チェンジ・ザ・ワールド☆
華めきたり.5
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華めきたり
【話ノ四】
コンコン……
「何だ?」
机に向かって新聞を読んでいた勇は、眉間に皺を寄せて返事をする。
と、すぐに可憐な声が扉越しに聞こえてきて新聞から顔を上げた。
「勇兄さま、お忙しい所ご免なさい。お時間少しいいかしら?」
「なんだ、薫か。開いているぞ、入れ」
「失礼します」
「どうした」
伏し目がちに近づいてきた妹に、勇は首を傾げる。
どことなく神妙な様子の薫。
「少しお話がしたくて」
「そうか、ならばこちらへ来るといい」
勇に勧められた椅子に浅く腰掛け、薫は真剣な顔で勇と向き合った。
「勇兄さま、男性とは、どのような時に誇りを感じ、生き甲斐を感じるのでしょう?」
「何?」
「私は女です。家で兄さまや博や雅達の帰りを待つ事しか出来ません。時々料理や繕い物のお手伝いをしますけれど、それが兄さま達のお役に立てているのか分かりません。ですから、男性が一生懸命お仕事をなさっているのを拝見していると、とても羨ましく思うのです」
「そんな事は決まっている。国家の為に命を投げ打つ事だ!」
「女でも、同じでしょうか?」
「ふん、女ごときに国を守る事など出来る訳が無い」
腕組みをして鼻で笑う勇に、薫はほんの少し眉根を寄せる。
「どんな男性でも、ですか?」
「俺は、だ。他の男の事など知らぬ。だが、男児に生まれたのならば国家の為に尽くさずしてどうする! 女は国の為に働く男の為に尽くせばよい。それが結果国を守る事に繋がるではないか」
「勇兄さまにお聞きした私が間違いでしたわ……」
「何? 俺の意見が間違っているとでも言うのか!?」
「いいえ、そういう事ではないの。勇兄さまは軍に所属しておられて、偉い方もたくさんご存知でしょう? ですからそういった方達の事も含めてお聞きしたかったの」
「俺の知り合いにいる上の連中など、金と権力にしか興味のない輩がほとんどだ。そんな腐った連中に国を任せられぬからこうして俺が日々努力しているのではないか!」
「そうですわね。勇兄さまは本当に弱き者が救われる国にしたいのですものね」
「その通りだ」
「その割に使用人には冷たいですわね」
「使用人は使用人だ。弱き者ではない」
身を乗り出し始めた勇を牽制するように、薫は笑顔で立ち上がった。
「ありがとうございました。勇兄さまのお話が聞けて、楽しかったわ」
「待て、話しはまだ終わっていないぞ!」
そそくさと出て行った薫の残像を見ながら、勇はいつもと違う様子の妹に首をひねった。
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