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ゆびきり.3

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“ゆびきり” の、げんまんとか針千本とかゆびきったって言葉は怖い











 次ぎにやって来たのは大きな商店街。色々な店がアーケードの中にずらりと並ぶ、毎日お祭り騒ぎのような所だ。

 しばらく歩いて雑貨屋を見つけると、操は土方の腕を引いて中へ入った。触れられた時、土方はほんの少しドキリとした。柔らかい操の手の感触に、不覚にもまた甘酸っぱい思いが心の奥から出て来そうになる。

 自分には女を好きになる資格は無い。

 そうずっと言い聞かせて来た。愛した女、みつばを悲しませ、死に追いやった。そんな自分が誰かを好きになるなど、あってはならないのだ。


「土方さん、ここの巾着、可愛いですよ」


 操の言葉に我に返る。もう腕から手は離れていて、それを寂しいと思ってしまう。

 さほど広くない店内には、たくさんの商品が並べられていて色鮮やかだ。

 操が手に取った巾着は落ち着いた紫色で、小花が品良くあしらわれたものだった。お妙くらいの年頃の娘には丁度よいかもしれない。


「いいんじゃねえか。俺は分からないからあんたに付き合ってもらってんだ。あんたが欲しいと思うやつで構わねえだろ」

「いい加減ですねえ」

「俺が誰かにやる訳でもないし、近藤さんが俺なんかに頼む方が悪いんだよ」 

「なるほど、筋が通ってます」

「当たり前だ」

「それじゃあこの巾着と……この帯飾りにしましょう」


 そう言って次ぎに操が見つけたのは、金色の枠で出来た鞠の中に小さい黒い花のモチーフが入れられ、その下に少し大きめのこちらも黒の蝶のモチーフが付けられた綺麗な帯飾りだった。

 あまりお洒落に興味のない土方でも、それらがセンスの良い品物と分かる。


「いいんじゃないか」

「はい、じゃあ買って来ますね」


 そう言って微笑むと、操は店員に商品を渡し、プレゼントである事を伝えた。

 その姿を店の端から伺っていた土方は、ただならぬ視線を感じ、後ろを振り返る。


「っ!?」


 そこにいたのは、何故か異常に目を細めた倒幕派の攘夷浪士、桂小太郎とペット? のエリザベスだった。


「おまっ……」


 土方が何か言うより早く、桂は脱兎の如くその場から走り去ってしまった。


「おいっ、待てっ! くそ、追うか?」

「すみません、お待たせしました……。土方さん、どうかされました?」


 桂を追いかけようか迷っていると、操が戻って来た。


「いや、ちょっと見知った顔がいたんだが……」

「そうですか。今日は随分知り合いに会いますねえ」


 まったくだ。

 と心の中で毒づきながら、取りあえず目的の物を手に入れる事が出来たので少しだけ安堵する。

 が、やはり一抹の不安は拭えない。


「買い物も無事に済みましたし、これからどうしますか?」


 隣りに並んで土方を見上げる操に戸惑う。

 どうすると尋ねられても、もう目的は達成したのだし、あとは帰るだけのはず。そんな土方の思いを察したのか、操が首を傾げる。


「せっかくお休みの日に出て来たんですから、買い物だけじゃもったいないですよ。お昼ご飯でも食べに行きませんか?」


 ーーーもしかしたらこれはデートというやつではないのか? 

 土方の頭にそんな考えが過る。


「土方さんは何か食べたいものありますか? ーーーあ、でも何でもマヨネーズかけちゃうから、何食べても同じ味ですよね……」

「お前さらっと失礼な事言うな」

「そうですか? でももし自分が作った料理全部にマヨネーズかけられたら、私だったら結構ショックですけど」


 遠回しにあなたに料理は作りません。と言われているようで、土方は言葉を詰まらせた。


「あ! マヨネーズかけても美味しいお好み焼きなんてどうですか?」

「なんでもいいぜ。あんたが食べたいやつで」

「じゃあお好み焼きで決まりですね。私、美味しいお店知っているんです」


 そう言って笑うと、操は土方を促して歩き出した。

 自分の好みを考えてくれている事を嬉しく思う。

 通り過ぎる時、男達が操を振り返るのに気づく。天然パーマはいつもこんな気持ちで一緒に歩いているのだろうか。

 色々と話し掛けて来る訳でもなく、ただ嬉しそうに静かに隣りを歩く操に、土方は心地よさを感じていた。

 やはり好き、なのだろうか? 認めてしまった方が楽なのだろうか?


「あ」

「あ?」


 歩く道すがら、急に操が声を上げた。

 視線の先には小柄で左目に眼帯をあてた、柳生九兵衛が、驚いた様子でこちらを見ていた。


「九兵衛さん、こんにちは」

「あ、ああ……」


 操の挨拶に顔を赤くし、目を合わせないように答える。


「あ、その、僕は、これからお妙ちゃんの所に行くんだ……あっ、け、決して二人の事を言いふらしたりはしない! だから、その……で、デートを続けて欲しい」

「いや、別にデートじゃないんだけど……」

「しっ! 失礼するっ!」


 素早い動きで二人の間を駆け抜けると、九兵衛は往来の向こうへと走り去ってしまった。


「ちっ……たく、どいつもこいつも、どうして俺達が二人で歩いてたらデートになるってんだ?」

「珍しい組み合わせだからじゃないですか? 私が銀時と二人で歩いていても、誰もそんな事言いませんよ」

「あの様子だと、確実に言うな」

「まあ、人の口に戸は立てられないって言いますから。それに、ちゃんと誤解だって言えば大丈夫ですよ」

「そう……か?」


 あまりにも色んな連中に立て続けに会うおかげか、操ののんびりした様子のおかげか、土方も段々どうでもよくなってきていた。


「あ~、お腹が空いてきましたね。お店、もうすぐですから」















 しばらく歩くと、古びた暖簾を掲げるお好み焼き店に到着した。


「ここです。美味しいし値段も手頃でいいんですよ」

「へえ……」


 二人で店内に入ろうと扉に手を掛けた瞬間だった。


「待て待て待て待て待てえええええ~~~~~~~~!!!!!」


 辺りに響き渡ったその声に、土方と操は同時に振り返った。


「銀時?」

「ちっ、とうとう来やがったか」


 猛スピードで突進してくる銀時。そしてその後ろを波のように着いて来る面々。

 神楽、定春、新八、お妙、さっちゃん、桂、エリザベス、九兵衛。そして何故かゴルフに出かけたはずの近藤までもいる。

 どどどどどど!! と、まるで競走馬のごとく土煙を上げながら近づいて来る銀時達一行。


「そこの二人~~~~!!! 待ちなさーーーーーい!!! 止まりなさい! 止まらないと投げるぞお! 定春のうんこ投げるぞおおおお!!!!」


 とんでもない事を大声で叫ぶ銀時。


「銀ちゃん! 操が一緒に出かけてた相手はあのマヨラーアル! 駄目アルっ! 他の男ならまだしも、マヨラーだけは絶対に駄目あるっっっっ!!!!」

「ちょっと神楽ちゃん、操さんたちの邪魔をしちゃ悪いわ。そっとしておいてあげましょうよ!」

「そう言いながら姉上、何で一緒に追いかけてるんですかっ!?」

「だってぇ、面白そうなんですもの~」

「お妙ちゃん、何があっても僕が君を守るから、心配いらないぞ」

「九兵衛さん、これ鬼ごっことかじゃないですからっ!!」

「トシィィィィィーーーーーっっっっ!!! 俺はお前にお妙さんへのプレゼントを買って来いと頼んだのに、何故お前が操先生とデートをしているんだアアアアアア!!!! お妙さんっ! 俺達もデートしましょう! ね? ねっ!? 見せつけましょうよ! 俺達の愛の深さをっっ!!」

「うっさいゴリラ! 近づくんじゃねえっっっ!!!! おめえは黙って地面に深くささってろ!!」

「ぐほおっ!」

「銀さん! もう諦めましょう! 操さんは土方さんとラブラブなのっ! だから、あたしたちも二人でラブラブすればいいじゃないっ! ていうか、ラブラブになるのよっ!!」

「てめえ、黙れこのメス豚!!! 操を捕まえたらお前の言う事何でも聞いてやるから、さっさとあいつら捕まえろっ!!!」

「ええっ!? 本当っ!? 今の言葉、忘れちゃ嫌よっ!! 待ってて銀さん! すぐに二人の息の根を止めてあげるからっ!!!!」

「ちょっ! バカ! 誰が息の根止めろっつった!? 止めんのはあのマヨラーだけにしとけっ!!!」


 もう、何が何だか、誰が誰だか分からない。まさにカオス状態の団体に、土方は固まる。


「な、何なんだ一体!?」

「土方さん、こっち」


 冷や汗をかいて土煙が近づくのを見ていた土方の手を取り、操は近くの路地に走り込んだ。





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