自治体職員有志の会

第5回オフ会

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kiyonk

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<自治体職員有志の会の第5回講演会・オフ会でのニセコ町逢坂町長のお話>

○日 時:平成16年6月18日(金)18:00~19:30
○場 所:ニセコグランドホテル
○講 師:ニセコ町長逢坂誠二氏
○テーマ:「自治基本条例の『心』を具現化する職員像と人材育成について」 
○内 容:以下のとおり(文責 自治体職員有志の会 会員:山路)

<講演概要>
・自治を進めていく上で情報が大事である。情報のないところで自治はない。
・情報がなければ健全な問題意識はない。情報こそが自治を動かす原動力である。
・最近、住民参加、参画ということがよく言われるが、これは何も特別なことではなく、責任をもって自治の活動をするということなので参加は当たり前のことで特別なことではない。
・戦後、しばらくの間、日本を引っ張っていくには自治のことを考えなくてもよかったが、財政難、価値観の多様化、少子化などを背景として、自治健全に機能しなければ、日本の諸課題は解決できない状況となっている。
・1985年のプラザ合意以降、日本の財政政策がおかしくなった。
・行政では、情報を積極的に出し、厳しいこともお話した上でやっていく仕組みが大切である。
・そうは言っても情報共有は骨の折れることであり、戦後50年の間続いた「お任せ民主主義」の体質はいかんともしがたい。こういったお任せ体質は、市民ばかりではなく、職員にもあった。
・町政についてルール化、明文化が大事ということで「まちづくり基本条例」をつくった。
・こういった条例についてはこれまで日本に参考にするような雛形がなかったので職員は右往左往したが、「逆に先例がないということは自由にやれるということだ」と励ました。
・北大を中心に外部からの知識を吸収するように務めた。札幌地方自治研究会がベースになって九州大学へ移られた木佐教授を中心に指導していただいた。
・その内容は非常に精緻でうまく使いこなせないと思ったので、原石というかダイヤモンドを身の丈に合うものにした。その基本姿勢は単純化である。
・指導者の基本的な資質で大切なことはコミュニケーションである。レーガン元大統領はグレート・コミュニケーターと言われたが、コミュニケーションをはかるには言葉の単純化が大事である。つまり、当たり前の感覚を大事にすることである。
・私は「アイデア町長」と言われたりするが、それは当たらない。日常の中にしなければならない仕事のカギが一杯ある。
・自治の活動は民主主義を語る上で欠くことができないが、自治と民主主義の関係が忘れ去られている。
・イギリスのブライスは「(民主主義の源泉たる)自治は民主主義の学校である」と言った。<民主主義の源泉たる>という枕詞を忘れてはいけない。
・民主主義は文字として理解していても皮膚感覚としてわからないというところがある。分権といっても世界の潮流からは相当ずれているのではないか。
・元総理の石橋湛山は「地方自治の比較的重要なのは、その小なりにあり」と言っている。また、福沢諭吉は「子供に鋭利な刃物を与えて、自身を傷つけることに懲りて学ばなければならない」と言っている。これらのことからも明らかなように「実践と当事者意識なしに民主主義は機能しない」と言える。
・国民年金の議論を聞いていると、国政で議論している人は、自治の実体験を欠いて机上で議論していると思う。市町村合併、住民基本台帳の問題もしかりである。
・職員にどう成長してもらうかが自治体にとって財産になる。公務員のランキングで国ー都道府県ー大きい市ー小規模市町村ということが言われるが、小規模町村では職員の能力開発がされていなかっただけである。
・国の職員は確かに優秀だが、すごい研修を受けている。自治体職員は職員になる前に、研修を受けていない。
・議会から職員の研修費を50%削減の要求があったが、厳しいときほど研修に力を入れるべきだ。
・コンサドーレ札幌は財政の健全化のために有力な選手を出しているが、これではたとえ、財政は再建できてもチームを維持できない。このことからも財政が厳しい中でも人を育てることがいかに大事かがわかる。
・「行政はサービス業である」とおっしゃる方があるが、これは少し違うと思う。
サービス業の意識を持って業務に当たることはもちろん大切なことであるが、行政の本質は権力である。経済効率に合わないことをやるということ。
・行政の世界の常識は一般の世界と異なる。もちろん、NPMなどの新たな行政経営の手法は必要であるが、行政の本質ではない。
・行政の仕事を優先順位の低いものからそぎ落としていって最後に残るのは広義の「公共の福祉」である。これを忘れると「納税しない者は選挙権もなくていい」という極論につながる。
・民主主義は数ではなく、多様性を認めることである。
・合併で住民投票をする場合があるが、すべての住民が同じ重さでステークホルダー足りうるかという疑問を持っている。というのは合併しても何の影響もない人、合併でプラスになる人やマイナスになる人がいるのに同じ一票が正しいことかという気がする。
・たとえ、結果は同でも違いをいかに知るかというプロセスが大切である。

<質疑応答>
Q)「情報のないのはメニューのないレストラン」ということを言われてる。一方住民の側も自治を自身のことと思う当事者意識が欠如していることもある。このことから、行政はわかりやすい情報というメニューを提示し、住民は当事者意識を持つということが自治では大事だという理解でいいか。
A)そのとおり。当事者意識が大事で、これがないととんでもないことになる。
Q)自治の手法について
A)自治は職員が実践して理論武装し、また実践すること。世間の常識が通用しないのは税の問題で顕著である。交流を大事にしており、他の団体へ出向くだけではなく、マスコミや民間企業からも人を受け入れている。異物を組織の中に入れておくことがが大事で、交流のないところに発展はない。歴史上、よそと交流のなかった文明は滅びていく。
Q)あるべき職員像を教えて欲しい。
A)思いつきだが、あるべき職員像としては、「柔軟性」、「開拓力」、「やさしさ」が挙げられる。

<感想>
・時事通信の官庁速報によると、仏教大調査で全国の市区町村長が最も手本にしたいと考えるのは北海道ニセコ町という結果が出ました。
・よく小規模自治体がすぐれた取組みで話題になると「あれは小さいところだからできることだ」ということが言われますが、これはまったく後付けの理屈であり、できないことの言い訳に過ぎません。
・逢坂町長が実践され、持論でもあり、私も使わせていただいている「高位平準化」でニセコ町の取組が全国に広がり、日本の閉塞状況に明るい展望が開けることを願いたいものです。

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