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東京都青少年条例の質問回答集に対する反論 1

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だれでも歓迎! 編集
法学に詳しいマンガ家の方が法学的に反論・注釈しておりなかなか興味深かったので許可をもらい転載させて貰いました。
注釈反論となっている部分以降はマンガ家の方が書かれたものです。
また私の意見・注釈・反論もこの際便乗させて貰いました。それについては壺・注釈としました。



東京都青少年の健全な育成に関する条例改正案 質問回答集


目次一覧


1.漫画やアニメなどの創作物の規制は、「表現の自由」を侵害するのではないですか?また、漫画家など、制作者の創作活動を萎縮させることになりませんか?


今回の条例改正案は、子供(18歳未満の者をいう。)を悪質な性行為の対象とする漫画やアニメなど(以下「漫画など」といいます。)
を、子供が買うことのないよう、書店などのいわゆる「成人コーナー」に置いてもらおうとするものです。
不健全な図書から子供を守る、いわゆる「18禁」「成人指定」制度は、昭和39年からあり、漫画なども当初からその対象とされてきました。
あくまでも子供への販売を行わないことにとどまり、このような漫画などを描くこと・創ること・出版すること、18歳以上の方が買ったり見たりすることはこれまでどおり自由です。したがって、憲法第21条の「表現の自由」を侵害するものではありません。
条例が制定された昭和39年から約50年経ちますが、これまでの運用状況から見ても、漫画家の方たちなどの創作活動を萎縮させるものではないと考えています。
なお、子供の健全な成長を妨げるおそれがある図書類を、子供が買うことのないようにする制度は、最高裁判所によって合憲とされています。

注釈
ここで大事なのは「表現に対する萎縮効果をもつものではない」と都が考えているということではない(条例案を出している時点で都がそう考えていることは明らかだから)。
大事なのは、「既存の規制では足りず、新たに規制を追加する必要がある」と都が考えている、ということである。
これを覚えておいて欲しい。
そして、筆者はここに最大の疑問がある(筆者注釈において後述)。

また、Aという規制が仮に萎縮効果を生じさせないとしても、Bという規制が萎縮効果を生じさせないという理由にはならないし、ましてやAとBが併せて規制されることによって萎縮効果が生じる可能性も充分にある。
早い話が、ここに書いてあることは詭弁そのものである。
このこともここに明記しておきたい。

2.「非実在青少年」とは何ですか?


「明らかに18歳未満の青少年であると設定されているキャラクター」のことです。
作品の中で、そのキャラクターの年齢や学年が、絵やセリフで表されていたり、小学校や中学校の校舎で授業を受けているシーンがあるなど、誰が見ても明らかに「18歳未満である」と認識できる場合や、ナレーションで「○○(キャラクター名)は13歳。」などと説明されている場合が、この「非実在青少年」に該当します。
例えば、「見た目が子供のように見える」「声優の声が18歳未満のように聞こえる」だけの場合は、全く該当しません。

注釈
好意的に受け止めれば、表現の自由に配慮して可能な限り明確かつ限定的な対象にしている、といえる。
が、それはあくまでこうした概念が必要であるということを前提にする。
概念自体が不要であれば、限定もくそもない。

では、本当にこうした概念は必要なのか。
これが筆者の付記する、この文書に対する注釈全体のテーマである。

まず前提として。
第1に、これは青少年をエロから遠ざけましょうという、一般的な意味でのポルノ規制ではないはずである。(p.8筆者注釈参照)
なぜなら、もしそうであれば例えば人妻とオッサンがセックスしている内容でもダメなはずであり、「非実在青少年」という概念自体が必要ないからだ。

第2に、児童ポルノ規制の一環でもないはずである。もしそうであれば、頒布してはいけない相手を青少年に限る必要がないからだ。児童ポルノとして扱うのであれば、むしろ成人に対して規制しないと意味がない。
また、都自体も児童ポルノ規制とは無関係だと説明している(p.21及びp.22参照。この説明自体に対する疑義については、ここでは置いておく)。

従って、今回の改正はこれらとは異なる、新たな必要性からなされるものであって、その必要性に疑義があれば、当然に「非実在青少年」という新しい概念も必要ないということになる。

3.18歳未満に見えるキャラクターが出てくる漫画やアニメは、全て見られなくなるのですか?


いいえ、そのようなことはありません。
まず、条例改正案の「非実在青少年」は、漫画などにおいて、年齢や学年についての明確な描写や台詞、ナレーションにより、明らかに「18歳未満」と設定されているキャラクターに限定されます。
見た目が幼く見えたり、声が幼く聞こえたりするキャラクターであっても、「18歳以上」であると明確に設定されていたり、年齢や学年が不明であったりするものは、この「非実在青少年」に当たりません。
さらに、子供が見たり買ったりしないよう、成人コーナーでの販売を求めるのは、「18歳未満」と設定されているキャラクター(「非実在青少年」)が、「性交又は性交類似行為」をしていることが明確に描写されているもののうち、子供にとって特に悪質なものに限定されます(問4、問6を参照して下さい)。
したがって、「18歳未満のキャラクターが出てくる漫画などが全て見られなくなる」ようなことはありません。

注釈
p.7と併せて読むこと。

4.「性交」、「性交類似行為」とは何ですか?


「性交」とは、セックスのことです。
「性交類似行為」は、「フェラチオ」、「手淫」、「アナルセックス」などの性交に極めて近い性的行為を指す法令用語(法律や条令で使用される一定の言葉)です。
単なる裸(乳房、お尻などが直接見えている状態)やキスシーンはもちろん、性交を示唆するにとどまる描写(裸の二人が折り重なっているなど)は該当しません。

注釈
バナナを食べるのも練乳をかけるのも性的行為ではないから、当然「性交類似行為」には該当しない。
それが例え性交を想起させる描写であっても、である。もしこれを含むとすれば、下記アンダーライン部分(とくに筆者追加赤線アンダーライン部分)との区別が必要になるが、それは曖昧不明確きわまりなく、明らかに表現に対する萎縮効果を及ぼす。
また、「裸の二人が折り重なっている」のはOKで、指で作った輪っかに人差し指を出し入れするのを描いたらダメ、というバカバカしい話になりかねない。

壺・注釈
ということは猪瀬副知事があれだけ持ち上げ、あれだけ叩いた『奥サマは小学生』は今回の規制の対象外ということになる。

5.「非実在青少年」は生きている青少年ではないのに、なぜ規制する必要があるのですか?


それは、この条例は、漫画などに出てくる「非実在青少年」を守ることが目的なのではなく、それを見たり読んだりする、実在の(生きている)子供の、健全な成長が妨げられるのを防ぐことが目的だからです。注・都の説明を覚えておいて下さい。
これまでも、子供が読んだり見たりした場合に、性的な刺激を強く受けるような漫画などについては、その子供の健全な成長が妨げられるのを防ぐため、条例により子供に売らない、見せないための取組(いわゆる「18禁図書(※)」として「成人コーナー」に置くこと)を行ってきました
今回の改正は、漫画などのうち、18歳未満のキャラクターに対する強姦(レイプ)や近親相姦(親子や兄弟姉妹間のセックス)など、実社会では社会的に許されない悪質な性行為について、読者の性的好奇心を満たすため、あたかも楽しいこと、社会的に許されることであるかのように描くような漫画などは、性的判断能力が未熟である子供が読んだり見たりした場合に「このようなことをしてもいいんだ」「このようなことをしてみたい」などの誤った認識をしてしまうおそれがあるため、子供への販売を行わない対象に追加するものです。
(※)「18禁図書」:18歳未満である青少年に対し、閲覧・販売が適当でない旨の表示(「成年コミック」など)を行っている図書類。

注釈
一般的な意味でのポルノ規制。
日本のように成人に対してもポルノを規制する(刑法175条)かどうかは国によってかなりの差があるが、こうして一定の年齢に達するまでポルノに接触することを規制することは多くの国で行われているし、そのこと自体は(程度の差はあれど)多くの人が納得するだろう。

そして、今回の改正は、このような一般的な意味でのポルノ規制とは異なる、と都は説明しているわけである。(p.5筆者注釈参照)
このことは明確に覚えておいてほしい。

なぜなら、例えば規制推進派の方などが「こんなもの子供に読ませられないでしょ!」と具体的な漫画を挙げたりすることがあるが、仮にその「子供に読ませられない」という理由が「性描写が激しいから」であれば、既存の規制で充分であって、新たな規制の必要性がないからである。
あくまで「子供に読ませられない」理由は「子供がレイプや近親相姦を肯定的なものと誤解し、それを指向するようになる」からでなければならない。そうでなければ、今回の改正はその正当性を根本から失う。

また、この論点を明確に意識しておけば、例えば規制推進派の方がわざわざインパクトの強い性描写の激しいものを持って来て「こんなもの…」と言った場合に、論点がズレていることがはっきりと理解できる。
そういう人が果たしてわざと論点を誤摩化しているのか、たんに論点を理解していないのかまでは判らないが。

ちなみに、彼らが提示するものの多くは『成年マーク』がつけられ、既に18禁規制されていたりする。この場合、当然新たな規制は必要ない。

壺・注釈
条文には『18歳未満のキャラクターに対する強姦や近親相姦など、実社会では社会的に許されない悪質な性行為』とは書いてませんただ単に、18歳未満の性描写を肯定的に書くことを規制しています。
以下条文を引用します。
東京都青少年条例改正案 第七条 二
年齢又は服装、所持品、学年、背景その他の人の年齢を想起させる事項の表示又は音声による描写から十八歳未満として表現されていると認識されるもの(以下「非実在青少年」という。)を相手方とする又は非実在青少年による性交又は性交類似行為に係る非実在青少年の姿態を視覚により認識することができる方法でみだりに性的対象として肯定的に描写すること

これを『18歳未満のキャラクターに対する強姦や近親相姦など、実社会では社会的に許されない悪質な性行為』と読めというのは無理があるでしょう。

6.18歳未満の登場人物の性的な描写があれば、全て規制の対象になるのですか?


いいえ、そのようなことはありません。
今回の条例改正で、「子供に売らない」対象となるのは、18歳未満の登場人物の「性交又は性交類似行為」が明確に描かれたものに限られます。
さらに、そのような「性交又は性交類似行為」の明確な描写を、正当な理由なく、読者の性的好奇心を満たすことを目的として、不当に賛美したり強調したりしたものに限定しています。
つまり、子供と大人、又は子供同士の性行為が、全編の大部分にわたって描かれたような、いわゆる「エロ漫画」のうち、子供との性行為の描写がメインとなっているものに限られます。
単なる裸はもちろん、子供のベッドシーンや性行為の描写が含まれるというだけで、規制の対象になることはありません。

注釈
文書中何度も出てくるけれど、あくまで「いわゆるエロ漫画」が対象であると強調し、明言していることをしっかり覚えておいて下さい。

壺・注釈
エロ漫画を規制したいのであれば、今までの条文で十分でしょう。エロを規制したいのであればそのための規定はあるからです。
また5.「非実在青少年」は生きている青少年ではないのに、なぜ規制する必要があるのですか?の説明とも食い違います。

7.「非実在青少年」のパンチラや、おっぱいやお尻が見えるシーン、裸のシーン、入浴シーンやシャワーシーンがある漫画やアニメは、全て規制されるのですか?


子供に見せない、売らない対象となるのは、「性交又は性交類似行為」が明確に描写された漫画などに限られます(問6を参照して下さい)。
「非実在青少年」のパンチラや、おっぱいやお尻が見えるシーン、裸のシーン、入浴シーンやシャワーシーンの描写があるだけで規制することはありません。
例えば、よく問い合わせのある以下のような漫画などについては「性交」又は「性交類似行為」を描いたものではないので、今回の対象にはなりません。
  • 「ドラえもん」(しずかちゃんの入浴シーン)
  • 「サザエさん」(ワカメちゃんのパンチラシーン)
  • 「キューティーハニー」(如月ハニーの変身シーン)
  • 「クレヨンしんちゃん」(しんのすけがお尻を出すシーン)
  • 「ドラゴンボール」(ブルマが裸になるシーン)
  • 「新世紀エヴァンゲリオン」(レイやアスカのヌードシーン)

壺・注釈
問題はNANAベルセルクなども対象に入りかねないということ

8.都は、「あくまで『自主規制』が中心である」と説明しているようですが、条例に基づく「自主規制」は半ば強制的なものであり、漫画家は自由に作品を描けなくなってしまうのではないですか?


条例の「自主規制」は、子供の健全な育成を阻害するおそれのある図書類を「子供へ売ることのないよう」、図書類の発行や販売に関係する事業者(出版社、書店など)に、自主的な努力をお願いすることです。
具体的には、該当する図書類について、表紙に「成年コミック」などの表示をした上で、いわゆる「成人コーナー」など、一般の誰でも見られる書棚とは区分された場所に置き、子供が買うことのないように努力していただくものです。
漫画家の方に、「そのような作品を描かないように自主規制する」ことを求めるものではありません。そのような作品を描くこと、出版すること、18歳以上の方に売ることは、全く規制されません。

(参考)条例第7条【現行】
図書類の発行、販売又は貸付けを業とする者並びに映画等を主催する者及び興行場を経営する者は、(中略)当該図書類又は映画等を青少年に販売し、頒布し、若しくは貸付け、又は観覧させないように努めなければならない。

注釈
現在、いわゆる「成年マーク」つきの漫画雑誌や単行本で行われている形態。
逆に言えば、今回の追加規制対象は「成年マーク」がついていないもの、ということになる。
これについては後で詳述する。

壺・注釈
理屈上はそうでも実際はまったく異なる。
そもそも有害図書指定を一定数以上食らうと流通に通せなくなる。
また大阪のBL・TL撤去問題を見ても行政の圧力に対して流通や小売の反応はとてつもなく大きいことは明白である。

9.東京都だけが新たに「青少年の性行為が描かれた漫画やアニメ」を規制するのはおかしいのではないですか?


東京都以外の大部分の道府県は、個別指定制度のほか、包括指定制度(「全裸・半裸での卑わいな姿態」または「性交もしくは性交類似行為」の描写の分量により幅広く規制する制度(ページ数や一冊に占める割合を基準として子供への販売制限を決める制度)を併用しています。
この包括指定制度は、大部分の道府県で「全裸・半裸での卑わいな姿態」または「性交もしくは性交類似行為」の描写の分量によって指定を行うものです。そして、「性交又は性交類似行為」については、性的刺激の程度とは関係ないことが多く、描かれている性行為の主体が青少年か否かを問いません。このため、他の道府県では、現在でも、青少年の性行為が一定の分量以上描かれた漫画などは指定の対象となり得ます。
一方、東京都は、個別指定制度のみを採用することで、特に慎重な手続きをとってきました。個別指定制度とは、販売されている本の中から、個別に本の内容を確認し、その性的刺激の程度を踏まえて、青少年健全育成審議会という第三者機関に諮った上で、いわゆる「18禁図書」として指定し、指定後は、子供への販売などを制限する制度です。
今回、東京都では、これまでの「性的刺激の程度」という基準では対象とならなかったもののうち、子供を悪質な性行為の対象とする図書類について、「18禁図書」に追加できるように明確に条例で規定しようとするものです。
したがって、東京都のみが、「これまで他の道府県では規制されていなかった」「青少年の性行為が描かれた漫画などを規制する」ものではないのです。

注釈
5.および8.の注を参照

壺・注釈
これはそういう面がある。大阪とかの規制のほうがずっと厳しく運用できる面もある。
ただ、東京は政治・文化・経済の中心であり表現規制問題については特別に慎重にする必要がある。
また規則上の規制において『非実在青少年』という『新しい規制基準』を持ち出してきた以上、特にその基準の有無は厳しく問わなければいけない。
規制は『範囲を狭めればその分深くなる』という特徴があります。例えば今回の条例を条例どおりに使えば、たった1Pの描写でも『18歳未満の性行為が皇帝的に描かれているだけ』で規制の対象に出来るのですから…

10.条文で、「みだりに」「性的対象として」「肯定的に」などと言っていますが、非常にあいまいではないですか?


条例では、用語を以下の意味で使用しています。いずれも、条例化にあたっては極力、その対象物を明確に絞り込むことが必要である、との考えのもとに用いている言葉です。

○「みだりに」=「正当な理由がなく」
正当な理由とは、例えば、レイプ事件の裁判員裁判において、裁判員の方に被害状況を説明するため、再現写真の代わりに、その被害場面をイラストで書き表す場合などを指します。

○「性的対象として」=「読者の性的好奇心を満たすため」
例えば、ストーリー性が低く、性行為のシーンばかりが頻繁に出てくる、一話、一冊の大部分が性行為のシーンばかりの作品のように、性行為のシーンを「売り」にしていることを指します。
いわゆる「エロ漫画」と呼ばれるもののことです。

○「肯定的に」=「不当に“賛美”または“誇張”して」
「不当に賛美」とは、例えば、小学生が「大人との性交を喜んで受け入れている」「大人に対し、性交を誘っている」場面などの表現を指します。したがって、主人公が子供時代にレイプや性的虐待に遭ってトラウマを負っている、という設定における回想シーン等は、含まれません。
また「不当に誇張」とは、性行為のシーンが、ストーリー上不必要なほど強調されたもの、延々と描写されたものや繰り返し描写されたものを指します。

注釈
何度も明言していることに留意。

壺・注釈
みだりについては、マンガやアニメなどが大衆娯楽である以上。事実上殆ど制限になっていないと思う。これで規制の対象から逃れられるのは保健体育の教科書くらいではないか?
エロ漫画ならエロ漫画の規定でチェックするべき。
「肯定的に」=「不当に“賛美”または“誇張”して」というのもかなり無理があるように思う。
例えば高校生同士がセックスして喜んでいる描写は『肯定的』であるでしょう。それも規制の対象なりえるわけです。

11.出版社が集中する東京都が規制を強化すれば、全国に影響が波及するのではないですか?


東京都の条例が効力を持つのは、都内のみです。
つまり、都が不健全図書指定しても、それにより子供への販売が制限されるのは都内のみであり、同じ図書であっても、都以外の道府県では子供への販売が可能です。
また、そのような図書を描くこと、出版すること、18歳以上の方に対して販売することは、条例においては、元々一切規制されていません。
さらに、問9のとおり、そもそも、今回条例改正により都が指定対象とする図書類について、他の道府県では既に子供への販売制限の対象となり得るものです。
このため、東京都の規制により、全国に影響が波及するということはありません。

注釈
このページの回答は全て詭弁である。

ここでの質問は「全国に影響が波及するのではないか?」というものであり、つまり法的効果ではなく、事実上の影響の大きさを聞いているのである。
これに対し、回答の1-4行目までは法的効果が及ばないということであり、答えになっていない。
また、5-7行目までは「描くのも成人に売るのも自由だよ」と言っているのであって、規制対象が拡大しているという事実はおろか他県への影響力の大きさには一切無関係なことである。

8-10行目までは「そもそも他県だって独自に規制する可能性あるじゃん」と言っているだけであって、東京での規制が影響するかについては触れていない。
そもそも質問の趣旨は「東京で規制することによって、他県がもともと持っている規制の可能性が、実現化されてしまうのではないか」ということなのだから、「もともと可能性がある」は何の答えにもなっていない。

これで何故最後の断言に至るのか、その論理過程を是非とも聞いてみたい。

壺・注釈
政治的・社会的視点が完全に欠如している。
政治・文化・経済の中心地である。東京で『新たな規制を作ればその影響は東京には留まらない』
他の地方政府は東京の真似をする傾向があるし、そもそも出版社も東京で売れないものは作らなくなるから全国でも出版はされなくなる。


12.現在の「著しく性的感情を刺激する」という指定基準を当てはめればよいのではないですか?


「著しく性的感情を刺激する」かどうかは、単に全裸や性交シーンがある程度では該当せず、その判断は、性交シーンにおける性器の描写の明確さ、擬音(性交に伴って生じる音)や体液の描写の多さなどによることとされます。
上記のような、現在の指定基準の解釈は、昭和39年以来の条例の運用の中で、出版業界との間で共通了解の形成に努めてきたものであり、「子供との悪質な性交場面の描写がある」だけでは該当しません。
一方、{今回の条例改正においては、「著しく性的感情を刺激する」か否かではなく、「子供への強姦等著しく悪質な性行為について、あたかも楽しいこと、許されることのように描く漫画などは、これを読んだ子供の性的判断能力を歪めるおそれがある」として、新たに
指定基準を追加しています。}
これは、「青少年の性的描写についてはその描写の程度に関わらず『著しく性的感情を刺激する』と解釈する」として、これまでの業界との共通了解を勝手に都が変更し、解釈を拡大することは、それこそが「行政の恣意的な運用」「規定の濫用」になると考えるからです。
表現の自由の重要性を踏まえ、新たに「子供への強姦等著しく悪質な性行為の対象として子供を描く漫画など」を子供に売らない規制の対象にするには、その指定基準を条例に追加し明示することが行政としての責任であると考えています。

注釈
であるならば、今回の追加基準の対象は既存の「著しく性的感情を刺激する」という基準から漏れたもの、ということになる。
このことはp.12(問い9)に付したハイライト部でも確認できる。
一方で、p.13では今回の改正で対象となるのは「いわゆるエロ漫画のうち?」と回答している(筆者ハイライト部分)。

これを総合すれば、都は以下のように考えているということになる。

a.「いわゆるエロ漫画」の中には「著しく性的感情を刺激する」ものと、そうとは言えないものがある。(筆者注:なぜなら『いわゆるエロ漫画』すべてが『著しく性的感情を刺激する』ものであれば、追加基準は必要ないから)

b.上記a.を前提に、「いわゆるエロ漫画」のうち「著しく性的感情を刺激」するとは言えないが、「子供への強姦等著しく悪質な性行為の対象として子供を描く漫画など」が今回の追加対象である。

正直言って、具体例を想像するのが困難であるが、都の説明によればそういうことになる。

壺・注釈
条文には『18歳未満の性行為を肯定的に書くこと』としか書いておらず、『子供への強姦等著しく悪質な性行為について、あたかも楽しいこと、許されることのように描く漫画』という都の説明とはかけ離れている。
それこそ恣意的な解釈そのものだろう。

13.いま業界が行っている自主的な取組で、十分足りるのではないですか?


現在の「性的感情を著しく刺激するもの」という「不健全図書指定基準」については、約50年にわたる条例の運用の中で、出版業界との間で一定の共通了解ができており(問12を参照して下さい。)、運用にあたっては非常に限定的な適用がされています。
性的刺激描写の程度がその基準にまで至っていない場合は、子供に対する悪質な性行為を描いた漫画などであっても、子供に売らない規制の対象にはなっていないため、今回の改正で指定基準を追加しようとするものです(問16を参照して下さい)。
一方、業界にお願いをする「自主規制」についても、これまでの対象は「性的感情を刺激するもの」のみでした。
このため、今回新たに「自主規制」の対象として、業界に対し、子供に売らない、見せないなどの取組をお願いするのも、その内容が今までの自主規制の基準には入っていなかった漫画などとなります。
これは、上記の、「不健全図書指定基準」の追加に関する考え方と同じです。

注釈
都は「いわゆるエロ漫画」には「性的感情を著しく刺激するもの」と、そうではないものがある、と考えている(p.15筆者注釈部参照)。
そして、「性的感情を著しく刺激する」という基準は出版業者との一定の共通了解が成立していることを認めている。すなわち、現在行われている、いわゆる「成年マーク」をつけて区分陳列するという、業界の自主規制を肯定しているわけである。

赤線アンダーライン部分(筆者追加)は、すなわち「成年マークがついていないもの」ということになる(上記筆者注釈部参照)。
これはいわゆる「コンビニ誌」と呼ばれるエロ漫画のことだ。こう呼ばれる理由は、業界では「成年マーク」がついたものはコンビニに置いてはいけないことになっているからである。
都はつまり、これについて自主規制を求めているということになる。

ここに至って、ある疑問が生じる。
筆者はいわゆるエロ漫画家の一人であるが、コンビニ誌では内容がかなり規制されており、まず性交表現をかなりソフトにしなければならず(例えば性器のアップは避ける、汁の表現を抑える等)、修正(一般にいう『消し』)も大きい。

そして、これが今回のポイントだが、NG項目が非常に多い。もちろん業界の自主規制である。
例えば、相手の年齢を問わず、強姦はNGである。同意の下のSMですら基本的にNGである。
また、原則として高校生以下もNGである。「原則として」というのは、実際、漫画家は必ずしも厳密にキャラクターの年齢設定をするわけではないから、高校生くらいの年齢に見えるキャラクターを描く場合があり(その作家の絵柄にも影響する)、その場合には高校生に見えないように工夫をする、ということだ。具体的には、制服を着せてはいけないとか、教室を描いてはいけない等。
この年齢表現規制の具体的な態様は出版社によって多少のバラつきがあるが、少なくとも高校生以下はNGということ自体は共通しており、ましてやランドセル背負った小学生なんて完璧にNGである。
さらに、近親相姦もNGである。
こうしたものを描くときは「成年マーク」のついた雑誌で描かなければならない。つまり、コンビニには置けないのである。

さて、都が規制対象としようとしているのは果たして何であろうか?
これが第1の疑問である。

都が自主規制を求めているのは、いわゆる「コンビニ誌」である(筆者注釈に前述)。
しかし、前述の通り、コンビニ誌は内容が規制されている。強姦もロリも近親相姦もない。
更に、今からコンビニに行ってすぐ確認してもらえるはずだが、その販売態様も規制されている。封印シールを貼って立ち読みができなくしてあり(当然、子供が中を見る事はできない)、成年雑誌コーナーとして区分陳列されている。
つまり、販売態様も自主規制されているのだ。
都は一体何を以て規制が必要と考えているのか。
こうした自主規制を知らないのか、あるいは知っているがそれでは足りないと判断しているのか。
これが第2の疑問である。

壺・注釈
そもそも『幼い子供に対する強姦モノ』が一般向けで売られていてさらに現在の有害図書制度で規制できてないことなど殆ど存在しない。つまり新しい規制など必要ない。

14.「不健全図書」の指定はどのようにして行われるのですか?都の職員が勝手に決めることはないのですか?


「不健全図書」としての指定は、条例と、条例の施行規則に明記されている基準に基づき、東京都が行います。
しかし、指定すべきかどうかは、出版や映画・新聞等の関係業界の代表者、都議会議員、保護者の代表などの第三者で構成される「東京都青少年健全育成審議会」に判断をお願いし、そこで「指定すべき」との判断が下されたもののみが「指定」される仕組みになっています。東京都の職員が勝手に判断して指定を行うことはできません。
この仕組みは、昭和39年に条例が作られた時から変わっておらず、今回の改正後も同じ仕組みにより、「指定」が行われます。

注釈
偏ったメンバーを選定することが可能であることは言うまでもない。
そもそも改正案を作る時点で規制対象となる業界に一切意見を聞かず、パブリックコメントも無視しているのだから、メンバーの選定を公平にするから信用しろと言われても無理である。

壺・注釈
規則でメンバーの1/3が東京都職員と警察関係者である。彼らが規制に反対するはずがないので時点で既に大きく偏っている。
さらにメンバーの選定は知事の権限となっている。ここでもかなりの恣意性の危険がある。

15.現実の子供の性交経験率は高くなっているのに、子供の性行為を描いた漫画やアニメを子供から遠ざけても意味がないのではないですか?


規制の対象は、いわゆる「エロ漫画」のうち、子供への強姦や近親相姦などの悪質な性行為を、あたかも楽しいこと、普通のこととして描写しているようなものなど、子供に対する悪質な性行為のシーンを「売り」にしたものに限られます。
通常の子供が経験する性交と、このような悪質な性行為は、明らかに別物であり、性的判断能力が未熟である子供がこのような漫画などを読むことで、悪質な性行為への「誘い」に対する子供自身の抵抗感が薄れるおそれがあり、また、そのような性交を普通のこと
として、真似て実践してしまうおそれもあります。
このような漫画などを子供に見せたくないというのは、親として、ごく自然の感情であり、このような漫画などを子供に見せないのは、未熟な子供を守る大人としての責務であると考えています。

注釈
犯罪である強姦と、倫理的な問題である近親相姦を同列に語ることの当否は別論に譲るとして、いずれにせよこれらの行為の描写は、「コンビニ誌」では現在でも既に自主規制によってNGであり、「成年マーク」をつけられて区分陳列された雑誌でないと載せることはできない。当然、青少年が買うこともできない。(p.16筆者注釈参照)

規制を求める人々はしばしば「こんなものが簡単に買える」「何ら規制されることなく書店の店頭に置かれている」と言うのだが(例:都小P→http://ptatokyo.jugem.jp/?day=20100316)、そんなに業界のルール違反をしている店があちこちにあるのだろうか。少なくとも筆者は見たことがない。それとも、彼らはよほどいかがわしい地域に住んでらっしゃるのだろうか。
いずれにせよ、そんな店があれば、そこに行って「業界のルールを守れ」と言えばいいだけなのだが。

また、猪瀬直樹副知事が「規制すべき漫画」の具体例として挙げた漫画が明らかに今回の規制対象とはならない内容であること(p.6およびp.7参照)に至っては、「反対派は改正案を誤解している」と主張する副知事自身が改正案を理解していない証拠であり、全く笑えない話だ。

第1の疑問と第2の疑問(ともにp.16注釈に前述)とを併せて考えるに、都は果たして本当に実態調査をした上で規制が必要としているのか。
少なくとも業界(エロ漫画雑誌を発行している出版社やコンビニエンスストア、アダルトコミック専門店など)から自主規制の事情を聞くということは一切していないと考えられる。

壺・注釈
条文には『子供への強姦や近親相姦などの悪質な性行為を、あたかも楽しいこと、普通のこととして描写している』と書いてない。
しかも子供というと幼いイメージがあるが、条文では18歳未満である。
つまり、高校生のセックスも規制の対象となっている。

16.不健全図書を持っていると、取り締まられたり逮捕されたりするのですか?


青少年健全育成条例は、青少年を守ることが目的であり、不健全図書については、青少年の健全な育成を妨げるような図書類を青少年に販売等させないような環境整備を規定しています。
したがって、対象となる不健全な図書類の存在自体が悪いことであるとして、それを持つことを「犯罪」として取り締まったり、逮捕したりするということはあり得ません。
なお、こういった図書類を「創作すること」、「出版すること」、「18歳以上に販売等すること」も一切禁止していません。
今回の条例改正で、漫画などが描けなくなる・読めなくなる・持っているだけで取り締まりを受けるといったご懸念は、全て児童ポルノ法(※)との混同に基づく誤解であると考えます。

(※)児童ポルノ法では、実在の子供の性交等を描写した児童ポルノについて、その製造や一般への販売等が処罰の対象とされています。

注釈
この部分はその通りである。
ただし、法的効果についてはその通りだが、表現の自由に対する事実上の萎縮効果については何のエクスキューズにもなっていない。
他県への影響力についてはp.14注釈に書いた通りである。有り体に言えば、答えられないのでケムに巻いている。

17.そもそも、なぜ、条例を改正し、規制対象を広げる必要があるのですか?


子供の健全な成長を妨げる図書類を、子供に見せたり売ったりしないための制度は、昭和39年の条例制定時から存在しています。
これまでは、いわゆる「エロ」系の図書類については、「性的感情を著しく刺激する(読み手に対し性的興奮を与える)もの」という基準のみに基づいて、子供への販売制限が行われていました。具体的には、セックスシーンや性器などの描写が非常にリアル・露骨な
ものや、表現方法が極めて卑わいなもの(性器の挿入に伴う擬音の描写が執拗だったり、体液などの描写が激しいもの)のみが該当します。近年では、月に1~4冊程度が指定されており、そのほとんどが漫画です。
一方、性的刺激描写の程度がその基準にまで至っていない場合は、子供に対する悪質な性行為を描いた漫画などであっても、現在は子供への販売制限の対象ではないため、子供でも簡単に手に取れるような状況で売られています。
例えば、体つきが、まだ十分に成熟していない小学生と大人との性交シーンが描かれていても、そのような描写があるだけでは「著しく性的感情が刺激される」とは言えません。
しかし、子供が大人との性交を喜んで受け入れているような漫画などを、実際に子供が読んだ時、「このようなことは楽しいことなんだ」「自分もこのようなことをやってもいいのだ」と、誤った考えを持ってしまう可能性があります。
そこで、「性的感情を著しく刺激するもの」という基準に当てはまらなくても、「子供に対する、著しく悪質な性行為をあたかも楽しいこと、許されることのように描いているもの」について、不健全図書の指定基準に追加しようとするのが、今回の改正の考え方です。

注釈
ど こ で ?

としか言い様がないのだが…。
改めて書いておくが、「条例で規制されていないこと」と「いつでも誰でも自由に買えること」はイコールではない。
その間には「業界の自主規制」があるからである。

今回の対象が「成年マークのついていないエロ漫画」であることは、この文書自体が明言している。
そのうち「子供に対する悪質な性行為を描いた漫画」であり、かつ「簡単に子供が手に取れるような状況で売られているもの」が本当に実在するのか。非実在エロ漫画か。とかいうどうしようもないギャグでもかまさないとやってられない気分だ。

まあそこは気を取り直して。
万が一、仮にそんなものがあったとして、条例で規制しなければいけないほど、また、新たに「非実在青少年」なんて概念を作り出さなければいけないほど、巷にあふれかえっているのか。
筆者には全くそうは思えない。

今これを読んでいるあなた。
そう、あなた。
今すぐコンビニか、近くの本屋に駆け込んで、成年マークのついていないロリエロ漫画を探してくれないだろうか。
都の説明によれば、普通の書棚に置いてあって、簡単に見つかるはずだから。

壺・注釈
条文にはそんなこと書いていません。
条例案では『18歳未満の性交を肯定的に描くこと』が規制の対象です。


質問集に対する私的反論

まず条文の内容と都の説明はあまりにも違いすぎる。
都は繰り返し規制の対象は、『18歳未満を対象とした強姦などの悪質な性行為を不当に賛美・誇張しているもの』としているが、条文では『18歳未満の性行為を肯定的に描いているもの』としか書いてない。
両者の間には大きな隔たりが存在する。

個人的意見として、私は『18歳未満の性行為を肯定できるものではない』『それを見せることによって認識が歪む』というのがあまりにお粗末だと思います。
そもそも、18歳未満の人間が性行為をすることが歪んでいるのでしょうか?間違っているのでしょうか?
江戸時代なら14歳で元服していたわけです。それを変な価値観の下で『18歳未満はセックスするな』『エロ本も読むな』というのは本当に正しいのでしょうか?

これが『13歳未満に対する強姦等の性行為』とかなら分かりますが、18歳未満の肯定適正描写を一律規制する今回の条例はとても支持できません。

参考

【東京都の青少年育成条例】非実在青少年の必要性についてのノート
http://ameblo.jp/ohkoshi/image-10519196762-10514022943.html
 協議会の力学について
 http://ameblo.jp/ohkoshi/entry-10503939275.html
 都の発表した見解への疑問・反論・意見ノート
 http://ameblo.jp/ohkoshi/entry-10504192904.html
「藤本由香里さん、「(都条例改正に関する)質問回答集」の問題点指摘」 -ツイッター発言まとめ-
http://togetter.com/li/17007

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