チェンジ・ザ・ワールド☆

華めきたり.9

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華めきたり






【話ノ八】




 話しはさかのぼる事二月前。

 政治家を父に持つ友人に、どうしてもと頼まれ出席したパーティーでの事。

 薫の父である玄一郎にこびを売るため、友人の屋敷に入ってから止まない大人達の挨拶にうんざりしていた薫は、こっそりとテラスへと抜け出した。

 金と権力を持つという事は、さらなる欲を生み出す物だと薫は辟易する。一体どこまで金持ちになれば気が済むのか、どこまで力を持てば満足するのか。父親とて然り。全てを意のままに動かす神にでもなろうとしているのか、薫にはその場にいる大人達の背後にどす黒い渦が竜巻の様に巻き上がっているのが見える気がした。

 人目を忍んで隠れるようにテラスの柱に背を預けていると、誰かが小声で話しているのが隣りのテラスから聞こえてきた。

 なんとはなしにぼんやりとしていると、勝手に会話が耳に入って来る。その言葉の端に、“宮ノ杜”という名前が確かに聞こえ身構える。隣りの会話に集中し、今度はしっかりと聞き耳を立てた。


「あまり大きな声では言えないが、今度の選挙、何やら動きがあるやもしれん」

「やはり宮ノ杜が関係しているのだろうな」

「なかなか尻尾を出さない古狸だ。今、こちらの手の者を使って宮ノ杜家を探らせている。近いうちに良い報告が出来るだろう」

「それは楽しみだ」


 三人程の男たちがそんな会話をしていた。薫は背筋にしびれが走り、そっとテラスから離れると少し離れた所の開け放たれた扉からパーティー会場へと戻った。

 それから、宮ノ杜を探っているという男の事を探すべく、恐らく父の身辺の人間を一番把握しているであろう喜助に近づき情報を得ようとしていたのだが、なかなかうまく聞き出せないでいた。おかげで兄弟達からは喜助を好いているのではないかという憶測を立てられ、動きづらくなってしまったのが正直な所だ。















 「はあ……いたっ!」


 頬杖をついてさらにため息までついた所で、薫は額に痛みを覚えて身を引いた。


「雅……」


 仏頂面の末弟は、腕組みをして薫の向かいのソファに腰掛ける。


「僕にくらい、本当のことを話してもいいんじゃないの?」

「なあに?」

「とぼけても無駄だからね。博がうるさくて、ものすごく邪魔なんだよね。薫と喜助がいい仲になったんじゃないかって。ばっかみたい! そんな訳あるはずないのにさ!」

「あら、そうとも言えないかもしれないでしょ?」


 さらにとぼけようとする薫を鋭く睨み、雅は細い足を組んで不敵に笑った。


「僕まで騙すつもり? いい度胸じゃない。いいよ。お前が何をコソコソやってるのか、僕が暴いてやる。一週間以内に僕が分からなかったら、お前のそのおとぼけに僕も手を貸すよ」


 そう言い残すと、はっはっは! と高笑いをしながら部屋を出て行った。


「やれやれ、別にとぼけているつもりは無かったんだけどなぁ」


 そう、ただ兄弟達に女が首を突っ込む事ではないと一蹴に伏されるのが分かっていたため、一人で探っていただけなのだ。それがまさかこんな大事になってしまうとは。

 再び小さくため息を吐くと、薫は時計に目をやり腰を上げた。





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