チェンジ・ザ・ワールド☆
利根6日目・No.1
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私のやんごとなき王子様
6日目
昨日はまた落ち込んじゃったけど、さなぎのおかげで元気になり、頭痛が嘘のようにスッキリと目覚める事が出来た。
そして今日も朝から衣装や小物と格闘中だ。
一段落ついた所で窓を開けて空気を入れ替えながら、眼下に広がる真っ青な空と海をどこまでも広げる景色を見、大きく息を吸い込んだ。
「はあ~。気持ちいい」
朝から調子のいい私は、作業も面白いようにはかどっていた。
おかげでこうやって気分転換に空気の入れ替えをする余裕もあるんだけどね。
でもあまり長い時間開けてたら風が吹き込んで生地が飛んだりしてもいけないから、私は海の匂いを肺にいっぱい溜め込んで窓を閉めた。
室内に視線を戻すと皆さすがに作業に集中してて、それは違うとかこっちが先だとか言う悲鳴にも似た声が飛び交っていた。部屋に出入りする人も多いし、映画で見たような野戦病院状態になっている。患者さん役が布って所は平和的で救いだよね。
そんな中、ふと利根君と親しげに話す女子の様子が向こうに見えて、その子が一瞬こちらを向いてすぐに反らした。
え? ……何?
私と目が合った子は確か利根君と同じクラスの子で、実家が日本舞踊の宗家とかだと聞いたことがある。和風な彼女は利根君とすごくお似合いで、大和撫子って言葉がピッタリだ。
私も彼女みたいなら利根君の隣りにいても浮かないのかなあ……。
そんな事を考えながら、取りあえず作業に戻った。調子がいいとはいえ、仕事はまだまだ山積みだ。
そして昼休みが近くなった所で、小道具の監督をしている先生から昼食後、数時間海で遊ぶ時間を取ろうという提案がなされた。
これからますます忙しくなるから、その前に小休止をさせて気持ちをリフレッシュさせようという目的があるみたい。
もちろんその提案にはほとんど全員が大喜びで賛成した。
私も大きく手を挙げて賛成の声を上げたのだった。
だってせっかく目の前に海があるんだもん、入らなきゃ損だよね!
昼食の後、少し食休みを取ってから私達小道具担当は皆揃って海に来ていた。
さすがプライベートビーチ。私達以外には誰もいない! なんて気持ちがいいんだろう!
「う~~~~ん、気持ちいい!」
気分爽快とはまさにこのこと。私はビーチで思いっきり伸びをした。
水着は新調出来なかったから去年と同じものだけど、気に入ってるから良しとしよう。
辺りを見回すと、皆それぞれビーチバレーを楽しんだり、海に入って泳いだり思い思いに楽しみ始めている。
ふふ、楽しそうだな。ーーあ……
ぐるりと辺りを見回していると、利根君がこちらへやって来るのが見えた。
水着姿の利根君を見たのは初めてで、その姿にドキリとする。
シャツを羽織ってるけど、全部開けられたそのシャツの隙間から見える肌は華道のイメージ通りで、白くて綺麗で、日焼けしたら溶けちゃうんじゃないかなんて心配になっちゃうくらいだった。
「小日向さん、どうしたの?」
私の隣りまで来ると、利根君が首を傾げた。
溶けちゃうって思ってたのが顔に出てたのかな?
「ううん、利根君日焼け大丈夫かな? って思っただけ……」
「日焼け? どうして?」
「いや、なんとなく大丈夫かなって」
やだもう、何言ってるんだろ私。
「ああ、もしかして俺が色が白いから、日焼けして倒れちゃうんじゃないかとか心配してくれてるの?」
「あっ、えっと、その……」
可笑しそうにクスリと笑うと、利根君は手で影を作って太陽を見上げた。
「今日は日差しが強いからね。俺は焼けてもすぐ戻るから平気だけど、小日向さんの方こそ大丈夫? 昨日の夜ちょっと顔色悪かったみたいだけど」
そう言って次に心配そうにじっと私の目を見つめる。
「大丈夫だよ。昨日は取材の人に圧倒されてちょっと疲れたのかも」
「そっか、あんなに大人に囲まれる事なんてないもんね……小日向さんの水着、すごく可愛いね。とっても似合ってるーーっと。これってもしかしてセクハラかな?」
いつも笑ってる利根君は本当に素敵だ。いつもいつもこうやって優しい言葉をかけてくれて。
「え? 本当? ふふっ、ありがとう。利根君にそう言ってもらえると、すごく嬉しい」
私も素直な言葉が出て来る。
「泳いでもいいけど、まだ作業が残ってるから体力は残しておかないといけないよね」
「そうだね。利根君はーー」
私が利根君は泳ぐの好き? と聞こうとしたその時だった。
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