピンポイントでの分子分解や、首輪だけを凍らせて崩すとかそういう技術があってもイケるかもしれねーな」

そういい終わった後にアクセルは手袋をはめ、細心の注意を払いながら首輪をデイパックへと戻す。

「どれぐらいの速さでやればいいの?」

玲子は素朴な疑問をアクセルへと投げかける。

「考えもつかねーな、人間の速さじゃ少なくとも無理だ。
 超精密に、かつ超高速に動けるバケモンでもない限り不可能だぜ。
 そんな技術を持ってるやつがいりゃあ万歳だな。
 ……あと、禁止エリアってヤツが作動すれば、そこにいる死体の首輪は作動し続けるわけだから、下手すりゃ火事とか起きるぜ?」

グレネードランチャーと一体型となったマシンガンを構え、アクセルは祠の出口へと向かう。

「さあ、行こうぜ。グズグズしてるとタムラたちに置いてかれちまう」
アクセルが外へ出ようとドアに手をかけた時だった。



ほんの少し、足元が揺れたような気がしたのだ。



【D-5 祠内部  一日目 夕方】
【アクセル(メカニック)@METAL MAX RETURNS】
[状態]:焦り
[装備]:メカニックキット@METAL MAX RETURNS、SMGグレネード@METAL MAX RETURNS、インテリめがね@DRAGON QUEST3
[道具]:支給品一式、V100コング@METAL MAX RETURNS、サイバネティックアーム@女神転生2
    195mmバースト@METAL MAX RETURNS、やる夫の首輪
[思考]
基本:首輪解除。(兵器の位置が確実に判明できる、か分子分解や超速度で動ける人間を探す
1:タムラ達と合流する。
2:はんた、ダイナマと合流。
3:コトのついでに戦車探し
※参戦時期はED後、ノアを倒しはんたと別れた後です。

【赤根沢玲子(ワーム)@仮面ライダーカブト】
[状態]:健康、サナギ体、ルーナの容姿に擬態中
[装備]:白のローブ@FF3、いかづちの杖@DRAGON QUEST2、フレアの書@魔界塔士Sa・Ga
[道具]:基本支給品×2
[思考]
基本:仲間を集めてノアを打倒
1:タムラ達と合流する。
2:首輪解除に協力
[備考]
※ルーナ(ムーンブルクの王女)の記憶を手に入れました。
※魔法が使えるかとかその辺は、次に任せます。
※赤根沢玲子@真・女神転生ifとは関係がありません。多分。

※首輪に関して考察を行いました。
  • OPで神をバラバラにした兵器(サンバーンXX)の小型版が入っています。
 一度以上動作します。
  • 温度センサー、衝撃センサーが積まれており。
 通常時は衝撃センサーは首輪を外すほどの力に反応し、温度センサーは死亡かどうかを判断します。
 死亡後は素手で握って体温が伝わる等、また軽く殴るほどの力を与えてもどちらかのセンサーが作動し装置が作動します。
  • これはアクセルが立てた仮説です。センサー説は本来は違うかもしれません。
 しかしサンバーンXXが入っていること、死亡後の首輪は極端な外力に反応することは判明しています。


043:血も涙も、故郷(ここ)で乾いてゆけ 投下順に読む 045:Tarot No.XX(逆位置)
042:才にあふれる――(愛にあぶれる) 時系列順に読む 045:Tarot No.XX(逆位置)
004:撲殺天使ナインちゃん ナイン 054:fight or flight ~闘争か逃走か~
016:破壊神を破壊した男 ロラン
031:『無名』 ■■■(闇の四戦士の一人)
005:とある天使の隠れ歌 リ=リリ
030:希望、見えた先に。 タムラ
アクセル 045:Tarot No.XX(逆位置)
025:君が願うことなら 赤根沢玲子(ワーム)
006:黒き尖兵 山羊さん GAME OVER


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