チェンジ・ザ・ワールド☆

華めきたり.6

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華めきたり






【話ノ五】




 休日の午後、妹の薫以外の男兄弟だけが珍しく揃った昼食の時間。


「最近薫の行動がおかしい」


 呟くように言った博の言葉に、すかさず茂が同意した。


「あ、それ、俺も思った」

「おかしいって、どういう事ですか?」


 手を止めた進が尋ねる。茂はしかめ面を作り、軽く一同の顔を見回して先日の出来事を話す。


「先週偶然銀座で喜助を見かけたんでね、後をつけたのさ。百貨店から浮かれた顔をして出てきたもんだから、女にでも会うんだろうと思ってさ」

「ほう。あやついつの間に女を作ったのだ? 知らなかったな。それで?」

「それで途中で家に向かっているって分かって、追いかけるのを止めたんだけど……玄関で薫が喜助を待ってたんだよ」

「何!? それでは喜助の女は薫だと言うのか!?」


 ガタン!!


 と勢い良く立ち上がった勇に、食事を終えてナフキンで口を拭いながら正が鼻で笑う。


「そんな訳あるはずがない。何故薫と喜助がそんな仲になるというのだ」


 その言葉を制したのは博と進だった。


「いや、俺も前に喜助が薫の部屋で楽しそうに話してたの聞いたよ!」

「ああ、俺も薫がテラスから喜助を見つめていたのを見たよ」

「いつの間にそんなに仲良くなったんだ? ん? そう言えばこの間珍しく銀行まで来ていたが、確か人と待ち合わせをしていると言っていたな……まさかーーー」


 美しい着物姿の薫を思い出し、正が言葉を詰まらせる。


「薫を喜助なんぞにやる訳にはいかぬな。それに父上がお許しになるとは思えんっ」


 すぐに椅子に座り腕組みをすると、軽く天井を仰ぎながら不満げに勇は言い放った。その頭の中で数日前に自室を訪ねてきた薫の様子を思い返す。


「お前達、本当っ、馬鹿だね」


 部屋がざわついてきた所を、雅が一蹴する。


「馬鹿ってなんだよ! 雅は薫が喜助と結婚してもいいのか!?」

「だから馬鹿だって言うんだ。冷静に考えれば分かるでしょ?」


 博が詰め寄るのをひと睨みして立ち上がると、雅は一同を見回す。

 全員が口をつぐんで雅の様子を見守る。

 細い髪がさらりと揺れ、雅は口を開いた。


「いいかい、今まで特に接点もなく挨拶程度しかしていなかった薫と喜助が、ここ最近急に仲良くなった。それには理由があるはず」

「理由?」


 茂が首をひねる。


「そうだよ。例えば、薫が喜助に何か頼み事をした。とか。で、考えられるのは僕達には頼めない様な事」

「それがきっかけだとしても、仲良くなっている事は事実だろ!? 俺は嫌だよ! もし喜助と結婚なんかしたら、薫が苦労するじゃないかっ! 父様の情報屋なんだからきっと危ない事もするだろうし、第一薫にはもっといい男が見つかるに決まっているんだから!」

「落ち着け、博」

「落ち着いてなんていられないよっ! 俺、薫に確かめて来る!」


 とうとうしびれを切らした博が部屋を出ようとした瞬間、静かに扉が開き、千富が入ってきた。


「何を騒いでいらっしゃるのですか? 廊下まで声が聞こえていましたよ。お食事がお済みになったのでしたら、お部屋へお戻り下さい!」

「あ、千富……」


 勢いを削がれた博はしぼんだ風船の様に小さくなり、それに感染するように全員が口を閉じた。





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