チェンジ・ザ・ワールド☆
追憶.5
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追憶
翌朝操が目を覚ました後、高杉が部屋へ現れた。久しぶりに誰かが作った朝食を食べ、また一人部屋に残された操は再び読書にふけっていた。万事屋も真選組も診療所も気になるが、よくよく考えれば仕事は操の代わりの医者を呼べば済む事だし、万事屋も元々は一緒に住んでいなかったのだからそう困る事もないだろう。診療所の人たちの怪我の程度は気になるが、操がいなくなった所で特に大変という事もなさそうだ。
「まあ、地球は私一人いなくなろうと勝手に回るしね」
と、そんなお気楽な考えに変わりはじめた頃、部屋の外がバタバタと慌ただしくなりだした。
そっとドアを開けて様子を伺う。
浪人たちが何か言い合いながら走っている。何かあったに違いない。しかし、今ここを出て高杉にそれが知られたら、診療所の人がまた酷い目に遭わされてしまうかもしれない。そう思うと、行動に移しきれずにいた。
ドオオーーーーン!!
しばらく我慢していたが、大きな爆発音に操はとうとう立ち上がった。先ほどから船全体が揺らされるほどの地響きが続いている。今度はかなり大きく揺れた。間違いなくこの船で戦闘が起きている。
行くなら今しかない。
ズウーーーンンンン……
何度目かの揺れが起こると、操は静かに部屋の扉を開けた。
恐らく甲板で何かが起こっているのだろう。先ほどまで走り回っていた人の気配が上方に集中している。部屋を出て、連れて来られた時の船の様子を思い出しながら操は外を目ざした。
あちこちで血の匂いがする。嫌な匂いだ。
船内を走り、崩れた部屋と廊下に突き当たると、操は我が目を疑った。
「神楽ちゃん! 新八君っ!?」
全身傷だらけの姿の2人を見つけ、駆け寄ろうとした時だった。
「っ!?」
突然後ろから刀が振り下ろされた。
「あんたはこっちだ!」
寸でで避けた操は、床に突き刺さった刀を引き抜く浪人と後ろで戦っている神楽達を交互に見、目の前の浪人を倒そうと足に力を込めた。
ズキューン!
という銃声に目を張ると、
「操っ! 危ないアル!!」
神楽と戦っていたたまこがこちらに向かって銃を向けながら突っ込んで来た。
「神楽ちゃん、新八君! 今行くわっ!」
「こっちは大丈夫です! 銀さんが怪我をしててっ! 似蔵と戦っているんです! お願いします、銀さんを助けてあげてください!」
「銀時が、怪我?」
「よそ見してるんじゃねえよ!」
「あんたにはどさくさに紛れて死んでもらうっス!!」
浪人とたまこが同時に襲いかかってきた。
それをかわし、操は走り出す。取りあえず神楽達からこの連中を引き離さなければ。
が、走り出した操を追いかけてきたのは浪人だけだった。
どうしよう、すぐに神楽ちゃん達の所へ戻らなくちゃ。でも、銀時の事も気になる……
目の前に外の光が見えて来ると、そこで2人の男が向かい合っていた。
「晋助!? ーーーと、小太郎?」
外に出た所で出くわした男に、操は目を丸くする。すっかり短くなった髪の桂が、高杉に刀を向けていた。
「操!? お前、こんな所で何をしているのだっ!?」
「いや、そっちこそ、その髪どうしたの?」
「む……イメチェンだ」
「やっと来たか。操、来い!」
突然操は腕を引き寄せられた。
高杉が刀を首に突きつけて後ろから押さえつける。
「くっ」
「貴様っ、操を離せっ!」
「おっと動くなよ。ホラ見ろよ、あそこで銀時が化け物と戦ってるぜ」
「え? ……ぎっ、銀時っ!?」
驚く操の目には、血まみれの姿で、まるで化け物のような姿になった似蔵と戦う銀時が映った。似蔵のその有様にドクンと胸が脈打つ。
「晋助、あなた仲間を何だと思っているの!?」
「仲間? ありゃああいつが望んだことだ。それをオレがとやかく言う筋合いはない。ーーーさあ、ここまでだ。行くぞ操」
「高杉っ、貴様ぁあ!!」
上空高く飛んでいる船に並走するように、大きな船が近づいてきた。それは宇宙海賊春雨の巨大宇宙船だった。
「貴様、まさか奴らと手を組んだのかっ!?」
桂が高杉に向かって切っ先を向ける。
ドドオーーーーーーンンンン!!!!
大きく船体が揺れる。
ぐらりと揺れる体を器用にコントロールし、高杉は操を抱えて船縁から飛び降りた。
「待てっ! 操おぉっ!!」
「小太郎っ!」
伸ばした手はあとほんのわずか届かず、操は繋がれなかった手を握りしめぐっと腕に力を込めた。
「後はなんとかする! 急いで銀時達をっ!!」
「くうっ! ーーーあい分かった! 死ぬでないぞっ操っ! お前が死んでは俺が銀時に殺されてしまうからなっ!!」
そう言い残し、桂は甲板へと走り出した。
「まさか似蔵を倒しちまうとはな。白夜叉はまだ健在って事か」
「もうやめて……銀時にも、小太郎にも、誰にも人殺しはさせたくないの。晋助、あなたが考えていることが分からない」
「オレはこの国の為に戦ってるんだ。必要とあれば銀時だって殺す。オレの考えはこれから分かって行けばいいさ、一緒に行くんだ。ーーー操、お前だけ、分かってくれればそれでいい……」
一瞬寂しそうな目をしたのを、操は見逃さなかった。
高杉と一緒にいてやればいいのか? どうすれば高杉の心を癒す事が出来る? だが駄目だ。自分の居場所はここではない。
操もまた寂しそうに笑った。
「嫌よ。仕事が山のようにあるんだから、私は帰る」
春雨の軍艦に飛び移り、崩れ落ちる船を見て高杉は笑う。
「どうやって帰るつもりだ? オレはお前を返す気はないし、さすがのお前でもこの高さから落ちれば死ぬぞ」
「そうね。それじゃあ、死ぬのもいいかな……」
「何を……」
そして操は突然屈み、そのまま勢い良く高杉の顎に頭突きを食らわせた。
「ぐっ!?」
一瞬ひるんだ隙を付き、高杉の腕を掌底で突き上げ隙間を作る。そしてその隙間をくぐるように高杉の腕から逃れると、そのままの勢いで船から飛び降りた。
「操っ!! 待てえぇっ!!!」
随分高くまで上昇している船から生身のまま飛び降りるのは自殺行為だ。驚く高杉や春雨の連中を尻目に、操は遠くで桂と銀時が同じ頃にパラシュートで脱出する姿を確認して笑った。
良かった。これで、取りあえず終わったんだ。
続く…
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