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華めきたり.3

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華めきたり






【話ノ二】




 宮ノ杜家の三男坊、茂が銀座へふらりと遊びに出かけたときの事である。帝国百貨店の前に見慣れた顔を見つけた。その姿は屋敷に良く出入りしている男、有田喜助に間違いない。

 一体喜助が百貨店で買い物などとは、どんな物を買ったのだろうか。随分と女性に興味はあるようだが、浮いた話しは喜助が屋敷に出入りし始めたこの数年で一度も聞いたことが無い。もしかしたら良い人でも出来たのだろうか。その女性の気を惹く為に舶来物の髪留めでも買ったのだろうか。ふとそんな軽い好奇心が湧いた茂は、澄ました顔で茂とは反対方向に歩き出した喜助の後をつける事にした。


 街鉄に乗り込んだ喜助を目で追いながら、待たせていた車に飛び込んだ茂は運転手に早口に言った。


「ごめん、あの街鉄を追いかけて」

「畏まりました」 


 しばらく一人興奮気味に喜助を尾行していたが、どうやら向かう先は茂の家である宮ノ杜邸のようだ。最寄りの駅で降りた喜助を追い越し、少しばかり拍子抜けした茂は、歩いて屋敷に向かう喜助に興味を失いかけた。

 父に頼まれた物でも買ったのだろう。そう思い直し、恭しい洋館の入り口で止まった車から降りた茂だったが、玄関に入った所で出迎えてくれた妹の薫の姿に思考を回転させた。


「お帰りなさい、茂兄さま」

「薫? どこかへ出かけるのかい?」


 出かけるにしては部屋着のままだし、それにしては心なしか浮かれているようにも感じられる。


「いいえ、ちょっと人を待っているの」

「ふうん。お友達?」

「お友達……。そうね、お友達かな」

「何だいそれは。変な答えだねえ」


 と笑っている所へ、玄関の扉を開けて入った来たのは喜助だった。


「おっと、茂様薫様、お邪魔しやす」

「やあ喜助」

「こんにちは、喜助さん。お待ちしてました」

「えっ?」


 まさかの薫の言葉に、茂は目を丸くさせた。


「すいやせん、ちっとばかしお約束の時間に遅れてしまいやした」

「いいえ、全然構いませんよ。それじゃあ茂兄さま、また」

「失礼しやす」


 ぺこりと頭を下げて茂の前を去って行く二人の後ろ姿に、しばらく茂は動く事が出来なかった。

 これは一体どういう事なのか。







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